(第110号)固定資産税と相続税の評価・課税の違いについて

 
(投稿・令和6年1月-見直し・令和6年8月)

 今回は、「固定資産税と相続税の評価・課税の違い」について説明します。

 「固定資産税と相続税の違い」については、これまで「宅地評価方法の違い」として、第42号(基本的事項)から第43号(1)~第47号(5)で紹介してきました。

 
 そこで今回は、内容は大きく分けて、(1)固定資産税と相続税の根拠法、(2)固定資産税と相続税の評価方法、(3)固定資産税と相続税の課税方法、(4)相続税でも固定資産税評価を活用、について説明します。

固定資産税と相続税の根拠法

固定資産税の根拠法

(1) 地方税法
 まず、固定資産税の根拠法は地方税法になります。
 地方税法第三章「市町村の普通税」の第二節に「固定資産税」があります。

<固定資産税とは>
※地方税法341条1項1号~4号
「1号 固定資産 土地、家屋及び償却資産を総称する。
2号 土地 田、畑、宅地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野その他の土地をいう。
3号 家屋 住家、店舗、工場(発電所及び変電所を含む。)、倉庫その他の建物をいう。
4号 償却資産 土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産でその減価償却額又は減価償却費が法人税法又は所得税法の規定による所得の計算上損金又は必要な経費に算入されるもののうちその取得価額が少額である資産その他の政令で定める資産以外のものをいう。ただし、自動車税の種別割の課税客体である自動車並びに軽自動車税の種別割の課税客体である原動機付自転車、軽自動車、小型特殊自動車及び二輪の小型自動車を除くものとする(中略)。」

 なお、固定資産税とともに都市計画税が課税される場合には同時に課税されており、納税通知書・課税明細書にも併せて記載されています。

 固定資産税は普通税ですが、都市計画税は目的税で地方税法の第四章「目的税」の第六節「都市計画税」に規定されています。

<都市計画税の課税客体等>
※地方税法702条1項
「1項 市町村は、都市計画法に基づいて行う都市計画事業又は土地区画整理法に基づいて行う土地区画整理事業に要する費用に充てるため、当該市町村の区域で都市計画法第5条の規定により都市計画区域として指定されたもののうち同法第7条第1項に規定する市街化区域内に所在する土地及び家屋に対し、その価格を課税標準として、当該土地又は家屋の所有者に都市計画税を課することができる。当該都市計画区域のうち同項に規定する市街化調整区域内に所在する土地及び家屋の所有者に対して都市計画税を課さないことが当該市街化区域内に所在する土地及び家屋の所有者に対して都市計画税を課することとの均衡を著しく失すると認められる特別の事情がある場合には、当該市街化調整区域のうち条例で定める区域内に所在する土地及び家屋についても、同様とする。(中略)」

(なお、以下本号では固定資産税を中心にして解説します。)

(2) 市町村の条例、規則
 固定資産税(土地、家屋)は、全国に存在する土地(1億8,076筆)及び家屋(5,877万棟)は基本的に全て課税されることが原則ですが、地方税法のみでは、必ずしも全て網羅できないことから、地方税法の委任により、各市町村において条例(東京都23区は都税条例)を制定されることとされています。

(3) 総務省の「基本通知(改正告示)」
 固定資産税の手続について、総務省から全国の市町村に周知するため、総務省の「基本通知(改正告示)」が必要に応じて発せられています。
 市町村では、その「基本通知(改正告示)」に従って固定資産税業務を遂行することになります。

相続税の根拠法

 相続税の根拠法は、民法及び相続税法です。

(1)民法
 民法は、第五編に「相続編」(第822条~1050条)があり、相続及び贈与に関する権利関係等の一般的ルールが定められています。

(2)相続税法
 これに対して相続税法は、相続税額の計算等細かい税のルールが規定されています。

 相続に関しては、民法が一般法ですが、相続税の計算等は相続税法が特別法になります。
 相続税法は、課税の公平性という観点から、民法に一定の修正を加えていますが、その場合は、特別法である相続税法が民法より優先されることになります。

固定資産税と相続税の評価根拠

固定資産税は「固定資産評価基準」

 まず、固定資産税の評価は、「固定資産評価基準」によります。

 この「固定資産税評価基準」は、地方税法第403条で規定されており、法的拘束力が強いものです。

<固定資産評価基準>
※地方税法403条
「1項 市町村長は(中略)固定資産評価基準によって、固定資産税の価格を決定しなければならない。」

相続税は「財産評価基本通達」

 一方、相続税の評価方法は国税庁による「財産評価基本通達」により定められていますが、相続税の評価は、あくまでも時価を求めるもので、必ずしもこの「財産評価基本通達」が100%とは限りません。

 例えば、時価を証明するために、不動産鑑定評価による評価が採用される場合があります。
 土地の個別画地の評価について、固定資産税では不動産鑑定評価は原則認められませんが、この点が相続税では異なります。

公的土地評価の一元化

 平成元年に「土地基本法」が成立し、そこで土地の公的評価の一元化が図られました。

 土地の公的評価とは、時価(実勢価格)、地価公示価格、相続税路線価、固定資産税評価額を指します。

 過去には、この4価格がアンバランスであったことから、一元化(地価公示を100とした場合の割合)を図ることなりました。

<公的土地評価の一元化>
※土地基本法第17条
「国は、適正な地価の形成及び課税の適正化に資するため、土地の正常な価格を公示するとともに、公的土地評価について相互の均衡と適正化が図られるように努めるものとする。」

 その結果、地価公示は時価と同一レベル(100)とし、相続税を地価公示の8割、固定資産税を地価公示の7割と決められました。

固定資産税土地の負担調整措置

 実は平成5年以前の土地の固定資産税評価額は地価公示ベースの10~20%であった訳ですが、これをいきなり70%に引上げる訳にはいかないため、固定資産税では負担調整措置という制度が設けられました。

 これは、いきなり70%に引き上げるのではなく、徐々に近づけていく方法ですが、この負担調整措置の仕組みが土地評価を複雑にしています。

 なお、この内容については、第4号と第6号で説明しています。

 

固定資産税と相続税の課税方法

固定資産税は「賦課課税方式」

 固定資産税は全国の土地、家屋が基本的に全て課税されており、都市計画税と併せると市町村税の47%を占めており「市町村の基幹税」とも言われています。

 そのため、課税方法も所有者の申告を経ずに、役所が一方的に評価・課税する方式(「賦課課税方式」)となっています。
 ※償却資産は、毎年1月末までに申告が義務づけられている申告課税です。

相続税は申告課税方式

 固定資産税は賦課課税方式ですが、相続税は申告課税方式です。

 相続(又は遺贈)により財産を取得し、相続税の納税義務がある者は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヵ月以内に被相続人の最寄の税務署に申告書の提出が必要となります。

<相続税の申告書>
※相続税法第27条
「1.項 相続又は遺贈により財産を取得した者及び当該被相続人に係る相続時精算課税適用者は、当該被相続人からこれらの事由により財産を取得したすべての者に係る相続税の課税価格の合計額がその遺産に係る基礎控除額を超える場合において、その者に相続税額があるときは、その相続の開始があつたことを知つた日の翌日から十月以内に課税価格、相続税額その他財務省令で定める事項を記載した申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。(中略)」

相続税でも固定資産税評価額を活用

土地の倍率方式

 相続税の土地評価には路線価方式と倍率方式があります。

 路線価方式は、設定されている路線価を基に「財産評価基本通達」により評価額を算定します。

 一方、倍率方式における土地の相続税評価は、その土地の固定資産税評価額に地域、地目ごとに定められた倍率を乗じて評価額を算出します。
 例えば、相続税対象の土地(宅地)の固定資産税額が800万円で、宅地の倍率が1.1の場合には、800万円×1.1で8,80万円となります。

家屋の相続税評価額

 家屋の相続税評価額は、固定資産税の評価額をそのまま活用して相続税の評価額とすることになります。
 
2024/03/10/15:00
 

 

(第88号)地方税における固定資産税・都市計画税の位置づけ

 
(投稿・令和5年9月見直し・令和6年8月)

 今回は、固定資産税・都市計画税が地法税の中でどのような位置づけになっているかを図と表を中心に見ていきます。

固定資産税・都市計画税の概要

 固定資産税・都市計画税の内容については、これまで複数の号で説明してありますので、ここでは一覧表を掲載します。

 固定資産税は、土地、家屋、償却資産から構成されますが、課税客体は、全国で土地が約1億8,042万筆、家屋が約5,880万棟存在しています。
 また、納税義務者は、土地が約4,122万人、家屋が約4,192万人、償却資産が約466万人となっています。
 一方税収は、土地3兆4,853億円、家屋3兆9,578億円、償却資産1兆7,556億円となっており、税収比率は4:4:2の関係になっています。

地方税の中での地位は

 では、固定資産税は地方税の中でどのような地位にあるのでしょうか。

 固定資産税は、令和3年度決算額のうち「国税・地方税の税収内訳」として、地方税合計の21.8%を占め、市町村税においては41.0%、都市計画税と併せると46.9%を占める基幹的な税であります。

<固定資産税の地方税収の地位(令和3年度)>

 

世界の中での資産税負担率

 日本は諸外国と比べて、2020年度の資産課税の割合がどうなのかです。

 次のグラフは国民所得比に対しての諸税の負担率がどのくらいかを示したものですが、アメリカ、イギリス、フランスは日本よりも資産課税の割合が高いことが分かります。

<国民所得比での税負担率>

 

令和5年度地方税収の構成

 次は、令和5年度地方財政計画での固定資産税の位置づけです。

 令和5年度の計画として、地方税全体が429,397億円に対して、固定資産税が96,696億円(22.5%)、都市計画税が13,873億円(3.2%)となっていて、割合としてはトップを占めています。

<令和5年度地方税収の構成>

 

償却資産の税収割合

 最後に、固定資産税の一つである償却資産の税収割合の多い市町村の表です。

 償却資産というと家屋との関係に目が行きがちですが、この表のとおりダムや原発も大規模償却資産の一種となります。

<償却資産の税収割合が高い市町村>

 
 太陽光パネルも償却資産の課税対象ですが、やはりダム、原発は規模・税収額が大きいのが分かります。
 
2022/12/17/16:00

 

(第2号)固定資産税は市町村税の「基幹税」で、土地と家屋は「賦課課税方式」

 
(投稿・平成25年-見直し・令和6年6月)<100号達成時の閲覧数8位>

 今号は、第1号「そもそも固定資産税とはどのようなものか」で紹介した市長村の「基幹税」についての追加説明です。

 
 そして、固定資産税の土地と家屋は「賦課課税方式」といわれていますがそれはどのようなものか、また固定資産税の法体系の紹介です。

市町村の歳入状況

 市町村のお金の収支は財政状況として表されますが、収入を歳入、支出を歳出と呼びます。

 市町村の歳入はどのようなもので成り立っているのかが、下のグラフ「市町村の歳入状況」で分かります。

 このグラフ(財団法人資産評価システム研究所「固定資産税のしおり」)によりますと、市町村の歳入は、税金(市町村税)のほか、国や県から支出される国県支出金、国税の一部が配分される地方交付税、借入金である地方債などがあります。

<市町村の歳入・歳出状況>

 歳入のうち市町村税が全体の約30%を占めていますが、固定資産税はこの中の重要な税目になっています。。

固定資産税は市町村の「基幹税」

 そこで、市町村税にはどのような税があるかを示したものが、次のグラフです。

<市町村の税目>

<固定資産税の内訳>

 ここにあるように、固定資産税41.1%、市町村民税45.5%、都市計画税5.9%、その他7.5%となっています。

 ところで都市計画税ですが、市街化区域内に所在する土地と家屋の所有者に課税される目的税(都市整備の費用に充てられる税)で、固定資産税と併せて課税されています。

 ここでは広い意味で都市計画税を含めて固定資産税と捉えますと、固定資産税は市町村税の中で約47%を占めています。

 固定資産税は市民税と並んで、市町村歳入の大きな部分を占めていますが、これが固定資産税が「基幹税」と言われる一つの理由です。

 それと市民税が景気に左右されがちであるのに比べて、固定資産税はさほど景気に左右されない安定的な財源になっています。

 この二つの意味で、固定資産税は市町村の「基幹税」と言われています。

役所が一方的評価・課税の賦課課税方式

「賦課課税方式」とは

 固定資産税は、全国どこでも土地や家屋を所有していれば(非課税を除いて)課税される資産税ですが、基本的に役所が一方的に評価し課税するもので、これを「賦課課税方式」と言います。

 これに対して固定資産税の償却資産や相続税は、申告に基づいて課税されるもので「申告課税方式」になります。

 全国で課税対象となる固定資産税の土地の数はおおよそ1億8千万筆、家屋は約6千万棟とされ、基本的に全国すべての土地及び家屋が評価され課税されます。

 そのため固定資産税評価は「大量一括評価」あるいは「大量画一評価」とも呼ばれ、そこでは同じ基準の下に同じ方法で評価されることが要請されます。(特に土地の場合は「賦課課税方式」の採用は止むを得ないものです。)

「賦課課税方式」の問題点

 「賦課課税方式」の採用は止むを得ないものですが、納税者からすると内容がよく分からないという問題があります。

 今後の号で説明していきますが、固定資産税の評価方式は複雑な仕組みになっているため、毎年納税されている納税者からは、どのような評価をされてこの評価額になっているのかがよく分からない、という問題があります。

 毎年4月~5月(東京都23区は6月)に固定資産税の納税通知書とともに課税明細書が送られてきますが、これを見ても何故この価額になったのかは説明を受けないと分かりません。

 一方、固定資産税の償却資産は「申告課税方式」(毎年1月末までに申告)ですので、この点では土地と家屋とは異なります。

固定資産税の評価・課税の法体系

 固定資産税の評価・課税の基準となっているのが「地方税法」と「固定資産評価基準」です。それと、全国の固定資産税をまとめている総務省があり、そこからの「通知」も全国一律の基準になっています。

<固定資産税の法体系>

 そして地方税法と固定資産評価基準の下に市町村ごとに、評価関係では「固定資産評価事務取扱要領」が定められ、課税関係では「条例・規則」(市町村議会で決定)が定められ、「所要の補正」として評価・課税が行われています。
(これらの仕組みについては、今後説明していきます。)
 
2022/4/13/12:30
 

 

(第1号)そもそも固定資産税とはどのようなものか

 
(投稿・平成25年-見直し・令和6年11月)

 「固定資産税は難しい」、「毎年送られてくる納税通知書・課税明細書を見てもよく分からない」と思われている皆様も多いのではないでしょうか。

 これは、固定資産税の土地と家屋は、納税者(所有者)からの申告ではなく、市町村が一方的に評価し課税するという「賦課課税方式」を採用していることが一つの原因であります。

 また、「賦課課税方式」の他に「評価内容が複雑」というのが大きな原因なのです。その複雑な評価内容は、土地の「負担調整措置」と家屋の「再建築価格方式」という仕組みになっているからです。

 この講座では、これらの複雑な仕組みを可能なかぎり分かり易く解説してまいります。

 それでは、まず「そもそも固定資産税とはどのような税なのか」ということからです。

固定資産税は土地、家屋、償却資産

<固定資産税とは>
※地方税法341条1項1号
「固定資産 土地、家屋及び償却資産を総称する。」

 固定資産税は、シャウプ勧告を契機として行われた昭和25年の地方税制度の根本的改革に伴い創設されましたが、当時から、土地、家屋、償却資産の3つの資産に課税される市町村税です。

 固定資産税は、固定資産(土地、家屋及び償却資産)の保有と市町村が提供する行政サービスとの間に存在する受益関係に着目し、応益原則に基づき、資産価値に応じて、所有者に対し課税される「財産税」です。

 過去に固定資産税は「収益税」か「財産税」との議論もありましたが、間違いなく「財産税」です。

 ここに、地方税法の「用語の定義」を引用します。

<土地とは>
※地方税法341条1項2号
「土地 田、畑、宅地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野その他の土地をいう。」

<家屋とは>
※地方税法341条1項3号
「家屋 住家、店舗、工場(発電所及び変電所を含む。)、倉庫その他の建物をいう。」

<償却資産とは>
※地方税法341条1項4号
「償却資産 土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産(鉱業権、漁業権、特許権その他の無形減価償却資産を除く。)でその減価償却額又は減価償却費が法人税法又は所得税法の規定による所得の計算上損金又は必要な経費に算入されるもののうちその取得価額が少額である資産その他の政令で定める資産以外のもの(これに類する資産で法人税又は所得税を課されない者が所有するものを含む。)をいう。ただし、自動車税の種別割の課税客体である自動車並びに軽自動車税の種別割の課税客体である原動機付自転車、軽自動車、小型特殊自動車及び二輪の小型自動車を除くものとする。」

 固定資産税は、どの市町村にも広く存在する資産を課税客体としており、税源の偏りが小さく市町村税としてふさわしい基幹税目であります。
 この図にありますように、固定資産税は都市計画税(市街地的地域の目的税です)と併せると、市町村税のうち約47%を占めています。

<市町村税の内訳>

 ところで、固定資産税は「土地と建物に課税される税金」と答える人がほとんどですが、これは正確ではありません。

 固定資産税では、建物ではなく家屋と呼びます。

 また、固定資産税とは別に償却資産税があると勘違いされがちですが、償却資産税という税目はありません。償却資産税ではなく「固定資産税のうちの償却資産」というのが正解です。

納税義務者は1月1日の所有者

 固定資産税の納税義務者は、毎年1月1日(これを賦課期日といいます)における、固定資産の所有者(正確には登記簿上の所有者又は固定資産補充課税台帳に登録されている者)となります。

<固定資産税の納税義務者>
※地方税法343条
「1 固定資産税は、固定資産の所有者に課する。
2 前項の所有者とは、土地又は家屋については、登記簿又は土地補充課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に所有者として登記又は登録がされている者をいう。この場合において、所有者として登記又は登録がされている個人が賦課期日前に死亡しているとき、若しくは所有者として登記又は登録がされている法人が同日前に消滅しているとき、又は所有者として登記されている第348条第1項の者が同日前に所有者でなくなつているときは、同日において当該土地又は家屋を現に所有している者をいうものとする。
3 第1項の所有者とは、償却資産については、償却資産課税台帳に所有者として登録されている者をいう。」

 ところで、令和2年度の地方税法改正により、所有者以外に使用者にも課税する「使用者課税」が可能となっています。それまでは、震災、風水害、火災その他の事由により不明である場合に限って「使用者を所有者とみなす」ことができたのですが、次の5項が追加され「存在が不明である場合」の「使用者課税」が認められました。

<使用者課税>
※地方税法343条5項
「市町村は、相当な努力が払われたと認められるものとして政令で定める方法により探索を行つてもなお固定資産の所有者の存在が不明である場合には、その使用者を所有者とみなして、固定資産課税台帳に登録し、その者に固定資産税を課することができる。この場合において、当該市町村は、当該登録をしようとするときは、あらかじめ、その旨を当該使用者に通知しなければならない。」

固定資産税1.4%、都市計画税0.3%

 次に固定資産税及び都市計画税の税率ですが、通常、固定資産税は1.4%、都市計画税0.3%と言われています。
 しかし、正確に言いますと、固定資産税の1.4%は標準税率で、都市計画税の0.3%は制限税率(上限)とされています。

<固定資産税の税率>
※地方税法350条1項
「固定資産税の標準税率は、100分の1.4とする。」

 固定資産税の税率は全国ほぼ全てが1.4%とされていますが、これを超える場合は、市町村の条例で定める必要があります。1.4%を超える税率が採用されている市は、北海道夕張市が1.45%とされています。

<都市計画税の税率>
※地方税法702条の4
「都市計画税の税率は、100分の0.3を超えることができない。」

 都市計画税は目的税ですが、税率は0.3%を超えることはできません。
 なお、東京都23区の都市計画税の税率は、住宅用地の範囲に限り都税条例により減額特例(0.15%)が行われています。

固定資産税は都道府県でも課税される

 固定資産税は本来市町村税ですが、一部は都道府県でも課税されています。

 これは、あまり知られていませんが、一定の限度額を超える大規模償却資産(固定資産税)は都道府県で課税されています。

 大規模の償却資産が一つの市町村に偏ることを是正する「税源の偏在を是正する」のが目的で、その市町村の存する都道府県が課税します。

 代表的な資産としては、船舶、航空機、鉄軌道などがあります。

 また、大規模都市以外の市長村の大規模非木造家屋評価は県(県税事務所)により行われています。

 なお、東京23区の固定資産税は、東京都(都税事務所)が全面的に評価・課税しています。
 
2022/04/12
 

 

(第118号)宅地内の「赤道」が公道に認定されている問題点

 
(投稿・令和6年9月)

 今回は、宅地内の「赤道」(あかみち)問題ですが、必ずしも固定資産税がメインではありませんが、是非このような事実を知っていただきたいと思います。

※なお、この「赤道」問題は必ずしも全国全ての市町村で行われているものではなく、以下の事例は筆者が居住しているY市での内容です。市町村によっては、「宅地内の道路を公道として認定していない」場合もあるようです。

「赤道」(あかみち)とは何か

 
 「赤道」とは、古くから道路として利用された土地のうち、道路法の適用のない法定外公共物である道路(国有地)であったため、公図上で地番が記載されず赤色で着色されていたことから「赤道」と呼ばれています(里道とも言われています)。
(水路は青色で着色されていたことから「青道」と呼ばれています。)

 明治9年(1876年)太政官達第60号「道路ノ等級を廃し国道県道里道を定む」により、道路はその重要度によって国道・県道・里道の3種類に分けられました。

 大正8年(1919年)に(旧)道路法が施行され、いったん全ての道路は国の営造物(国有地)とされ、府県道は府県道知事が、市町村道は市町村長が管理するようになりました。その際、重要な里道のみを市町村道に指定したため、それ以外の里道については道路法の適用外で国有のまま取り残されました。
 里道のままとされた道路は、小さな路地や農道、山道(林道、けもの道)です。

 そこで、市町村道に指定された道路は市町村の道路台帳に登録され、実質的な道路状態の管理や維持が行われましたが、未登録の里道はその多くが公図に「赤線」で記載があるのみで、実質的な維持管理は周辺の住民任せで放置されていたのが実情でした。

 そして、平成12年4月1日に地方分権一括法が施行され、国土交通省(旧建設省)所管の「赤道(里道)・青道」などのいわゆる法定外公共物を無償で市町村へ譲与(所有権移転)されることになりました。
 この制度の譲与期間は、国有財産特別措置法の一部改正に伴う経過措置により平成17年3月31日までとなっており、各市町村は申請に基づいて譲与を受けることになりました。

 つまり、「赤道(里道)・青道」は国から市町村が無償で譲り受けているのです。

道路とは一般交通の用に供する道

 
 「赤道」でも普通に道路として使用されていれば問題は無いのです(そのケースは現に存在しています)が、多くの「赤道」は建物が存在する宅地内を通っているのです。

 例えば50年以上前から住み続けている宅地において、敷地内に「赤道」が通っているのですが、それが公道と指定されている場合があります。 

 「そもそも道路とは何か」ということですが、道路法第2条に道路の定義が規定されていますが、「道路とは、一般交通の用に供する道」ですので、宅地内に公道がある筈が無いのです。

 建物の敷地内に公道が通っていること、この状況は全国的にも多いのではないかと思いますが、これは問題ではないでしょうか。

<道路法—用語の定義>
「第2条1項
この法律において「道路」とは、一般交通の用に供する道で次条各号に掲げるものをいい……。」
<道路の種類>
「第3条
道路の種類は、左に掲げるものとする。
① 高速自動車国道
② 一般国道
③ 都道府県道
④ 市町村道」

 筆者は、Y市のある方から「敷地内に『赤道』があるのですが、どうすれば良いでしょうか」との相談を受けています。

 下記の左図は登記所の公図ですが、道路部分は地番が入っていません。昔はこの部分が赤色で着色されていたため「赤道」と呼ばれています。(現在の公図では、道路は赤色にはなっていません。)

 また、右図はY市の道路の認定路線図ですが、ここには「●●466」と認定路線番号が入っていますので、公道として指定されていることになります。


 
※ 認定道路とは
 道路法が適用される都道府県道、市町村道等を通称「認定道路」と呼んでいます。この認定道路とは、道路法に規定する路線の認定(道路法第7条、8条)、区域の決定(道路法第18条1項)供用の開始(道路法第18条2項)の行政行為を経た道路のことです。

 宅地内を通っている「赤道」は既に道路(公道)としての機能は果たしておらず、実質的な維持管理も土地所有者任せとされているのが実態なのです。

 本来、50年も建物の敷地として使用していれば時効取得になる筈なのですが。

 市町村では、この「取得時効」を防ぐために公道指定(路線認定)をしているのか、と疑わざるを得ません。

 しかし訴訟も大変なので、現実的には「赤道」の土地所有者は市町村から払下げを受ける(買い取る)方法に従っているのです。

「赤道」払下げの手続

 
 ところで、「赤道」を市町村から払下げを受ける場合、次の複雑な手続きや費用が発生します。

(1)土地測量と「赤道」部分の特定

 「赤道」の払下げを受ける際には、土地所有者の責任で土地測量を行い、宅地部分の面積と「赤道」部分の面積を確定する必要があります。当然、測量事務所に費用を支払うことにもなります。(市町村によっては補助金制度があります。)

(2)「赤道」沿いの所有者の承諾書

 払下げを受ける所有者の責任で「赤道」沿いの他の所有者の「承諾書」を取得する必要があります。
 何故、払下げを受ける所有者が「赤道」沿いの他の所有者から「承諾書」を取得する必要があるのか、根拠の法律も無いし理解できません。

(3)市町村議会での「公道廃止決議」

 宅地内の「赤道」が公道になっている場合は、議会での「公道廃止決議」が必要になります。この「公道廃止決議」により、道路から市町村の普通財産へと変更になります。
 つまり、土地所有者は市町村から普通財産を購入することになるのです。

(4)払下げ費用の支払い

 「赤道」が公道とされている市町村では、宅地所有者は市町村から普通財産の払下げを受ける(買い取る)ことになりますのが、市町村で決められている土地代金を支払うことになります。計算方法は市町村毎に異なると思われます。

※Y市の払下げ土地代金(計算方法の例)
<地価公示価格(又は払下げ対象地の固定資産税路線価÷0.7)×1/2×実測面積>
(商業地の場合は1/2の箇所が0.8。)

※固定資産税路線価は地価公示価格の7割ですので(固定資産税路線価÷0.7=地価公示価格)です。

固定資産税の非課税を確認

 
 そもそも、建物の敷地(宅地)内に公道(「赤道」)があることが正しいのか疑わしいものですが、仮に、敷地内に「赤道」が通っていることが分かった場合は、市町村で「赤道」への対策を確認してください。

 ただし、多くの市町村では、「赤道」という表現ではなく「法定外公共物」の用語が多いようです。

 なお、宅地内であっても「赤道」(公道)の固定資産税(土地)は非課税であるべきなのです。上記Y市の場合は、固定資産税が非課税となっています。
 
2024/09/17/15:00