(第10号)固定資産税の宅地の評価方法(「市街地宅地評価法-路線価方式」)

 
(投稿・平成25年-見直し・令和6年6月)

 今回は、固定資産税宅地の評価方法の解説です。

宅地の評価方法

 固定資産税宅地の評価方法としては、「市街地宅地評価法」(路線価方式)と「その他の宅地評価法」(標準宅地比準方式)の2通りになります。

 そのうち今回は「市街地宅地評価法」(以下「路線価方式」)についての解説です。

<宅地の評価方法>

 
 宅地の評価は、各筆の宅地について評点数を付設し、当該評点数を評点一点当りの価額に乗じて各筆の宅地の価額を求める方法によるとされています。

「路線価方式」とは

 「路線価方式」は、主に都市部の住宅が密集した地域における、土地の固定資産評価に用いられるもので、道路1本ごとに価格(路線価)をつけ、1つの同じ道路に接する土地について、すべて同一路線価から計算する方法です。

 この方式は、短時間に大量の土地評価ができること、評価後の価格に大きなばらつきが出ずに公平な課税が可能であること、地域ごとの評価バランスがとりやすいこと、などの利点があります。

「路線価方式」の流れ

 「路線価方式」のフローチャートは次のとおりです。

<「路線価方式」の流れ>

(1)用途地区の区分

 路線価の付設にあたっては、まず、大きな用途地区(商業地区、住宅地区、工業地区、観光地区)に区分され、さらに必要に応じて細区分されます。
① 商業地区
 商業地区は、主として商業店舗が連続する地区で、繁華街、高度商業地区Ⅰ、高度商業地区Ⅱ、普通商業地区に区分されます。
② 住宅地区
 住宅地区は、主として住宅用の宅地が連続する地区で、高級住宅地区、普通住宅地区、併用住宅地区に区分されます。
③ 工業地区
 工業地区は、主として工業用宅地が連続する地区で、大工場地区、中小工場地区、家内工業地区に区分されます。
④ 観光地区
 観光地区は、温泉街地区、門前仲見世地区、名勝地区、海水浴場地区など、一般の商業地区とは若干性格を異にする地区をいいます。この地区はほとんど適用されていないようです。

(2)状況類似地域の区分

 状況類似地域の区分は、用途地区の中で、街路の状況、公共施設等の接近の状況、家屋の疎密度その他の宅地の利用上の便による条件が「相当に相違する地域」ごとに区分します。
 この状況類似地域が、「路線価方式」における基本的な地域となります。

(3)主要な街路の選定

 状況類似地域内において、最も代表的で評価の拠点としてふさわしいものを「主要な街路」として1カ所選定します。地価公示地及び都道府県地価調査地の所在する街路は「主要な街路」となります。

(4)標準宅地の選定

 主要な街路に沿接する宅地のうちから、奥行、間口、形状等が標準的なものを標準宅地として選定します。

(5)標準宅地の適正な時価の評定

 選定された標準宅地について、地価公示価格、都道府県地価調査価格及び不動産鑑定士による鑑定評価から求められた価格の7割を目途に標準宅地の適正な時価を評定します。

(6)主要な街路の路線価の付設

 標準宅地の適正な時価に基づき1㎡当たりの価格を算出し、その価格を主要な街路の路線価として付設します。

(7)その他の街路の路線価の付設

 主要な路線価を基準として、その他の街路の路線価を付設します。その他の街路の路線価の付設に当たっては、状況類似地域区分の基準(街路の状況、公共施設等の接近の状況、家屋の疎密度その他の宅地の利用上の便)を総合的に考慮します。

(8)画地計算法による各筆の評点数の付設

 「路線価方式」における宅地の評点数は、路線価に基づき「画地計算法」を適用してそれぞれの画地の単位当たりの評点数を算出し、これに各筆の地積を乗じて算出します。

 これらのイメージ図は次のとおりです。

<用途地区と状況類似地域>

<状況類似地域>

 なお、この「路線価方式」による具体的な画地計算は「固定資産評価基準」に基づき行われますが、市町村毎の「固定資産土地評価要領」による「所要の補正」によっても行われています。
※この具体的な内容については、後日解説致します。
 
2022/04/28/12
 

 

(第9号)固定資産税の納税義務者ー所有者課税の原則(登記・登録されている者)

 
(投稿・平成25年-見直し・令和6年6月)

 今回は「固定資産税の納税義務者は誰か」の基本的内容になります。

 なお地方税法第343条(固定資産税の納税義務者等)では、1項~3項が「所有者課税の原則」が規定され、4項~10項では「所有者課税の例外」規定になっていますが、今回は「原則」の1項~3項の説明になります。

固定資産税の納税義務者とは

原則-所有権が登記・登録されている者

<土地又は家屋の納税義務者>
※地方税法第343条1項、2項(中略)
「1項 固定資産税は、固定資産の所有者に課する。
2項 前項の所有者とは、土地又は家屋については、登記簿又は土地補充課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に所有者として登記又は登録されている者をいう。この場合において、所有者として登記又は登録されている個人が賦課期日前に死亡しているときは、同日において当該土地又は家屋を現に所有している者をいうものとする。」

 固定資産税の納税義務者は、原則として毎年1月1日(賦課期日)の固定資産の所有者であり、土地又は家屋についての所有者とは、登記簿又は土地補充課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に所有者として登記又は登録されている者になります(台帳課税主義)。

 ただし、所有者として登記又は登録されている個人(含む法人)が賦課期日前に死亡しているとき、賦課期日において当該土地又は家屋を「現に所有している者」が固定資産の所有者となります。

 したがって、登記簿に登記されている土地及び家屋については、登記簿上の所有者が納税義務者となり、真実の所有者が誰であるかにかかわらず登記簿上の所有者に対して課税されることになります。
 その意味では、固定資産税の納税義務者は必ずしも真実の所有者とは限りません。

 なお、登記所は、土地又は建物の表示に関する登記をしたとき、所有権等の登記の抹消、登記名義人の氏名・住所等の変更をしたときは、10日以内にその旨を当該土地又は家屋の所在地の市町村長に通知をすることとなっています。

<登記所からの通知等>
※地方税法第382条1項
「1項 登記所は、土地又は建物の表示に関する登記をしたときは、10日以内に、その旨その他総務省令で定める事項を当該土地又は家屋の所在地の市町村長に通知しなければならない。

2人以上で共有している場合

 土地及び家屋の固定資産が2人以上の者により共有されている場合、各共有者が連帯して納税義務を負います(以下「連帯納税義務者」)。

 連帯納税義務者に対しては、その1人に対して、又は同時若しくは順次に全ての連帯納税義務者に対して、徴収金の全部又は一部についての履行の請求としての納税の告知、督促及び滞納処分をすることができます。

<連帯納税義務>
※地方税法第10条
「地方団体の徴収金を連帯して納付し、又は納入する義務については、民法第436条、第437条及び第441条から第445条までの規定を準用する。」

 一方、税額の確定処分として行う納税の告知、差押えの前提条件としての督促等は、履行の請求としてするものではないため、民法の規定は準用されず、連帯納税義務者各人に対して行わなければ効力は生じないと解されています。

 このようなケースで滞納が発生した場合、納税通知書を送付した者の個人の資産(預金等)についての差押え等の滞納処分を行うことができますが、課税客体となっている土地・家屋に対して滞納処分を行うためには、共有者全員に対して、あらかじめ納税の告知、督促等を行う必要があります。

償却資産は課税台帳に登録されている者

<償却資産の納税義務者>
※地方税法第343条3項
「3項 第1項の所有者とは、償却資産については、償却資産課税台帳に所有者として登録されている者をいう。」

 償却資産については、土地や家屋の場合における登記簿はなく、申告により償却資産課税台帳に登録されますので、その登録された者が所有者とされます。

 この償却資産課税台帳に登録された者は、固定資産税の賦課期日である1月1日現在における実際の所有者と一致する建前となっています。

納税義務者の所有権移転があった場合

 ところで、土地又は家屋の所有者(X)が変更された場合について、XからYに所有権が移転される場合と、Xが死亡した場合、納税義務者はどうなるかという問題です。

 まず、納税義務者XからYへの所有権移転の場合ですが、(1)事例A:賦課期日前にX→Y所有権移転と(2)事例B:賦課期日後にX→Y所有権移転の場合です。

<所有者XからYの所有権移転の場合-事例A及びB>

(1)事例A:賦課期日前にX→Y所有権移転

 まず、賦課期日前にXからYに所有権が移転され、所有権移転登記もされていれば、問題なくYが年度納税義務者となります。

 ところが、所有権が移転されているにもかかわらず、XからYに所有権移転登記がされていない場合です。

 XからYに所有権が移転されているにもかかわらず、賦課期日現在で所有権登記がされていない場合は、Xがその年度の納税義務者となってしまいます。

(2)事例B:賦課期日後にX→Y所有権移転

 賦課期日にはXが納税義務者ですので、年度途中でYに移転しても、その年度はXが納税義務者となります。

 ただし、売買による所有権移転の場合には、不動産業者により「固定資産税の精算」が行われるのが普通で、これにより、契約(決済)日以降の固定資産税はYの負担として、日割計算でその日以降の固定資産税分がYからXに渡されます。

 しかし、この場合でも、法的な納税義務者はXですので、精算時にはXが全納していることを条件とされています。

納税義務者が死亡した場合

 次に(3)事例C:賦課期日前に所有者Xが死亡と(4)事例D:賦課期日後に所有者Xが死亡の場合です。

<所有者Xが死亡している場合-事例C及びD>

(3)事例C:賦課期日前に所有者Xが死亡

 賦課期日前に所有者Xが死亡した場合、相続の遺産分割協議及び所有権移転登記が行われ、賦課期日現在の納税義務者が確定しているときは、その相続人(登記者)が納税義務者で問題ありません。

 ここで、問題となるケースは、所有者Xが死亡し法定相続人が複数いるが、遺産分割もされず不動産登記もXのままになっている場合です。

 この場合には、法定相続人全員が「現に所有している者」となり、法定相続人は「連帯納税義務」を負うことになります。

 この「連帯納税義務」とは、仮に法定相続人が3名であったとした場合、その3名はそれぞれが全員分の納税義務を負うという意味ですので、「自分は3分の1のみ負担する」との主張はできません。

(4)事例D:賦課期日後に所有者Xが死亡

 まず、この場合も法定相続人(3名)間で遺産分割協議と所有権移転登記が行われている場合は、その固定資産を取得し登記名義人となった者が「事実上」の納税義務者となります。

 しかし、事例Cと同じく、法定相続人3名の間で遺産分割協議が成立していない場合にどうなるかということです。

 事例Cの場合は、法定相続人3名の「連帯納税義務」でしたが、この事例Dでは「法定相続分の負担」となります。
 つまり、法定相続人3名は、それぞれ自分の法定相続分(割合)の責任を負うということになります。

 ただし、これはあくまでも法的な扱いですので、事例C及び事例Dでも法定相続人間での話し合いが行われるのが一般的です。

 例えば、正式な遺産分割協議が行われていなくとも、被相続人Xの土地、家屋に居住していた(あるいは居住する)法定相続人がその固定資産税を負担するという取り決めが相続人間で行われる場合が多いと思います。

 ただし、この場合には、最寄りの市町村の固定資産税担当課に「固定資産税納税の届出」(市町村によって名称が異なりますが)を行う必要があります。

<相続による納税義務の承継>
※地方税法第9条2項(中略)
「2項 相続人が2人以上あるときは、各相続人は、被相続人の地方団体の徴収金を民法第900条から第902条までの規定によるその相続分によりあん分して計算した額を納付し、又は納入しなければならない。」

<相続人からの徴収の手続>
※地方税法第9条の2(中略)
「1項 納税者につき相続があつた場合において、その相続人が2人以上あるときは、これらの相続人は、そのうちから書類を受領する代表者を指定することができる。この場合において、その指定をした相続人は、その旨を地方団体の長に届け出なければならない。
2項 地方団体の長は、相続人の一人を指定し、その者を同項に規定する代表者とすることができる。」
 
2022/4/27/10:00
 

 

(第8号)土地と家屋は3年毎に評価替え(基準年度と据置年度)

 
(投稿・平成25年-見直し・令和6年6月)

 土地と家屋については、課税標準となる価格の据置制度が設けられており、原則として3年毎ごとに賦課期日(毎年1月1日)現在の価格を評価し、課税台帳に登録されます。

 この年度を基準年度(又は評価替え年度)と言いますが、これは昭和33年から継続している制度で、最近の基準年度は令和6年度ですが、次は令和9年度になります(令和6年時点)。

 また、この3年毎の基準年度と基準年度との間の年度(令和7年度、令和8年度等)は据置年度と言います。

 ここに固定資産税の3年単位のスケジュール図を掲載します。

<固定資産税の3年スケジュール>

<土地又は家屋に対して課する固定資産税の課税標準>
※地方税法第349条第1~3項
「1項 基準年度に係る賦課期日に所在する土地又は家屋に対して課する基準年度の固定資産税の課税標準は、当該土地又は家屋の基準年度の価格で土地課税台帳等又は家屋課税台帳等に登録されたものとする。固定資産税の納税者は、固定資産評価審査委員会の決定に不服があるときは、その取消しの訴えを提起することができる。
2項 基準年度の土地又は家屋に対して課する第二年度の固定資産税の課税標準は、当該土地又は家屋に係る基準年度の固定資産税の課税標準の基礎となつた価格で土地課税台帳等又は家屋課税台帳等に登録されたものとする。
3項 基準年度の土地又は家屋に対して課する第三年度の固定資産税の課税標準は、当該土地又は家屋に係る基準年度の固定資産税の課税標準の基礎となつた価格で土地課税台帳等又は家屋課税台帳等に登録されたものとする。」(中略)

基準(評価替え)年度と据置年度

基準(評価替え)年度における評価

(1)土地の評価について
 土地の評価としては、毎年の地価公示(1月1日現在)と地価調査(7月1日現在)の価格が不動産鑑定士により行われています。

 また固定資産税では、地価公示と地価調査のみではなく、地区毎に標準宅地を選定して、不動産鑑定士による標準宅地の鑑定評価が行われています。

 固定資産税の土地価格は、地価公示地価格、地価調査地価格及び標準宅地の鑑定評価価額の7割とされていますので、そこから3月末までに路線価の付設や各筆(画地)の評価を行うことになります。
※ 土地の評価については、今後の号で詳しく解説していきます。

(2)家屋の評価について
 家屋は新築以外の評価替えは、3年毎の基準年度に在来家屋の評価を行います。

 在来家屋の計算方法は、前基準年度再建築費評点に築年数の経過年数に応じた経年減点補正率を乗じて求めますが、「再建築費評点補正率」も考慮されます。

 つまり、基本的には新築時の再建築評価額が継続されることになります。例えば、中古ビルの固定資産税評価に間違いがあるのかどうかは、新築時の評価が正しかったのかどうかを検討する必要があります。

<在来家屋の評価方法>

※ 家屋の評価についても、今後の号で詳しく解説していきます。

据置年度における評価

 ところで、基準年度だけでなく、据置年度においても次の項目は評価・課税されます。

(1)新規の課税
① 新しく新築された家屋
② 新しく造成された土地

(2)価格の見直し
① 土地の地目の変更
② 家屋の増改築

(3)土地の下落修正
 固定資産税の評価替えは基準年度が原則ですが、平成11年度から、据置年度に地価が下落し固定資産税課税上著しく均衡を失する場合等においては、土地の下落修正を行うことができるようになっています。

 この判断は、市町村長により毎年7月1日現在の都道府県地価調査と不動産鑑定士による鑑定評価等から把握して決めていくことになります。

審査の申出と訴訟の提起

 前号でも説明したとおり、毎年4~5月の初旬に、納税通知書と課税明細書が送付されてきますが、仮に価格に不服がある場合は、納税通知書の送付を受けた後3ヵ月以内に「審査の申出」を行うことができます。

 なお、この「審査の申出」は、原則として、3年毎の基準年度のみに行うことができるものです。

<固定資産課税台帳に登録された価格に関する審査の申出>
※地方税法432条1項
「固定資産税の納税者は、その納付すべき当該年度の固定資産税に係る固定資産について固定資産課税台帳に登録された価格について不服がある場合においては、納税通知書の交付を受けた日後3ヵ月を経過する日まで、固定資産評価審査委員会に審査の申出をすることができる。」(中略)

 固定資産税の価格に不服があり、訴訟に訴えようとする場合には、まずこの不服審査申出を行わなければなりません。これを審査請求前置主義と言います。

 そして、この審査申出の決定(採決)に不服がある場合は、その送達を受けた日の翌日から起算して6ヵ月以内に訴訟を提起することができます。

 この場合の被告は市町村ですが、地方税法434の2により、「審査委員会が当該市町村を代表する」こととされています。

 なお、この審査請求前置主義も必ずしも「絶対」ではなく、国家賠償法に基づく訴訟提起が出来る場合があるとの最高裁の判決(平成22年5月3日)があります。
※ この点については、後日改めて触れることとします。

<争訟の方式>
※地方税法第434条第1項
「固定資産税の納税者は、固定資産評価審査委員会の決定に不服があるときは、その取消しの訴えを提起することができる。」

<抗告訴訟の取扱い>
※地方税法第434条の2
「固定資産評価審査委員会は、固定資産評価審査委員会の行政事件訴訟法第3条第2項に規定する処分又は同条第3項に規定する裁決に係る同法第11条第1項の規定による市町村を被告とする訴訟について、当該市町村を代表する。」

<出訴期間>
※行政事件訴訟法14条1項
「取消訴訟は、処分又は裁決があつたことを知った日から6ヶ月を経過したときは、提起することができない。」
 
2022/4/22/18:30

 

(第7号)固定資産税の年間スケジュール(毎年課税で納期は年4期)

 
(投稿・平成25年-見直し・令和6年6月)

 固定資産税は毎年1月1日(「賦課期日」と言います)の固定資産の所有者に、当該年度(4月から)分が課税されます。固定資産税は「年度課税」ですので、4月から翌年3月の1年間になります。

 ここに固定資産税の年間スケジュールを掲載します。

<固定資産税評価の年間スケジュール>

固定資産税の納期は4期

 固定資産税の納期は4月、7月、12月、2月の4期が「標準納期」として地方税法に定められています。

<固定資産税の納期>
※地方税法第362条
「固定資産税の納期は、4月、7月、12月及び2月中において、当該市町村の条例で定める。但し、特別の事情がある場合においては、これと異なる納期を定めることができる。」

 全国には標準納期ではない納期を条例により定めている市町村も多いのですが、主な市町村の納期を調べたところ、次のようになっています。

<標準納期を採用>
 千葉市、横浜市、川崎市、新潟市、静岡市、名古屋市、京都市、大阪市、神戸市、北九州市、福岡市
<標準納期でない納期を採用>
・4月、7月、9月、12月…札幌市、仙台市、岡山市
・4月、7月、9月、11月…浜松市、広島市
・4月、6月、11月、1月…さいたま市
・5月、7月、9月、12月…相模原市、熊本市
・6月、9月、12月、2月…東京23区

 この標準納期を4月、7月、12月、2月としているのには意味があります。その主な理由は、他の税金の納期と重ならないようにするための配慮にあります。
・ 所得税(申告の場合)の納期…3月
・ 市町村民税の納期…6月、8月、10月、1月
・ 軽自動車税の納期…5月
 このように納期を並べて見ますと、改めて通年で税金の納期があることに思い知らされます。

 ところで、地方税法には、1期のときにそれ以降の納期分を前納した場合は、市町村の条例で報奨金を交付することができるとの規定があります。

<固定資産税に係る納期前の納付>
※地方税法第365条
「1 固定資産税の納税者は、納税通知書に記載された納付額のうち到来した納期に係る納付額に相当する金額の税金を納付しようとする場合においては、当該納期の後の納期に係る納付額に相当する金額の税金をあわせて納付することができる。
2 前項の規定によって固定資産税の納税者が当該納期の後の納期に係る納付額に相当する金額の税金を納付した場合においては、市町村は、当該市町村の条例で定める金額の報奨金をその納税者に交付することができる。」

 かつては、多くの市町村で報奨金(前納)制度を設けていましたが、最近では、ほとんどの市町村で報奨金(前納)制度は行われていません。

固定資産税の納税通知書と課税明細書

 毎年4月~5月(第1期)の上旬に固定資産税の納税通知書と課税明細書が納税義務者あてに送られてきます。

 納税通知書は、市町村が固定資産税を徴収・納付するための基本的な通知です。

 一方、課税明細書は、固定資産税の課税内容を明らかにするためのもので、納税通知書とともに送られてきます。

 「課税内容を明らかに」と言いましても、土地と家屋は、市町村が一方的に評価し課税する「賦課課税方式」ですので、実はこの課税明細書を見ても、どのように評価されてこの評価額になっているのかは、まず分からないのではないかと思います。

固定資産税の縦覧制度と閲覧制度

 固定資産税の価格は、毎年3月31日までに決定され、4月~5月に納税通知書及び課税明細書が送付され、年4回の納期がスタートします。

 そして、毎年4月1日から第1期の納期末まで、「縦覧」という制度が設けられています。

 この縦覧では、土地は土地価格等縦覧帳簿と路線価図を、家屋は家屋価格等縦覧帳簿を縦覧することになります。

 この「縦覧」とは、他の納税者の土地や家屋の評価額を縦覧することにより、自己の評価額の適正さを判断できるようにするために設けられているものです。

 つまり、「縦覧」とは固定資産税の納税者が自分の価格と他の納税者(他人)の価格とを比較するために設けられている制度なのです。

 ところで、「固定資産税の納税者は自分の課税内容については縦覧期間しか見れないのか」と誤解されるのですが、所有者は自己の固定資産課税台帳は「縦覧」に限らず、年間を通じて1年中見ることができます。これが「閲覧」という制度です。

 「閲覧」で見ることができる書類は、自己の固定資産課税台帳、名寄台帳等になります。名寄台帳とは、1筆1棟ごとの課税台帳を所有者ごとにまとめた一覧表のことです。

 また「閲覧」では、納税者本人だけでなく、借地人、借家人も借用物件の課税台帳等を見ることができます。

 「閲覧」の手数料は、無料か有料かは市町村により異なります。ただし、証明書の発行はどの市町村でも有料です。

<固定資産税の縦覧と閲覧>

固定資産税の不服審査の申出

 そして、固定資産税に対して不服がある場合、一定期間内に不服の申立て「審査の申出」をすることができます。
 ただし、この「審査の申出」は、原則として3年毎の基準年度に限られています。
(この件については、次号(第8号)でお知らせします。)

 ところで、固定資産税に対する不服と言いいましても、①価格に対する不服と②価格以外の「処分」に対する不服の2通りがあり、①の場合は固定資産評価審査委員会に対して「審査の申出」を、②の場合は市町村長に対して不服審査請求をすることになります。

 ②の場合は、例えば「固定資産税の課税処分などに対する不服がある場合」等ですが、その処分を行った市長村町に審査請求をすることができます。

 固定資産評価審査委員会は市町村ごとに設置され、学識経験を有する者のうちから市町村の議会の同意を得て、市町村長が選任します。

 固定資産税の価格が固定資産評価審査委員会へ「審査の申出」をすることとされている趣旨は、価格が納税者の負担に直接重大な影響を持つものであることから、独立した合議制の機関で慎重に審査させることとされているからです。

つまり、固定資産税の価格を決定した市町村長以外の第三者が審査することにより、より公平性を担保させようとの仕組みである訳です。

 不服審査の申出期間は、①及び②ともに、納税通知書を受け取った日の翌日から起算して3ヶ月以内までとされています。(審査申出書を郵送される場合は、その郵便の消印の日付が期間内であれば有効です。)

2022/4/20/20:30
 

 

(第6号)固定資産税土地の負担調整措置の仕組み(小規模住宅用地の場合)

 
(投稿・平成25年ー見直し・令和6年6月)

 今号は、第4号、第5号に続いて土地の負担調整措置についてお知らせします。

 第4号は、商業地、更地の非住宅用地の負担調整措置の説明でしたが、今回は住宅用地(小規模住宅用地)の負担調整措置の仕組みです。

 その前に住宅用地とはどういうものかですが、第5号「固定資産税土地の住宅用地(小規模住宅用地・一般住宅用地)とは何か」で説明していますのでご覧ください。

 

住宅用地負担調整措置の歴史

 土地の負担調整措置の仕組みは、平成9年度からスタートしています。

 宅地の負担調整措置は、住宅用地と非住宅用地(商業地、更地)の2種類ありますが、非住宅用地(商業地、更地)については第4号で説明した仕組みが現在までそのまま続いています。

 ところが、住宅用地(小規模住宅用地、一般住宅用地ともに)の負担調整措置の仕組みは平成26年度に変更された経緯があります。

 どの部分が変更されたかについては、次の図のとおりですが、平成9年度から25年度まであった「据置ゾーン」が平成26年度以降は無くなっているのです。

<住宅用地減額特例の歴史>

小規模住宅用地の負担調整措置

 それでは、まず平成25年度までの負担調整措置の仕組みです。

<平成25年度までの負担調整措置>

<平成26年度以降の負担調整措置>

 ご覧のように、平成26年度以降は「据置ゾーン」が無くなっています。

 税率は、固定資産税が標準税率1.4%、都市計画税が制限税率(上限)0.3%ですが、問題は課税標準額をどのように算出するかです。

 まず、その年の課税標準額を求めるには、本則課税標準額に対する前年度の課税標準額の割合(これを負担水準と言います)を求め、その割合に応じて対応が変わってきます。つまり、前年度の課税標準額が、本則課税標準額のどこまで達しているかということです。

 固定資産税の価格は地価公示価格の7割です。非住宅用地(商業地、更地)の場合は、価格=本則課税標準額でしたが、住宅用地の場合はそうなっておらずに、200㎡までが小規模住宅用地で1/6,200㎡を超える部分が1/3を乗じたものが本則課税標準額になります。すなわち価格が本則課税標準額と一致しません。

負担の均衡化が進んできた

 平成26年度以降は、90%以上の「据置ゾーン」が廃止され、本則課税標準額一本に合わせていくことになっています。

 つまり、「前年度課税標準額+本則課税標準額の5%」が本則課税標準額を上回る場合は本則課税標準額まで引下げ、下回る場合は本則課税標準額に達するまで5%を上げていくことになります。

 平成26年度以降このような仕組みに変わってきましたが、この背景としては、住宅用地の負担の均衡化がかなり進んできたということがあります。住宅用地はようやくゴールの姿が見えてきたとも言えます。

2022/4/18/21:00