(第15号)固定資産税「減免」の要件と市町村条例

 
(投稿・平成25年-見直し・令和6年7月)<100号達成時の閲覧数4位>

 今回は、前号(第14号)で説明した「減免」について、少し詳しく解説します。

 

固定資産税の「減免」要件

 固定資産税の「減免」の根拠は地方税法第367条になります(再掲)。

※地方税法第367条(固定資産税の「減免」)
「市町村長は、天災その他特別の事情がある場合において固定資産税の減免を必要とすると認める者、貧困に因り生活のため公私の扶助を受ける者その他特別の事情がある者に限り、当該市町村の条例の定めるところにより、固定資産税を減免することができる。」

 地方税法での規定は抽象的な要件を大枠示したもので、具体的要件は市町村の条例で定めることが予定されています。

 そこで市町村では、概ね次の4つの形態により定めているのが一般的です。(④は総務省の例示で追加されています。)

天災その他特別の事情がある場合において減免を必要と認める者
貧困に因り生活のため公私の扶助を受ける者
その他特別の事情がある者(公益上の事由も含む)
公益のために直接専用する固定資産(有料で使用するものを除く)

「減免」の3つの形態

 上記①〜③の具体的解釈は次のとおりとされています。 

① 天災その他特別の事情がある場合において減免を必要と認める者

 震災、風水害、火災その他これらの災害があり、納税義務者がその財産について甚大な被害を被った場合など。

② 貧困に因り生活のため公私の扶助を受ける者

 生活保護の規定による保護等の公的扶助を受けている者、又は公的扶助に準じて考えられるような扶助を受けている者など。

③ その他特別の事情がある者(公益上の事由も含む)

 ①②の事由以外の事由で、客観的にみて担税力を喪失した者、公益上の必要があると認められる者など。

 このように見ますと、他の法的手続きで自ずと明確になる要件と、「特別の事情」のようなその基準が必ずしも明かでない要件が混在しているように思われます。

 では、市町村の条例では、どのように規定されているのでしょうか。

市町村の税条例における「減免」規定

 ここでは、参考として、東京都都税条例、横浜市市税条例及び川崎市市税条例における固定資産税の「減免」規定を紹介します。

※東京都都税条例第134条(固定資産税の「減免」)
1 次の各号のいずれかに該当する固定資産であって、知事において必要があると認めるものに対する固定資産税の納税者に対しては、当該固定資産税を減免する。
一 生活保護法により生活扶助を受ける者の納付すべき固定資産税に係る固定資産
二 公益のために直接専用する固定資産(固定資産の所有者に課する固定資産税にあっては、当該所有者が有料で使用させるものを除く)
三 災害等により、滅失し、又は甚大な損害を受けた固定資産で規則で定めるもの
四 前各号に掲げるものの外、規則で定める固定資産

「<

 

<東京都都税条例施行規則(一部)> 

※横浜市市税条例第62条(固定資産税の「減免」)
1 市長は、次の各号の一に該当する固定資産に対し、特に必要があると認めた場合は、その固定資産税を減免することができる。
(1)災害若しくは天候不順のため、収穫が著しく減じた田畑
(2)生活保護法の規定により、生活扶助を受ける者の納付すべき固定資産税にかかる土地又は家屋
(3)公益上その他の事由により特に減免を必要とする固定資産

<横浜市市税条例施行規則(一部)>

※川崎市市税条例第49条(固定資産税の「減免」)
1 固定資産税は、次の各号の一に該当する固定資産であって、市長において必要があると認める場合において、納税義務者の申請によってこれを減免する。
(1)災害により甚大な損害を受けた固定資産で、特にその必要があると認められるもの
(2)生活保護法の規定により生活扶助を受ける者の所有する固定資産で、特にその必要があると認められたもの
(3)公益のために直接専用する固定資産(有料で使用するものを除く)
(4)前各号のほか、特別の事由があるもの

<川崎市市税条例施行規則(一部)>

 このように、市町村(東京都は都)の条例でも、地方税法同様の抽象的要件が定められている場合がほとんどで、具体的な基準は、市税条例施行規則や要綱に委任しているのが実態です。それと、このように並べて見ますと、抽象的要件ではありますが、各市町村で微妙に異なっているのが分かります。

 固定資産税の「減免」は申請に基づき、個々の納税義務者について十分に実情を調査したうえで、真に納税者の担税力が無いと認められる場合に限って行われるものです。

2022/5/6/14:10
 

 

(第14号)固定資産税の「減免」と「課税免除及び不均一課税」

 
(投稿・平成25年-見直し・令和6年7月)

 前号(第13号)で固定資産税の「非課税」について解説しましたが、今回は「減免」と「課税免除及び不均一課税」についてです。

 
 非課税は市町村がそもそも「課税することが法律で禁止されている」制度でしたが、では、減免はどのような制度なのでしょうか。

「減免」の要件は何か

 「減免」は、市町村で課税権が行使された後に、納税者の申請に基づき、担税力が薄弱なこと(納税資力が充分でない)等の理由により、税額の全部又は一部が免除される制度です。

 そして、この減免規定の趣旨は、徴収猶予や納期限の延長等によっても納税が困難であると認められるような担税力が薄弱な者等に対する救済措置として設けられています。

<固定資産税の減免>
※地方税法第367条
「市町村長は、天災その他特別の事情がある場合において固定資産税の減免を必要とすると認める者、貧困に因り生活のため公私の扶助を受ける者その他特別の事情がある者に限り、当該市町村の条例の定めるところにより、固定資産税を減免することができる。」

 固定資産税の「減免」は、具体的には各市町村の条例により定められていますが、概ね次の4つの形態に基づき定められているのが一般的です。

天災その他特別の事情がある場合において減免を必要と認める者
貧困に因り生活のため公私の扶助を受ける者
その他特別の事情がある者(公益上の事由も含む)
公益のために直接専用する固定資産(有料で使用するものを除く)

 「減免」内容は各市町村の条例で規定されていますので、若干条例内容が異なりますが、上記①~④の基本的事項は適用されています。

「課税免除及び不均一課税」とは

 ところで、地方税法には、「非課税」「減免」のほかに「課税免除及び不均一課税」という制度があります。

<公益等に因る課税免除及び不均一課税>
※地方税法第6条
「1項.地方団体は、公益上その他の事由に因り課税を不適当とする場合においては、課税をしないことができる。
2項.地方団体は、公益上その他の事由に因り必要がある場合においては、不均一の課税をすることができる。」

 この第1項の「課税免除」は「減免」と似ていますが、「減免」は一旦賦課決定されたものに対してですが、「課税免除」は市町村の条例・議会の議決により単独で判断・決定されます。

 また、第2項の「課税免除及び不均一課税」は、政策目的や税負担の均衡等の「公益性」に着目したものです。

 では「課税免除」が適用されている例ですが、「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法」や「地域未来投資促進法」に基づき適用している市町村があります。

 また「不均一課税」では、「国際観光ホテル整備法」や(県税による)「半島振興法における固定資産税の不均一課税」などがあります。
 
2022/5/5/14:00
 

 

(第13号)固定資産税が課税されない非課税制度とは

 
(投稿・平成25年-見直し・令和6年7月)<100号達成時の閲覧数9位>

 固定資産税は、毎年1月1日の固定資産の所有者が納税義務者となり、課税されます。
 しかし、地方税法では、固定資産税が課税されない非課税制度というものが規定されています。

 この非課税とは固定資産税を『課税しない』ということではなく、市町村の意思いかんにかかわらず納税義務を負わせることができない、固定資産税を『課税してはいけない』という法的な課税禁止の制度なのです。

 では、この非課税制度とはどのようなものなのでしょうか。

 非課税制度には、二つの種類があります。

① その根拠を固定資産の所有者の性格に求めている「人的非課税」
② 固定資産それ自体の性格、用途の面に求めているもの「物的非課税」

固定資産税の「人的非課税」

「人的非課税」とは

 これは、国、都道府県、市町村、特別区、これらの組合、財産区及び合併特例区に対しては、固定資産税を課することができないとされています。

<固定資産税の「人的非課税>
※地方税法第348条1項
「市町村は、国並びに都道府県、市町村、特別区、これらの組合、財産区及び合併特例区に対しては、固定資産税を課することができない。」

 これらが所有する固定資産の典型的なものとしては、国道、県道、市町村道あるいは役所の庁舎、公立学校などが該当します。

 これは、国、都道府県、市町村が有する固定資産については、それが、どのような性格を有するものであろうと、また、どのような用途に供されているものであるかを問わず、すべて固定資産を課することができないということを意味します。

「人的非課税」の例外

 「人的非課税」といえども、国や地方公共団体が所有している固定資産が一般の固定資産と異ならないような状態で使用収益されているもの、例えば、公務員の宿舎や民間への貸付土地等は、「人的非課税」扱いはされません。

 この場合は、「国有資産等所在市町村交付金法」により、固定資産税に準ずるものとして、その固定資産所在の市町村等に対して、国有資産等所在市町村(都道府県)交付金が交付されています。

<国有資産等所在市町村交付金法>
第2条(市町村に対する交付金の交付)
「国又は地方公共団体は、毎年度、当該年度の初日の属する年の前年(以下「前年」という。)の3月31日現在において所有する固定資産で次の各号に掲げる固定資産に該当するものにつき、当該固定資産所在の市町村に対して、国有資産等所在市町村交付金(以下「市町村交付金」という。)を交付する。
一.当該固定資産を所有する国又は地方公共団体以外の者が使用している固定資産
二.空港の用に供する固定資産又は国が自衛隊の設置する飛行場若しくは日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第2条第4項(a)の規定に基づき日本国政府若しくは日本国民が使用する飛行場において一般公衆の利用に供する目的で整備し、かつ、専ら一般公衆の利用に供する施設の用に供する固定資産
三.国有林野の管理経営に関する法律第2条第1項の国有林野に係る土地
四.発電所、変電所又は送電施設の用に供する固定資産
五.水道法第3条第8項に規定する水道施設若しくは工業用水道事業法第2条第6項に規定する工業用水道施設のうちダム以外のものの用に供する土地又は水道若しくは工業用水道の用に供するダムの用に供する固定資産で、政令で定めるもの
六.石油の備蓄の確保等に関する法律第29条に規定する国家備蓄施設の用に供する固定資産」

固定資産税の「物的(用途)非課税」

 固定資産税の非課税で注目すべきは、むしろ「物的(用途)非課税」の方です。

「物的(用途)非課税」とは

 「物的(用途)非課税」は、例えば、宗教法人、墓地、公共の用に供する道路(私道)、社会福祉法人、学校法人、国宝、重要文化財等が所有している固定資産の場合です。

 これらの固定資産以外にも、地方税法では「物的(用途)非課税」とされる固定資産が69項目規定されています。
 地方税法第348条2項各号に列挙する固定資産及び同条第4項、第5項、第6項、第7項、第8項、第9項に規定する固定資産に対しては課税することができません。
 またこの規定は、これ以外は認めることが出来ない「限定列挙」となります。

<固定資産税の「物的(用途)非課税」>
※地方税法第348条2項(本項のみ掲載)
「2項.固定資産税は、次に掲げる固定資産に対しては課することができない。ただし、固定資産を有料で借り受けた者がこれを次に掲げる固定資産として使用する場合には、当該固定資産の所有者に課することができる。」

 「物的(用途)非課税」の一覧表(PDF)を掲げますので、クリックして69項目の内容を確認してください。

 <「物的(用途)非課税」一覧表>

 

「物的(用途)非課税」が適用されない場合

① 有料使用の場合の課税
 地方税法第348条2項各号に列挙する資産に該当するものであっても、その固定資産を有料で借り受けた者がこれを同条同項各号の固定資産として使用する場合においては、その固定資産の所有者に固定資産税を課税することができます(地方税法第348条2項ただし書)。

 例えば、国や地方公共団体が私人に地代及び家賃を支払って建物を借りている場合には、官公庁用が使用していても、貸している所有者に課税されます。

② 目的外使用の場合の課税
 法第348条2項各号の固定資産がそれぞれ各号に定められている目的外の目的に使用される場合には、その固定資産税は課税されます。

<目的外使用の場合の課税>
※地方税法第348条第3項
「3項. 市町村は、前項各号に掲げる固定資産を当該各号に掲げる目的以外の目的に使 用する場合においては、前項の規定にかかわらず、これらの固定資産に対し、固定資産税を課する。」

 これは、非課税とすべきかどうかは、単なる名目や形式によることなく、その使用実態に着目すべきものであるからです。

「物的(用途)非課税」には申告が必要

 なお、「物的(用途)非課税」を適用するにあたっては申告が必要とされています。
 この申告制度は、地方税法には規定されておらず、総務省の通知に基づいて、市町村毎の条例により定められています。

<地方税法の施行に関する取扱いについて(市町村税関係)第3章第1節19>
「非課税等特別措置の適用に当たっては、定期的に実地調査を行うこと等により利用状況を的確に把握し、適正な認定を行うこと。また、実地調査時点の現況等を記載した対象資産に関する諸資料の保管、整理等に努め、その的確な把握を行うとともに、利用状況の把握のため必要があると認められる場合には、条例により申告義務を課することが適当であること。」

 そもそもこの非課税制度とは「課税をしてはいけない」制度ですので、課税当局は、この固定資産が「物的(用途)非課税」対象であることが判明した場合は適切な対応を行う必要があります。

 しかし、固定資産税が「賦課課税方式」と言えども、市町村自らがその固定資産(土地、家屋、償却資産)が「物的(用途)非課税」であることを把握するのは困難ですので、条例で申告が義務づけられているのです。

 市町村のホームページには、固定資産税非課税申告書の提出や申告書の案内が掲載されていますので、確認してください。

2022/05/04/12:00
 

 

(第12号)市町村の「評価事務取扱要領」で「所要の補正」による評価が可能

 
(投稿・令和4年6月-見直し・令和6年6月)

 固定資産税を評価し課税する場合の原則は「固定資産評価基準によって決定しなければならない」とされています。

 固定資産税は、ほぼ全国の固定資産(土地は約1億8千万筆。家屋は約6千万棟)が課税対象とされていることから、資産評価の適正化・均衡化を図るため、共通基準として固定資産評価基準が定められ、地方税法388条1項及び403条1項に規定されています。

<固定資産評価基準の根拠規定>
※地方税法388条1項
「総務大臣は固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続き(「以下「固定資産評価基準」)を定め、これを告示しなければならない。」
※地方税法403条1項
「市町村長は固定資産評価基準によって、固定資産税の価格を決定しなければならない。」

 しかし、必ずしも全国すべての土地、家屋が同じ条件下にあるとは限らないこともあるため、市町村長は、状況に応じて必要があるときは、「所要の補正」をし、これを適用することができることになっています。

 この「所要の補正」の適用にあたっては、各市町村の評価担当者が「勝手に」補正を行うのではなく、市町村単位で「所要の補正」の内容を「評価事務取扱要領」(市町村毎に名称が異なる)に定めなければなりません。

土地評価における「所要の補正」

 土地評価では、宅地評価と宅地以外の土地(田・畑、山林)の「所要の補正」があります。

宅地評価における「所要の補正」

 市町村において、「所要の補正」が最も適用されているのは宅地評価においてです。
 なお、宅地の評価は、「市街地宅地評価法(路線価方式)」と「その他の宅地評価法」の2通りになります。

<市街地宅地評価法(路線価方式)の「所要の補正」>
※固定資産評価基準第1章第3節二(一)4
「各筆の宅地の評点数は、路線価を基礎とし、「画地計算法」を適用して付設するものとする。この場合において、市町村長は、宅地の状況に応じ、必要があるときは、「画地計算法」の附表等について、所要の補正をして、これを適用するものとする。」

 次に、全国の市町村で適用されている宅地の「所要の補正」の例を紹介します。

<全国の市町村で採用されている宅地の「所要の補正」(例)>

<その他の宅地評価法の「所要の補正」>
※固定資産評価基準第1章第3節二(二)5
「各筆の宅地の評点数は、標準宅地の単位地積当たり評点数に「宅地の比準表」(別表第4)により求めた各筆の宅地の比準割合を乗じ、これに各筆の地積を乗じて付設するものとする。この場合において、市町村長は、宅地の状況に応じ、必要があるときは、「宅地の比準表」について、所要の補正をして、これを適用するものとする。」

宅地以外の土地における「所要の補正」

 固定資産評価基準では、宅地以外にも田又は畑及び山林についても「所要の補正」が規定されています。

<田又は畑の「所要の補正」>
※固定資産評価基準第1章第2節二の5
「市町村長は、田又は畑の状況に応じ、必要があるときは、「田の比準表」又は「畑の比準表」について、「所要の補正」をして、これを適用するものとする。」

<山林の「所要の補正」>
※固定資産評価基準第1章第7節二の5
「市町村長は、山林の状況に応じ、必要があるときは、「山林の比準表」について、「所要の補正」をして、これを適用するものとする。」

「所要の補正」の「画地計算法」例

 それでは、ここに宅地における「所要の補正」による「画地計算法」の例を紹介します。
 「所要の補正」は市町村毎に異なりますので、ここで紹介する評価方法はあくまでも参考ですので、具体的には該当する市町村に問い合わせてください。

高速道路等に近い土地

 高速道路及び鉄道又は幹線道路に近接する地域にあって、騒音・振動により価格減価が認められる土地に補正率が適用されます。ここでは新幹線の補正率で検討します。

<新幹線に近い土地評価>

高圧線下の土地評価

 土地の一部に高圧線下地となる部分が存在し、かつ高圧線下地が存することにより一つの土地としての価格が減価していると認められる場合。高圧線下地の地積に相当する価格とその他の部分の地積に相当する価格との加重平均によってその画地の価格を求めます。

<高圧線下の土地評価>

地下阻害のある土地評価

 例えば土地の下に地下鉄、地下道、公共下水道が存するため、一定の建築制限等があり価格が減価していると認められる場合に適用されます。地下阻害物までの深度は用途地区により異なりますが、この例は住宅地区で深さが20mまでの範囲とされています。

<地下阻害のある土地評価>

道路より低い土地評価

 土地が道路より1m以上低い位置にあるため、一般の土地に比べ日照や水はけなどの状況が不良であると認められる土地評価です。

<道路より低い土地評価>

水路を介する土地評価

 水路幅員が概ね1mを超える水路(暗きょ敷は除く)を介して正面路線に接する土地は補正率0.90を乗じます。

<水路を介する土地評価>

※ 他にも市町村の固定資産評価事務取扱要領に「所要の補正」による「画地計算法」が定められていますので確認してください。
 
2022/04/30/13:30
 

 

(第11号)土地の「路線価方式」による宅地の「画地計算法」について

 
(投稿・平成25年-見直し・令和6年6月)

 前号(第10号)で、固定資産税の宅地の評価方法は、「市街地宅地評価法(路線価方式)」と「その他の宅地評価法」の2通りがあると説明しましたが、そのうちの「路線価方式」における宅地の「画地計算法」についてみていきます。

 なお今号では、固定資産評価基準に規定されている「画地計算法」のみとし、各市町村で適用されている「所要の補正」による「画地計算法」は次号で紹介します。

 

「画地計算法」の根拠規定

 路線価方式での宅地の評価方法は、固定資産評価基準で規定されています。

<宅地の評価-「市街地宅地評価法」>
※固定遺産評価基準・第1章土地・第3節宅地
「一 宅地の評価
 宅地の評価は、各筆の宅地について評点数を付設し、当該評点数を評点一点当たりの価額に乗じて各筆の宅地の価額を求める方法によるものとする。」
(以下省略)

 ここに、「路線価方式」の流れ図を再掲します。

<路線価方式の流れ>

<宅地の「画地計算法」>

「画地計算法」の基本

 画地計算法では次の(1)奥行価格補正(2)間口狭小補正(3)奥行長大補正が基本となり、ほぼ全ての画地計算で適用されます。

(1)奥行価格補正—奥行の長さと土地の価値

 宅地の価格は、道路からの奥行が長くなるに従って漸減します。また、著しく奥行が短い場合も同様です。

<奥行価格補正の評価例>

(2)間口狭小補正—間口が狭い土地

 宅地の価格は、間口が狭いと使い勝手が悪く価値が減少します。

<間口狭小補正の評価例>

(3)奥行長大補正—間口と奥行のバランス

 奥行が間口に比べて長大な宅地は、画地バランスが劣り、価値が減少します。

<奥行長大補正の評価例>

固定資産評価基準の「画地計算法」

 固定資産評価基準では、宅地の「画地計算法」として、前項の「画地計算法の基本」を含めて、主に次の内容が規定されています。
① 奥行価格補正割合法
② 側方路線影響加算法
③ 二方路線影響加算法
④ 三方又は四方において路線に接する画地の評点算出法
⑤ 不整形地、無道路地、間口狭小な宅地等算出法

不整形地の土地評価

 不整形地は形状から、その土地の利用効率が劣るため減価となります。
 固定資産税の不整形地の評価は、相続税評価と同じく「蔭地割合法」を用います。
 「蔭地割合法」は、まず①整形地を想定して蔭地割合を求め、次に②不整形地補正率を求める方法ですが、次の図①及び②のとおり、かなり複雑な評価方法となります。

<不整形地の土地評価—蔭地割合>

<不整形地の土地評価—不整形地補正率>

無道路地の土地評価

 直接道路に接していない無道路地は、出入りが不便なことや家屋等の建築が困難であること等、その利用上強く制限を受けていることから、一般的にその利用価値が低くなり、その分評価が低くなります。
 評価は、無道路地補正率0.6と通路開設補正率を乗じて求めます。

<無道路地の土地評評価>

角地の土地評価

 角地とは、正面と側方に路線がある画地で、正面路線のみに接する通常の画地より利用効率が優ります。
 評価は、正面路線価に側方路線価の加算率を乗じた評点数を加算して、画地1平米当りの評点数を求めます。

<角地の土地評価>

がけ地を有する土地評価

 土地の一部か又は全部ががけ地等で通常の用途に供することができない土地については、土地の総面積に対するがけ地部分の面積割合に応じた補正率により求めます。

<がけ地を有する土地評価>

※ 次号では「所要の補正」による「画地計算」の例を紹介します。
 
2022/04/29/15