(第112号)固定資産税・土地の「課税誤り」は「住宅用地の見落とし」が多い

 
(投稿・令和6年3月-見直し・令和6年8月)

 前号(第111号)では、「固定資産税の家屋がなぜ分かりにくく『課税誤り』が多いのか」をお知らせしましたが、今号は「土地の課税誤り」についてです。

 

ホームページに「課税誤り」が掲載

 ところで、「固定資産税の『課税誤り』がどのくらいあるのか」ということは正直なところ誰にも分かりません。
 課税当局の市町村担当者でも、仮に「課税誤り」があっても気がつかずに課税を続けていると思われます。

 そこで、Googleの検索サイトで「固定資産税・課税誤り・お詫び」とのキーワードで検索しますと、数えられない程の市町村のホームページが登場します。

 ここに、最近(令和6年3月)「固定資産税・課税誤り・お詫び」で検索した結果の一部を掲載します。

※ 「課税誤り」の掲載ホームページがどのくらいあるかチェックしてみましたが、100件(市町村)までは数えることはできましたが、更にあります。
※ なお、市町村によっては「課税誤り情報」は3ヵ月程度で削除している場合もありますので、仮に3ヵ月後に「固定資産税・課税誤り・お詫び」のキーワードで改めて検索すると、別の市町村のホームページが現れてきます。

 そのことは、固定資産税の「潜在的な課税誤りが多い」ことを示しているとも考えられます。

<Googleでの検索「固定資産税・課税誤り・お詫び」結果(一部)>

 土地の「課税誤り」の内容は様々ですが、ホームページを確認しますと、「住宅用地の見落とし」が多いのが分かります。

 ところで昔は、固定資産税の「課税誤り」があっても公にはされませんでしたが、20年以上前頃から、役所でもコンプライアンス(法令遵守)とディスクロージャー(情報開示)を重視すべきことが確認されてきました。

 そのため、固定資産税の業務において「課税誤り」があった場合には、マスコミに情報を伝えるとともに、市町村のホームページにも掲載することが求められているのです。

住宅用地の「負担調整措置」

 土地の固定資産税は、本来は価格(地価公示価格の7割)に税率(一般的には固定資産税1.4%、都市計画税0.3%)を乗じて求めるのですが、現状はそのようにはなってはいません。

 平成6年度に地価公示価格の7割を固定資産税の価格とすることにしたものの、それまでは実質的に10%〜20%程度であったものを一気に上げることが出来ないことから、少しずつ上げていくという経過的措置(「負担調整措置」)が平成9年度から採用されました。

住宅用地は小規模住宅用地と一般住宅用地

 まず住宅用地とは、居住用の家屋の敷地とされている土地のことですが、200㎡までが小規模住宅用地で、それを超える部分が一般住宅用地とされています。

 ここに300㎡の土地の上に、延床面積150㎡の家屋があることを想定します。

 この場合、200㎡までが小規模住宅用地で評価額が1/6となり、残りの100㎡が一般住宅用地1/3となります。

 なお、一般住宅用地の上限は、家屋の延床面積の10倍(この図では1500㎡)までとされています。


 

住宅用地の「負担調整措置」の仕組み

 土地の課税標準額(税額の元になる評価額)は地価公示価格の7割が本来ですが、小規模住宅用地の場合はそれの1/6、一般住宅用地の場合は1/3が本則課税標準額となります。

 この仕組みは平成9年度に成立していますが、その年の課税標準額は本則課税標準額(地価公示価格×7割×1/6又は1/3)よりかなり低い水準にありました。

 そこで、前年度の課税標準額が本則課税標準額に達していない場合(ほとんどがそうですが)には、本則課税標準額に達するまで徐々に引き上げていくことにしました。


 
 まず、前年度の課税標準額(B)が本則課税標準額(A)にどこまで達しているのかをB/Aにより求めます。このB/Aを負担水準と言います。

 仮に負担水準(B/A)が80%であった場合は、「前年度の課税標準額B+(本則課税標準額A×5%」として、本則課税標準額の5%を加えて今年度課税すべき課税標準額(今年度課税標準額)を算出します。

 そして負担水準(B/A)が100%以上となった場合は、今年度課税標準額は本則課税標準額(A)に引き下げます。

非住宅用地の負担調整措置

 固定資産税の宅地系評価では、住宅用地と非住宅用地に分かれています。

 非住宅用地(商業地と更地)の「負担調整措置」の仕組みは、平成9年度の実施から現在まで変わっておりません。

非住宅用地の「負担調整措置」の仕組み


 
 非住宅用地の固定資産税の価格(本則課税標準額)は、地価公示価格の70%となり、これが負担水準では100%となります。

 しかし、これでは以前との乖離が大きいため、更にその70%を非住宅用地の上限とされており、負担水準がこの70%を上回った場合は70%まで引下げることになり、この負担水準70%~100%が「引下げゾーン」となります。

 つまり、非住宅用地では、地価公示価格のレベルからすると70%×70%で49%が上限となります。

 また、負担水準の60%~70%までを「据置きゾーン」とされています。

 そして、負担水準が60%に達しない場合は、今年度課税標準額を「前年度課税標準額+本則課税標準額×5%(引上げゾーン)」とします。


 

「空き家」が取り壊されると3~4倍となる

 前号でも説明しましたが、「空き家」が取り壊されると住宅用地(小規模住宅用地は1/6、一般住宅用地1/3)の軽減措置が無くなります。

 しかし、上図の仕組みのとおり、更地(非住宅用地)としての負担調整措置が適用されるため、単純に6倍となるのではなく「3~4倍」になるのが正解です。

住宅用地は申告が無くとも適用

住宅用地は申告が義務づけられている

 住宅用地の申告については、地方税法では「市町村長は条例により申告させることができる」との「できる規定」ですが、具体的には、市町村の条例により「申告が義務づけ」られています。

<住宅用地の申告>
地方税法第384条1項
「市町村長は、住宅用地の所有者に、当該市町村の条例の定めるところによつて、当該年度に係る賦課期日現在における当該住宅用地について、その所在及び面積、その上に存する家屋の床面積及び用途、その上に存する住居の数その他固定資産税の賦課徴収に関し必要な事項を申告させることができる。(後略)」

 そして、この地方税法の規定を受けて、全国すべての市町村の条例で「申告が義務づけ」られているのです。

なぜ申告が無くとも認められるのか

 そもそも固定資産税(土地、家屋)は、申告が無くとも役所が一方的に評価・課税する賦課課税方式であり、申告は必要無いのです。

 では、なぜ市町村の条例で申告が義務づけられているのかということですが、これは、市町村の職員が「住宅用地の認定誤りを防ぐため」と理解すべきなのです。

 かつては、市町村の税務職員から「条例で申告が義務づけられているのに申告が無いので適用されないのは当然でしょう」と言われたとの相談を受けたこともありますが、最近はどうなのでしょうか。

 実は、平成4年2月24日の浦和(現さいたま)地裁の判決で「申告が無いからといって、減額特例を適用しないとすることが許されるものではない」との判断が示されています。

 この点については、第20号「住宅用地の減額特例は申告が無くても適用される」で説明していますのでご覧ください。

 
 つまり、住宅用地について、申告が無かった場合でも減額特例がされていない場合、それは「課税誤り」となる訳です。

還付(返還)期間は最高20年間

  それでは、住宅用地の見落としの「課税誤り」があった場合、何年間遡って還付(返還)されるのかということです。

  この点については、第27号及び第28号で説明しています。

 
 まず、地方税法では、徴収し過ぎた税金(過徴収金)の返還請求権は5年で消滅時効になる、つまり5年間遡って還してもらえると定められています。

<還付金の消滅時効>
※地方税法第18条の3
「地方団体の徴収金の過誤納により生ずる地方団体に対する請求権及びこの法律の規定による還付金に係る地方団体に対する請求権は、その請求をすることができる日から5年を経過したときは、時効により消滅する。」

 ところが、平成4年2月24日の浦和(現さいたま)地裁判決及び平成22年6月3日の最高裁判決において、市町村側に「過失」があった場合には「国家賠償の請求を認める」との判断がなされたのです。

 この「過失」とは「手抜きがあった場合」とされていますが、過徴収金返還の時効は民法第724条が適用され最高20年間になります。

 仮に20年間の返還時効が認められた場合は、最初の5年間を地方税法上の「還付金」で、それを上回る期間分を国家賠償法・民法による「返還金」と称されています。

 昨今では、国家賠償法の訴訟を経ずに、市町村自らがが「過失」と認めて、最高20年間の還付(返還)を行う場合もあるようです。
 
2024/04/9/18:00
 

 

(第111号)固定資産税の家屋がなぜ分かりにくく「課税誤り」が多いのか

 
(投稿・令和6年2月-見直し・令和6年8月)

 今回は、固定資産税の家屋評価方法が「分かりにくく『課税誤り』が多い」ことについてです。

評価方法(再建築価格方式)が複雑

 固定資産税家屋の評価方法は、「再建築価格方式」が採用されています。

 この「再建築価格方式」は、昭和34年から昭和36年にかけて固定資産評価制度調査会において審議され、家屋の評価方法として決定されて以来一貫して採用されています。

 この固定資産評価制度調査会においては、①再建築価格方式、②取得価格方式、③賃貸料収益方式、④売買実例価格方式が併せて検討されましたが、①の再建築価格方式が家屋の構成要素として基本的なものであり、その評価の方式化も比較的容易である、との理由で採用されています。

 「再建築価格方式」は、評価の対象となる家屋と同一のものを、評価する時点において、その場所に新築するとした場合に必要とされる建築費(再建築価格)を求め、この再建築価格に時の経過等によって生ずる損耗の状況による減価を考慮し、必要に応じて需給事情による減価を考慮して家屋の価格を算出します。

 
 しかし実は、この「再建築価格方式」は「評価の方式化が比較的容易」とありますが、建築の専門家でないと理解できない内容も数多くあり、大変複雑な内容になっています。

 

市町村での新築家屋評価の対応

「再建築費評点数」の査定が難しい

 この「再建築価格方式」は、評価の対象となった家屋と同一のものを、評価の時点において新築するとした場合に必要となる建築費を査定することになりますが、実際にその家屋をいくらで建築したのか、あるいはいくらで取得したのかの建築費(取得費)とは異なるもので、あくまでも固定資産評価基準(以下「評価基準」)に従って算出します。

<固定資産税家屋の評価方法>

 ところが、この評価基準の仕組み自体が複雑で、特にこの図の「評点数」→「再建築費評点数」の査定が最大の難関となります。

「再建築評点数」を求める作業

 「再建築価格方式」は「実際にその家屋をいくらで建築したのか、あるいはいくらで取得したのかとは異なる」のですが、「再建築費評点数」を求めるためには「当該新築家屋の内容を把握する」ことが必要になるため次の作業を行います。

  家屋所有者に調査協力を依頼し、新築家屋の見積書や竣工図等を借用し情報を取得します。
  実際に当該家屋に赴き、用途別区分とともに家屋の外観や内部の使用資材等を確認します。
  借用・保存した見積書等から評価基準の部分別区分に照らして、必要な資材を拾い出し部分別分類を行います。.
  その上で、市町村が有する評価システムに評価基準の評点項目と使用資材量の数値を入力して評点数を算出します。

 いかがでしょうか、大変ですが評価基準による「再建築価格方式」は、このような手順が必要とされているのです。

市町村の組織対応について     

市町村の職員は事務職で異動も頻繁

 そもそも市町村の固定資産課税部門の職員は事務職が殆どで、建築部門の知識を有していないのが現実です。

 例えば、建築専門用語として「屋根小屋組(屋根を支えるために設けた骨組み)」の名称だけでも、次のようなものがあります。

 「敷桁(しきげた)、小屋梁(こやばり)、小屋束(こやづか)、小屋貫(こやぬき)、火打梁(ひうちばり)、小屋折違(こやすじかい)、母屋(もや)、棟木(むなぎ)、隅木(すみぎ)、谷木(たにぎ)、垂木(たるき)、陸梁(ろくばり)、合掌(がっしょう)、真束(しんづか)、対束(ついづか)、釣束 (つりづか)、方杖(ほうづえ)」。

 しかも、通常4~5年で職場異動する職員が多いことから、組織として固定資産税家屋評価の知識を蓄積するのも十分ではないことになります。

市町村の固定資産税評価の対応

 仮に固定資産税職員が初心者の場合には、家屋の評価作業は難しいものです。

 所有者から提出された見積書を見て、記載されている資材・機器のうちどれが固定資産税の家屋評価に必要なのかを見分けること、必要な資材であると理解してもそれがどこに使用されているのか(上部分なのか下地材なのか等)、資材のグレードや規格を判断する等々の作業が必要となります。

 そこで、総務省及び一般財団法人資産評価システム研究センターでは、全国の市長村固定資産税職員に対する研修を積極的に進めています。

 また、市町村によっては、固定資産税の専門的な職員(「専任職」)や組織(「固定資産税センター」)等を設ける工夫もされています。
(※「専任職」や「固定資産税センター」は仮名です。)

 ところで、政令指定市以外の市町村では、300㎡あるいは500㎡以上の非木造家屋の評価は県(県税事務所)が対応しています。課税権は市町村長なのですが、家屋評価は県に委託しているのです。

 これは、地方税法第73条の21の1項に「道府県知事は、固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産については、当該価格により当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとする。(以下略)」が根拠規定になります。

家屋の「課税誤り」の検証

 以上のような、固定資産税家屋の評価や市町村組織等からすると、残念ながら「課税誤り」が生じることも想定できます。

 例えば、Google検索ページで「固定資産税、課税誤り、お詫び」とのキーワードを入力すると、「課税誤り」があった市町村のホームページが数多く表示されます。
 これは、「課税誤り」のあった市町村では公表する義務があるからですが、(推測の域を出ませんが)明らかになっていない「潜在的な課税誤り」もあるのではないでしょうか。

「課税誤り」の検証には新築時資料が必要

 固定資産税の家屋評価では、新築家屋の評価が複雑で大変ですが、在来(中古)家屋の評価はそれほどでもありません。

<在来家屋の評価>

 在来家屋の評価は、①前基準年度再建築費評点数×②再建築費評点補正率×③経年減点補正率となります。

 ここで、①は前基準年度(3年前)の評価額で、②は3年毎に東京都23区を基準とした建設物価率が総務省から示され、③は評価基準の該当表から補正率を適用します。 
 したがって、①の前基準年度再建築費評点数は「新築時の評価」を引き継いでいることになります。

 よく「固定資産税評価の見直しサポート」の依頼者様から、「所有している中古ビルの評価額が高いのでは」とのご相談があります。そこで、審査申出を行った場合、『在来家屋の評価として問題無い』との審査結果が出されることが多くあります。

 つまり、前基準年度再建築費評点数(新築時評価を引き継いでいる)が正しいものとの前提で審査されている訳です。

 これでは「ビルの評価そのものが正しいのか否か」の審査にはなっていません。
 そこで、新築時の評価計算書を求めても、『10年以上前の資料は廃棄して存在しない』との回答がある場合もあります。これでは、当該ビルの評価が正しいのかどうかをチェックすること自体できなくなる訳です。

家屋評価簡素化の動き

 これまで、総務省及び一般財団法人資産評価システム研究センターにより、「家屋評価の簡素化」の検討が進められてきています。

 その一つは「広域的比準評価方式」です。

 これは、都道府県等の一定の地域内に所在する家屋を、その実態に応じ、構造、程度、規模等に区別し、各区分ごとに標準とすべき家屋を標準家屋として定め、そこから比準して評価する方式ですが、非木造家屋にも適用している市町村もあります。

 そして、評価基準の「用途別区分」と「部分別区分」の見直し(整理統合)です。
 令和6年度においては、特に木造家屋の用途別区分が13種類であったところが7種類に整理統合されました。

 また、評価計算のデジタル化の開発(一般財団法人資産評価システム研究センターの「レクパス・オート5」等)も進められています。

 しかし、これらの簡素化はいずれも再建築価格方式におけるもので、必ずしも「抜本的な簡素化」になる訳ではありません。

 筆者は、以前から家屋評価の簡素化では「取得価格方式を採用すべき」と主張していますが、これについては第63号「『家屋評価の簡素化』の検討と今後の在り方」をご覧ください。

 

固定資産税業務の改革の動き

 現在、家屋評価だけでなく固定資産税業務全体の改革の動きが総務省及び各市町村で進められ始めています。

 固定資産税業務の標準化やIT社会に即したデジタル化並びに外部業者への委託等ですが、これらについては課題(問題点)もありますので、別号において報告する予定です。
 
2024/03/20/11:00
 

 

(第109号)「空き家法」の改正により『管理不全空き家』が指導、勧告される

 
(投稿・令和5年12月-見直し・令和6年8月)

 この度、「空家等対策の推進に関する特別措置法」(以下「空き家法」)が改正されました。

 総務省が5年毎に実施している「住宅・土地統計調査」の平成30年調査では、総住宅数6240万7千戸に対して「空き家」は約849万戸となっており、空き家率は13.6%となっています。また、長期にわたって不在の住宅などの「居住目的のない空き家」は349万戸で、この20年で約1.9倍に増加しています。

 このように「空き家」の増加が見込まれる中、周囲に著しい影響を及ぼす『特定空家』になることを待つことなく、事前に管理の確保を図ることが必要とされ「空き家法」が改正されました。 

「空き家法」の『特定空家』とは

『特定空家』とは何か

 空き家対策をめぐっては、平成26年に成立した「空き家法」で、「空き家」を放置して倒壊の恐れがあるなど特に危険性が高い物件を『特定空家』に指定し、「空き家」を撤去できるようにしました。

 この「空き家法」については、第91号で紹介しています。

 
 まず、「空き家」と『特定空家』とはどういうものかです。

<「空き家」及び『特定空家』の定義>
※「空き家法」第2条
「1. この法律において「空家等」とは、建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地をいう。ただし、国又は地方公共団体が所有し、又は管理するものを除く。
2. この法律において「特定空家等」とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう。」

 つまり、『特定空家』とは「空き家」のうち次のいずれかに該当するものをいいます。
そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

住宅用地の減額特例が解除

 そして、『特定空家』に指定されると、固定資産税の住宅用地の減額特例が解除されることになります。

 この住宅用地の減額特例が解除されると、小規模住宅用地(200㎡以下)の特例(6分の1)及び一般住宅用地(200㎡を越える部分)の特例(3分の1)が適用されないこととなります。

 ところで、令和3年度までに「空き家法」により『特定空家』として措置(助言・指導、勧告、命令、代執行)された件数は約3万4千戸となります。

 <『特定空家』の措置状況>

「空き家法」の改正(概要) 

『管理不全空き家』が新設

 しかし、これまでの「空き家法」による『特定空家』の指定によっても、「空き家」が増え続けていることから、今回、対策強化を盛り込んだ「空き家法」の改正が行なわれた訳です。

 今回の「空き家法」の改正では、改正前が第16条までであったものが、改正後は第30条までと大幅な改正が行われました。

 この改正法では、「空き家」を放置すれば『特定空家』になる可能性がある物件を新たに『管理不全空き家』に指定され、管理指針に則した措置が「指導」されます。

 そして、「指導」してもなお状態が改善しない場合には「勧告」が可能となります。

<適切な管理が行われていない空家等の所有者等に対する措置>
※改正「空き家法」第13条
「1. 市町村長は、空家等が適切な管理が行われていないことによりそのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある状態にあると認めるときは、当該状態にあると認められる空家等(以下「管理不全空家等」という。)の所有者等に対し、基本指針に即し、当該管理不全空家等が特定空家等に該当することとなることを防止するために必要な措置をとるよう指導をすることができる。
2. 市町村長は、前項の規定による指導をした場合において、なお当該管理不全空家等の状態が改善されず、そのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれが大きいと認めるときは、当該指導をした者に対し、修繕、立木竹の伐採その他の当該管理不全空家等が特定空家等に該当することとなることを防止するために必要な具体的な措置について勧告することができる。」

 また、この「勧告」を受けたときは、『特定空家』の指定と同様に、当該敷地の固定資産税の住宅用地の減額特例を解除できるとされています。

<『特定空家』を未然に防止>)

 
 なお、この『管理不全空き家』等の設置に伴い、地方税法の「住宅用地の減額特例の解除」に関する条項も一部改正されました(下線部分)。

<住宅用地の減額特例の解除>
※地方税法349条の3の2
「1 (前略)空家等対策の推進に関する特別措置法第13条第2項の規定により所有者等に対し勧告がされた同法第13条第1項に規定する管理不全空家等及び同法第22条第2項の規定により所有者等に対し勧告がされた同法第2条第2項に規定する特定空家等の敷地の用に供されている土地を除く。(後略)」

財産管理人による空家の管理・処分

 民法(第25条~第29条)では、土地・建物等の所有者が不在・不明である場合等には、利害関係人又は検察官の請求により裁判所が選任した財産管理人が管理や処分を行うことができる、とされています。

<不在者の財産の管理>
※民法第25条
「1. 従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人(以下この節において単に「管理人」という。)を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。本人の不在中に管理人の権限が消滅したときも、同様とする。」

 今回の「空き家法」改正では、財産管理人の選任請求権を、空家等の適切な管理のために特に必要があると認めるときには、市区町村長も選任請求可能になりました。

<空家等の管理に関する民法の特例>/span>
改正「空き家法」第14条
「1. 市町村長は、空家等につき、その適切な管理のため特に必要があると認めるときは、家庭裁判所に対し、民法第25条第1項の規定による命令又は同法第952条第1項の規定による相続財産の清算人の選任の請求をすることができる。」

 
2024/02/28/08:00
 

 

(第108号)雑種地の固定資産税評価について(「狭小な雑種地」)

 
(投稿・令和5年12月-見直し・令和6年8月) <閲覧上位5位(第16号)の関連版>

※第16号は過去の閲覧記録で第5位です。

 
 また、雑種地の固定資産税評価については、第68号及び第69号で解説しています。

 
 そこで今回は、「地目認定は現況主義」のみでは簡単過ぎますので、地目のうち分かりづらい雑種地について、とくに「その他の雑種地」の中で「狭小な雑種地」の評価について解説します。

雑種地の基本

 その前に、雑種地の基本について簡単にまとめていきます。

地目の認定は現況主義

 まず、地目認定の時期ですが、固定資産税の賦課期日が1月1日とされており、地目の認定も1月1日現在の土地の現況や利用目的を重視することから1月1日現在の認定となります。

<固定資産税の賦課期日>
※地方税法第359条
「固定資産税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の1月1日とする。」

 次に認定の取扱いですが、固定資産税の土地評価上の地目の認定は現況の地目(「現況主義」)によります。

 では、土地の地目が登記簿と現況が異なる場合は、どうなるのでしょうか。

 例えば、登記簿上の地目が「山林」となっているのに、実際には建物が建っている土地の場合ですが、この土地の固定資産税の地目は、「現況主義」によって「宅地」と認定されます。

地目の種類は9種類

 それでは、固定資産税評価における土地の地目は何かですが、固定資産評価基準では次のとおり9種類とされています。

<固定資産評価基準の地目>
※固定資産評価基準第1章第1節
「土地の評価は、次に掲げる土地の地目の別に、それぞれ、以下に定める評価の方法によって行うものとする。この場合における土地の地目の認定に当たっては、当該土地の現況及び利用目的に重点を置き、部分的に僅少の差異の存するときであっても、土地全体としての状況を観察して認定するものとする。
①)田、②畑、③宅地、④鉱泉地、⑤沼、⑥山林、⑦牧場、⑧原野、⑨雑種地」

 以上の9種類ですが、⑨雑種地は他の8種類以外の全てを含むことになります。

雑種地の固定資産税評価

 雑種地の評価については、固定資産評価基準において(ア)「ゴルフ場等用地の評価」、(イ)「鉄軌道用地の評価」及び(ウ)「その他の雑種地」の3種類とされています。

「雑種地の固定資産税評価」
 雑種地の評価方法は、(ア)と(イ)の評価方法は固定資産評価基準で定められていますが、(ウ)「その他の雑種地」の評価は。売買実例価額から評価額を求める方法と、売買実例価額が無い場合は付近の土地に比準して評価額を求める方法(近傍地比準方式)とされています。

 この(ウ)「その他の雑種地」の例としては、駐車場、資材・廃材置場、太陽光パネル設置用地、干場、鉄塔用地、私道、農業用施設用地、高圧線下地等があげられますが、これ以外にも、その他の全ての土地が「その他の雑種地」となります。

 (ウ)「その他の雑種地」の評価方法は、売買実例地比準方式が原則ですが、売買実例が少ないことから、多くの市長村では近傍地比準方式により評価されているのが実際です。

「狭小な雑種地」の評価

「狭小な雑種地」とは

 「狭小な雑種地」とは、ゴミ置き場、防火水槽、残地・潰れ地等の雑種地です。

 一般的に、狭小な土地は画地規模が小さくなるにつれて利用可能な用途が限定され、用途の多様性が損なわれることから利用価値が減少します。

 「狭小な雑種地」は、主に次の区分がされています。

建物の敷地として利用が困難な狭小な雑種地(通常の狭小地)
 建物の敷地としては利用困難であるものの、駐車場等として利用が可能な程度の画地規模が小さい(概ね15㎡から30㎡程度)土地です。

単独では利用が困難な程度に狭小な雑種地(極狭小地)
 駐車場としての利用も困難な、画地規模が極めて小さな(概ね20㎡未満)土地です。

「狭小な雑種地」の評価方法

 「その他の雑種地」としては、売買実例地比準方式が原則ですが、「狭小な雑種地」の売買実例を収集することが困難なため、近傍地比準方式により評価される場合が多いと考えられます。

 「狭小な雑種地」の評価では、実務上、次の方法が考えられます。

  付近の土地の価額に、狭小地減価を含む比準割合を乗じる方法
 付近の標準的な規模の土地の価格(路線価等)に、狭小地であることの減価を含んだ比準割合を直接乗じる評価方法です。

画地計算法等の適用により考慮する方法
 規模が狭小なことによる減価を、所要な補正を含めた画地計算法(奥行価格補正、間口狭小補正)を補正した上で適用することと市町村長が設定した狭小地補正を適用する方法等です。

 なお、「狭小な雑種地」については固定資産評価基準には規定が無いため、市町村の「所要の補正」(『固定資産評価事務取扱要領』)により行われています。
 
2023/12/08/16:00
 

 

(第107号)固定資産税の「非課税」「減免」「課税免除及び不均一課税」について

 
(投稿・令和5年11月-見直し・令和6年8月)
※今回は過去閲覧歴10位までの第3位(22号)、第9位(13号)の「非課税」と第4位(15号)の「減免」をまとめ「非課税、減免、課税免除及び不均一課税」を一覧表にしました。

 なお、それぞれの詳細については、次の各号をご覧ください。

 
<「非課税、減免、課税特例及び不均一課税」一覧表>

 
2023/12/07/14:00