(第73号)固定資産税評価の再建築価格方式と不動産鑑定評価の原価法との相違

 
(投稿・令和4年6月-見直し・令和7年3月)

 固定資産税家屋の評価方法は再建築価格方式ですが、この方式は不動産鑑定評価の原価法と同一の考え方になります。詳細な方法は異なりますが、基本的な考え方はほとんど同じです。

 なお、不動産鑑定評価では家屋という用語ではなく建物との呼び名を用いていますので、固定資産税評価では家屋、不動産鑑定評価では建物としますが、内容は全く同じものです。

固定資産税と不動産鑑定の評価計算

 まず2つの評価計算を図で比較します。

固定資産税の在来家屋評価

 固定資産税の在来(中古)家屋評価については、第57号「固定資産税の在来(中古)家屋の評価がなぜ下がらないのか」で説明してあります。

 
「在来中古家屋の評価方法(固定資産税)」

不動産鑑定評価の中古建物評価

 不動産鑑定評価での中古建物の評価は、価格時点において新しく新築した建物を想定し、その建物の評価を行い経年減点補正等を行って中古建物の評価額を求めます。
「中古建物の評価方法(不動産鑑定)」

 これを見ていただきますとお分かりになると思いますが、固定資産税評価の場合は、すでに新築時の評価から積み上げられていますが、不動産鑑定評価では評価時点(価格時点)で初めて中古建物を評価する方法になっています。

不動産鑑定評価の原価法とは

 まず不動産鑑定評価の原価法について解説します。

 不動産鑑定評価基準に「原価法は、価格時点における対象不動産の再調達原価を求め、この再調達原価について減価修正を行って対象不動産の試算価格(積算価格)を求める手法である。」とあります。

 原価法による価格(積算価格)=再調達原価-建物減価額

 通常、不動産鑑定評価の原価法では、建物及びその敷地の場合ですが、建物のみの評価も可能です。
 また、不動産鑑定評価は、建物が中古である場合の評価がほとんどです。

原価法の再調達原価とは

 ここで再調達原価とは、「対象不動産を価格時点において再調達することを想定した場合において必要とされる適正な原価の総額をいう。」(不動産鑑定評価基準)とされていて、固定資産税評価の再建築価格とほぼ同じ概念となります。

 つまり、不動産鑑定評価の原価法では、中古建物であっても、価格時点におけるその建物の新築相当額を求める訳です。今ある中古の建物と同じものを、価格時点で仮に新築したら評価額はいくらになるか、これが不動産鑑定評価の原価法の再調達原価です。

 この中古建物の再調達原価額を求めるにあたっては、建築士の意見や参考資料等を基にして不動産鑑定士が判断していきます。

原価法の減価額とは

 不動産鑑定評価の原価法では、次に減価額を求めますが、方法としては「耐用年数に基づく方法」と「観察減価法」の2通りあります。

「耐用年数に基づく方法」

 「耐用年数に基づく方法」は、「対象不動産の価格時点における経過年数及び経済的残存耐用年数の和として把握される耐用年数を基準として減価額を把握する方法」(不動産鑑定評価基準)です。

 経過年数を踏まえ、また現在の中古建物を観察したた上で、その建物があと何年使用可能かを判断する、これが経済的残存耐用年数です。
 なお、不動産鑑定評価基準には、固定資産税の「経年減点補正率基準表」のような基準表はありません。

 「耐用年数に基づく方法」=経過年数÷(経済的残存耐用年数+経過年数)

 なお、この「耐用年数に基づく方法」の経済的残存耐用年数の適用にあたっては、当該建物を躯体、仕上、設備に分けて、構造上の割合と年数を決めていきます。

「観察減価法」とは

 「観察減価法は」、「対象不動産について、設計、設備等の機能性、維持管理の状態、補修の状況、附近の環境との適合の状態等各減価の要因を調査することにより、減価額を直接求める方法」(不動産鑑定評価基準)です。

 これは名称のとおり、現在の中古建物を観察して、不動産鑑定士が減価割合を決めていきます。

 不動産鑑定評価の原価法では、この「耐用年数に基づく方法」と「観察減価法」を併せて減価額を求めます。

 なお、土地と建物一体を原価法で評価する場合には、減価方法として「建物及びその敷地の減価額」がありますが、今回は建物のみの原価法の説明です。

 それでは、ここに軽量鉄骨造2階建て共同住宅、築年数20年の場合を想定した原価法の計算例を掲げます。

「原価法の計算例」
 
2022/06/21/21:00
 

 

(第72号)家屋の新築時データを廃棄すると、中古家屋の検証も出来ない

 
(投稿・令和4年6月-見直し・令和7年3月)
 今回は、前号で紹介しました「中古家屋の固定資産税評価で新築時の検証が必要」の続きになります。

 
 過日(令和3年9月)、石川県河北郡津幡町に居住するKさんから、石川県N市に所有している家屋(マンション)の固定資産評価について、次のようなご相談をいただきました。

  自分の所有しているマンションの評価額が隣接のマンションと比較して約1.4倍、また自分が所有している他のマンションと比べても約1.6倍と高いので、5月に固定資産評価審査委員会(以下「審査委員会」)に審査申出を行ったものの棄却決定されました。

その審査申出に対する課税当局からの弁明と審査委員会の決定では「建築時に算出した再建築費評点数に対して評価替ごとに再建築費評点補正率を乗じて、現在の再建築費評点数を算出している」とありました。しかし、仮に課税誤りがあるとすれば、新築当初の評価(再建築費評点数)に誤りがあった筈なのに、今までの評価は正しいとの前提なのです。

そこで、課税当局(税務課)に、新築当時の課税内容の説明を求めたところ、「当時の評価データは廃棄して無いが、間違いなく正しく評価している」との回答がありました。

石川県N市対応の問題点

 この石川県N市の問題点としては、次の点にあります。

① 評価データを廃棄したこと

 評価データは家屋の再建築費評点算出表(以下「評価計算書」)ですが、どこの市町村でも所有者から説明を求められると、この資料により評価内容を説明し渡されるのが一般的です。

 所有者が評価内容を検討するためにも「評価計算書」が必要であるとともに、課税当局では、その家屋の評価額がどのように算定されているのかを説明し「課税誤り」が無いことを示す必要がある訳です。

 最近では、家屋評価データが電子システム化されていますが、電算化システムになる前は「データパンチ」(手書きの資料を電子化する)という方法で作成・保管され、仮に担当者がコピーを廃棄したとしても、組織としてはデータが保存されているのが普通なのです。特に家屋については、課税している間はデータを保存すべきなのです。

 そうでなければ、所有者にとって大切な財産である固定資産に対して評価・課税している根拠が疑われ、信頼性も損なわれることになります。

②新築時の評価額が審査されないこと

 Kさんの審査申出の趣旨は「そもそも再建築費評点数の算定が正しいのか」ですが、課税当局の弁明と審査委員会の決定は、前年の再建築評評点数に補正率を乗ずる「在来家屋の評価方法」の説明に終始されています。

 審査委員会の決定(棄却)もほとんど課税当局の弁明書を踏襲した結果となっています。審査委員会は第三者機関ですが、審査申出の手続きでは、課税当局の主張(原案)がそのまま採用されることがほとんどではないかと思います。

 「そもそも新築時の再建築費が正しいのか」との請求に対して、審査申出の棄却決定では、新築時の評価検証が一切行われずに、在来家屋の評価方法で決定(棄却)されていることは問題です。

 この理由は、①の「家屋の新築時データを廃棄した」ことから、在来家屋の新築時の評価検証ができないからなのです。

 そこで問題は、中古家屋の納税者は、現在の基準年度において、新築時(過去の)価格に対して意見等を申出ることができるかということになります。

中古家屋では新築時の評価を引き継ぐ

 そもそも中古家屋の評価は新築時の評価が引き継がれています。

 この中古家屋の評価の方法については、第57号「固定資産税の在来(中古)家屋の評価がなぜ下がらないのか」で説明しています。

 
 家屋の基準年度の評価額は、一つ前の基準年度の価格(正式には「再建築費評点数」)を基礎として算定されています(在来家屋家屋の評価)。この場合、建築当初の価格は見直しがされないことから、仮に建築当初の価格の算定に誤りがあっても、誤ったままの状況が継続してしまうことになります。

 この点については、前号で紹介しましたが、平成25年4月16日の東京高等裁判所において、「新築時の審査を認める」司法判断が示されています。

 この事例では、被控訴人(東京都)は、在来家屋の評価が適正であるので問題無いと主張したのですが、東京高等裁判所の判決では、新築時の評価が正しかったのか否かの証明が必要と判断されています。

 ここに東京高等裁判所判決の一部を紹介します。

<平成25年4月16日高等裁判所判決(一部)>
「しかし,(中略)「建築当初の再建築費評点数の算出の誤り」は,「前年度(平成17年度)の再建築費評点数」に影響を及ぼし,ひいては平成18年度の価格に影響を及ぼすことが明らかである。(中略)被控訴人主張のような制限をすることはできない。」
(※詳細は次号で紹介します。)

 石川県N市ではデータを廃棄しただけではなく、税務課の幹部から「もしこの家屋の評価が高いと思うならば、納税者自身から計算して示してください」とまで言われているのです。データを廃棄しているのに納税者としても「検証」できる訳がありません。

大規模非木造家屋の評価は県が担当

 上記の東京高等裁判所の判決文にはまた「建築当初の建築関係書類が廃棄又は紛失されることがあることも想像に難くなく,そうすると,時の経過と共に建築当初の評価に誤りがあったかどうかを的確に判断することは困難になることも当然に予想されるということはできる。」とありますが、石川県N市の対応はまさにこのとおりである訳です。

 しかし、大都市でない市町村では、大規模の非木造家屋の新築評価は県(県税事務所)に委ねていることです。県と市町村の協定によっても異なりますが、通常は500㎡以上の非木造家屋がその対象です。

 その場合、評価データは実際に評価した県税事務所が保存していて、市町村では紙レベルの「評価計算書」のみを保有しているという場合が多いのです。また県税事務所では、不動産取得税の課税ですので、評価データはそれほど長期間保有していないと思います。

新築時家屋評価データの保存の必要性

 しかし、市町村の固定資産税の家屋(特に非木造家屋)であれば長期間の課税になりますので、データも長期間保有すべきなのです。 

 特に新築時の再建築評点数をどう評価したのかを所有者に説明するときにも必要ですし、仮に所有者が課税誤りに対して訴訟を提起した場合には必要な資料が存在しないことになってしまうのです。

 そこで、「新築時のデータを保存年限で廃棄している」市町村には、今後、是非とも「永年保存」か「課税中保存」にしていただきたいものです。

 
2022/06/18/16:00
 

 

(第71号)中古家屋の固定資産税評価で新築時の検証が必要

 
(投稿・令和4年6月-見直し・令和6年8月)

 在来(中古)家屋(以下「在来家屋」)の固定資産税評価は、「一つ前の基準年度の評価(正式には「再建築費評点数」)を基礎として算定」されていますが、その前基準年度の再建築評点数は新築時の評価が正しいとの前提になっています。

 この場合、仮に建築当初の価格の評価算定に誤りがあっても、誤ったままの状況が継続してしまうことになる訳です。

 したがって、中古家屋の評価についても、新築時の評価が正しいかどうかの審査を求めることができるかどうかが問題となります。

 この点について、前号で紹介しました平成25年4月16日の東京高等裁判所において、新築時の審査を認める司法判断が示され、平成26年7月24日の最高裁判決で確定されています。

 しかし、第一審の東京地裁では否定されていますので、東京地裁判決からみていきます。

東京地裁(平成23年12月20日)判決

第1審・東京地裁での<事案の概要>

 この訴訟は、原告・A株式会社(以下「A」)が、中古家屋の平成18年度の価格に対する審査申出の決定(棄却)を不服として、被告・東京都固定資産評価審査委員会(以下「東京都」)に対して、原告・Aが相当と考える価格を超える部分の取消しを求めたものでした。(平成20年7月22日訴えの提起)

(原告・Aの主張)
 この不服の理由として、本件家屋の建築当初の評価に誤りがあったこと、具体的には平成5年度に本件家屋を評価するに当り、再建築費評点数の算出に誤りがあった。
(被告・東京都の主張)
 建築当初の評価の誤りを平成18年度の価格に対する不服として主張することはできない、そもそも建築当初の評価に誤りはない。

(争点)
 本訴訟の争点は、次の点になります。
< 本件家屋の建築当初の単位当り再建築費評点数の算出が誤っていることを理由として平成18年度価格の妥当性を争うことができるか否か。>

東京地裁の判断

 東京地裁の判断は、次のとおりです。

「地方税法は、原則として、建築当初の評価後の基準年度が到来した後においては、建築当初の評価の誤りを理由として、当該基準年度において固定資産課税台帳等に登録された家屋のの価格を主張することや、当該誤りを理由に当該不服に理由がある旨の決定や判決をすることを予定していないものというのが相当である。」

 このように、東京地裁の判断では原告・Aの主張は「否定」されています。

 

東京高裁(平成25年4月16日)判決

 東京高裁での判断では、逆に原告・Aの主張が「容認」されています。

「被控訴人・東京都は,平成18年度価格についての不服として,本件家屋の建築当初の評価を争うことは原則としてできず,その評価を争うことができるのは,建築当初の評価において適切に評価できなかった事情がその後に判明した場合や,建築当初の評価の誤りが重大で,それを基礎に評価をすることが適正な時価の算定方法として不合理であると認められるような場合に限られるとし,このように解さないと,①建築当初の評価額についての争いをいつでも蒸し返すことができることになり,固定資産税の賦課決定処分の前提問題である固定資産税評価額を早期に確定させることによって法的安定性を招来しようとする地方税法の趣旨に反する結果となる,②当初の評価から時間が経過するほど,評価の対象となった建物には経年変化が生じ,また,補修や増改築等による変更が生じることが当然に予想され,そうなれば,当初の評価に誤りがあったかどうかを的確に判断することは困難になっていくことが当然に予想される,などと主張する。」

 「しかし,固定資産評価基準に従って決定された価格は「適正な時価」であると推認されるというにすぎない。このことは,その適用の誤りが,前記のような「建築当初の再建築費評点数の算出の誤り」である場合であっても,当該基準年度における価格の決定に影響を及ぼすものである限り,同様である。本件において,「建築当初の再建築費評点数の算出の誤り」は,「前年度(平成17年度)の再建築費評点数」に影響を及ぼし,ひいては平成18年度の価格に影響を及ぼすことが明らかである。」

「地方税法432条1項も、基準年度の登録価格に関して審査の申出をすることができる場合について何らの制限を設けていないのであり、被控訴人主張のような制限をすることはできない。」
「以上の次第で、被控訴人・東京都の主張は採用することができない。」

 以上、東京高裁判決では、中古家屋の評価においても新築当時の評価が正しいかどうかの審査を求めることができるとされています。

 

最高裁(平成26年7月24日)決定

 この判決に対して、東京都から最高裁へ上告されたものの、最高裁判所第一小法廷において棄却され、東京高裁の判断が確定されています。

<平成26年7月24日・最高裁判所第一小法廷決定>

 
 以上により、家屋の固定資産税評価においては、在来家屋の審査時においても、新築時の評価が正しいか否かを検証することができますし、検証する必要がある訳です。
 
2022/06/16/17:00
 

 

(第70号)「太陽光パネル設置用地」(その他の雑種地)の固定資産税評価について

 
(投稿・平成27年-見直し・令和7年3月)

 今回は、再生可能エネルギー発電施設用地、なかでも「太陽光パネル設置用地」の固定資産税評価(その他の雑種地)について説明します。

 太陽光パネルの設置は、他の風力・水力・地熱等とともに再生可能エネルギーの固定価格買取制度が平成24年7月にスタートしました。

 太陽光発電は、温室効果ガスを排出せず、燃料費も不要であり、非常用電源としても利用可能という有用な電源です。

 平成25年9月に総務省により行われた「再生可能エネルギー発電施設の用に供する土地に係る固定資産税評価に関する調査」(以下「実態調査」)において、太陽光の稼働が192箇所、見込が975箇所となっています。

 「太陽光パネル設置用地」は歴史が新しいこともあって、固定資産税評価の方法も必ずしも統一されていない実態があります。

「太陽光パネル設置用地」は雑種地

 土地は様々な利用がなされていますが、地目により価格事情を異にしますので、地目ごとに評価方法が定められています。

 そこで、まず「太陽光パネル設置用地」の地目は何かということになります。

 ここでは土地に直接太陽光パネルを設置して発電を行うものを仮定しますが、その場合、用地の大部分は建物を必要としない(建築物に該当しないよう設計されるケースが多い)ことから、その地目は雑種地とされるのが一般的です。

 前記の総務省の実態調査においても、8割超の市町村において、「太陽光パネル設置用地」は雑種地の地目認定がされています。

 また、「太陽光パネル設置用地」は雑種地のうちの「その他の雑種地」に当たります。

 「その他の雑種地」の評価は、固定資産評価基準には「売買実例地比準方式」と「近傍地比準方式」の2つの方法が規定されています。

 「売買実例方式」は、雑種地の売買実例価額から評定する適正な時価によってその価額を求める方法ですが、「太陽光パネル設置用地」は一般的な宅地と比較して新しい利用形態であることから、売買実例も少ないものと思われます。

 総務省の実態調査によっても、この方式によって評価された「太陽光パネル設置用地」は1割未満となっています。したがって、「太陽光パネル設置用地」の固定資産税評価では、「その他の雑種地」のうちの「近傍地比準方式」を説明します。

「その他雑種地」の「近傍地比準方式」

 「近傍地比準方式」は、市町村内に売買実例価額がない場合においては、土地の位置、利用状況等を考慮し、附近の土地の価額に比準してその価額を求める方法です。

 方法としては、まず「太陽光パネル設置用地」の評価にあたり、比準元(地目)を選定し、次に、比準元から比準を行うことになります。

比準元の選定

 「太陽光パネル設置用地」の比準元の選定においては、「土地の位置、利用状況等」を考慮する必要があります。

 位置については、「附近の土地」とされていますが、鉄軌道用地の評価においては「沿接する」との用語が用いられており、この両者の違いに留意する必要があります。

 「その他の雑種地」では「附近」ということですので、例えば、必ずしも接続する路線価でなくても良く、社会通念として「近い」と解される範囲内であれば良い訳です。

 次に、利用状況については、附近に類似の雑種地があれば、その雑種地の選定で良いのですが、実態としてそのような雑種地が存在しない場合が多いと思われます。

 先の実態調査においても、全国の「太陽光パネル設置用地」のうち9割弱の土地の評価において、比準元となる「附近の土地」が宅地とされています。

 比準元が宅地である場合の雑種地評価の比準としては、①宅地間比準と②地目間比準の2段階の比準作業が行われることになります。

宅地間比準(第一段階)

 この方法は、比準元の宅地と評価対象地(宅地化が想定される「太陽光パネル設置用地」)との間で比準を行うものです。つまり、本来は「太陽光パネル設置用地」は雑種地ではありますが、一旦そこを宅地と想定し、宅地同士の比準を行います。

 ここでは、通常の宅地評価で考慮される要素である地域的格差及び個別的格差を比準することになります。

地目間比準(第二段階)

 次に、宅地と「その他の雑種地」の間における格差、すなわち、同位置・同形状の土地に係る地目間の格差を反映するための比準となります。

 この場合、評価対象地である「その他の雑種地」が宅地となるべき要素として、造成費相当額が主なものとなります。つまり、想定された宅地としての価格から造成費相当額を控除して求めることになります。

 この場合、市町村によっては、造成費相当額ではなく、一定の比準割合を設定して適用する方法も多く行われています。

 この地目間比準は、本来は評価対象地が宅地化される際の格差が査定されるべきものであり、単に造成費相当額を控除するのではなく、他の要素があれば控除対象として適正な価格が求められるべきであります。

「太陽光パネル」には償却資産が課税

 以上のとおり、「太陽光パネル設置用地」は土地で地目は雑種地のなかの「その他の雑種地」となりますが、「太陽光パネル」自体には償却資産が課税されています。

 なお、この「太陽光パネル」の償却資産の評価・課税については、市町村単位で「わが町特例」による減額特例が適用されています。
 
2022/06/12/15:00
 

 

(第69号)雑種地の固定資産税評価について(その他の雑種地)

 
(投稿・令和4年6月-見直し・令和7年3月)

 今回は第68号「雑種地の固定資産税評価について(基本編)」でも解説しましたが、雑種地の中でも種類が多い「その他の雑種地」の説明になります。

 「その他の雑種地」の例としては、駐車場、資材・廃材置場、太陽光パネル設置用地、干場、鉄塔用地、私道、農業用施設用地、高圧線下地等があります。

 

「その他の雑種地」評価の基本

 固定資産評価基準による「その他の雑種地」の評価方法は、①売買実例地比準方式と②近傍地比準方式が規定されています。

① 売買実例地比準方式
 雑種地の売買実例価額から評定する適正な時価によってその価額を求める方法です。

② 近傍地比準方式
 市町村内に売買実例がない場合においては、土地の位置、利用状況等を考慮し、附近の土地の価額に比準してその価額を求める方法です。

<雑種地の固定資産税評価>
 

 「その他の雑種地」は、①の売買実例地比準方式が原則ですが、売買実例が少ないことから、多くの市長村では②の近傍地比準方式により評価されているのが実際です。

そこで以降は、②の近傍地比準方式の解説になります。

「その他の雑種地」の近傍地比準方式

市街化区域内の「その他の雑種地」

 市街化区域内の「その他の雑種地」の評価は、宅地に準ずるものとし、当該雑種地を宅地に転用する場合において通常必要と認められる造成費相当額を控除して求めます。

市街化調整区域内の「その他の雑種地」

 市街化調整区域内に所在する雑種地の評価は、原則として、造成費相当額控除前の基本価額を70%減額(30%評価)するものとします。

比準割合表により求める方法

 上記の造成費相当額控除方式は、必ずしも全ての市長村で採用されている評価方法ではなく、多くの市長村では、「固定資産評価事務取扱要領」(市長村ごとに名称が異なる)において、雑種地の費目別に比準割合表を設定し、それを適用して評価額を求めます。
 
2022/06/11/12:00