(第28号)固定資産税の「課税誤り」(過誤納金)の返還期間(その2)ー国家賠償法適用による20年間(最高裁判決)

 
(投稿・平成27年-見直し・令和7年2月)<100号達成時の閲覧数6位>

 前号(第27号)では、平成4年2月24日浦和(現さいたま)地裁判決により、国家賠償法による賠償が認められたことから、全国の(全てではないですが)市町村で「過誤納金返還要綱」が定められたことを紹介しました。

 
 そして、この方向を一歩進めたのが次の最高裁判決でした。

最高裁(平成22年6月3日)判決

 平成22年6月3日の最高裁判決において「固定資産税の評価・課税誤りによる税額について国家賠償の請求を認める」との判断がなされました。

<平成22年6月3日最高裁(第一小法廷)判決>
「公務員が納税者に対する職務上の法的義務に違背して当該固定資産の価格ないし固定資産税等の税額を過大に決定したときは、これによって損害を被った当該納税者は、地方税法432条1項本文に基づく審査の申出及び同法434条1項に基づく取消訴訟等の手続を経るまでもなく、国家賠償請求を行い得るものと解すべきである。」
「記録によれば、本件倉庫の設計図に『冷蔵室(-30℃)』との記載があることや本件倉庫の外観からもクーリングタワー等の特徴的な設備の存在が容易に確認し得ることがうかがわれ、これらの事情に照らすと、原判決が説示するような理由だけでは、本件倉庫を一般用の倉庫等として評価してその価格を決定したことについて名古屋市長に過失が認められないということもできない。」

 
 この最高裁判決によると、一定の要件の下では、地方税法上の審査請求や取消訴訟を経ることなく、国家賠償請求を行うことができ、固定資産税の過徴収金の返還期間は最高20年となります。

事案の概要-冷凍倉庫の課税誤り

 これは名古屋市のある冷蔵会社が、名古屋市長の冷凍倉庫に対する誤った評価・課税に対して、不服申立手続を経ることなく国家賠償法により国家賠償を請求した事案です。

 この請求に対して、第1審(名古屋地裁)、第2審(名古屋高裁)ともに「国家賠償法に基づいて固定資産税等の過納金相当額を損害とする損害賠償請求を許容することは…妥当でない。」との判断のもと冷蔵会社は棄却されました。

 これに対して、冷蔵会社が最高裁に上告したところ、最高裁は国家賠償法による損害請求を認めて、名古屋高裁への差戻し判決がなされました。

冷凍倉庫の固定資産税評価

 当時、全国的に多くの市町村でも冷凍倉庫に対する同様の評価・課税誤りがあり、名古屋地裁・高裁管轄内でも複数の訴訟が提起されていました。

 実は、全国的に市町村における「冷凍倉庫」の定義がやや曖昧で、評価方針も必ずしも明確でなかったことにより、多くの市町村で評価・課税誤りが発生していました。

 冷凍倉庫は「塩素その他の著しい腐食性を有する液体・気体の影響を受ける」ことから、一般倉庫に比べて経年減点補正率(年数の経過に応じて生じる減価)が厳しく、評価額はおおよそ半額相当になります。ところが、「冷凍倉庫」の定義が明確でなかったことから、一般倉庫並みの評価・課税を行っていた訳です。

過徴収金返還の時効は20年

 この最高裁判決は、名古屋高裁への差戻し判決ではあるものの、その後、平成22年10月名古屋高裁で、最高裁判決どおりの裁判上の和解(解決金800万円)が成立しており、この最高裁判決が確定しています。

 では、いかなる場合に国家賠償の請求が認められるのかですが、これは国家賠償法第1条によります。

「国家賠償法第1条」
「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」

 そして、過徴収金返還の時効は20年になりますが、これは民法第724条によります。

<不法行為による損害賠償請求権の消滅時効>
「民法第724条」
「不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき。
二 不法行為の時から20年間行使しないとき。」

 上記の最高裁判決では「過失とな何か」が明確に定義されていませんが、他の下級審判決等によると「職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことの無いような場合には、国家賠償が認められるような違法になる」と判断されています。

 学者の説明では「この場合の過失とは『手抜き』のこと」ということです。

 つまり、「手抜き」のような過失(職務上通常尽くすべき注意義務を尽くされていない)場合は、国家賠償法の対象になり得るということです。

 ですから、課税当局が「手抜き」により課税誤りがあった(と思われる)ときは、国家賠償法による20年間の損害賠償請求をしていくことも考慮すべきなのです。
 
2022/05/21/10:00
 

 

(第27号)固定資産税の「課税誤り」(過誤納金)の返還期間(その1)-地方税法及び「過誤納金返還要綱」

 
(投稿・平成27年-見直し・令和7年2月)<100号達成時の閲覧数2位>

 今号と次号で固定資産税の「課税誤り」によって納め過ぎた場合、その過徴収金は何年遡って還してもらえるかについて解説します。

 今号では、「地方税法による原則的手続き」と「過誤納金返還要綱による返還」についてです。

地方税法による原則的手続<5年>

 地方税法では、徴収し過ぎた税金(還付金)の請求権は5年で消滅時効になる、つまり5年間遡って還してもらえると定められています。

<還付金の消滅時効>
「地方税法第18条の3」
「地方団体の徴収金の過誤納により生ずる地方団体に対する請求権及びこの法律の規定による還付金に係る地方団体に対する請求権は、その請求をすることができる日から5年を経過したときは、時効により消滅する。」

 ところで、固定資産税の納め過ぎの原因のほとんどは、課税当局の誤り(課税ミス)によるものと考えられますが、課税誤りが発見されるケースは、納税者等からの指摘によることがほとんどです。 

審査の申出から取消訴訟へ

 課税処分に不服がある場合は、裁判所にその処分を取り消してもらうための取消訴訟を提起しなければなりませんが、いきなり裁判所に取消訴訟を提起することはできません。

 まず価格の不服について固定資産評価審査委員会へ「審査の申出」を行い、その決定に不服がある場合に取消訴訟を提起できることになります。

 これが地方税法上の原則的な手続で、その流れは次のとおりです。

<①審査の申出>
「地方税法第432条1項」
「固定資産税の納税者は、価格に不服がある場合には、納税通知書の交付を受けた日後3ヵ月までの間に文書をもって、固定資産評価審査委員会に審査の申出をすることができる。」

<②争訟の方式>
「地方税法第434条1項」
「固定資産税の納税者は、①の決定に不服があるときは、その取消しの訴えを提起することができる。」

<③出訴期間>
「行政事件訴訟法第14条1項」
「取消訴訟は、処分又は裁決があつたことを知つた日から6ヵ月を経過したときは、提起することができない。」

 このように、地方税法による原則的な手続は、裁判所に訴える前に、まず固定資産評価審査委員会に「審査の申出」を行う必要があります。これを「審査請求前置主義」と言います。

「重大な錯誤」による価格等の修正

 地方税法の原則的手続は上記のとおりですが、地方税法では特例規定とも言うべき規定として、「重大な錯誤」がある場合の「固定資産の価格等のすべてを登録した旨の公示の日以後における価格等の決定又は修正」が認められています。

 納税通知書が発送された後3ヵ月間の不服申立期間が経過した後は不服申立が認められませんが、その価格等について、全く問題がないとは言えない場合もあり得るからです。

 そこで、設けられている規定が地方税法第417条1項です。

<重大な錯誤>
「地方税法第417条1項」
「市町村長は、…登録された価格等に重大な錯誤があることを発見した場合においては、直ちに…決定された価格等を修正しなければならない。」

 ここで「重大な錯誤」とは、虚偽の申告又は申請による誤算、固定資産課税台帳に登録する際の誤記、価格等を決定する際の計算単位のとり違い、評価調書における課税客体の明瞭な誤記又はその認定の誤り等、客観的にみて価格等自体の決定に重大な誤りがあると認められるような錯誤を言い、軽微な誤り程度のものは含まれません。

 つまり、このような「重大な錯誤」があれば、原則的な手続(審査の申出等)を経ることなく、市町村長は直ちに修正しなくてはならないのです。

 ここで価格等が修正され、過徴収金がある場合、「重大な錯誤」であれば、その返還期間が10年や20年もあり得ることになります。
※この場合の5年間が地方税法上の還付金で、残りの期間の「還付不能額」を「過誤納補填金」(又は「返還金」)と称します。

 そして、この「重大な錯誤」があった場合の10年か20年の返還を市町村毎に定めているのが、次の「過誤納金返還要綱」になります。

「過誤納金返還要綱」による返還

「過誤納金返還要綱」とは

 Googleで検索すると、「過誤納金返還要綱」を持っている市町村が多数あることが分かります。名称は、「固定資産税過誤納金補填金支払要綱」や「固定資産税過誤納金返還事務取扱要綱」など市町村により様々です。

 ここに、Googleサイトに掲載されているU市の「過誤納金返還要綱」の一部を紹介します。

<U市固定資産税過誤納金返還要綱(一部)>

 
 ここで「還付不能額」とは次のように定義されています。

 「還付不能額」とは「固定資産税の課税客体に係る過誤納金のうち、地方税法(昭和25年法律第226号)第18条の3の規定により還付することができない税相当額」と定義されています。

 また、多くの市町村の「過誤納金返還要綱」での「還付不能額」の算定は、このU市と同じ次の規定になっています。

「地方税法第18条の3第1項の規定により還付することができない最初の年度から遡及して5年度以内を限度とする」(還付金5年+返還金5年の合計10年間)。
「ただし、納税者が所持する領収書又は固定資産税の徴収簿等により確認できるものについては、15年度を限度とする」(還付金5年+返還金15年の合計20年間)。

 つまり、「過誤納金返還要綱」では、一般的には10年間の返還、ただし領収書等が確認できれば20年間の返還を認めるというものです。

10年以上の還付に領収書等は必要か?

 そもそも固定資産税は、所有者の申告を必要とせず(償却資産は申告が必要)、行政が一方的に評価・課税をする「賦課課税」となっています。

 この賦課課税の考え方からすると、「過誤納金返還要綱」で規程している「領収書等がある場合には20年間の返還が可能」との規程は「誤り」であると言わざるを得ません。

 固定資産税の土地と家屋は賦課課税である以上、仮に市町村で「手抜き」同様の誤りがあった場合には、過去の領収書等の所持に関係なく、10年以上遡って返還することを検討すべきです。賦課課税として一方的に評価・課税した以上、誤りを認めるのであれば、その責任を納税者に転嫁するのはおかしいです。

 もっとも、いわゆる「手抜き」があったような固定資産税の評価・課税は、地方税法や市町村の「過誤納金返還要綱」によるのではなく、国家賠償法による20年間(地方税法の5年間の「還付金」と還付不能額としての15年間の「返還金」)の返還が争われるべきである訳です。

最高裁判決の国家賠償法適用

 平成22年6月3日の最高裁判決において、「錯誤がある場合は国家賠償法の請求を認める」との判断がなされましたが、これについては次号(第28号)で解説します。

 2022/5/20/18:00
 

 

(第26号)固定資産税の「課税誤り」は全市町村の97%-潜在的には更に多い

 
(投稿・平成26年6月-見直し・令7年2月)

 今回は、固定資産税の「課税誤」りはどのくらいあるのかです。

固定資産税の「課税誤り」

 では、固定資産税の「課税誤り」は、どのくらいあるのでしょうか。

 これについては、総務省が平成24年8月に発表した「固定資産税及び都市計画税に係る税額修正の状況調査結果」が参考になります。
 これは、平成21年度から23年度を調査対象期間にして、全国の市町村が土地・家屋に係る固定資産税・都市計画税について、どのくらい「課税誤り」等があったかを総務省が調査した結果です。

 
※ 総務省では「税額修正」としていますが、ここでは「課税誤り」としています。

<「課税誤り」の市町村数>

<納税義務者数総数に占める「課税誤り」者数割合>

「課税誤り」の内容

 その調査結果によると、「課税誤り」(税額修正)の主な要因は次のとおりです。

<「課税誤り」の要因> 

 ところで、この調査結果を見てどう思われるでしょうか?

 「全国市町村の97%もの「課税誤り」……そんなに多いのか!」か「納税義務者数の0.2%の「課税誤り」……そんなに少ないのか!」のどちらでしょうか?

 市町村の数は、1件でも「課税誤り」があれば1市町村とカウントされているので、97%というのはある意味頷ける数字です。

 一方、固定資産税は全国の土地、家屋に対して、原則すべてに課税されます。今回の調査対象となった納税義務者数は、土地は約2,900万人、家屋は約3,300万人で、「課税誤り」はその0.2%であったという結果です。

潜在的な「課税誤り」が多い

 固定資産税は、土地、家屋、償却資産からなりますが、土地と家屋は役所が一方的に評価し課税する「賦課課税方式」が採用されています。

 この「賦課課税方式」は、納税者からすると評価や課税の内容が分かりませんし、また評価した市町村の側でも、誤っていることに気づかずに評価・課税し続けているということも多いのです。つまり、潜在的な「評価・課税誤り」が相当存在することが推測できる訳です。

 例えばWEBサイトの検索画面で、『固定資産税・課税誤り・お詫び』とのキーワードを入力して検索しますと、次のような市町村による「評価誤りへの『お詫びサイト』」が検索されます。

 <令和7年2月3日現在ののGoogleChrome検索結果(一面)>

 いかがでしょうか。これは、検索結果の極一部(一面のみ)ですが、常にこのような状態ですので、潜在的な固定資産税の「課税誤り」がいかに多いかということが想像できる訳です。

 ところで、なぜこのようにサイトで検索できるかですが、平成12~13年頃から市長村の情報公開条例が出来ており、自治体行政のミスがあった場合には、必ず住民にお知らせ(お詫び)をすべきとされました。そのための記者発表資料を市町村の記者クラブに配布しますが、新聞に掲載されるときもあれば掲載されないときもあります。しかし、市町村のホームページには必ず掲載されますので、その結果としてサイトで検索できる訳です。

行政側の適正評価等の取組み

 各市町村でも「適正・公正な評価と信頼性の確保」の取組みを行っていますので、ここに、いくつかその取組みをご紹介します。
① 評価事務のIT化と現地調査
 昨今ではIT技術が進歩を遂げ、固定資産評価においても航空写真デジタル化や固定資産GISが導入されています。しかし、基本は地道な現地調査にあることは言うまでもありません。
② 固定資産税の情報開示制度
 課税明細書の送付、縦覧制度の拡充、固定資産課税台帳の閲覧制度など、平成14年度にこれらの制度が法定化されています。
③ 税務職員の人材育成
 職員の異動サイクルが短くなる中で、税務職員の専門性をいかに確保するかは、どこの市町村においても課題になっています。最近では「専門職(専任職)」として、通常の定期異動の対象とされない税務職員が配置されている、あるいは「○○センター」等専門的組織が設置されている市町村が数多くあります。

 しかし残念ながら、各市町村ともにこのような取組みを行っているにも拘わらず、固定資産税の「課税誤り」は一向に後を絶たないのも事実なのです。

「課税誤り」の場合の返還期間

 それでは、仮に「課税誤り」があった場合の納税済みの返金の期間ですが、次のとおりとなります。
① 地方税法上の原則による還付
 地方税法第18条の3(還付金の消滅時効)では、「地方団体の徴収金の過誤納による還付金を請求することができるのは、5年を経過したときは、時効により消滅する(中略)」とありますので、還付期間は5年となります。
② 「過誤納金返還要綱」の「重大な錯誤」による返還
 全国市町村の7割程度が「過誤納金返還要綱」を定めていて、これによると「重大な錯誤」があった場合は、原則として10年、納税領収書等が保管されている場合は20年間の返還も可能との規定があります。
③ 国家賠償の「過失」による返還(20年間)
 国家賠償法の訴訟により「過失」(いわゆる「手抜き」)があった場合には、20年間の返還が可能となります。

※「課税誤り」に関係するテーマは、これからも続きます。
 
2022/5/19/08:00
 

 

(第25号)固定資産税の評価・課税誤りがなぜ発生するのか

 
(投稿・平成25年4月-見直し・令和7年2月)

 今回は、固定資産税の評価・課税誤り(以下単に「課税誤り」とします)がなぜ発生するのかの主たる原因です。

土地評価の「課税誤り」

住宅用地の特例(減額)の見落とし

 土地の評価では、地目認定は現況利用から判断されますので、現地調査を行うことにより外見からも判断できるため、家屋と比べて「課税誤り」は少ないと言えます。

 しかし土地の中でも、住宅用地は200㎡までが6分の1(200㎡を超える部分は3分の1)に減額されるのですが、それが見落とさている場合があります。

 例えば、アパートの隣地が駐車場である場合、その駐車場をアパートの居住者が利用しているのであれば、一体画地として6分の1(3分の1)になるべきですが、雑種地として課税されている場合が見られます。

 このような場合、外観からどのように使用されている土地か判断が難しいため、市町村では、条例で「申告」を義務づけていますが、仮に「申告」がなくても住宅用地であるか否かを市町村が判断しなければならないとされています。

 これは固定資産の土地と家屋は「賦課課税方式」であることから、「申告が無いからといって住宅用地を否定するものではない」との見解が正式なものとなっているからです。

 

非課税項目の見落とし

 土地の非課税としては、国道、県道等の「人的非課税」と、土地の用途によって非課税とされる「物的(用途)非課税」があります。この後者の「物的(用途)非課税」は地方税法で69項目が限定列挙されていますが、この非課税を見落としている「課税誤り」があることが、ときどき報道されています。

 

家屋評価の「課税誤り

「再建築価格方式」の複雑さ

 家屋は土地と比べても「課税誤り」が多いと言えます。

    家屋は新築時に評価されれば、その後は増改築等が無い限り、その評価により経年減価等により在来家屋として評価・課税されていきますので、問題は「新築時の評価に誤りがあるかどうか」ということになります。

  家屋の評価は「再建築価格方式」によりますが、固定資産評価基準(家屋編)や各市町村の固定資産評価事務取扱要領(名称は市町村により異なります)に詳細な基準が定められています。実は、その複雑な基準が、家屋の「課税誤り」の原因となっているとも言えます。

家屋担当者の異動による

 このように家屋の評価は「再建築価格方式」という複雑な評価方法なのですが、肝心な市町村の担当者が4~5年で異動することにより、十分な対応が出来ないという問題もあります。

 当然、総務省や一般財団法人資産評価システム研究センターにより職員向けの研修が行われています。
 また、大都市では家屋専門職が配置されたり、例えば「家屋評価センター」などの組織が設置されている場合もあります。

 しかし、肝心なことは、いかに「家屋評価の簡素化」を実現すかということになります

家屋と償却資産の二重課税

 償却資産は、土地と家屋の「賦課課税方式」と異なり、所有者からの申告に基づいて課税される「申告課税方式」です。

 そこで、「課税誤り」があるとすると、家屋と償却資産の二重課税があり得るということです。

 家屋として評価されているのに償却資産として申告していて、市町村でも気づかずに二重課税がされている状況ですが、この二重課税が意外と多いのです。

※「課税誤り」については重要な問題(テーマ)でありますので、今後折に触れ解説していきます。
 
2022/5/16/18:00
 

 

(第24号)固定資産評価は相続税、不動産取得税、登録免許税でも活用

 
(投稿・平成25年5月-見直し・令和7年1月)<100号達成時の閲覧数10位>

 固定資産税の価格(評価額)は、他の税金の評価でも活用されています。

 では、どのような税金に活用されているのでしょうか。

 固定資産税の価格は、①相続税の「倍率方式による評価」、②相続税の「建物の評価」、③不動産取得税の「取得した不動産の価格(課税標準額)」、④登録免許税の「不動産の課税標準額」の評価に用いられています。

相続税の「倍率方式による評価」

 相続税の宅地の評価方法には、路線価方式と倍率方式がありますが、主に市街化調整区域(非住宅地区)内の宅地の相続税評価では、倍率方式が採用されています。

 この倍率方式とは、固定資産税の価格(評価額)に、地域ごとに決められた倍率(例えば1.1とか1.2など)を乗じて評価する方法です。

 農地や山林、原野もこの倍率方式が採用されています。

 「相続税倍率表」

 倍率地域の相続税(宅地)評価額=固定資産税評価額×倍率

相続税の「建物の評価」

 相続税の建物の評価は、固定資産税の家屋の評価額そのものを用います。つまり倍率は1.0です。

 自用の建物の相続税評価=固定資産税家屋評価額×1.0
 貸家の相続税評価=固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)
 ※借家権割合…東京国税局管内は30%

 ところで、固定資産税家屋の建築費は、総務省で建築専門家等の作業部会を経て、3年に1度決定されています。

 相続税の解説書では、固定資産税の建築費は市場相場の5割とか6割などと説明されていますが、市場相場に対する割合が最初から決められている訳ではありません。一つの「目安」と理解するのが妥当であると思います。

不動産取得税の「取得した価格」

 土地や家屋を購入したり、家屋を建築するなどして不動産を取得したときに、不動産取得税が課税されます。

 不動産取得税=取得した不動産の価格(課税標準)×税率=税額ですが、この「取得した不動産の価格」は固定資産税評価額(正確には「固定資産課税台帳に登録された価格」)とされています。

 不動産取得税の税率は令和9年3月31日までに取得した土地及び住宅の税率は3%となります。また、宅地及び宅地比準土地を取得した場合は、当該土地の価格に1/2の負担調整措置が講じられています。

 宅地の不動産取得税=固定資産税評価額×3%×1/2

 なお、不動産取得税の計算根拠として固定資産税評価額を用いていますが、実は、大都市以外の市町村における固定資産税評価自体を都道府県(県税事務所)が請け負っているのです。(この点については、後日解説していきます。)

登録免許税の「不動産の課税標準額」

 土地や建物の所有権移転登記、建物の所有権保存登記の際に、登録免許税が課税されます。

 土地の所有権移転登記では、「不動産の課税標準額」に1000分の20の税率が乗じられますが、ここでも固定資産税評価額(正確には「固定資産課税台帳に登録された価格」)が用いられます。

 なお、登録免許税も令和8年3月31日まで軽減措置があり、1000分の15とされます。

 土地所有権移転の登録免許税=固定資産税評価額×15/1000

 不動産の売買では、仲介の不動産業者が諸費用として計算し、司法書士が登記手続きを進めるのが一般的ですので、納税している感覚が無いかもしれません。

 なお、新築建物は未だ固定資産課税台帳に登録された価格が無いため、法務局が定める「新築建物課税標準価格認定基準表」により計算されます。なお、この「基準表」は各法務局ごとに定められています。

 
2022/05/16/17:00