(第13号)固定資産税が課税されない非課税制度とは

 
(投稿・平成25年-見直し・令和6年12月)<100号達成時の閲覧数9位>

 固定資産税は、毎年1月1日の固定資産の所有者が納税義務者となり、課税されます。
 しかし、地方税法では、固定資産税が課税されない非課税制度というものが規定されています。

 この非課税とは固定資産税を『課税しない』ということではなく、市町村の意思いかんにかかわらず納税義務を負わせることができない、固定資産税を『課税してはいけない』という法的な課税禁止の制度なのです。

 では、この非課税制度とはどのようなものなのでしょうか。

 非課税制度には、二つの種類があります。

① その根拠を固定資産の所有者の性格に求めている「人的非課税」
② 固定資産それ自体の性格、用途の面に求めているもの「物的非課税」

固定資産税の「人的非課税」

「人的非課税」とは

 これは、国、都道府県、市町村、特別区、これらの組合、財産区及び合併特例区に対しては、固定資産税を課することができないとされています。

<固定資産税の「人的非課税>
※地方税法第348条1項
「市町村は、国並びに都道府県、市町村、特別区、これらの組合、財産区及び合併特例区に対しては、固定資産税を課することができない。」

 これらが所有する固定資産の典型的なものとしては、国道、県道、市町村道あるいは役所の庁舎、公立学校などが該当します。

 これは、国、都道府県、市町村が有する固定資産については、それが、どのような性格を有するものであろうと、また、どのような用途に供されているものであるかを問わず、すべて固定資産を課することができないということを意味します。

「人的非課税」の例外

 「人的非課税」といえども、国や地方公共団体が所有している固定資産が一般の固定資産と異ならないような状態で使用収益されているもの、例えば、公務員の宿舎や民間への貸付土地等は、「人的非課税」扱いはされません。

 この場合は、「国有資産等所在市町村交付金法」により、固定資産税に準ずるものとして、その固定資産所在の市町村等に対して、国有資産等所在市町村(都道府県)交付金が交付されています。

<国有資産等所在市町村交付金法>
第2条(市町村に対する交付金の交付)
「国又は地方公共団体は、毎年度、当該年度の初日の属する年の前年(以下「前年」という。)の3月31日現在において所有する固定資産で次の各号に掲げる固定資産に該当するものにつき、当該固定資産所在の市町村に対して、国有資産等所在市町村交付金(以下「市町村交付金」という。)を交付する。
一.当該固定資産を所有する国又は地方公共団体以外の者が使用している固定資産
二.空港の用に供する固定資産又は国が自衛隊の設置する飛行場若しくは日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第2条第4項(a)の規定に基づき日本国政府若しくは日本国民が使用する飛行場において一般公衆の利用に供する目的で整備し、かつ、専ら一般公衆の利用に供する施設の用に供する固定資産
三.国有林野の管理経営に関する法律第2条第1項の国有林野に係る土地
四.発電所、変電所又は送電施設の用に供する固定資産
五.水道法第3条第8項に規定する水道施設若しくは工業用水道事業法第2条第6項に規定する工業用水道施設のうちダム以外のものの用に供する土地又は水道若しくは工業用水道の用に供するダムの用に供する固定資産で、政令で定めるもの
六.石油の備蓄の確保等に関する法律第29条に規定する国家備蓄施設の用に供する固定資産」

固定資産税の「物的(用途)非課税」

 固定資産税の非課税で注目すべきは、むしろ「物的(用途)非課税」の方です。

「物的(用途)非課税」とは

 「物的(用途)非課税」は、例えば、宗教法人、墓地、公共の用に供する道路(私道)、社会福祉法人、学校法人、国宝、重要文化財等が所有している固定資産の場合です。

 これらの固定資産以外にも、地方税法では「物的(用途)非課税」とされる固定資産が69項目規定されています。
 地方税法第348条2項各号に列挙する固定資産及び同条第4項、第5項、第6項、第7項、第8項、第9項に規定する固定資産に対しては課税することができません。
 またこの規定は、これ以外は認めることが出来ない「限定列挙」となります。

<固定資産税の「物的(用途)非課税」>
※地方税法第348条2項(本項のみ掲載)
「2項.固定資産税は、次に掲げる固定資産に対しては課することができない。ただし、固定資産を有料で借り受けた者がこれを次に掲げる固定資産として使用する場合には、当該固定資産の所有者に課することができる。」

 「物的(用途)非課税」の一覧表(PDF)を掲げますので、クリックして69項目の内容を確認してください。

 <「物的(用途)非課税」一覧表>

 

「物的(用途)非課税」が適用されない場合

① 有料使用の場合の課税
 地方税法第348条2項各号に列挙する資産に該当するものであっても、その固定資産を有料で借り受けた者がこれを同条同項各号の固定資産として使用する場合においては、その固定資産の所有者に固定資産税を課税することができます(地方税法第348条2項ただし書)。

 例えば、国や地方公共団体が私人に地代及び家賃を支払って建物を借りている場合には、官公庁用が使用していても、貸している所有者に課税されます。

② 目的外使用の場合の課税
 法第348条2項各号の固定資産がそれぞれ各号に定められている目的外の目的に使用される場合には、その固定資産税は課税されます。

<目的外使用の場合の課税>
※地方税法第348条第3項
「3項. 市町村は、前項各号に掲げる固定資産を当該各号に掲げる目的以外の目的に使 用する場合においては、前項の規定にかかわらず、これらの固定資産に対し、固定資産税を課する。」

 これは、非課税とすべきかどうかは、単なる名目や形式によることなく、その使用実態に着目すべきものであるからです。

「物的(用途)非課税」には申告が必要

 なお、「物的(用途)非課税」を適用するにあたっては申告が必要とされています。
 この申告制度は、地方税法には規定されておらず、総務省の通知に基づいて、市町村毎の条例により定められています。

<地方税法の施行に関する取扱いについて(市町村税関係)第3章第1節19>
「非課税等特別措置の適用に当たっては、定期的に実地調査を行うこと等により利用状況を的確に把握し、適正な認定を行うこと。また、実地調査時点の現況等を記載した対象資産に関する諸資料の保管、整理等に努め、その的確な把握を行うとともに、利用状況の把握のため必要があると認められる場合には、条例により申告義務を課することが適当であること。」

 そもそもこの非課税制度とは「課税をしてはいけない」制度ですので、課税当局は、この固定資産が「物的(用途)非課税」対象であることが判明した場合は適切な対応を行う必要があります。

 しかし、固定資産税が「賦課課税方式」と言えども、市町村自らがその固定資産(土地、家屋、償却資産)が「物的(用途)非課税」であることを把握するのは困難ですので、条例で申告が義務づけられているのです。

 市町村のホームページには、固定資産税非課税申告書の提出や申告書の案内が掲載されていますので、確認してください。

2022/05/04/12:00
 

 

(第12号)市町村の「評価事務取扱要領」で「所要の補正」による評価が可能

 
(投稿・令和4年6月-見直し・令和6年6月)

 固定資産税を評価し課税する場合の原則は「固定資産評価基準によって決定しなければならない」とされています。

 固定資産税は、ほぼ全国の固定資産(土地は約1億8千万筆。家屋は約6千万棟)が課税対象とされていることから、資産評価の適正化・均衡化を図るため、共通基準として固定資産評価基準が定められ、地方税法388条1項及び403条1項に規定されています。

<固定資産評価基準の根拠規定>
※地方税法388条1項
「総務大臣は固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続き(「以下「固定資産評価基準」)を定め、これを告示しなければならない。」
※地方税法403条1項
「市町村長は固定資産評価基準によって、固定資産税の価格を決定しなければならない。」

 しかし、必ずしも全国すべての土地、家屋が同じ条件下にあるとは限らないこともあるため、市町村長は、状況に応じて必要があるときは、「所要の補正」をし、これを適用することができることになっています。

 この「所要の補正」の適用にあたっては、各市町村の評価担当者が「勝手に」補正を行うのではなく、市町村単位で「所要の補正」の内容を「評価事務取扱要領」(市町村毎に名称が異なる)に定めなければなりません。

土地評価における「所要の補正」

 土地評価では、宅地評価と宅地以外の土地(田・畑、山林)の「所要の補正」があります。

宅地評価における「所要の補正」

 市町村において、「所要の補正」が最も適用されているのは宅地評価においてです。
 なお、宅地の評価は、「市街地宅地評価法(路線価方式)」と「その他の宅地評価法」の2通りになります。

<市街地宅地評価法(路線価方式)の「所要の補正」>
※固定資産評価基準第1章第3節二(一)4
「各筆の宅地の評点数は、路線価を基礎とし、「画地計算法」を適用して付設するものとする。この場合において、市町村長は、宅地の状況に応じ、必要があるときは、「画地計算法」の附表等について、所要の補正をして、これを適用するものとする。」

 次に、全国の市町村で適用されている宅地の「所要の補正」の例を紹介します。

<全国の市町村で採用されている宅地の「所要の補正」(例)>

<その他の宅地評価法の「所要の補正」>
※固定資産評価基準第1章第3節二(二)5
「各筆の宅地の評点数は、標準宅地の単位地積当たり評点数に「宅地の比準表」(別表第4)により求めた各筆の宅地の比準割合を乗じ、これに各筆の地積を乗じて付設するものとする。この場合において、市町村長は、宅地の状況に応じ、必要があるときは、「宅地の比準表」について、所要の補正をして、これを適用するものとする。」

宅地以外の土地における「所要の補正」

 固定資産評価基準では、宅地以外にも田又は畑及び山林についても「所要の補正」が規定されています。

<田又は畑の「所要の補正」>
※固定資産評価基準第1章第2節二の5
「市町村長は、田又は畑の状況に応じ、必要があるときは、「田の比準表」又は「畑の比準表」について、「所要の補正」をして、これを適用するものとする。」

<山林の「所要の補正」>
※固定資産評価基準第1章第7節二の5
「市町村長は、山林の状況に応じ、必要があるときは、「山林の比準表」について、「所要の補正」をして、これを適用するものとする。」

「所要の補正」の「画地計算法」例

 それでは、ここに宅地における「所要の補正」による「画地計算法」の例を紹介します。
 「所要の補正」は市町村毎に異なりますので、ここで紹介する評価方法はあくまでも参考ですので、具体的には該当する市町村に問い合わせてください。

高速道路等に近い土地

 高速道路及び鉄道又は幹線道路に近接する地域にあって、騒音・振動により価格減価が認められる土地に補正率が適用されます。ここでは新幹線の補正率で検討します。

<新幹線に近い土地評価>

高圧線下の土地評価

 土地の一部に高圧線下地となる部分が存在し、かつ高圧線下地が存することにより一つの土地としての価格が減価していると認められる場合。高圧線下地の地積に相当する価格とその他の部分の地積に相当する価格との加重平均によってその画地の価格を求めます。

<高圧線下の土地評価>

地下阻害のある土地評価

 例えば土地の下に地下鉄、地下道、公共下水道が存するため、一定の建築制限等があり価格が減価していると認められる場合に適用されます。地下阻害物までの深度は用途地区により異なりますが、この例は住宅地区で深さが20mまでの範囲とされています。

<地下阻害のある土地評価>

道路より低い土地評価

 土地が道路より1m以上低い位置にあるため、一般の土地に比べ日照や水はけなどの状況が不良であると認められる土地評価です。

<道路より低い土地評価>

水路を介する土地評価

 水路幅員が概ね1mを超える水路(暗きょ敷は除く)を介して正面路線に接する土地は補正率0.90を乗じます。

<水路を介する土地評価>

※ 他にも市町村の固定資産評価事務取扱要領に「所要の補正」による「画地計算法」が定められていますので確認してください。
 
2022/04/30/13:30
 

 

(第11号)土地の「路線価方式」による宅地の「画地計算法」について

 
(投稿・平成25年-見直し・令和6年6月)

 前号(第10号)で、固定資産税の宅地の評価方法は、「市街地宅地評価法(路線価方式)」と「その他の宅地評価法」の2通りがあると説明しましたが、そのうちの「路線価方式」における宅地の「画地計算法」についてみていきます。

 なお今号では、固定資産評価基準に規定されている「画地計算法」のみとし、各市町村で適用されている「所要の補正」による「画地計算法」は次号で紹介します。

 

「画地計算法」の根拠規定

 路線価方式での宅地の評価方法は、固定資産評価基準で規定されています。

<宅地の評価-「市街地宅地評価法」>
※固定遺産評価基準・第1章土地・第3節宅地
「一 宅地の評価
 宅地の評価は、各筆の宅地について評点数を付設し、当該評点数を評点一点当たりの価額に乗じて各筆の宅地の価額を求める方法によるものとする。」
(以下省略)

 ここに、「路線価方式」の流れ図を再掲します。

<路線価方式の流れ>

<宅地の「画地計算法」>

「画地計算法」の基本

 画地計算法では次の(1)奥行価格補正(2)間口狭小補正(3)奥行長大補正が基本となり、ほぼ全ての画地計算で適用されます。

(1)奥行価格補正—奥行の長さと土地の価値

 宅地の価格は、道路からの奥行が長くなるに従って漸減します。また、著しく奥行が短い場合も同様です。

<奥行価格補正の評価例>

(2)間口狭小補正—間口が狭い土地

 宅地の価格は、間口が狭いと使い勝手が悪く価値が減少します。

<間口狭小補正の評価例>

(3)奥行長大補正—間口と奥行のバランス

 奥行が間口に比べて長大な宅地は、画地バランスが劣り、価値が減少します。

<奥行長大補正の評価例>

固定資産評価基準の「画地計算法」

 固定資産評価基準では、宅地の「画地計算法」として、前項の「画地計算法の基本」を含めて、主に次の内容が規定されています。
① 奥行価格補正割合法
② 側方路線影響加算法
③ 二方路線影響加算法
④ 三方又は四方において路線に接する画地の評点算出法
⑤ 不整形地、無道路地、間口狭小な宅地等算出法

不整形地の土地評価

 不整形地は形状から、その土地の利用効率が劣るため減価となります。
 固定資産税の不整形地の評価は、相続税評価と同じく「蔭地割合法」を用います。
 「蔭地割合法」は、まず①整形地を想定して蔭地割合を求め、次に②不整形地補正率を求める方法ですが、次の図①及び②のとおり、かなり複雑な評価方法となります。

<不整形地の土地評価—蔭地割合>

<不整形地の土地評価—不整形地補正率>

無道路地の土地評価

 直接道路に接していない無道路地は、出入りが不便なことや家屋等の建築が困難であること等、その利用上強く制限を受けていることから、一般的にその利用価値が低くなり、その分評価が低くなります。
 評価は、無道路地補正率0.6と通路開設補正率を乗じて求めます。

<無道路地の土地評評価>

角地の土地評価

 角地とは、正面と側方に路線がある画地で、正面路線のみに接する通常の画地より利用効率が優ります。
 評価は、正面路線価に側方路線価の加算率を乗じた評点数を加算して、画地1平米当りの評点数を求めます。

<角地の土地評価>

がけ地を有する土地評価

 土地の一部か又は全部ががけ地等で通常の用途に供することができない土地については、土地の総面積に対するがけ地部分の面積割合に応じた補正率により求めます。

<がけ地を有する土地評価>

※ 次号では「所要の補正」による「画地計算」の例を紹介します。
 
2022/04/29/15
 

 

(第10号)固定資産税の宅地の評価方法(「市街地宅地評価法-路線価方式」)

 
(投稿・平成25年-見直し・令和6年6月)

 今回は、固定資産税宅地の評価方法の解説です。

宅地の評価方法

 固定資産税宅地の評価方法としては、「市街地宅地評価法」(路線価方式)と「その他の宅地評価法」(標準宅地比準方式)の2通りになります。

 そのうち今回は「市街地宅地評価法」(以下「路線価方式」)についての解説です。

<宅地の評価方法>

 
 宅地の評価は、各筆の宅地について評点数を付設し、当該評点数を評点一点当りの価額に乗じて各筆の宅地の価額を求める方法によるとされています。

「路線価方式」とは

 「路線価方式」は、主に都市部の住宅が密集した地域における、土地の固定資産評価に用いられるもので、道路1本ごとに価格(路線価)をつけ、1つの同じ道路に接する土地について、すべて同一路線価から計算する方法です。

 この方式は、短時間に大量の土地評価ができること、評価後の価格に大きなばらつきが出ずに公平な課税が可能であること、地域ごとの評価バランスがとりやすいこと、などの利点があります。

「路線価方式」の流れ

 「路線価方式」のフローチャートは次のとおりです。

<「路線価方式」の流れ>

(1)用途地区の区分

 路線価の付設にあたっては、まず、大きな用途地区(商業地区、住宅地区、工業地区、観光地区)に区分され、さらに必要に応じて細区分されます。
① 商業地区
 商業地区は、主として商業店舗が連続する地区で、繁華街、高度商業地区Ⅰ、高度商業地区Ⅱ、普通商業地区に区分されます。
② 住宅地区
 住宅地区は、主として住宅用の宅地が連続する地区で、高級住宅地区、普通住宅地区、併用住宅地区に区分されます。
③ 工業地区
 工業地区は、主として工業用宅地が連続する地区で、大工場地区、中小工場地区、家内工業地区に区分されます。
④ 観光地区
 観光地区は、温泉街地区、門前仲見世地区、名勝地区、海水浴場地区など、一般の商業地区とは若干性格を異にする地区をいいます。この地区はほとんど適用されていないようです。

(2)状況類似地域の区分

 状況類似地域の区分は、用途地区の中で、街路の状況、公共施設等の接近の状況、家屋の疎密度その他の宅地の利用上の便による条件が「相当に相違する地域」ごとに区分します。
 この状況類似地域が、「路線価方式」における基本的な地域となります。

(3)主要な街路の選定

 状況類似地域内において、最も代表的で評価の拠点としてふさわしいものを「主要な街路」として1カ所選定します。地価公示地及び都道府県地価調査地の所在する街路は「主要な街路」となります。

(4)標準宅地の選定

 主要な街路に沿接する宅地のうちから、奥行、間口、形状等が標準的なものを標準宅地として選定します。

(5)標準宅地の適正な時価の評定

 選定された標準宅地について、地価公示価格、都道府県地価調査価格及び不動産鑑定士による鑑定評価から求められた価格の7割を目途に標準宅地の適正な時価を評定します。

(6)主要な街路の路線価の付設

 標準宅地の適正な時価に基づき1㎡当たりの価格を算出し、その価格を主要な街路の路線価として付設します。

(7)その他の街路の路線価の付設

 主要な路線価を基準として、その他の街路の路線価を付設します。その他の街路の路線価の付設に当たっては、状況類似地域区分の基準(街路の状況、公共施設等の接近の状況、家屋の疎密度その他の宅地の利用上の便)を総合的に考慮します。

(8)画地計算法による各筆の評点数の付設

 「路線価方式」における宅地の評点数は、路線価に基づき「画地計算法」を適用してそれぞれの画地の単位当たりの評点数を算出し、これに各筆の地積を乗じて算出します。

 これらのイメージ図は次のとおりです。

<用途地区と状況類似地域>

<状況類似地域>

 なお、この「路線価方式」による具体的な画地計算は「固定資産評価基準」に基づき行われますが、市町村毎の「固定資産土地評価要領」による「所要の補正」によっても行われています。
※この具体的な内容については、後日解説致します。
 
2022/04/28/12
 

 

(第9号)固定資産税の納税義務者ー所有者課税の原則(登記・登録されている者)

 
(投稿・平成25年-見直し・令和6年12月)

 今回は「固定資産税の納税義務者は誰か」の基本的内容になります。

 なお地方税法第343条(固定資産税の納税義務者等)では、1項~3項が「所有者課税の原則」が規定され、4項~10項では「所有者課税の例外」規定になっていますが、今回は「原則」の1項~3項の説明になります。

固定資産税の納税義務者とは

原則-所有権が登記・登録されている者

<土地又は家屋の納税義務者>
※地方税法第343条1項、2項(中略)
「1項 固定資産税は、固定資産の所有者に課する。
 2項 前項の所有者とは、土地又は家屋については、登記簿又は土地補充課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に所有者として登記又は登録されている者をいう。この場合において、所有者として登記又は登録されている個人が賦課期日前に死亡しているときは、同日において当該土地又は家屋を現に所有している者をいうものとする。」

 固定資産税の納税義務者は、原則として毎年1月1日(賦課期日)の固定資産の所有者であり、土地又は家屋についての所有者とは、登記簿又は土地補充課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に所有者として登記又は登録されている者になります(台帳課税主義)。

 ただし、所有者として登記又は登録されている個人(含む法人)が賦課期日前に死亡しているとき、賦課期日において当該土地又は家屋を「現に所有している者」が固定資産の所有者となります。

 したがって、登記簿に登記されている土地及び家屋については、登記簿上の所有者が納税義務者となり、真実の所有者が誰であるかにかかわらず登記簿上の所有者に対して課税されることになります。
 その意味では、固定資産税の納税義務者は必ずしも真実の所有者とは限りません。

 なお、登記所は、土地又は建物の表示に関する登記をしたとき、所有権等の登記の抹消、登記名義人の氏名・住所等の変更をしたときは、10日以内にその旨を当該土地又は家屋の所在地の市町村長に通知をすることとなっています。

<登記所からの通知等>
※地方税法第382条1項
「1項 登記所は、土地又は建物の表示に関する登記をしたときは、10日以内に、その旨その他総務省令で定める事項を当該土地又は家屋の所在地の市町村長に通知しなければならない。」

2人以上で共有している場合

 土地及び家屋の固定資産が2人以上の者により共有されている場合、各共有者が連帯して納税義務を負います(以下「連帯納税義務者」)。

 連帯納税義務者に対しては、その1人に対して、又は同時若しくは順次に全ての連帯納税義務者に対して、徴収金の全部又は一部についての履行の請求としての納税の告知、督促及び滞納処分をすることができます。

<連帯納税義務>
※地方税法第10条
「地方団体の徴収金を連帯して納付し、又は納入する義務については、民法第436条、第437条及び第441条から第445条までの規定を準用する。」

 一方、税額の確定処分として行う納税の告知、差押えの前提条件としての督促等は、履行の請求としてするものではないため、民法の規定は準用されず、連帯納税義務者各人に対して行わなければ効力は生じないと解されています。

 このようなケースで滞納が発生した場合、納税通知書を送付した者の個人の資産(預金等)についての差押え等の滞納処分を行うことができますが、課税客体となっている土地・家屋に対して滞納処分を行うためには、共有者全員に対して、あらかじめ納税の告知、督促等を行う必要があります。

償却資産は課税台帳に登録されている者

<償却資産の納税義務者>
※地方税法第343条3項
「3項 第1項の所有者とは、償却資産については、償却資産課税台帳に所有者として登録されている者をいう。」

 償却資産については、土地や家屋の場合における登記簿はなく、申告により償却資産課税台帳に登録されますので、その登録された者が所有者とされます。

 この償却資産課税台帳に登録された者は、固定資産税の賦課期日である1月1日現在における実際の所有者と一致する建前となっています。

納税義務者の所有権移転があった場合

 ところで、土地又は家屋の所有者(X)が変更された場合について、XからYに所有権が移転される場合と、Xが死亡した場合、納税義務者はどうなるかという問題です。

 まず、納税義務者XからYへの所有権移転の場合ですが、(1)事例A:賦課期日前にX→Y所有権移転と(2)事例B:賦課期日後にX→Y所有権移転の場合です。

<所有者XからYの所有権移転の場合-事例A及びB>

(1)事例A:賦課期日前にX→Y所有権移転

 まず、賦課期日前にXからYに所有権が移転され、所有権移転登記もされていれば、問題なくYが年度納税義務者となります。

 ところが、所有権が移転されているにもかかわらず、XからYに所有権移転登記がされていない場合です。

 XからYに所有権が移転されているにもかかわらず、賦課期日現在で所有権登記がされていない場合は、Xがその年度の納税義務者となってしまいます。

(2)事例B:賦課期日後にX→Y所有権移転

 賦課期日にはXが納税義務者ですので、年度途中でYに移転しても、その年度はXが納税義務者となります。

 ただし、売買による所有権移転の場合には、不動産業者により「固定資産税の精算」が行われるのが普通で、これにより、契約(決済)日以降の固定資産税はYの負担として、日割計算でその日以降の固定資産税分がYからXに渡されます。

 しかし、この場合でも、法的な納税義務者はXですので、精算時にはXが全納していることを条件とされています。

納税義務者が死亡した場合

 次に(3)事例C:賦課期日前に所有者Xが死亡と(4)事例D:賦課期日後に所有者Xが死亡の場合です。

<所有者Xが死亡している場合-事例C及びD>

(3)事例C:賦課期日前に所有者Xが死亡

 賦課期日前に所有者Xが死亡した場合、相続の遺産分割協議及び所有権移転登記が行われ、賦課期日現在の納税義務者が確定しているときは、その相続人(登記者)が納税義務者で問題ありません。

 ここで、問題となるケースは、所有者Xが死亡し法定相続人が複数いるが、遺産分割もされず不動産登記もXのままになっている場合です。

 この場合には、法定相続人全員が「現に所有している者」となり、法定相続人は「連帯納税義務」を負うことになります。

 この「連帯納税義務」とは、仮に法定相続人が3名であったとした場合、その3名はそれぞれが全員分の納税義務を負うという意味ですので、「自分は3分の1のみ負担する」との主張はできません。

(4)事例D:賦課期日後に所有者Xが死亡

 まず、この場合も法定相続人(3名)間で遺産分割協議と所有権移転登記が行われている場合は、その固定資産を取得し登記名義人となった者が「事実上」の納税義務者となります。

 しかし、事例Cと同じく、法定相続人3名の間で遺産分割協議が成立していない場合にどうなるかということです。

 事例Cの場合は、法定相続人3名の「連帯納税義務」でしたが、この事例Dでは「法定相続分の負担」となります。
 つまり、法定相続人3名は、それぞれ自分の法定相続分(割合)の責任を負うということになります。

 ただし、これはあくまでも法的な扱いですので、事例C及び事例Dでも法定相続人間での話し合いが行われるのが一般的です。

 例えば、正式な遺産分割協議が行われていなくとも、被相続人Xの土地、家屋に居住していた(あるいは居住する)法定相続人がその固定資産税を負担するという取り決めが相続人間で行われる場合が多いと思います。

 ただし、この場合には、最寄りの市町村の固定資産税担当課に「固定資産税納税の届出」(市町村によって名称が異なりますが)を行う必要があります。

<相続による納税義務の承継>
※地方税法第9条2項(中略)
「2項 相続人が2人以上あるときは、各相続人は、被相続人の地方団体の徴収金を民法第900条から第902条までの規定によるその相続分によりあん分して計算した額を納付し、又は納入しなければならない。」

<相続人からの徴収の手続>
※地方税法第9条の2(中略)
「1項 納税者につき相続があつた場合において、その相続人が2人以上あるときは、これらの相続人は、そのうちから書類を受領する代表者を指定することができる。この場合において、その指定をした相続人は、その旨を地方団体の長に届け出なければならない。
2項 地方団体の長は、相続人の一人を指定し、その者を同項に規定する代表者とすることができる。」
 
2022/4/27/10:00