(第53号)山林(一般山林、介在山林)の固定資産税評価と緑地保全による減免

 
(投稿・令和3年6月-見直し・令和7年3月)

 今回は、山林の固定資産税評価と緑地(山林)保全による固定資産税の減免について紹介します。

 まず、固定資産税の山林の種類からです。

固定資産評税の山林の種類

 山林の評価については、固定資産評価基準の第1章第7節により次のように定められており、一般山林と介在山林の2種類からなります。

<山林の評価>
「固定資産評価基準第1章第7節」
「山林の評価は、各筆の山林について評点数を付設し、当該評点数を評点一点当たりの価額に乗じて各筆の山林の価額を求める方法によるものとする。ただし、宅地、農地等のうちに介在する山林及び市街地近郊の山林で、当該山林の近傍の宅地、農地等との評価の均衡上、上記の方法によって評価することが適当でないと認められるものについては、当該山林の均衡の宅地、農地等の価額に比準してその価額を求める方法によるものとする。」

 この基準で、前半の部分が一般山林で、後半の但し書き部分が介在山林になります。

 一般山林とは、介在山林以外の山林で、林業経営が継続されることを前提に山林としての生産力に着目して評価します。

 一方、介在山林とは、宅地・農地等のうちに介在する山林や市街地近郊の山林で、一般山林の評価方法によって評価することが適当でない山林をいいます。

 固定資産評価基準での山林規定は抽象的な面はありますが、山林評価の具体的内容は、市町村の「固定資産評価事務取扱要領」(市町村により名称が異なります)により詳しく定められていますので、そちらを確認されるようお願いいたします。

一般山林の評価

 一般山林の評価は、おおまか次の流れにより行います。

(1)状況類似地区の区分

 状況類似地区の区分にあたっては、地勢、土層、林産物の搬出の便等を基準として、概ねその状況が類似する地区ごとに区分します。

(2)標準山林の算定

 標準山林は各状況類似地区ごとに、位置、地形、土層、林産物の搬出の便等の状況からみて比較的多数所在する山林のうちから、一つの山林を選定します。一般的には、状況類似地区の中央部に位置し、最も多い林相を示す山林が選定されます。

(3)標準山林の評点の付設

 標準山林の評点数は、その標準山林が所在する状況類似地区内における売買実例価額から評定する適正な時価に基づいて付設します。

(4)山林の比準表の適用

 各筆の山林の評点数を付設する際に、標準山林との状況の差を比較考慮し固定資産評価基準に定められている「山林の比準表」を適用して評点数を補正します。
 なお、市町村の「固定資産評価事務取扱要領」において「所要の補正」が定められている場合は、これを適用します。

(5)各筆の山林の評点数の付設

 各筆の山林の評点数は、まず、標準山林の単位地積当たりの評点数に、「山林の比準表」(別表第7の1)によって求めた各筆ごとの比準割合を乗じて、各筆の単位地積当たりの評点数をもとめ、これに当該筆の地積を乗じて、各筆の山林の評点数を求めます。

介在山林の評価

(1)「市街地宅地評価法」に所在する山林評価

 「市街地宅地評価法」が適用されている地域に所在する介在山林の場合は、路線価を基に画地計算を行い、介在山林が宅地であったとした場合の価額を求め、この価額から宅地転用にあたって通常必要と認められる造成費相当額を控除して評価額を算定します。

(2)「その他の宅地評価法」に所在する山林評価

 「その他の宅地評価法」が適用されている地域に所在する介在山林の場合は、当該介在山林の付近の宅地から、立地条件や画地の状況が類似している宅地を選び、介在山林が宅地であったとした場合の価額を求め、この価額から宅地転用にあたって通常必要と認められる造成費相当額を控除して評価額を算定します。

(3)介在山林の傾斜角度等の比準割合から求める方法

 市町村によっては、上記の造成費相当を控除する方法ではなく、介在山林の傾斜角度等から比準割合を定めている場合もあります。その場合の具体的評価方法は、当該市町村の「固定資産評価事務取扱要領」により定められています。
 この傾斜角度等から求める方法では、まず介在山林の状況類似地区の宅地化の度合い(熟成度)を判定し、次にその山林の傾斜角度(傾斜主体)から比準割合を求めることになります。

 ここに、Y市の「介在山林比準表」を紹介します。

「Y市介在山林比準表」

緑地保全による固定資産税の減免

「都市緑地法」による特別緑地保全地区

 特別緑地保全地区は、都市緑地法第12条に規定されており、都市計画区域内において、樹林地、草地、水沼地などの地区が単独もしくは周囲と一体になって、良好な自然環境を形成しているもので、無秩序な市街化の防止や、公害又は災害の防止となるもの、伝統的・文化的意義を有するもの、風致景観が優れているもの、動植物の生育地等となるもののいずれかに該当する緑地が、指定の対象となります。
 この地区に指定されると、固定資産税評価額が最大2分の1まで減額される優遇措置があります(自治体により異なる場合があります)。

市町村による緑地保全制度と山林の買取り

 自治体によっては、緑地を保全するための条例が制定され、市街化区域、市街化調整区域の一定以上の樹林地を保存する施策が展開されています。この制度の優遇措置の一つとして、固定資産税(都市計画税)の減免があります。

 また自治体によっては、一定の要件に合う山林を買い取る制度もあります。例えば、横浜市では「横浜緑アップ計画」による買取制度があります。
 これは、あくまでも自治体の条例による制度ですので、当該の自治体にご相談ください。
 
2022/06/05/11:00
 

 

(第52号)新築住宅又は改修工事を行った住宅の固定資産税の減額

 
(投稿・令和3年6月-見直し・令和7年3月)

 今回は、新築住宅または改修工事を行った場合の住宅の固定資産税の減額についてです。

(※これらの法的根拠は、地方税法の附則(例えば第15条の6、第15条の9等)ですが、この附則は名称とは違って膨大な量の条文となっています。そのため、今回は、法律条項を掲げずに内容のみの説明とします。)

新築住宅に対する減額措置

 まずは一般の新築住宅に対する固定資産税の減額です。

<一般の新築住宅に対する減額>

減額内容と減額期間

 一般の新築住宅で、床面積が120㎡以下の家屋は固定資産税が2分の1に減額されます。
 減額期間は、3階以上の耐火・準耐火構造の住宅では「新築後5年間」、それ以外の戸建住宅等では「新築後3年間」となります。

 なお、床面積が120㎡を超える部分は減額対象にはなりません。
 また、一般の新築住宅の場合は、減額対象は固定資産税のみで都市計画税は減額対象にはなりません。

 ところで、減額の為に申告が必要かどうかですが、この一般住宅の場合は必要ありませんが、この後に紹介する認定長期優良住宅、省エネルギー対策住宅の場合は申告が必要となります。

減額要件(居住部分)

 減額要件としては、居住部分が全体の床面積の2分の1以上あることが必要です。

 また、居住部分の面積は50㎡以上280㎡以下であることですが、区分所有建物では課税床面積(※)であること、また一戸建以外のアパート等については1区画の床面積が40㎡~280㎡とされています。

認定長期優良住宅、省エネルギー対策住宅

 これまでの説明は、一般住宅の新築についてですが、ここに認定長期優良住宅と省エネルギー対策住宅の減額対象と減額期間の表を掲げます。

<認定長期有料住宅・省エネ対策住宅の減額>

改修工事住宅に対する減額措置

 それでは、新築住宅ではなく、耐震改修、バリアフリー改修、熱損失防止(省エネ)改修の工事を行った住宅についての固定資産税、都市計画税の減額措置についてです。

<改修工事を行った住宅に対する減額>
 
2022/06/03/19:00
 

 

(第51号)固定資産税評価が相続税評価で利用される場合(土地の倍率地域と家屋評価)

 
(投稿・令和3年6月-見直し・令和7年1月)

 先日、ある方から次のような相談を受けしました。
 「弁護士に、私の土地の相続税路線価と評価額を調べて欲しいとお願いしたところ、『路線価が無いので分かりません』との回答が返ってきましたが、どうなのでしょうか。」

 この弁護士の回答には驚きましたが、結論的に言いますと、その地域は相続税の路線価地域ではなく、土地(固定資産税評価)の倍率地域である訳です。

 今回は、相続税評価のなかで固定資産税評価がどのように活用されるのかについて説明します。

 相続税評価で固定資産税評価を利用される場合は、土地評価において相続税評価の倍率地域と家屋評価の2つになります。

相続税評価の路線価地域と倍率地域

(1)相続税評価の方式

 相続税評価の方式は、「路線価方式」と「倍率方式」の2つがあります。
「路線価方式」であれば、国税庁の財産評価基準書(路線価図)で路線価を検索することができます。この路線価を基準にして、決められている画地計算を行って相続税評価額を求めることになります。

 なお、相続税については、①固定資産税評価が「その他の宅地評価法」及び②固定資産税路線価が付設されていても市街化調整区域である場合は、路線価地域ではなく倍率地域となっているのが一般的です。

 冒頭のご質問の弁護士の方は、相続税の路線価図だけを見て『路線価が無いので分かりません』と判断されたものと考えられます。

 その方の地域は横浜市内の市街化調整区域であったのですが、横浜市の場合は、固定資産税路線価は調整区域であっても路線価は付設されています。しかし、相続税は倍率地域となりますので、路線価は付設されていません。

<相続税路線価と固定資産税路線価>

 その場合は、倍率地域一覧表を検索すれば、必ず該当地域の倍率表にあたります。

<相続税倍率表>

(2)倍率方式による評価

 相続税倍率表では、宅地の場合の倍率は「1.0」や「1.1」が多いようですが、これは、固定資産税評価額を1.0倍にするか1.1倍すれば相続税評価となることを意味しています。

 例えば、固定資産税評価額が15,000,000円で相続税倍率が「1.1」の地域であれば、次の計算となります。
 15,000,000円×1.1=16,500,000円(相続税評価額)

 これですと、固定資産税評価額が分かれば、路線価方式のような画地計算をしなくて済みますので、簡単であるとも言えます。

相続税の建物評価は固定資産税家屋評価

 相続税評価で固定資産税評価を利用される機会が最も多いのは「建物(家屋)評価」になります。
 相続税の建物評価は、固定資産税家屋の評価額をそのまま100%適用すれば良いことになっていますので簡単です。

 ※何故なのか理由は不明ですが、固定資産税の場合は「建物」とは言わずに「家屋」と呼びます。
 
2022/06/03/06:00
 

 

(第50号)市町村の「評価事務取扱要領」と「所要の補正」とは

 
(投稿・令和2年5月-見直し・令和7年3月)

 土地(宅地)の「画地計算」は、地方税法に基づき固定資産評価基準によることとされていますが、「市町村長は、宅地の状況に応じて必要があるときは『評価事務取扱要領』で『所要の補正』をすることができる」とされています。

 この内容については、第11号及び第12号で説明していますのでご覧ください。

 
 そこで、今回は改めて「『評価事務取扱要領』と『所要の補正』とは何か」について説明します。

「評価事務取扱要領」とは

「評価事務取扱要領」は法的拘束力が無い

 「評価事務取扱要領」は、市町村毎に策定されている固定資産事務の取扱方針を定めたもので、例えば「○○市固定資産(土地)評価事務取扱要領」との名称が一般的ですが、市町村によっては異なる場合もあります。

 この「要領(又は要綱)」は法令ではありませんし、条例又は規則とも異なります。

 法令は国会の議決により制定されますし、条例は市町村の地方公共団体が法令の範囲内で議会の決議を経て制定されます。また規則は地方公共団体の長が法令の範囲内で制定します。

 一方、要領(又は要綱)は、その市町村の内部事務の取扱いについて定めたもので、法的な拘束力はありません。

要領であっても公表すべき

 とは言え、「評価事務取扱要領」は固定資産税の評価および課税の公平・公正を図るために定められているもので、納税者に対して秘匿するものではありません。

 最近(令和5年12月)、ある方の電話相談により分かったことですが、某市の固定資産税担当に評価の根拠として「評価事務取扱要領」の提出を求めたところ、「秘密なので」と断られたそうです。これは、あってはならないことです。

 多くの市町村では、ホームページに公表していますので、「固定資産評価事務取扱要領」と検索すると確認することができます。
 しかし、サイトに掲載していない市町村も相当あります。

<グーグル目次(固定資産評価事務取扱要領)例>

※ 令和6年1月5日検索

「所要の補正」による画地補正

「所要の補正」とは

 市町村長は、評価の均衡を図るため宅地の状況に応じ必要があるときは「画地計算法」の附表等又は「宅地の比準表」について、「所要の補正」を加えて適用することができるとされています。

<所要の補正>
「固定資産評価基準・宅地の評価・(一)「市街地宅地評価法」による宅地の評点数の付設」
「4 各筆の宅地の評点数の付設
各筆の宅地の評点数は、路線価を基礎とし、「画地計算法」を適用して付設するものとする。この場合において、市町村長は、宅地の状況に応じ、必要があるときは、「画地計算法」の附表等について、所要の補正をして、これを適用するものとする。」

「所要の補正」による画地補正(例)

 この「所要の補正」は、価格の低下等の原因が画地の個別的要因により、その影響が局地的であること等から、その価格事情を路線価の付設又は状況類似地区の設定により評価に反映させることができない場合に、市町村単位で設けることができます。

 なお、この市町村ごとの具体的な「所要の補正」は、各市町村の「固定資産評価事務取扱要領」に規定されていますので、個別の確認が必要です。

 次の表は、全国の市町村での「所要の補正」による画地補正の実施例です(平成25年版)。

<「所要の補正」による画地補正(市町村数)>

 
2022/6/2/21:00
 

 

(第49号)大規模画地の補正は奥行価格補正率のみで良いのか-鑑定評価の<開発法>での検証

 
(投稿・令和4年6月-見直し・令和7年2月)

 第48号「固定資産税評価における大規模画地の評価(減価率)について」で、大規模画地の固定資産税評価について解説しましたが、それでは不動産鑑定評価で評価するとどうなるでしょうか。

 
 今回は不動産鑑定評価の<開発法>で評価した場合を紹介します。また、今後の大規模画地補正の検討についても触れさせていただきます。

不動産鑑定評価<開発法>による評価

 一般的に、不動産鑑定評価で用いられる鑑定手法は、取引事例比較法、収益還元法、原価法が主なものですが、一定面積以上の大規模画地では開発法も併せて適用します。

 開発法とは、対象不動産の面積が近隣地域の標準的な土地の面積と比較して大きい場合に価格を求める場合に、対象不動産上に宅地分譲やマンション分譲の開発を行うことを想定して、評価する方法です。

 この開発法は、求めた価格(単価)を標準画地の単価と比較することにより、大規模画地がどれほど減価するかの減価率を判断をすることに適しています。

大規模画地の画地分割の想定

 まず、開発法を適用するに当り、近隣地域から標準的な画地(標準画地)を想定し設定します。そして評価対象の大規模画地を、標準画地を基準にして分割利用することを想定した宅地分割図を作成する必要があります。
※前号(第48号)と同一の宅地分割図です。
 
<大規模画地の分譲画地計画図(宅地分割図)>

 
 鑑定評価では、その標準画地の価格を取引事例比較法と収益還元法から標準画地の価格(標準価格)を査定しますが、標準画地として次の土地を想定します。

<想定標準画地>
・面積…150㎡(戸建用地)
・道路条件…東側幅員約6mの公道
・標準画地の市場価格(標準価格)…300,000円/㎡
(※固定資産税路線価210,000円/㎡(標準画地価格の7割)と対応させています。)
 また、この大規模画地を宅地分譲地として利用できるように、12画地に分割し、幅員4mの通路を設定します。

分譲各画地の個別格差率及び分譲総額

 そこでまず、標準価格が300,000円/㎡とされた場合、この宅地分割図の宅地(12画地)部分の価格はどうなるかを査定します。

 次の「分譲各画地の格差補正率及び分譲総額」表にまとめてありますが、査定結果は次のとおりになります。

<格差率>
※方位…東(±0)、北(▲2)、南(+1)
※規模…150㎡(±0)、170㎡(▲2)
※道路接続…角地(+5)、間口狭い(▲3)
<査定結果>
・宅地部分の総面積…1,840.00㎡(153.33㎡/区画)
・総額(単価)…547,418,000円(297,500円/㎡)

<各画地の格差補正率及び分譲総額>

宅地造成工事費の査定

 次に、この大規模画地の造成工事費等を専門家の意見等を参考にして求めますが、宅地造成総工事費は30,948,000円となります。
 
<宅地造成工事費>

<開発法>の適用と結果の減価割合

開発計画の概要及び収支計画

 そして、開発法の適用になりますが、1.「開発計画の概要」及び2.「収支計画」は次のとおりとなります。

 2.の「収支計画」のうち、販売費及び一般管理費を分譲収入の10%とします。

 また、投下資本収益率とは、企業が事業活動のために投じた資金を使って、どれだけ利益を生み出すかの指標ですが、主に借入金利率・開発利潤・危険負担の3要素から構成され、本件では立地・開発計画等を総合的に勘案し12%と査定しています。
 
<開発計画及び収支計画>

開発スケジュール及び複利現価による価格

 次は、3.「開発スケジュール」と4.「複利現価による価格」、そして4.の収入から支出を控除して「開発法による価格」を求めます。

 スケジュールは3.の表のとおりですが、工事着工を6ヵ月後から、完成を12ヵ月後、販売開始を8ヵ月後、完売時を20ヵ月後としています。

 また、4.の複利現価とは、将来の一定の金額は金利分を割り引くと今いくらになるかという現在価値を表したものです。

・開発法による価格…収入(464,075,900円)- 支出(77,573,600円)=386,502,300円
・開発法による単価…386,502,300円÷2,040㎡=189,500円/㎡
 
<開発スケジュール及び複利現価による価格>

<開発法>適用による減価割合

 以上により、大規模画地の開発法による価格(単価)が189,500円/㎡と査定されました。

 この標準画地の価格300,000円/㎡と比較すると大規模画地(2,040㎡では)63%で減価割合は▲37%となっています。
(第36号での固定資産税の画地計算法では、これと同じ大きさの画地の減価率は標準的画地と比べて▲14%の減価でした。)

 不動産鑑定評価では、規模が2,000㎡程度で▲37%ですから、更に面積が大きくなれば減価割合も大きくなることが予測されます。

 このように市場の取引においては、規模が大きくなると、取引総額が漸減し単価も低くなっていきます(これが市場流通性です)。

 ところが、固定資産税の奥行価格補正率表では、最大減価率が<0.80>までとしかなっていないのです。

今後の大規模画地補正率の検討について

 最後に、今後の固定資産税評価における大規模画地補正率の検討についてです。

①  今回の<開発法>の検証は「画地分割が可能な大規模画地」を対象にしましたが、土地が存する地域要因や土地の個別的要因(最有効使用)は様々であることから、必ずしも上記の検証が全てにあてはまるものではありません。

 例えば高度商業地域で、規模が大きくてもビル建設が最有効使用となれば、潰地が必要無く、規模が大きくても必ずしも「大きな減価」とはならない可能性もあります。
 ただし「総額が嵩むことから買い手が限定される」ことにより、それなりの規模減価は発生します。

  それにしても、固定資産税評価では「大規模価格補正は奥行価格補正で足りる」とされていますが、固定資産評価基準の奥行価格補正率が最大▲20%では減価率が小さ過ぎます。

 固定資産税の本来的性格が「資産の保有と市町村の行政サービスとの間に存在する受益関係に着目された資産税」ではありますが、「市場流通性」も考慮すべきです。最高裁判決でも、固定資産税の「適正な時価」=「客観的交換価値」とされています。

  また今後検討される、固定資産税評価における大規模画地の補正率は、市町村の「所要の補正」に委ねるのではなく(著しい特性がある場合は別として)、全国一律の固定資産評価基準に補正率表を設けるべきではないでしょうか。
 
2022/06/01/12:00