(第8号)土地と家屋は3年毎に評価替え(基準年度と据置年度)

 
(投稿・平成25年-見直し・令和6年12月)

 土地と家屋については、課税標準となる価格の据置制度が設けられており、原則として3年毎に賦課期日(毎年1月1日)現在の価格を評価し、課税台帳に登録されます。

 この年度を基準年度(又は評価替え年度)と言いますが、これは昭和33年から継続している制度で、最近の基準年度は令和6年度ですが、次は令和9年度になります(令和6年時点)。

 また、この3年毎の基準年度と基準年度との間の年度(令和7年度、令和8年度等)は据置年度と言います。

 ここに固定資産税の3年単位のスケジュール図を掲載します。

<固定資産税の3年スケジュール>

<土地又は家屋に対して課する固定資産税の課税標準>
※地方税法第349条第1~3項
「1項 基準年度に係る賦課期日に所在する土地又は家屋に対して課する基準年度の固定資産税の課税標準は、当該土地又は家屋の基準年度の価格で土地課税台帳等又は家屋課税台帳等に登録されたものとする。固定資産税の納税者は、固定資産評価審査委員会の決定に不服があるときは、その取消しの訴えを提起することができる。
2項 基準年度の土地又は家屋に対して課する第二年度の固定資産税の課税標準は、当該土地又は家屋に係る基準年度の固定資産税の課税標準の基礎となつた価格で土地課税台帳等又は家屋課税台帳等に登録されたものとする。
3項 基準年度の土地又は家屋に対して課する第三年度の固定資産税の課税標準は、当該土地又は家屋に係る基準年度の固定資産税の課税標準の基礎となつた価格で土地課税台帳等又は家屋課税台帳等に登録されたものとする。」(中略)

基準(評価替え)年度と据置年度

基準(評価替え)年度における評価

(1)土地の評価について
 土地の評価としては、毎年の地価公示(1月1日現在)と地価調査(7月1日現在)の価格が不動産鑑定士により行われています。

 また固定資産税では、地価公示と地価調査のみではなく、地区毎に標準宅地を選定して、不動産鑑定士による標準宅地の鑑定評価が行われています。

 固定資産税の土地価格は、地価公示地価格、地価調査地価格及び標準宅地の鑑定評価価額の7割とされていますので、そこから3月末までに路線価の付設や各筆(画地)の評価を行うことになります。

(2)家屋の評価について
 家屋は新築以外の評価替えは、3年毎の基準年度に在来家屋の評価を行います。

 在来家屋の計算方法は、前基準年度再建築費評点に築年数の経過年数に応じた経年減点補正率を乗じて求めますが、「再建築費評点補正率」も考慮されます。

 つまり、基本的には新築時の再建築評価額が継続されることになります。例えば、中古ビルの固定資産税評価に間違いがあるのかどうかは、新築時の評価が正しかったのかどうかを検討する必要があります。

<在来家屋の評価方法>

据置年度における評価

 ところで、基準年度だけでなく、据置年度においても次の項目は評価・課税されます。

(1)新規の課税
① 新しく新築された家屋
② 新しく造成された土地

(2)価格の見直し
① 土地の地目の変更
② 家屋の増改築

(3)土地の下落修正
 固定資産税の評価替えは基準年度が原則ですが、平成11年度から、据置年度に地価が下落し固定資産税課税上著しく均衡を失する場合等においては、土地の下落修正を行うことができるようになっています。

 この判断は、市町村長により毎年7月1日現在の都道府県地価調査と不動産鑑定士による鑑定評価等から把握して決めていくことになります。

審査の申出と訴訟の提起

 前号でも説明したとおり、毎年4~5月の初旬に、納税通知書と課税明細書が送付されてきますが、仮に価格に不服がある場合は、納税通知書の送付を受けた後3ヵ月以内に「審査の申出」を行うことができます。

 なお、この「審査の申出」は、原則として、3年毎の基準年度のみに行うことができるものです。

<固定資産課税台帳に登録された価格に関する審査の申出>
※地方税法432条1項
「固定資産税の納税者は、その納付すべき当該年度の固定資産税に係る固定資産について固定資産課税台帳に登録された価格について不服がある場合においては、納税通知書の交付を受けた日後3ヵ月を経過する日まで、固定資産評価審査委員会に審査の申出をすることができる。」(中略)

 固定資産税の価格に不服があり、訴訟に訴えようとする場合には、まずこの不服審査申出を行わなければなりません。これを審査請求前置主義と言います。

 そして、この審査申出の決定(採決)に不服がある場合は、その送達を受けた日の翌日から起算して6ヵ月以内に訴訟を提起することができます。

 この場合の被告は、地方税法434の2により、「審査委員会が当該市町村を代表する」こととされています。

 なお、この審査請求前置主義も必ずしも「絶対」ではなく、国家賠償法に基づく訴訟提起が出来る場合があるとの最高裁の判決(平成22年5月3日)があります。
※ この点については、後日改めて触れることとします。

<争訟の方式>
※地方税法第434条第1項
「固定資産税の納税者は、固定資産評価審査委員会の決定に不服があるときは、その取消しの訴えを提起することができる。」

<抗告訴訟の取扱い>
※地方税法第434条の2
「固定資産評価審査委員会は、固定資産評価審査委員会の行政事件訴訟法第3条第2項に規定する処分又は同条第3項に規定する裁決に係る同法第11条第1項の規定による市町村を被告とする訴訟について、当該市町村を代表する。」

<出訴期間>
※行政事件訴訟法14条1項
「取消訴訟は、処分又は裁決があつたことを知った日から6ヶ月を経過したときは、提起することができない。」
 
2022/4/22/18:30

 

(第7号)固定資産税の年間スケジュール(毎年課税で納期は年4期)

 
(投稿・平成25年-見直し・令和6年12月)

 固定資産税は毎年1月1日(「賦課期日」と言います)の固定資産の所有者に、当該年度(4月から)分が課税されます。固定資産税は「年度課税」ですので、4月から翌年3月の1年間になります。

 ここに固定資産税の年間スケジュールを掲載します。

<固定資産税評価の年間スケジュール>

固定資産税の納期は4期

 固定資産税の納期は4月、7月、12月、2月の4期が「標準納期」として地方税法に定められています。

<固定資産税の納期>
※地方税法第362条
「固定資産税の納期は、4月、7月、12月及び2月中において、当該市町村の条例で定める。但し、特別の事情がある場合においては、これと異なる納期を定めることができる。」

 全国には標準納期ではない納期を条例により定めている市町村も多いのですが、主な市町村の納期を調べたところ、次のようになっています。

<標準納期を採用>
 千葉市、横浜市、川崎市、新潟市、静岡市、名古屋市、京都市、大阪市、神戸市、北九州市、福岡市
<標準納期でない納期を採用>
・4月、7月、9月、12月…札幌市、仙台市、岡山市
・4月、7月、9月、11月…浜松市、広島市
・4月、6月、11月、1月…さいたま市
・5月、7月、9月、12月…相模原市、熊本市
・6月、9月、12月、2月…東京23区

 この標準納期を4月、7月、12月、2月としているのには意味があります。その主な理由は、他の税金の納期と重ならないようにするための配慮にあります。
・ 所得税(申告の場合)の納期…3月
・ 市町村民税の納期…6月、8月、10月、1月
・ 軽自動車税の納期…5月
 このように納期を並べて見ますと、改めて通年で税金の納期があることに思い知らされます。

 ところで、地方税法には、1期のときにそれ以降の納期分を前納した場合は、市町村の条例で報奨金を交付することができるとの規定があります。

<固定資産税に係る納期前の納付>
※地方税法第365条
「1 固定資産税の納税者は、納税通知書に記載された納付額のうち到来した納期に係る納付額に相当する金額の税金を納付しようとする場合においては、当該納期の後の納期に係る納付額に相当する金額の税金をあわせて納付することができる。
2 前項の規定によって固定資産税の納税者が当該納期の後の納期に係る納付額に相当する金額の税金を納付した場合においては、市町村は、当該市町村の条例で定める金額の報奨金をその納税者に交付することができる。」

 かつては、多くの市町村で報奨金(前納)制度を設けていましたが、最近では、ほとんどの市町村で報奨金(前納)制度は行われていません。

固定資産税の納税通知書と課税明細書

 毎年4月~5月(第1期)の上旬に固定資産税の納税通知書と課税明細書が納税義務者あてに送られてきます。

 納税通知書は、市町村が固定資産税を徴収・納付するための基本的な通知です。

 一方、課税明細書は、固定資産税の課税内容を明らかにするためのもので、納税通知書とともに送られてきます。

 「課税内容を明らかに」と言いましても、土地と家屋は、市町村が一方的に評価し課税する「賦課課税方式」ですので、実はこの課税明細書を見ても、どのように評価されてこの評価額になっているのかは、まず分からないのではないかと思います。

固定資産税の縦覧制度と閲覧制度

 固定資産税の価格は、毎年3月31日までに決定され、4月~5月に納税通知書及び課税明細書が送付され、年4回の納期がスタートします。

 そして、毎年4月1日から第1期の納期末まで、「縦覧」という制度が設けられています。

 この縦覧では、土地は土地価格等縦覧帳簿と路線価図を、家屋は家屋価格等縦覧帳簿を縦覧することになります。

 この「縦覧」とは、他の納税者の土地や家屋の評価額を縦覧することにより、自己の評価額の適正さを判断できるようにするために設けられているものです。

 つまり、「縦覧」とは固定資産税の納税者が自分の価格と他の納税者(他人)の価格とを比較するために設けられている制度なのです。

 ところで、「固定資産税の納税者は自分の課税内容については縦覧期間しか見れないのか」と誤解されるのですが、所有者は自己の固定資産課税台帳は「縦覧」に限らず、年間を通じて1年中見ることができます。これが「閲覧」という制度です。

 「閲覧」で見ることができる書類は、自己の固定資産課税台帳、名寄台帳等になります。名寄台帳とは、1筆1棟ごとの課税台帳を所有者ごとにまとめた一覧表のことです。

 また「閲覧」では、納税者本人だけでなく、借地人、借家人も借用物件の課税台帳等を見ることができます。

 「閲覧」の手数料は、無料か有料かは市町村により異なります。ただし、証明書の発行はどの市町村でも有料です。

<固定資産税の縦覧と閲覧>

固定資産税の「不服審査の申出」

 そして、固定資産税に対して不服がある場合、一定期間内に不服の申立て「審査の申出」をすることができます。
 ただし、この「審査の申出」は、原則として3年毎の基準年度に限られています。
(この件については、次号(第8号)でお知らせします。)

 ところで、固定資産税に対する不服と言いいましても、①価格に対する不服と②価格以外の「処分」に対する不服の2通りがあり、①の場合は固定資産評価審査委員会に対して「審査の申出」を、②の場合は市町村長に対して不服審査請求をすることになります。

 ②の場合は、例えば「固定資産税の課税処分などに対する不服がある場合」等ですが、その処分を行った市長村町に審査請求をすることができます。

 固定資産評価審査委員会は市町村ごとに設置され、学識経験を有する者のうちから市町村の議会の同意を得て、市町村長が選任します。

 固定資産税の価格が固定資産評価審査委員会へ「審査の申出」をすることとされている趣旨は、価格が納税者の負担に直接重大な影響を持つものであることから、独立した合議制の機関で慎重に審査させることとされているからです。

 つまり、固定資産税の価格を決定した市町村長以外の第三者が審査することにより、より公平性を担保させようとの仕組みである訳です。

 不服審査の申出期間は、①及び②ともに、納税通知書を受け取った日の翌日から起算して3ヶ月以内までとされています。(審査申出書を郵送される場合は、その郵便の消印の日付が期間内であれば有効です。)

2022/4/20/20:30
 

 

(第6号)固定資産税土地の負担調整措置の仕組み(小規模住宅用地の場合)

 
(投稿・平成25年ー見直し・令和6年6月)

 今号は、第4号、第5号に続いて土地の負担調整措置についてです。

 第4号は、商業地、更地の非住宅用地の負担調整措置の説明でしたが、第5号と今回は住宅用地(小規模住宅用地)の負担調整措置の仕組みです。

 その前に住宅用地とはどういうものかですが、第5号「固定資産税土地の住宅用地(小規模住宅用地・一般住宅用地)とは何か」で説明していますのでご覧ください。

 

住宅用地負担調整措置の歴史

 土地の負担調整措置の仕組みは、平成9年度からスタートしています。

 宅地の負担調整措置は、住宅用地と非住宅用地(商業地、更地)の2種類ありますが、非住宅用地(商業地、更地)については第4号で説明した仕組みが現在までそのまま続いています。

 ところが、住宅用地(小規模住宅用地、一般住宅用地ともに)の負担調整措置の仕組みは平成26年度に変更された経緯があります。

 どの部分が変更されたかについては、次の図のとおりですが、平成9年度から25年度まであった「据置ゾーン」が平成26年度以降は無くなっているのです。

<住宅用地減額特例の歴史>

小規模住宅用地の負担調整措置

 それでは、まず平成25年度までの負担調整措置の仕組みです。

<平成25年度までの負担調整措置>

<平成26年度以降の負担調整措置>

 ご覧のように、平成26年度以降は「据置ゾーン」が無くなっています。

 税率は、固定資産税が標準税率1.4%、都市計画税が制限税率(上限)0.3%ですが、問題は課税標準額をどのように算出するかです。

 まず、その年の課税標準額を求めるには、本則課税標準額に対する前年度の課税標準額の割合(これを負担水準と言います)を求め、その割合に応じて対応が変わってきます。つまり、前年度の課税標準額が、本則課税標準額のどこまで達しているかということです。

 固定資産税の価格は地価公示価格の7割です。非住宅用地(商業地、更地)の場合は、価格=本則課税標準額でしたが、住宅用地の場合はそうなっておらずに、200㎡までが小規模住宅用地で1/6,200㎡を超える部分が1/3を乗じたものが本則課税標準額になります。すなわち価格が本則課税標準額と一致しません。

負担の均衡化が進んできた

 平成26年度以降は、90%以上の「据置ゾーン」が廃止され、本則課税標準額一本に合わせていくことになっています。

 つまり、「前年度課税標準額+本則課税標準額の5%」が本則課税標準額を上回る場合は本則課税標準額まで引下げ、下回る場合は本則課税標準額に達するまで5%を上げていくことになります。

 平成26年度以降このような仕組みに変わってきましたが、この背景としては、住宅用地の負担の均衡化がかなり進んできたということがあります。住宅用地はようやくゴールの姿が見えてきたとも言えます。

2022/4/18/21:00
 

 

(第5号)固定資産税土地の住宅用地(小規模住宅用地・一般住宅用地)とは何か

 
(投稿・平成25年ー見直し・令和6年6月)

 固定資産税では、土地が住宅用地であれば、200㎡までの評価額が6分の1、200㎡を越える部分は3分の1に減額されます。そして、その住宅用地の減額特例の適用には、市町村の条例により申告が求められています。

 それでは、まず住宅用地の減額特例とは何かということです。

住宅用地の減額特例とは

住宅用地とはどのようなものか

 そもそも住宅用地とは、居住のための建物が存在し、居住の目的を果たすために使用されている一画地の土地をいいます。

 したがって、賦課期日(1月1日)において新たに住宅の建築が予定されている土地、又は住宅が建築中の土地は住宅用地とはなりません。

 ただし、従来の所有者が同一の敷地に住宅の建替えを行うときに、一定の要件を満たすと認められる土地は、住宅用地として取り扱われます。

200㎡までが1/6、200㎡を越える部分が1/3

 住宅用地のうち200㎡以下は、固定資産税の本則課税標準額が1/6になります。これを小規模住宅用地の特例と言います。
 また、面積が200㎡を超える部分は一般住宅用地と言い、本則課税標準額は1/3になります。

 例えば、300㎡の土地に居住用の家屋(専用住宅)が建っている場合は、200㎡までが小規模住宅用地の1/6、残りの100㎡が一般住宅用地の1/3となります。
(なお、一般住宅用地1/3の上限は家屋床面積の10倍までとされています。この図の例では床面積150㎡×10=1500で上限が1500㎡となります。)

<住宅用地の減額特例>

 土地の固定資産税の仕組みは複雑で、本則課税標準額(A)のほかに前年度課税標準額(B)と(今年度)課税標準額という用語が出てきます。(今年度)課税標準額は、今年度の税額を計算するための基礎となる額ですが、住宅用地の負担調整措置によりBがAのどこまで到達しているかの負担水準により決まってきます。
 小規模住宅用地の負担調整措置の仕組みは、次号(6号)で説明します。

アパートは部屋ごとに適用

 住宅用地の特例は、アパートの場合は部屋ごとに特例率が適用されます。

 それは、1棟の家屋内に世帯が独立して生活を営む部分が2以上の場合は、区画された部分がそれぞれ住居となるからです。

 例えば、500㎡の土地に8戸(60㎡/戸)の2階建てアパートがあるとします。この場合は、1戸ごとに200㎡相当が1/6になりますので、8戸×200㎡=1,600㎡までが1/6になり、この例の500㎡すべてが1/6になります。

<アパートの住宅用地の減額特例>

 この仕組みによれば、仮に自宅以外の土地を所有している場合、そこをアパート敷地にすることにより土地の減価額が大きくなる訳です。

住宅・非住宅混合のビルの特例

 それでは、住宅と店舗・事務所等が混在している複合ビルの敷地では小規模住宅用地はどうなるのでしょうか。

 その場合の小規模住宅用地特例は次のようになります。

<住宅・非住宅混合の建物敷地>

 ここで注目すべき点ですが、例えば2階建て家屋で店舗を経営していて、1階部分を店舗に、2階部分を居住用にしている場合です。
 この表の「上記以外の住宅用地」からしますと、建物の2分の1を居住用にしていれば、その土地は100%住宅用地となるのです。

住宅用地は申告が義務づけ

 ところで、(小規模)住宅用地は、役所が把握しきれないことから、土地所有者に住宅用地かどうかを申告させることができるとされています。(地方税法384条1項)

<住宅用地の申告>
※地方税法384条1項
「市町村長は、住宅用地の所有者に、当該市町村の条例の定めるところによつて、当該年度に係る賦課期日現在における当該住宅用地について、その所在及び面積、その上に存する家屋の床面積及び用途、その上に存する住居の数その他固定資産税の賦課徴収に関し必要な事項を申告させることができる。」

 この地方税法の規定では「申告させることができる」ですが、ほとんどの市町村では条例により申告が義務づけられているのです。

※ 参考—Y市市税条例
「住宅用地の所有者は、毎年1月1日現在におけるその住宅用地について、次に掲げる事項を、1月31日までに市長に申告しなければならない。…
(1)住宅用地の所有者の住所及び氏名または名称
(2)住宅用地の所在及び地積
(3)住宅用地の上に存する家屋の所在、所有者、種類、構造、床面積、居住の用に供する部分の床面積及び居住の用に供した年月日並びにその上に存する住居の数
(4)その他市長が必要と認める事項

 それでは「条例により申告が義務づけられているにも拘わらず、申告がされていない住宅用地」はどうなるのでしょうか。

 実は、この問題が住宅用地における最大の問題でして、詳しくは今後の号で解説していきますが、結論としては、「住宅用地は申告が無くても減額特例は適用される」のです。
 
2922/4/17/16:00
 

 

(第4号)固定資産税土地の負担調整措置の仕組み(非住宅用地の場合)

 
(投稿・平成25年-見直し・令和6年6月)

 今回から5号、6号と続けて固定資産税土地の「負担調整措置の仕組み」についてお知らせします。

 実は「固定資産税は複雑で分かりづらい」原因は、第2号でお知らせした「賦課課税方式」とともに、土地の場合は「負担調整措置の仕組」みにあります。

 では、土地の負担調整措置とはどのようなものなのでしょうか。

固定資産税の負担調整措置とは

 土地の固定資産税は、本来は、価格に税率(一般的には固定資産税1.4%、都市計画税0.3%)を乗じて求めるのですが、現状はそのようにはなってはいません。

 そこで何故、負担調整措置という仕組みが出来たのかということですが。

 平成元年に土地基本法が制定され、公的土地評価(時価、地価公示価格、相続税価格、固定資産税価格)の一元化が図られました。この詳細は今後改めて説明しますが、この公的土地評価一元化により、平成6年度に「固定資産税価格は地価公示価格の7割とする」ことが決められました。

 しかし、平成6年度に地価公示価格の7割を固定資産税の価格とすることにしたものの、それまでは実質的に固定資産税価格は地価公示価格の10%〜20%程度であったものを一気に上げることが出来ないことから、少しずつ上げていくという経過的措置が採用されました。

 このいわゆる経過的措置が負担調整措置の始まりであった訳です。そして、経過的措置といっても現在(令和6年)まで一貫してこの仕組みは続いています。

 ところで、この「負担調整措置の仕組み」には、宅地の場合は2種類あります。

 宅地の「負担調整措置の仕組み」として、住宅用地と非住宅用地(商業地、更地等)の2種類ありますが、今回は非住宅用地(商業地、更地等)の負担調整措置の仕組みから説明していきます。

非住宅用地(商業地、更地)の負担調整

 上記のとおり、平成6年度に土地の固定資産税価格を地価公示価格の70%としましたが、それ以前は地価公示価格の10~20%であったものをいきなり70%にする訳にはいかず、徐々に引き上げる方式にしました。その具体的な仕組みは平成9年度に導入されました。

<負担調整措置の仕組み(非住宅用地)>

 この図のとおり、固定資産税の税額の元になる課税標準額は少しずつ上がっています。

 本来は、固定資産税の価格と課税標準額は一致すべきものですが、緩衝措置ともいうべき仕組みを設けたため、この価格と課税標準額が乖離する状況となり複雑な仕組みとなっているのです。

 非住宅用地(商業地、更地)の固定資産税(土地)の価格(本則課税標準額)は、地価公示価格の70%となり、これが負担水準では100%となります。

 しかし、これでは以前との乖離が大きいため、更にその70%を非住宅用地の上限とされており、負担水準がこの70%を上回った場合は70%まで引下げることになり、この負担水準70%~100%が「引下げゾーン」となります。つまり、非住宅用地では、地価公示価格のレベルからすると70%×70%で49%が上限となります。

 また、負担水準の60%~70%までを「据置きゾーン」とされています。

 そして、負担水準が60%に達しない場合は、今年度課税標準額を「前年度課税標準額+本則課税標準額×5%(引上げゾーン)」とします。

負担水準と負担調整措置の計算例

 つまり、非住宅用地の仕組みでは、前年度の課税標準額の到達点に応じて「引下げ」「据置き」「引上げ」の3つのゾーンに振り分けられることになります。

 ここに、非住宅用地の負担水準と負担調整措置の下図の例で、今年度課税標準額を計算します。

<負担水準と負担調整措置(非住宅用地)>

 この図で、例えば地価公示価格を200,000円/㎡とすると、その7割が価格(本則課税標準額)(A)で140,000円/㎡となります。

 そして、前年度課税標準額(B)を仮に60,000円/㎡とします。

 負担調整措置では、今年度の課税標準額を決める場合には、前年度の課税標準額(B)が本則課税標準額(A)のどこまで到達しているのか、という負担水準(B/A)を求めます。

 この場合の負担水準(B/A)は、60,000/140,000=42.8%となり「60%未満」に入ることになります。そうなりますと「B+(A×5%)」となり、60,000円+(140,000×5%)7,000円=67,000(今年度課税標準額)となります。

 如何でしょうか、固定資産税土地の評価額は、このように複雑になっているのです。

※ 住宅用地の負担調整措置の仕組みは第5号及び6号で説明します。

2022/04/16/18:00