(第70号)「太陽光パネル設置用地」(その他の雑種地)の固定資産税評価について

 
(投稿・平成27年-見直し・令和6年8月)

 今回は、再生可能エネルギー発電施設用地、なかでも「太陽光パネル設置用地」の固定資産税評価(その他の雑種地)について説明します。

 太陽光パネルの設置は、他の風力・水力・地熱等とともに再生可能エネルギーの固定価格買取制度が平成24年7月にスタートしました。

 太陽光発電は、温室効果ガスを排出せず、燃料費も不要であり、非常用電源としても利用可能という有用な電源です。

 平成25年9月に総務省により行われた「再生可能エネルギー発電施設の用に供する土地に係る固定資産税評価に関する調査」(以下「実態調査」)において、太陽光の稼働が192箇所、見込が975箇所となっています。

 「太陽光パネル設置用地」は歴史が新しいこともあって、固定資産税評価の方法も必ずしも統一されていない実態があります。

「太陽光パネル設置用地」は雑種地

 土地は様々な利用がなされていますが、地目により価格事情を異にしますので、地目ごとに評価方法が定められています。

 そこで、まず「太陽光パネル設置用地」の地目は何かということになります。

 ここでは土地に直接太陽光パネルを設置して発電を行うものを仮定しますが、その場合、用地の大部分は建物を必要としない(建築物に該当しないよう設計されるケースが多い)ことから、その地目は雑種地とされるのが一般的です。

 前記の総務省の実態調査においても、8割超の市町村において、「太陽光パネル設置用地」は雑種地の地目認定されています。

 また、「太陽光パネル設置用地」は雑種地のうちの「その他の雑種地」に当たります。

 「その他の雑種地」の評価は、固定資産評価基準には「売買実例地比準方式」と「近傍地比準方式」の2つの方法が規定されています。

 「売買実例方式」は、雑種地の売買実例価額から評定する適正な時価によってその価額を求める方法ですが、「太陽光パネル設置用地」は一般的な宅地と比較して新しい利用形態であることから、売買実例も少ないものと思われます。

 総務省の実態調査によっても、この方式によって評価された「太陽光パネル設置用地」は1割未満となっています。したがって、「太陽光パネル設置用地」の固定資産税評価では、「その他の雑種地」のうちの「近傍地比準方式」を説明します。

「その他雑種地」の「近傍地比準方式」

 「近傍地比準方式」は、市町村内に売買実例価額がない場合においては、土地の位置、利用状況等を考慮し、附近の土地の価額に比準してその価額を求める方法です。

 方法としては、まず「太陽光パネル設置用地」の評価にあたり、比準元(地目)を選定し、次に、比準元から比準を行うことになります。

比準元の選定

 「太陽光パネル設置用地」の比準元の選定においては、「土地の位置、利用状況等」を考慮する必要があります。

 位置については、「附近の土地」とされておりますが、鉄軌道用地の評価においては「沿接する」との用語が用いられており、この両者の違いに留意する必要があります。

 「その他の雑種地」では「附近」ということですので、例えば、必ずしも接続する路線価でなくても良く、社会通念として「近い」と解される範囲内であれば良い訳です。

 次に、利用状況については、附近に類似の雑種地があれば、その雑種地の選定で良いのですが、実態としてそのような雑種地が存在しない場合が多いと思われます。

 先の実態調査においても、全国の「太陽光パネル設置用地」のうち9割弱の土地の評価において、比準元となる「附近の土地」が宅地とされています。

 比準元が宅地である場合の雑種地評価の比準としては、①宅地間比準と②地目間比準の2段階の比準作業が行われることになります。

宅地間比準(第一段階)

 この方法は、比準元の宅地と評価対象地(宅地化が想定される「太陽光パネル設置用地」)との間で比準を行うものです。つまり、本来は「太陽光パネル設置用地」は雑種地ではありますが、一旦そこを宅地と想定し、宅地同士の比準を行います。

 ここでは、通常の宅地評価で考慮される要素である地域的格差及び個別的格差を比準することになります。

地目間比準(第二段階)

 次に、宅地と「その他の雑種地」の間における格差、すなわち、同位置・同形状の土地に係る地目間の格差を反映するための比準となります。

 この場合、評価対象地である「その他の雑種地」が宅地となるべき要素として、造成費相当額が主なものとなります。つまり、想定された宅地としての価格から造成費相当額を控除して求めることになります。

 この場合、市町村によっては、造成費相当額ではなく、一定の比準割合を設定して適用する方法も多く行われています。

 この地目間比準は、本来は評価対象地が宅地化される際の格差が査定されるべきものであり、単に造成費相当額を控除するのではなく、他の要素があれば控除対象として適正な価格が求められるべきであります。

「太陽光パネル」には償却資産が課税

 以上のとおり、「太陽光パネル設置用地」は土地で地目は雑種地のなかの「その他の雑種地」となりますが、「太陽光パネル」自体には償却資産が課税されています。

 なお、この「太陽光パネル」の償却資産の評価・課税については、市町村単位で「わが町特例」による減額特例が適用されています。
 
2022/06/12/15:00
 

 

(第69号)雑種地の固定資産税評価について(その他の雑種地)

 
(投稿・令和4年6月-見直し・令和6年8月)

 今回は第68号「雑種地の固定資産税評価について(基本編)」でも解説しましたが、雑種地の中でも種類が多いのは「その他の雑種地」になります。

 「その他の雑種地」の例としては、駐車場、資材・廃材置場、太陽光パネル設置用地、干場、鉄塔用地、私道、農業用施設用地、高圧線下地等があります。

 

「その他の雑種地」評価の基本

 固定資産評価基準による「その他の雑種地」の評価方法は、①売買実例地比準方式と②近傍地比準方式が規定されています。

① 売買実例地比準方式
 雑種地の売買実例価額から評定する適正な時価によってその価額を求める方法です。

② 近傍地比準方式
 市町村内に売買実例がない場合においては、土地の位置、利用状況等を考慮し、附近の土地の価額に比準してその価額を求める方法です。

<雑種地の固定資産税評価>
 

 「その他の雑種地」は上記図の赤枠内ですが、①の売買実例地比準方式が原則ですが、売買実例が少ないことから、多くの市長村では②の近傍地比準方式により評価されているのが実際です。

そこで以降は、②の近傍地比準方式の解説になります。

「その他の雑種地」の近傍地比準方式

市街化区域内の「その他の雑種地」

 市街化区域内の「その他の雑種地」の評価は、宅地に準ずるものとし、当該雑種地を宅地に転用する場合において通常必要と認められる造成費相当額を控除して求めます。

市街化調整区域内の「その他の雑種地」

 市街化調整区域内に所在する雑種地の評価は、原則として、造成費相当額控除前の基本価額を70%減額(30%評価)するものとします。

比準割合表により求める方法

 上記の造成費相当額控除方式は、必ずしも全ての市長村で採用されている評価方法ではなく、多くの市長村では、「固定資産評価事務取扱要領」(市長村ごとに名称が異なる)において、雑種地の費目別に比準割合表を設定し、それを適用して評価額を求めます。
 
2022/06/11/12:00
 

 

(第68号)雑種地の固定資産税評価について(基本編)

 
(投稿・令和4年6月-見直し・令和6年8月)

 今号は、固定資産税の地目のうち雑種地の固定資産税評価について、基本的な解説になります。

 その前に、固定資産税の地目にはどのような種類があるかですが、固定資産評価基準には、次の9種類の地目が定められています。

<固定資産評価基準の地目>
※固定資産評価基準第1章第1節、一土地評価の基本
「土地の評価は、次に掲げる土地の地目の別に、それぞれ、以下に定める評価の方法によって行うものとする。(中略)(1)田、(2)畑、(3)宅地、(4)鉱泉地、(5)池沼、(6)山林、(7)牧場、(8)原野、(9)雑種地」

 なお、固定資産税の地目については、第16号「固定資産税(土地)の地目認定は現況主義」がありますので、ご覧ください。

 
 このように固定資産評価基準では土地の地目が9種類規定されていますが、雑種地は「(1)田~(8)原野」の8種類以外の全てを含むため様々な種類となります。

 そのため、各市町村においては、この雑種地の評価について、市町村毎の『固定資産評価事務取扱要領』により評価方法(「所要の補正」)が詳細に定められています。

固定資産評価基準の雑種地

 まず、固定資産評価基準で雑種地について、どのように定められているかについてみてみます。

<雑種地の固定資産税評価>
 
<固定資産税の雑種地>
※固定資産評価基準・第10節
「一.雑種地の評価
雑種地の評価は、二及び三に掲げる土地を除き、雑種地の売買実例価額から評定する適正な時価によってその価額を求める方法によるものとする。ただし、市町村内に売買実例価額がない場合においては、土地の位置、利用状況等を考慮し、附近の土地の価額に比準してその価額を求める方法によるものとする。」

 この固定資産評価基準にある「二及び三に掲げる土地を除き」の「二と三」は次のとおりとなります。
「二……「ゴルフ場等用地の評価」(ゴルフ場、遊園地、運動場、野球場、競馬場及びその他これらに類似する施設の用に供する一団の土地)」
「三……「鉄軌道用地の評価」

 つまり、固定資産評価基準では、この「ゴルフ場等用地の評価」及び「鉄軌道用地の評価」の評価方法が具体的に規定されているのみで、他は「二及び三を除く」ものは「その他の雑種地」とされています。

「ゴルフ場」「鉄軌道」用地の評価

 それでは、まず「ゴルフ場用地」と「鉄軌道用地」の評価についてみていきます。

「ゴルフ場用地」の評価について

 「ゴルフ場用地」の評価は、ゴルフ場を開設するに当たり要した土地の取得価額に、ゴルフ場用地の造成費を加算した価額を基準として、ゴルフ場の位置、利用状況等を考慮して求めます。
 なお、クラブハウスの敷地は宅地と認定されます。
 ゴルフ場用地の評価額=(ゴルフ場用地の取得価額+ゴルフ場の造成費)×位置・利用状況による補正

「鉄軌道用地」の評価について

 「鉄軌道用地」の評価は、沿接する土地の価額」の3分の1で評価します。
 鉄軌道用地の評価額=沿接する土地の価額×1/3
 ここで「沿接する」との意味は、「近接する」や「附近の」とは異なりますのでご注意ください。
 「沿接する」とは、まさに直接接していることで、線路敷地に直接接している状態にあることになります。

 なお、鉄軌道用地が「運送の用に供する部分」と「運送以外の用に供する部分」と複合的に利用されている土地の評価については、複合利用鉄軌道用地として評価します(この説明は省略します)。

「その他の雑種地」の評価

 固定資産評価基準による「その他の雑種地」の評価方法は、前記のとおり
雑種地の売買実例価額から評定する適正な時価によってその価額を求める方法
市町村内に売買実例価額がない場合においては、土地の位置、利用状況等を考慮し、附近の土地の価額に比準してその価額を求める方法、の2通りとなっています。

 原則は①の売買実例価額から求める方法(売買実例地比準方式)によりますが、②売買実例価額がない場合には土地の位置、利用状況を考慮し、附近の土地の価額に比準して求める方法(近傍地比準方式)となります。

 しかし、どの市町村でも②の近傍地比準方式により評価されているのが実際のところです。

 ところで、「その他の雑種地」の例としては、駐車場、資材・廃材置場、太陽光パネル設置用地、干場、鉄塔用地、私道、農業用施設用地、高圧線下地等があげられますが、これ以外にも、その他の全ての土地が「その他の雑種地」となります。

 また、この「その他の雑種地」の評価については、種類が多いということもありますが、全国の市町村においての評価方法も様々となっており、これまでも「一般社団法人 財産評価システム研究センター」を中心に調査・研究が続けられています。
 
2022/06/10/05:00
 

 

(第67号)住宅用地の適用が見落とされた「過払税額」は何年分返還されるか

 
(投稿・令和4年6月-見直し・令和6年8月)

 先日、読者の方から次のような相談をいただきました。

「事業を廃止し、住まいの土地が小規模住宅用地になったにもかかわらず、減額特例が適用されなかったので、市役所と交渉し固定資産税を返還してもらった。しかし、返還されたのは5年間分だけで、申告しなかったので3割相殺はやむを得ないとしても、5年を越えて返してもらえるのではないか。」

 そこで今回は、住宅用地の減額特例の要件に該当するにもかかわらず、減額が見落とされ納税した「過払税額」は何年間遡って返還されるか(されるべきか)について、改めて考えてみたいと思います。

 これまで「住宅用地の減額特例」については、第5号、第20号、第32号、第34号でも解説してきました。

 

住宅用地は申告が義務づけられている

 住宅用地については、地方税法により、市町村の条例により申告を義務づけることが認められています。

<固定資産の申告>
※地方税法384条
「市町村長は、住宅用地の所有者に、当該市町村の条例の定めるところによつて、当該年度に係る賦課期日現在における当該住宅用地について、その所在及び面積、その上に存する家屋の床面積及び用途、その上に存する住居の数その他固定資産税の賦課徴収に関し必要な事項を申告させることができる。ただし、当該年度の前年度に係る賦課期日における当該住宅用地の所有者が引き続き当該住宅用地を所有し、かつ、その申告すべき事項に異動がない場合は、この限りでない。」

 そこで、参考までに東京都の税条例を紹介します。(全国の他の市町村の条例も、東京都のものとほぼ同様です。)

<住宅用地の申告義務>
※東京都税条例136条の2
「法第349条の3の2第1項に規定する住宅用地(以下「住宅用地」という。)の所有者は、当該年度の賦課期日現在における当該住宅用地について、当該年度の初日の属する年の1月31日までに、次に掲げる事項を記載した申告書を知事に提出しなければならない。ただし、当該年度の前年度に係る賦課期日における当該住宅用地の所有者が引き続き当該住宅用地を所有し、かつ、既に申告した事項に異動がない場合は、この限りでない。
1.住宅用地の所有者の住所及び氏名又は名称
2.住宅用地の所在及び地積
3.住宅用地の上に存する家屋の所有者、所在、家屋番号、種類、構造、床面積、居住部分の床面積及び居住の用に供した年月日、住宅用地の上に存する住居の数(法第349条の3の2第2項に規定する住居の数をいう。)
4.前各号に掲げるもののほか、知事において必要があると認める事項」

 しかも、条例には、申告が無い場合は罰則(過料)が科される規定まであります。

<固定資産に係る不申告に関する過料>
※東京都税条例138条
「固定資産の所有者(法第343条第8項及び第118条第5項の場合にあつては、これらの規定によつて所有者とみなされる者とする。)が法第383条又は第136条の2の規定によつて申告すべき事項について正当な事由がなくて申告をしなかつた場合においては、その者に対し、10万円以下の過料を科する。」

固定資産税は申告に基づかない賦課課税

 ところで、固定資産税は申告に基づく申告課税方式ではなく、行政自らが調査し課税する賦課課税方式であることから、この申告義務との関係はどうなのかとの疑問が残ります。

 この件について、浦和地裁判決では、固定資産税の条例による申告義務と賦課課税方式について、次のように判断されています。

※ 浦和(現さいたま)地裁判決(平成4年)
「固定資産税の賦課に関し必要な事項を申告させることができるとしたのは、納税義務者に対して右申告義務を課することにより課税当局において減税特例の要件に該当する事実の把握を容易にしようとしただけのものであって、右申告がないからといって、減税特例を適用しないとすることが許されるものではないことは課税の当局者にとっては見易い道理である。」

 つまり、固定資産税は賦課課税であるため、仮に法律(条例)で申告が義務づけられているものの、申告が無くても住宅用地の減額特例は適用されるべきである、ということです(この件については、別途改めて解説します)。

「過払税額」は何年間返還されるか

 まず、地方税法では、「還付金の消滅時効は5年」と定められています。

<還付金の消滅時効>
※地方税法18条の3
「地方団体の徴収金の過誤納により生ずる地方団体に対する請求権及びこの法律の規定による還付金に係る地方団体に対する請求権(以下第20条の9において「還付金に係る債権」という。)は、その請求をすることができる日から5年を経過したときは、時効により消滅する。」

 しかし、上記の浦和地裁判決及び神戸地裁・大阪高裁判決はいずれも「市職員に過失があったとして、国家賠償法を適用して5年分を超える返還」を認めています。

※ 大阪高裁判決(平成18年)
「住宅用地の特例の適用の有無に関する事項は、固定資産課税台帳の登録事項であること、同登録事項に関する争訟方法は、地方税法上、固定資産評価審査委員会に対する審査の申し出及び同委員会の審査決定の取消しの訴えに限定されていること、被控訴人が本件課税処分につき、これらの手続をしていないこと……これらはあくまで税法上の手続であって、法令上、これらの手続を経ない限り、国家賠償訴訟を提起できないという根拠は見出し難いものというべきである。」

※ 国家賠償法1条1項
「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」

 また、国家賠償法4条では民法の規定を準用していることから、不法行為の時効期間は最高20年となります。

<不法行為による損害賠償請求権の期間の制限>
※民法724条
「不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき。
二 不法行為の時から20年間行使しないとき。」

 つまり、課税当局の職員に過失があった場合は、「過払税額」は最高20年間遡って返還されることになります。
 20年間の場合では、地方税法上の還付金が5年分、残りの15年間は「還付不能金=補填金」となります。

 なお、固定資産税の評価・課税誤りによって納め過ぎた場合、その還付金又は返還金は何年間遡って還してもらえるかについては、第27号と第28号で説明しています。

 
2022/6/10/05/00
 

 

(第66号)家屋と償却資産の二重課税(課税誤り)に注意(「建築設備」の場合)

 
(投稿・令和4年6月-見直し・令和6年8月)

 今号は、固定資産税家屋の課税誤りの例として多く見られる、建築設備の「家屋と償却資産の二重課税」(課税誤り)についてです。

 家屋の建築設備の中にも、家屋に含めず、償却資産として取り扱うものがあり、判定の困難な場合も多く、中には家屋と償却資産が二重に課税されている課税誤りもあります。

 家屋は所有者の申告によらず役所が一方的に評価・課税する「賦課課税方式」ですが、償却資産は申告により課税される「申告課税方式」であることも課税誤りの原因の一つと思われます。

 償却資産の基本については、第31号「固定資産税の償却資産とは(基本編)」で説明してあります。

 

家屋の建築設備とは

 まず、家屋の建築設備とはどういうものかです。

 家屋の評価方法については、第39号及び40号で説明しましたが、木造家屋、非木造家屋ともに、まず用途別区分を行い、次に部分別区分を行った上で評点数を付設します。

 
 家屋の建築設備は、木造、非木造ともに部分別区分の一部ですが、ここに非木造家屋の部分別区分表を掲げます。

「非木造家屋の部分別区分」

家屋の建築設備の要件

 上の表の⑫が非木造家屋の建築設備になります。
 家屋は、居住、作業、貯蔵その他の目的に必要な、外界から遮断された空間を提供することを使命とするものであり、その目的とする機能を十分に発揮させるために、それぞれの目的に適した設備が設置されています。

 この目的により家屋に設置される設備は多種多様ですが、家屋に含めて評価するものとされる建築設備は、固定資産評価基準で次のように規定されています。

<建築設備の評価>
※固定資産評価基準第2章第1節七
「家屋の所有者が所有する電気設備、ガス設備、給水設備、排水設備、衛生設備、冷暖房設備、空調設備、防災設備、運搬設備、清掃設備等の建築設備で、家屋に取り付けられ、家屋と構造上一体となつて、家屋の効用を高めるものについては、家屋に含めて評価するものとする。」

「家屋の所有者が所有する」

 「家屋の所有者が所有する」とは、家屋の所有者がその建築設備の所有権を有するものであることとなります。
 なお、家屋の所有者以外の者によってその家屋に取り付けられたものであっても、民法第242条の「不動産の付合」により、家屋の所有者がその取り付けられた」ものの所有権を取得した場合も該当します。

<不動産の付合>
※民法第242条
「不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその附属させた他人の権利を妨げない。」

 しかし、実際に当該附帯設備を使用収益しているのは、家屋の所有者ではなくテナントであることから、附帯設備を取り付けた者(テナント)を所有者とみなして固定資産税(償却資産)を課税することができるものとされています。

<地方税法第343条10項>
「10 家屋の附帯設備であつて、当該家屋の所有者以外の者がその事業の用に供するため取り付けたものであり、かつ、当該家屋に付合したことにより当該家屋の所有者が所有することとなつたもの(以下この項において「特定附帯設備」という。)については、当該取り付けた者の事業の用に供することができる資産である場合に限り、当該取り付けた者をもつて第一項の所有者とみなし、当該特定附帯設備のうち家屋に属する部分は家屋以外の資産とみなして固定資産税を課することができる。」

「家屋に取り付けられ、家屋と構造上一体なっている」

 同一の設備であっても、その設備の取付の状況によって、家屋の評価に含めるものと含めないものが生ずることとなります。

  家屋の評価に含める建築設備は、当該家屋の特定の場所に固定されているものであることです。
 建築設備が埋込方式又は半埋込方式により取り付けられているものは家屋の評価に含めることとなりますが、取り外しが容易で、別の場所に自在に移動できるものは家屋の評価に含めません。

  壁仕上、天井仕上、床仕上等の裏側に取り付けられているものは家屋の評価に含めます。
 また、家屋に固定されていない配線であっても、壁仕上、天井仕上、床仕上等の裏側に取り付けられているものは、家屋と構造上一体となっているものとして家屋に含めます。

  屋外に設置された電気の配線及びガス・水道の配管並びに家屋から独立して設置された焼却炉等は、家屋と構造上一体となっているものではないので、家屋には含めません。

  給水設備の給水タンクや空調設備の屋外機などが屋外に設置されている場合であっても、配管、配線等により屋内の機器と一体となって一式の建築設備として家屋の効用を高めているものは一式をもって家屋に含めます。

  消耗品に属するものは、家屋に含めません。例えば、電気設備・照明器具設備における電球、蛍光管等は家屋に含めません。

「家屋の効用を高めるもの」

 「家屋の効用を高めるもの」とは、建築設備を家屋に設置することにより、「家屋自体の利便性」が高まるものをいいます。
 例えば、工場等のように物の生産、加工を業とする者がその業務のために使用する家屋には、通常の家屋に設置される設備のほか、物の生産、加工のために必要とされる設備が設置されている場合、このような設備は家屋の評価には含まれません。

建築設備の家屋と償却資産

 次に、建築設備で「家屋に含めるもの」と「償却資産とするもの」の例を掲げます。
 下表は例示であり、必ずしもこのとおりとならない場合もあります。「家屋に含めるもの」については、「家屋に取り付けられ、家屋と構造上一体となっている」ことに特に留意を要します。

 よく見られる家屋と償却資産の二重課税のケースは、賦課課税である家屋として評価計算されているにも拘わらず償却資産として申告されている場合です。この場合、家屋を評価する担当者と償却資産を担当する担当者が異なる場合があることから、二重評価に気づかず課税され続けている、ということになるのです。

「家屋と償却資産の二重課税に注意」

 
2022/6/9/22:00