(第68号)雑種地の固定資産税評価について(基本編)

 
(投稿・令和4年6月-見直し・令和7年3月)

 今回は、固定資産税の地目のうち雑種地の固定資産税評価について、基本的な解説になります。

 その前に、固定資産税の地目にはどのような種類があるかですが、固定資産評価基準には、次の9種類の地目が定められています。

<固定資産評価基準の地目>
「固定資産評価基準第1章第1節(土地評価の基本)」
「土地の評価は、次に掲げる土地の地目の別に、それぞれ、以下に定める評価の方法によって行うものとする。(中略)(1)田、(2)畑、(3)宅地、(4)鉱泉地、(5)池沼、(6)山林、(7)牧場、(8)原野、(9)雑種地」

 なお、固定資産税の地目については、第16号「固定資産税(土地)の地目認定は現況主義」がありますので、ご覧ください。

 
 このように固定資産評価基準では土地の地目が9種類規定されていますが、雑種地は「(1)田~(8)原野」の8種類以外の全てを含むため様々な種類となります。

 そのため、各市町村においては、この雑種地の評価について、市町村毎の『固定資産評価事務取扱要領』により評価方法(「所要の補正」)が詳細に定められています。

固定資産評価基準の雑種地

 まず、固定資産評価基準で雑種地について、どのように定められているかについてみてみます。

<雑種地の固定資産税評価>
 
<固定資産税の雑種地>
「固定資産評価基準・第10節」
「一.雑種地の評価
雑種地の評価は、二及び三に掲げる土地を除き、雑種地の売買実例価額から評定する適正な時価によってその価額を求める方法によるものとする。ただし、市町村内に売買実例価額がない場合においては、土地の位置、利用状況等を考慮し、附近の土地の価額に比準してその価額を求める方法によるものとする。」

 この固定資産評価基準にある「二及び三に掲げる土地を除き」の「二と三」は次のとおりとなります。
「二……「ゴルフ場等用地の評価」(ゴルフ場、遊園地、運動場、野球場、競馬場及びその他これらに類似する施設の用に供する一団の土地)」
「三……「鉄軌道用地の評価」

 つまり、固定資産評価基準では、この「ゴルフ場等用地の評価」及び「鉄軌道用地の評価」の評価方法が具体的に規定されているのみで、他は「二及び三を除く」ものは「その他の雑種地」とされています。

「ゴルフ場」「鉄軌道」用地の評価

 それでは、まず「ゴルフ場用地」と「鉄軌道用地」の評価についてみていきます。

「ゴルフ場用地」の評価について

 「ゴルフ場用地」の評価は、ゴルフ場を開設するに当たり要した土地の取得価額に、ゴルフ場用地の造成費を加算した価額を基準として、ゴルフ場の位置、利用状況等を考慮して求めます。
 なお、クラブハウスの敷地は宅地と認定されます。
 ゴルフ場用地の評価額=(ゴルフ場用地の取得価額+ゴルフ場の造成費)×位置・利用状況による補正

「鉄軌道用地」の評価について

 「鉄軌道用地」の評価は、沿接する土地の価額」の3分の1で評価します。
 鉄軌道用地の評価額=沿接する土地の価額×1/3

 ここで「沿接する」との意味は、「近接する」や「附近の」とは異なりますのでご注意ください。
 「沿接する」とは、まさに直接接していることで、線路敷地に直接接している状態にあることになります。

 なお、鉄軌道用地が「運送の用に供する部分」と「運送以外の用に供する部分」と複合的に利用されている土地の評価については、複合利用鉄軌道用地として評価します。

「その他の雑種地」の評価

 固定資産評価基準による「その他の雑種地」の評価方法は、前記のとおり
売買実例地比準方式—雑種地の売買実例価額から評定する適正な時価によってその価額を求める方法
近傍地比準方式—市町村内に売買実例価額がない場合においては、土地の位置、利用状況等を考慮し、附近の土地の価額に比準してその価額を求める方法、の2通りとなっています。

 原則は①の売買実例価額から求める方法(売買実例地比準方式)によりますが、②売買実例価額がない場合には土地の位置、利用状況を考慮し、附近の土地の価額に比準して求める方法(近傍地比準方式)となります。

 しかし、どの市町村でも②の近傍地比準方式により評価されているのが実際のところです。

 ところで、「その他の雑種地」の例としては、駐車場、資材・廃材置場、太陽光パネル設置用地、干場、鉄塔用地、私道、農業用施設用地、高圧線下地等があげられますが、これ以外にも、その他の全ての土地が「その他の雑種地」となります。

 また、この「その他の雑種地」の評価については、種類が多いということもありますが、全国の市町村においての評価方法も様々となっています。
 
2022/06/10/05:00
 

 

(第67号)住宅用地の適用が見落とされた「過払税額」は何年分返還されるか

 
(投稿・令和4年6月-見直し・令和7年3月)

 先日、読者の方から次のような相談をいただきました。

「事業を廃止し、住まいの土地が小規模住宅用地になったにもかかわらず、減額特例が適用されなかったので、市役所と交渉し固定資産税を返還してもらった。しかし、返還されたのは5年間分だけで、申告しなかったので3割相殺はやむを得ないとしても、5年を越えて返してもらえるのではないか。」

 そこで今回は、住宅用地の減額特例の要件に該当するにもかかわらず、減額が見落とされ納税した「過払税額」は何年間遡って返還されるか(されるべきか)について、改めて考えてみたいと思います。

 これまで「住宅用地の減額特例」については、第5号、第20号、第32号、第34号でも解説してきました。

 

住宅用地は申告が義務づけられている

 住宅用地については、地方税法により、市町村の条例により申告を義務づけることが認められています。

<固定資産の申告>
「地方税法384条」
「市町村長は、住宅用地の所有者に、当該市町村の条例の定めるところによつて、当該年度に係る賦課期日現在における当該住宅用地について、その所在及び面積、その上に存する家屋の床面積及び用途、その上に存する住居の数その他固定資産税の賦課徴収に関し必要な事項を申告させることができる。ただし、当該年度の前年度に係る賦課期日における当該住宅用地の所有者が引き続き当該住宅用地を所有し、かつ、その申告すべき事項に異動がない場合は、この限りでない。」

 そこで、参考までに東京都の税条例を紹介します。(全国の他の市町村の条例も、東京都のものとほぼ同様です。)

<住宅用地の申告義務>
「東京都税条例136条の2」
「法第349条の3の2第1項に規定する住宅用地(以下「住宅用地」という。)の所有者は、当該年度の賦課期日現在における当該住宅用地について、当該年度の初日の属する年の1月31日までに、次に掲げる事項を記載した申告書を知事に提出しなければならない。ただし、当該年度の前年度に係る賦課期日における当該住宅用地の所有者が引き続き当該住宅用地を所有し、かつ、既に申告した事項に異動がない場合は、この限りでない。
1.住宅用地の所有者の住所及び氏名又は名称
2.住宅用地の所在及び地積
3.住宅用地の上に存する家屋の所有者、所在、家屋番号、種類、構造、床面積、居住部分の床面積及び居住の用に供した年月日、住宅用地の上に存する住居の数(法第349条の3の2第2項に規定する住居の数をいう。)
4.前各号に掲げるもののほか、知事において必要があると認める事項」

 しかも、条例には、申告が無い場合は罰則(過料)が科される規定まであります。

<固定資産に係る不申告に関する過料>
「東京都税条例138条」
「固定資産の所有者(法第343条第8項及び第118条第5項の場合にあつては、これらの規定によつて所有者とみなされる者とする。)が法第383条又は第136条の2の規定によつて申告すべき事項について正当な事由がなくて申告をしなかつた場合においては、その者に対し、10万円以下の過料を科する。」

固定資産税は申告に基づかない賦課課税

 ところで、固定資産税は申告に基づく申告課税方式ではなく、行政自らが調査し課税する賦課課税方式であることから、この申告義務との関係はどうなのかとの疑問が残ります。

 この件について、浦和地裁判決では、固定資産税の条例による申告義務と賦課課税方式について、次のように判断されています。

< 浦和(現さいたま)地裁判決(平成4年)>
「固定資産税の賦課に関し必要な事項を申告させることができるとしたのは、納税義務者に対して右申告義務を課することにより課税当局において減税特例の要件に該当する事実の把握を容易にしようとしただけのものであって、右申告がないからといって、減税特例を適用しないとすることが許されるものではないことは課税の当局者にとっては見易い道理である。」

 つまり、固定資産税は賦課課税であるため、仮に法律(条例)で申告が義務づけられているものの、申告が無くても住宅用地の減額特例は適用されるべきである、ということです(この件については、別途改めて解説します)。

「過払税額」は何年間返還されるか

 まず、地方税法では、「還付金の消滅時効は5年」と定められています。

<還付金の消滅時効>
「地方税法18条の3」
「地方団体の徴収金の過誤納により生ずる地方団体に対する請求権及びこの法律の規定による還付金に係る地方団体に対する請求権(以下第20条の9において「還付金に係る債権」という。)は、その請求をすることができる日から5年を経過したときは、時効により消滅する。」

 しかし、上記の浦和地裁判決及び神戸地裁・大阪高裁判決はいずれも「市職員に過失があったとして、国家賠償法を適用して5年分を超える返還」を認めています。

<大阪高裁判決(平成18年)>
「住宅用地の特例の適用の有無に関する事項は、固定資産課税台帳の登録事項であること、同登録事項に関する争訟方法は、地方税法上、固定資産評価審査委員会に対する審査の申し出及び同委員会の審査決定の取消しの訴えに限定されていること、被控訴人が本件課税処分につき、これらの手続をしていないこと……これらはあくまで税法上の手続であって、法令上、これらの手続を経ない限り、国家賠償訴訟を提起できないという根拠は見出し難いものというべきである。」

「 国家賠償法1条1項」
「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」

 また、国家賠償法4条では民法の規定を準用していることから、不法行為の時効期間は最高20年となります。

<不法行為による損害賠償請求権の期間の制限>
「民法724条」
「不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき。
二 不法行為の時から20年間行使しないとき。」

 つまり、課税当局の職員に過失があった場合は、「過払税額」は最高20年間遡って返還されることになります。
 20年間の場合では、地方税法上の還付金が5年分、残りの15年間は「還付不能金=補填金」となります。

 なお、固定資産税の評価・課税誤りによって納め過ぎた場合、その還付金又は返還金は何年間遡って還してもらえるかについては、第27号と第28号で説明しています。

 
2022/6/10/05/00
 

 

(第66号)家屋と償却資産の二重課税(課税誤り)に注意(「建築設備」の場合)

 
(投稿・令和4年6月-見直し・令和7年3月)

 今回は、固定資産税家屋の課税誤りの例として多く見られる、建築設備の「家屋と償却資産の二重課税」(課税誤り)についてです。

 家屋の建築設備の中にも、家屋に含めず、償却資産として取り扱うものがあり、判定の困難な場合も多く、中には家屋と償却資産が二重に課税されている課税誤りもあります。

 家屋は所有者の申告によらず役所が一方的に評価・課税する「賦課課税方式」ですが、償却資産は申告により課税される「申告課税方式」であることも課税誤りの原因の一つと思われます。

 償却資産の基本については、第31号「固定資産税の償却資産とは(基本編)」で説明してあります。

 

家屋の建築設備とは

 まず、家屋の建築設備とはどういうものかです。

 家屋の評価方法については、第39号及び40号で説明しましたが、木造家屋、非木造家屋ともに、まず用途別区分を行い、次に部分別区分を行った上で評点数を付設します。

 
 家屋の建築設備は、木造、非木造ともに部分別区分の一部ですが、ここに非木造家屋の部分別区分表を掲げます。

「非木造家屋の部分別区分」

家屋の建築設備の要件

 上の表の⑫が非木造家屋の建築設備になります。
 家屋は、居住、作業、貯蔵その他の目的に必要な、外界から遮断された空間を提供することを使命とするものであり、その目的とする機能を十分に発揮させるために、それぞれの目的に適した設備が設置されています。

 この目的により家屋に設置される設備は多種多様ですが、家屋に含めて評価するものとされる建築設備は、固定資産評価基準で次のように規定されています。

<建築設備の評価>
「固定資産評価基準第2章第1節七」
「家屋の所有者が所有する電気設備、ガス設備、給水設備、排水設備、衛生設備、冷暖房設備、空調設備、防災設備、運搬設備、清掃設備等の建築設備で、家屋に取り付けられ、家屋と構造上一体となつて、家屋の効用を高めるものについては、家屋に含めて評価するものとする。」

「家屋の所有者が所有する」

 「家屋の所有者が所有する」とは、家屋の所有者がその建築設備の所有権を有するものであることとなります。
 なお、家屋の所有者以外の者によってその家屋に取り付けられたものであっても、民法第242条の「不動産の付合」により、家屋の所有者がその取り付けられた」ものの所有権を取得した場合も該当します。

<不動産の付合>
「民法第242条」
「不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその附属させた他人の権利を妨げない。」

 しかし、実際に当該附帯設備を使用収益しているのは、家屋の所有者ではなくテナントであることから、附帯設備を取り付けた者(テナント)を所有者とみなして固定資産税(償却資産)を課税することができるものとされています。

「地方税法第343条10項」
「 家屋の附帯設備であつて、当該家屋の所有者以外の者がその事業の用に供するため取り付けたものであり、かつ、当該家屋に付合したことにより当該家屋の所有者が所有することとなつたもの(以下この項において「特定附帯設備」という。)については、当該取り付けた者の事業の用に供することができる資産である場合に限り、当該取り付けた者をもつて第一項の所有者とみなし、当該特定附帯設備のうち家屋に属する部分は家屋以外の資産とみなして固定資産税を課することができる。」

「家屋に取り付けられ、家屋と構造上一体なっている」

 同一の設備であっても、その設備の取付の状況によって、家屋の評価に含めるものと含めないものが生ずることとなります。

  家屋の評価に含める建築設備は、当該家屋の特定の場所に固定されているものであることです。
 建築設備が埋込方式又は半埋込方式により取り付けられているものは家屋の評価に含めることとなりますが、取り外しが容易で、別の場所に自在に移動できるものは家屋の評価に含めません。

  壁仕上、天井仕上、床仕上等の裏側に取り付けられているものは家屋の評価に含めます。
 また、家屋に固定されていない配線であっても、壁仕上、天井仕上、床仕上等の裏側に取り付けられているものは、家屋と構造上一体となっているものとして家屋に含めます。

  屋外に設置された電気の配線及びガス・水道の配管並びに家屋から独立して設置された焼却炉等は、家屋と構造上一体となっているものではないので、家屋には含めません。

  給水設備の給水タンクや空調設備の屋外機などが屋外に設置されている場合であっても、配管、配線等により屋内の機器と一体となって一式の建築設備として家屋の効用を高めているものは一式をもって家屋に含めます。

  消耗品に属するものは、家屋に含めません。例えば、電気設備・照明器具設備における電球、蛍光管等は家屋に含めません。

「家屋の効用を高めるもの」

 「家屋の効用を高めるもの」とは、建築設備を家屋に設置することにより、「家屋自体の利便性」が高まるものをいいます。
 例えば、工場等のように物の生産、加工を業とする者がその業務のために使用する家屋には、通常の家屋に設置される設備のほか、物の生産、加工のために必要とされる設備が設置されている場合、このような設備は家屋の評価には含まれません。

建築設備の家屋と償却資産

 次に、建築設備で「家屋に含めるもの」と「償却資産とするもの」の例を掲げます。
 下表は例示であり、必ずしもこのとおりとならない場合もあります。「家屋に含めるもの」については、「家屋に取り付けられ、家屋と構造上一体となっている」ことに特に留意を要します。

 よく見られる家屋と償却資産の二重課税のケースは、賦課課税である家屋として評価計算されているにも拘わらず償却資産として申告されている場合です。この場合、家屋を評価する担当者と償却資産を担当する担当者が異なる場合があることから、二重評価に気づかず課税され続けている、ということになるのです。

「家屋と償却資産の二重課税に注意」

 
2022/6/9/22:00
 

 

(第65号)ゴルフ場クラブハウス(家屋)の需給事情による減点補正率について

 
(投稿・平成27年-見直し・令和7年3月)

 平成23年12月9日、最高裁判所第二小法廷において、島根県邑南町(おおなんちょう)に在るゴルフ場クラブハウス(以下「クラブハウス」という。)の固定資産税家屋の「需給事情による減点補正」が争われた事件について、上告棄却の判決がありました。

 これに先立ち平成22年4月26日、松江地方裁判所においてクラブハウスの「需給事情による減点補正」を求めていた原告(M株式会社)勝訴、被告(邑南町)敗訴の判決が、平成23年1月26日、広島高等裁判所松江支部において、邑南町による控訴が棄却され、これに対して邑南町が最高裁判所に上告した結果、上告棄却となった訳です。

 この判決で、本件クラブハウスの「需給事情による減点補正」の補正率が58%とされました。

 つまり、この補正をする前のクラブハウスの固定資産評価額(邑南町の登録価格)から「需給事情による減点補正」を考慮して58%を超える部分は適正な時価を超えて違法で取り消すべき、とされた訳です。

 この一連の判決は、従来の固定資産税家屋の評価にとってはやや予想外(?)の結論でありました。

 そこで今号は、この判決に関連して固定資産税家屋における「需給事情による減点補正」について解説します。

家屋の評価は再建築価格方式による

 固定資産税の家屋を評価する方法は「再建築価格方式」とされています。

 再建築価格とは、評価する家屋と同様の家屋を新築した場合に必要とされる建築費のことを言います。固定資産税の家屋評価では実際に要した費用(この家屋をいくらで建築したか等)は採用されません。

<評点数の付設>
「固定資産評価基準第2章第1節二」
「各個の家屋の評点数は、当該家屋の再建築費評点数を基礎とし、これに家屋の損耗状況による減点を行って付設するものとする。この場合において、家屋の状況に応じ必要があるものについては、さらに家屋の需給事情による減点を行うものとする。」

 上記の固定資産評価基準にもあるとおり、家屋の評価額は再建築評点数から家屋の損耗の状況による減点を行って求めます。損耗の状況による減点は、通常はその家屋が新築後何年経過しているかで減価する経年減点補正として行われます。

<固定資産税・新築家屋の計算方法>

 本件で争われた「需給事情による減点補正」については、固定資産評価基準では次のように定められています。

<需給事情による減点補正率の算出方法>
「固定資産評価基準第2章第3節六」
「需給事情による減点補正率は、建築様式が著しく旧式となっている非木造家屋、所在地域の状況によりその価額が減少すると認められる非木造家屋等について、その減少する価額の範囲において求めるものとする。」

「需給事情による減点補正」の考え方

 ところで、この「需給事情による減点補正」は、例えば豪雪地帯における家屋など全国的にもかなり限定的に適用されてきたのが実状であります。おそらく、関東圏内の市町村においては「需給事情による減点補正」を適用した実績はほとんど無いのではないかと推測いたします。

 (財)資産評価システム研究センターにより実施(平成18年9月)された全市町村への調査において、約9割の市町村から「需給事情による減点補正率は適用していない」との回答があり、8割を超える市町村が「廃止しても差し支えない」と回答しています。また、「名称を変更すべきではないか」等の議論もされてきました。

 そして、これまでの「需給事情による減点補正」の取扱いも変遷してきました。

 「需給事情による減点補正」として、従来から「建築様式等による補正」「その他特殊事情による減点」「床面積の広さによる補正」「所在地域の状況による補正」とされ、総務省(自治省)の通達により減額率も示された時期があったものの、通達は廃止されてきた経緯があります(取扱は変わらず)。

 なお、今回の一連の判決を受けて、総務省では平成26年3月に全国都道府県・市町村へ新たな通知を発し、定性的な考え方(留意事項)を示しています。

固定資産税評価と不動産鑑定評価

 固定資産評価基準の再建築価格方式は、不動産鑑定評価基準の原価法(積算価格)に由来する手法で類似のものと考えられています。

 不動産鑑定評価基準において、建物を原価法で評価する場合、建物の再調達原価(価格時点において同一の建物を新築することを想定した適正な原価)から、減価の要因に基づき発生した減価額を控除することによって評価します。

 不動産鑑定評価基準による減価の要因は、物理的要因(使用することによる摩滅及び破損、時の経過又は自然的作用により生ずる老朽化等)、機能的要因(建物と敷地との不適応、設計の不良、形式の旧式化、設備の不足等)、経済的要因(近隣地域の衰退、不動産とその付近の環境との不適合、付近の不動産との比較における市場性の減退等)とされています。これらの要因は独立しているものではなく、相互に関連して影響を与えていることに留意する必要があります。

 そして、これらの減価額を求める方法には、耐用年数に基づく法と観察減価法の二つの方法がありますが、後者の観察減価法は建物の有形的状態の観察を基礎とすべきとされています。

 実は、固定資産評価基準の再建築価格方式と不動産鑑定評価基準の原価法は類似しているものの、必ずしもピッタリと重なるものではありません。

 固定資産税では土地と家屋は独立して別々に評価されるとともに、固定資産評価基準では、家屋の再建築価格を求める際の部分別の再建築評点数等が詳細に規定されています。また、固定資産税の耐用年数も国税のそれと比較するとやや長期に設定され、耐用年数が徒過しても家屋が存する限り残価率2割で評価され課税されることになります。

 これら固定資産税の特徴は、全国同一の基準をもって、大量かつ一括に評価・課税することから要請されたものであります。

本件判決の「需給事情による減点補正」

 松江地方裁判所の判決は、当裁判所が依頼したN鑑定士の鑑定書(以下「地裁鑑定書」という。)に合理性があるとして、全面的に採用した結果であることが分かります。
(※ 筆者は、本訴訟関係者から地裁鑑定書等の写しを頂いております。)

 地裁鑑定書では、土地及び建物の試算価格として積算価格、比準価格、収益価格(直接還元法、DCF法)が求められており、その調整において次のウエイト付けを持って加重平均により鑑定評価額が決定されています。

・積算価格…1,773,575,048円(ウエイト50%)
・比準価格…494,878,063円(ウエイト20%)
・直接還元法…177,681,000円(ウエイト15%)
・DCF法…118,175,000円(ウエイト15%)

 この試算価格を各ウエイトで加重平均した結果、鑑定評価額が1,030,141,537円となり、この価額は積算価格1,773,575,048円を100とした場合の58%にあたり、これを調整率としています。

 また地裁鑑定書では、この調整率は積算価格を基準としたうえでの市場性減価の減価率にあたり、固定資産評価基準での「需給事情による減点補正率」に相当すると結論づけています。

地裁判決の「需給事情による減点補正」

 松江地方裁判所は、この地裁鑑定書の調整率58%を合理性があり妥当なものとして採用し、本件クラブハウスの固定資産評価基準の「需給事情による減点補正」を58%とし、この補正率を施した価額が適正な時価にあたり、邑南町の「需給事情による減点補正」を考慮していない登録価格から、これを上回る部分は違法である旨の判決を下しています。

 
 最高裁判所においてもこの判決を容認し上告棄却したことから、本件クラブハウスの「需給事情による減点補正」58%が確定しました。

 なお、松江地裁判決では、減点補正を行う必要性として、地裁鑑定書を引用する形で次の3点をあげています。

① 本件クラブハウスは、本件ゴルフ場と一体利用されてはじめて機能性を発揮することができる建物であり、ゴルフ場から分離した場合には利用者が極めて少なく、他の転用の可能性が考えられないため、市場性は低く、需要はゴルフ場の需給動向に左右される。

② 本件ゴルフ場は島根県の山間部にあり、冬場の1月から2月には閉鎖期となり、12月でも積雪が多い場合は閉鎖される。

③ 本件ゴルフ場の付近に、集客力のある著名な観光施設は少なく、都心部からの距離からしても、集客力が弱いことがそれぞれ認められ、これらによれば、本件クラブハウスは、所在地域の状況によりその価額が減少すると認められる非木造に該当し、需給事情による減点補正を行う必要がある。

本件判決及び地裁鑑定の疑問

 本件クラブハウスに関する一連の判決及び地裁鑑定書について、筆者の感じたこと及び疑問を率直に述べさせていただきます。

① 松江地裁及び広島高裁ともに、平成15年6月26日の最高裁判決に関連して「家屋の適正な時価は土地と同じく『客観的交換価値』をいう」と判断していますが、筆者としては、固定資産評価基準の家屋の価格は、実態から見た場合、「客観的交換価値」には馴染まないのではないかと考えます。

 なぜなら、固定資産評価基準を適用した家屋の価格は、比較的新しい時期では適正相場の半額程度の価格であり、逆に年数が相当経過しても存在する限りは残価率2割で据え置かれ、適正相場を上回り「客観的交換価値」とは言えない状況にあります。

 平成15年6月26日の最高裁判決は、あくまでも土地のみに関する判断であったのではないのでしょうか。

 この点、平成15年7月18日最高裁判決では「固定資産評価基準による(家屋の)価格を(中略)適正な時価と推認するのが相当である」とされており、この最高裁判決(家屋の適正な価値を客観的交換価値としていない)が妥当ではないかと考えます。

 一審での被告(邑南町)側も二審高裁で「平成15年6月26日の判決は土地に関して述べたもの」と主張していますが、そのとおりと思います。

 敢えて言えば、家屋の固定資産税は、当該家屋の「交換価値」ではなく「使用価値」に対して課税されているのではないかと思います。

<平成15年6月26日最高裁判決>
「上記の適正な時価とは,正常な条件の下に成立する当該土地の取引価格,すなわち,客観的な交換価値をいうと解される。」

<平成15年7月18日最高裁判決>
「本件建物の価格は、固定資産評価基準に従って決定した前記価格は、評価基準が定める評価の方法によっては再建築費を適切に算定することができない特別の事情又は評価基準が定める減点補正を超える減価を要する特別の事情が存しない限り、その適正な時価と推認するのが相当である。」

 ただし、本件で争われたのは固定資産評価基準に従って「需給事情による減点補正」がなされるべきか否かであって、適正な時価が「客観的な交換価値」かどうかが争点になっていた訳ではありません。

② 松江地裁判決で「需給事情による減点補正」を58%と判断した理由は、地裁鑑定書に合理性がありそれを採用した結果とされています。

 しかし、何故58%が適正なのか否かが重要にもかかわらず、一連の判決文を読んでも理解できません。地裁鑑定書まで目を通してはじめて、58%の定量的な意味が分かる状況です。

③ 地裁鑑定書及びそれを採用した判決ともに、取引事例比較法及び収益還元法は、取引に係る主観的・特殊的な事情を排除すること及び経営者の能力といった人的事情を排除することからも適切でなく、原価法が最も妥当な方法であるとしています。

 しかしその一方で、上記の地裁鑑定書における調整率査定のように、原価法を50%採用し、取引事例比較法と収益還元法を併せて50%を採用しているという矛盾がみられます。

 あくまでも私見ではありますが、固定資産税家屋の再建築価格を求めるに際しては市場性や収益性を排することは必要ですが、減価修正(需給事情の減額判断)においては限定的(客観的資料の下)に市場性・収益性をも考慮することができると位置づけた方が良いのではないかと考えます。

④ 地裁鑑定書の土地の原価法において、建物がある敷地について建付減価を行い、そのうえで経年に伴う物理的減価(人工構築物のため▲28%)、機能的減価(機能的陳腐化▲20%)、経済的減価(地域性を除く▲30%)がされており、また更に試算価格の積算価格を100とした鑑定評価額の比率58%を調整率とし、これを持って固定資産評価基準の「需給事情による減点補正」としていますが、はたしてこれには重複減価は無いのでしょうか。

⑤ 地裁鑑定書では土地と建物を一体として「自用の建物及びその敷地」に準じて原価法、取引事例比較法及び収益還元法を適用しています。土地の原価法では、素地を山林から造成工事費を加えて再調達原価とし、造成部分が人工構築物であるとして減価修正を行っていますが、この方法は本件ならではの工夫かもしれませんが、通常はあり得ないと思います。

 また、市場性減価を比準価格と収益価格との調整から行っていますが、土地・建物一体の原価法であれば、土地の減価、建物の減価ではなく、土地・建物一体減価(地裁鑑定書では適用していませんが)として市場性減価を査定するのが妥当ではないかと考えます。

⑥ 最後になりますが、筆者は、固定資産評価基準の「需給事情による減点補正」は必要であるし、その減価は不動産鑑定評価基準の「市場性及び収益性減価」等に相当すると考えます。しかしながら、そもそも固定資産評価基準と不動産鑑定評価基準の土俵は相当異なることから、固定資産税の時価証明は不動産鑑定士泣かせの分野でもあります。

 固定資産税の家屋評価と不動産鑑定評価は似ているようで土俵が相当違います。そういう状況下でのN鑑定士の工夫は評価できるものですし、おそらく本件鑑定評価では相当苦労されたのではないかと拝察いたします。

 ただし、固定資産税の家屋の評価額を不動産鑑定により是正する(時価証明する)ことは、あくまでも訴訟レベルで可能となるのでありまして、通常、固定資産税家屋の評価額の是正は「固定資産評価基準どおり評価されていないこと、あるいは同基準に再建築費を適切に算定することのできない等の特別の理由があることを立証しなければならない」など、かなりハードルが高いものであります。

 つまり、固定資産税の場合(土地も家屋も)、役所の窓口で、不動産鑑定評価によって個別資産の評価額を減額することは(通常は)認められません。
 
2022/06/09/21:00
 

 

(第64号)区分所有マンションの固定資産税評価について

 
(投稿・令和4年6月-見直し・令和7年3月)

 区分所有マンションにおける区分所有者は「専有部分」、「共用部分」の共有持分及び「共用土地」(敷地の共有持分)という3種類の権利を持っていることになります。
 このため、区分所有マンションの固定資産税評価は複雑で分かりにくくなっているのです。

 なお、区分所有マンションの「専有部分の面積査定」については、第58号「区分所有マンションの専有部分の面積は3種類」で説明してありますのでご覧ください。

 

マンション区分所有権の仕組み

区分所有建物とは

 まず、そもそも建物の区分所有とはどういうものかについてです。

<建物の区分所有>
「区分所有法第1条」
「一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、その各部分は、この法律の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができる。」

<定義>
「区分所有法第2条1項2項」
「1項 この法律において「区分所有権」とは、前条に規定する建物の部分(第4条第2項の規定により「共用部分」とされたものを除く。)を目的とする所有権をいう。
2項 この法律において「区分所有者」とは、区分所有権を有する者をいう。」

 マンションでは、一棟の建物が隔壁や階層などによって他の部分と遮断されていますが、その一つ一つの独立した部分が住居・店舗・事務所として家屋本来の用途に供することができる状態にあるとき、その建物を区分所有することができることになっています。

 ここで区分所有建物とは、構造上区分され、独立して住居・店舗・事務所・倉庫等の用途に供することができる数個の部分から構成されているような建物のことです。

 区分所有建物となるためには次の2つの要件を満たすことが必要です。

① 建物の各部分に構造上の独立性があること
 これは、建物の各部分が他の部分と壁等で完全に遮断されていることで、ふすま、障子、間仕切りなどによる遮断では足りません。

② 建物の各部分に利用上の独立性があること
 これは、建物の各部分が、他の部分から完全に独立して、用途を果たすことを意味しています。例えば居住用の建物であれば、独立した各部分がそれぞれ一つの住居として使用可能でます。

 上記①と②を満たすような建物の各部分について、それぞれ別個の所有権が成立しているとき、その建物は区分所有建物と呼ばれ、民法の特別法である「建物の区分所有等に関する法律」(「区分所有法」又は「マンション法」)が適用されます。

 そして、このように建物を区分所有した場合、その建物は「専有部分」と「共用部分」とに分類して取り扱われます。

区分所有の「専有部分」とは

 「専有部分」とは、一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるもの(つまり、構造上の独立性と利用上の独立性を有する部分)であって、区分所有権の目的であるものです。

<専有部分>
「区分所有法第2条3項」
「3項 この法律において「専有部分」とは、区分所有権の目的たる建物の部分をいう。」

区分所有の「共用部分」とは

  分譲マンションのような区分所有建物について、廊下、階段等のように区分所有者が全員で共有している建物の部分を「共用部分」と言います。

<共用部分の定義>
「区分所有法第2条4項」
「4項 この法律において「共用部分」とは、専有部分以外の建物の部分、専有部分に属しない建物の附属物及び第4条第2項の規定により「共用部分」とされた附属の建物をいう。」

「区分所有法第4条」
「1項 数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分は、区分所有権の目的とならないものとする。
2項 第1条に規定する建物の部分及び附属の建物は、規約により「共用部分」とすることができる。この場合には、その旨の登記をしなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。」

 上記により、「共用部分」は法定共用部分(第4条1項)と規約共用部分(第4条2項)からなります。

① 法定共用部分
 数個の「専有部分」に通じる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供される建物の部分です。
(例:玄関ホール、廊下、階段、エレベーターホール、内外壁、界壁、床スラブ、基礎部分、ベランダ、バルコニー、屋内駐車場、電気室等)
※よくベランダ、バルコニーを「専有部分」と勘違いしている人がいますが、これは「共用部分」です(但し、専有部分所有者の専用使用権があります)。

 ベランダは、一般的には2階以上にあり、住戸から外に張り出していてある程度の雨風をしのげる屋根のあるスペースを指します。雨の日でもそこで濡れずに過ごせますし、洗濯物も干すことができます。
 バルコニーはベランダと同様のスペースですが、大きく異なるのは屋根が無いことです。

② 規約共用部分
 本来は「専有部分」ですが、規約により「共用部分」とすることができる部分です。
(例:管理事務室、管理用倉庫、集会室)

区分所有マンション敷地の課税

 分譲マンションなどの区分所有家屋の敷地の用に供されている土地(共用土地)のうち、次の①②の要件をみたすことが必要です。

① 共用土地の共有
 共用土地が区分所有家屋の所有者全員によって共有されていることが必要です。

② 土地は床面積の割合で共有
 各共有者の土地の持分割合が、その者の区分所有家屋の専有部分の床面積の割合と一致することが必要です。

 共用土地に対する固定資産税については、まず敷地全体の税額を求め、次に各区分所有者の共用土地の持分割合により按分した税額により分割課税されます。
 この共有土地の持分割合は、専有部分の面積割合によります。

 なお、通常、マンション用地は居住用土地ですので、評価額においては、土地全体の本則課税標準額が1/6となります(「専有部分」1戸当たり200㎡が換算されますので、まず土地全体が1/6になると考えて差し支えありません)。

区分所有マンション家屋の課税

 地方税法の規定では、区分所有に係る家屋に対する固定資産税の課税は、区分所有に一棟の家屋を一括して評価したうえ、当該家屋の税額を算定し、その税額を各々の区分所有者に配分し、その額を各区分所有者の納付すべき税額とされます。

<区分所有に係る家屋に対して課する固定資産税>
「地方税法第352条1項」
「1項 区分所有に係る家屋に対して課する固定資産税については、当該区分所有に係る家屋の建物の区分所有等に関する法律第2条第3項に規定する専有部分(以下この条及び次条において「専有部分」という。)に係る同法第2条第2項に規定する区分所有者(以下固定資産税について「区分所有者」という。)は、第10条の2第1項の規定にかかわらず、当該区分所有に係る家屋に係る固定資産税額を同法第14条第1項から第3項までの規定の例により算定した専有部分の床面積の割合(専有部分の天井の高さ、附帯設備の程度その他総務省令で定める事項について著しい差違がある場合には、その差違に応じて総務省令で定めるところにより当該割合を補正した割合)により按分した額を、当該各区分所有者の当該区分所有に係る家屋に係る固定資産税として納付する義務を負う。」

<共用部分の持分の割合>
「建物の区分所有等に関する法律第14条」
「1項 各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による。
2項 前項の場合において、一部共用部分(附属の建物であるものを除く。)で床面積を有するものがあるときは、その一部共用部分の床面積は、これを共用すべき各区分所有者の専有部分の床面積の割合により配分して、それぞれその区分所有者の専有部分の床面積に算入するものとする。
3項 前二項の床面積は、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積による。」

一棟家屋の評価額の算出

 区分所有者以外の家屋と同様に、固定資産評価基準を用いて一棟全体の1㎡当たりの再建築評点数を算出します。

各区分所有者の課税床面積の算出

 各区分所有の課税床面積は、次の算式により求めます。
 課税床面積=①「専有部分」の床面積 + ②共用面積の割合分

①「専有部分」の床面積
 この専有面積の床面積は、不動産登記法により定められた内壁で囲まれた部分の面積(内法面積)です。

② 共用面積の割合分
 共用面積は、一棟全体の床面積から各専有面積の合計を引いた床面積を、各専有面積の合計専有面積に対する割合に応じて按分した面積となります。

 つまり、区分所有マンションの専有部分の面積は、壁芯面積でも内法面積でもなく、「内法面積+共用面積の割合分」となりますので、購入したときの面積や不動産登記の面積より大きい面積となります。

区分所有マンションの課税明細書(例)

 ここで横浜市のホームページにある課税明細書(例)を紹介します。

 区分所有マンションの評価は、土地は区分所有者全員の共有(専有部分の持分割合)であり、家屋は所有者自身の専有部分と共用部分割合(専有部分の持分割合)との合計面積となっています。

 この課税明細書(例)では、土地面積は敷地全体の面積のみで、「敷地権の割合」は不動産登記簿で確認しないと分かりません。

 また、課税明細書のみでは課税床面積を形成する「共用部分の面積」も分からないことから、計算方法も課税した市長村に確認しないと分からないのです。
 
2022/06/09/19:00