(第33号)固定資産税の価格に不服がある場合の手続き(「審査の申出」)

 
(投稿・平成36年-見直し・令和7年2月)

 今回は、固定資産税の価格に不服がある場合の手続き(「審査の申出」)についてです。

「審査の申出」の手続き

 固定資産税の納税者で、固定資産課税台帳に登録された価格について不服がある場合は、納税通知書の交付を受けた日の翌日から起算して3ヵ月以内に、文書をもって固定資産評価審査委員会に「審査の申出」をすることができます。(地方税法432条1項)

<価格に関する「審査の申出」>
「地方税法第432条1項」
「固定資産税の納税者は、その納付すべき当該年度の固定資産税に係る固定資産について、納税通知書の交付を受けた日後三月を経過する日まで間において、文書をもつて、固定資産評価審査委員会に審査の申出をすることができる。(中略)」

 なお、「審査の申出」では、次の点に注意する必要があります。

「審査の申出」をすることができる者は「固定資産税の納税者で価格に不服のある者」となります。

 したがって、借地人や借家人等の利害関係者であっても申出をすることができません。固定資産の共有者(マンションの区分所有者も含む)は、単独で申出をすることができます。

   また、審査の申出は、代理人によってもすることができますが、この代理人は弁護士や税理士等特定の職業に限定されていないことになっています。

「審査の申出」をすることができる内容は「固定資産税課税台帳に登録された価格」に限られます。

 例えば、価格ではない「固定資産税の課税内容(納税通知書の記載事項」等に対する不服は審査請求によります。(別途解説)

「審査の申出」期間は、納税通知書の交付を受けた日の翌日から起算して3ヵ月以内です。仮に、審査申出書を郵便で提出する場合は、発信主義(消印日有効)とされています。

「審査の申出」先は、市町村の固定資産評価審査委員会です。

 固定資産評価審査委員会とは、価格に対する納税者からの不服を審査・決定するために市町村に設置される中立的な(第三者)機関です。通常、弁護士、税理士、学識経験者等から議会の同意を得て選出されます。

 固定資産評価審査委員会の規定は、地方税法第423条にあります。

<固定資産評価審査委員会の設置,選任等>
「地方税法第423条」
「1項 固定資産課税台帳に登録された価格に関する不服を審査決定するために,市町村に,固定資産評価審査委員会を設置する。
2項 固定資産評価審査委員会の委員の定数は3人以上とし,当該市町村の条例で定める。
3項 固定資産評価審査委員会の委員は,当該市町村の住民,市町村税の納税義務がある者又は固定資産の評価について学識経験を有する者のうちから,当該市町村の議会の同意を得て,市町村長が選任する。」

「審査の申出」は、原則として基準年度(3年毎)の価格に限定されています。

 固定資産税は毎年課税されていますが、土地と家屋は3年毎に評価替えが行われています。
※ 第8号「土地と家屋は3年毎に評価替え(基準年度と据置年度)」参照

 そこで、「審査の申出」は原則として、この基準年度の価格に対して行うことができる、とされています。

「審査の申出」から取消訴訟へ

 固定資産評価審査委員会へ「審査の申出」を行い、その決定に不服がある場合に取消訴訟を提起できることになります。

 これが地方税法上の原則的な手続で、その流れは次のとおりです。

<争訟の方式>
「地方税法434条1項」
「固定資産税の納税者は、固定資産評価審査委員会の決定に不服があるときは、その取消しの訴えを提起することができる。」

<出訴期間>
「行政事件訴訟法14条1項」
「取消訴訟は、処分又は裁決があつたことを知つた日から6ヵ月を経過したときは、提起することができない。」

 このように、地方税法による原則的な手続は、裁判所に訴える前に、まず固定資産評価審査委員会に「審査の申出」を行う必要があります。これを「審査請求前置主義」と言います。

地方税法417条による価格の修正

 固定資産税の価格の決定は、固定資産課税台帳に登録され公示されることにより行われます。

 しかし、その登録された価格に「重大な錯誤」があることを発見した場合には、直ちにこの価格を修正しなければならないとされています。(地方税法417条1項)

<価格等の決定又は修正等>
「地方税法417条1項」
「市町村長は、…登録された価格等に重大な錯誤があることを発見した場合においては、直ちに…決定された価格等を修正しなければならない。」

 この「重大な錯誤」とは、①固定資産課税台帳に登録する際の誤記②価格を決定する際の計算間違い③明瞭な誤記又は認定の誤り等、客観的に見て価格の決定に重大な誤りがあると認められるような場合とされています。

 そこで、納税者側から見た場合、この制度を価格是正の手続きとして考えることもできるということです。
 納税者がどうしてもこの価格には納得がいかないので、市町村の担当課に相談したところ、実は「重大な錯誤」と判明したというケースも実際にあります。

国家賠償法の「過失」での訴訟対応

 第28号で紹介しましたように、平成22年6月3日の最高裁判決において、次の判断がなされています。

 
※最高裁(第一小法廷)平成22年6月3日判決
「公務員が納税者に対する職務上の法的義務に違背して当該固定資産の価格ないし固定資産税等の税額を過大に決定したときは、これによって損害を被った当該納税者は、地方税法432条1項本文に基づく審査の申出及び同法434条1項に基づく取消訴訟等の手続を経るまでもなく、国家賠償請求を行い得るものと解すべきである。」

 これは「通常尽くすべき注意義務が尽くされていない」(過失)場合は「手抜き」があったとされ、審査の申出を経ないで国家賠償請求をすることができます。

 仮に国家賠償請求が認められた場合は、20年の返還(正式には5年間の「還付金」と15年間の「返還金(補填金)」)となります。

 この詳細につきましては、後日改めて説明します。
 
2022/5/26/08:00
 

 

(第32号)住宅用地減額特例の課税誤りと「分かりにくい住宅用地」の例

 
(投稿・平成27年5月-見直し・令和7年2月)

 これまで、第5号「固定資産税土地の住宅用地(小規模住宅用地・一般住宅用地)とは何か」と第26号「固定資産税の課税誤りは全市町村の97%-潜在的には更に多い」で、固定資産税の住宅用地の課税誤りについて紹介してきましたが、今回は住宅用地の減額特例と「分かりにくい住宅用地」についてお知らせします。

 

住宅用地の減額特例とは

 改めてですが、住宅用地の特例とは、居住用の家屋の敷地とされている土地の200㎡以下の部分(小規模住宅用地)の固定資産税評価額が6分の1に,200㎡を超える部分(一般住宅用地)が3分の1に減額される(上限は家屋面積の10倍)ことです。

 つまり、この特例措置の課税誤りとは、本来は住宅用地であるにもかかわらず、減額がされずに課税され続けてきたということです。

 一体、なぜ住宅用地の特例措置の適用誤りが、このように続出するのでしょうか。

住宅用地特例の課税誤りの原因

市町村の手続きミス

 まず土地所有者が、その土地上に居住用の家屋を新築し、登記所へ不動産登記を申請します。
 そして、登記所でその家屋の表示保存登記を行うとともに、所在地の市町村へ新築登記がされた旨の連絡がされます。
 その場合、市町村では実地調査を経て家屋の評価を行い、翌年度から家屋の固定資産税を新規に課税することになります。

 そのとき本来であれば、土地の評価額を6分の1にしなければなりませんので、家屋の担当者から土地の担当者に連絡し、土地担当者が住宅用地として手続き(電算入力等)をすることになります。

 ところが、土地への住宅用地の適用を怠り、その後も点検されないまま課税誤りが続いてきたということです。

 この「誤りの原因」として、平成27年1月27日付「つくばみらい市」の「固定資産税・都市計画税の課税誤りについて」の報道では、
家屋担当と土地担当の連携不足(情報伝達漏れ)
電算入力の漏れ、電算入力の誤り
電算入力後の確認体制不備

の3点があげられています。
まさに、この発表のとおりです。

住宅用地かどうか分かりにくい

 ところで、上記の「誤りの原因」は、明らかに市町村の手続きミスということになりますが、実は、住宅用地の減額特例はこのようなパターンに限られません。

 ここでは、一見して住宅用地かどうか分かりにくい、次の事例1及び事例2の2つのパターンをご紹介します。

<事例1ーアパートの駐車場>
 このパターンは、住宅用地を見逃し易い典型例として説明されますが、アパートの敷地の隣に駐車場があり、その駐車場はアパート住民が利用している駐車場である場合です。

 アパート敷地と駐車場とは地番が異なっている(筆が分かれている)場合もありますが、その場合でも駐車場敷地はアパートと一体の画地と認定され、住宅用地の軽減特例(6分の1)の対象になります(敷地が離れている場合は該当しません)。

 特にアパートの場合は1戸(部屋)につき200㎡が小規模住宅用地とされますので、かなり敷地が広くても敷地全体が6分の1に適用される可能性があります。例えば、そのアパートが8戸であれば、1600㎡までが小規模住宅用地となります。

<事例2ー店舗廃業の居住用家屋>
 近年では、シャッター通りと称されるように、店舗を閉店(廃業)した商店街も多く見受けられますが、店主は店舗を閉じた後もそこで居住し続ける場合が多く見られます。

 このような場合、店舗経営時の家屋の用途は「店舗」であり、土地は商業地(非住宅用地)で6分の1の減額特例はありません。しかし、店舗廃業後は居住用に変更されたことから、住宅用地となり減額特例の対象となります。

 実は、この事例1及び事例2では、外観からは一見住宅用地かどうか判断つきにくい場合があります。

 そのため、市町村では住宅用地の認定のために「住宅用地異動申告書」の提出を義務づけています。

 しかし、固定資産税(土地と家屋)については、行政が一方的に評価し課税する方法(「賦課課税方式」)ですので、例え申告がされなくても、住宅用地と認定すべきところをそうしていなかったときは、「行政の課税誤り」ということになります。
 
2022/5/25/21:00
 

 

(第31号)固定資産税の償却資産とは(基本編)

 
(投稿・令和3年6月-見直し・令和7年2月)

 これまで、市町村が一方的に評価・課税する「賦課課税方式」としての土地及び家屋を中心に解説していますが、固定資産税には、もうひとつ「申告課税方式」の償却資産があります。

 今回は、その償却資産の基本的な部分(基本編)についての説明になります。

 ところで、償却資産と言いますと、よく国税(法人税等)の「減価償却」と間違われる場合がありますが、固定資産税の償却資産は、地方税の固定資産税の一種となります。

 また、償却資産を『償却資産税』と説明しているサイトをときに見受けますが、償却資産はあくまでも「地方税」としての固定資産税の一種であります。

地方税法上の償却資産とは

 地方税法において、償却資産の用語が次のとおり定義されています。

<償却資産の用語の意義>
「地方税法第341条第4項」
「土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産(鉱業権、漁業権、特許権その他の無形減価償却資産を除く。)でその減価償却額又は減価償却費が法人税法又は所得税法の規定による所得の計算上損金又は必要な経費に算入されるもののうちその取得価額が少額である資産その他の政令で定める資産以外のもの(これに類する資産で法人税又は所得税を課されない者が所有するものを含む。)をいう。ただし、自動車税の種別割の課税客体である自動車並びに軽自動車税の種別割の課税客体である原動機付自転車、軽自動車、小型特殊自動車及び二輪の小型自動車を除くものとする。」

 固定資産税の償却資産は、固定資産税全体(土地・家屋・償却資産)の税収の中でどの程度の割合を占めているかについて、令和2年度決算ベースで公表されています。
 それによると、償却資産は19.1%となっています。

<固定資産税収(償却資産)の内訳>

 

償却資産の課税客体

 固定資産税の課税客体である償却資産とは、次の要件を備えるものとされています。
  土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産(事業用資産)であること。
  その減価償却額又は減価償却費が法人税法又は所得税法の規定による所得の計算上損金又は必要な経費に算入されるものであること。
  鉱業権、漁業権、特許権その他の無形減価償却資産でないこと。
  取得金額が少額である資産その他の政令で定める資産(少額償却資産※)でないこと。
 ※「少額償却資産」とは
 耐用年数1年未満又は取得額が10万円未満のもので一時に損金又は必要な経費に算入されるもの、及び取得額が20万円未満のもので3年間で一括して損金又は必要な経費に算入されるもの。
 ⑤自動車税の課税客体である自動車及び軽自動車税の課税客体である軽自動車等でないこと。

償却資産の申告制度

 償却資産は、土地や家屋と同じように固定資産税の課税対象となります。償却資産を所有する者は、毎年1月1日(賦課期日)現在の内容について、1月31日までに資産の所在する市町村に申告をする必要があります。

償却資産の納税義務者

 固定資産税は、原則としてその年の1月1日(賦課期日)現在における固定資産の所有者に課税されます。

償却資産の免税点

 同一の市町村に所在する償却資産の課税標準の合計額が150万円(免税点)を下回る場合は課税されません。

課税客体から除かれる資産

 次の資産は償却資産の課税客体から除かれます。
自動車税、軽自動車税の課税対象となる資産
無形固定資産(ソフトウェア、特許権、電話加入権、営業権など)
繰延資産(創立費、開業費、開発費など)
商品・貯蔵品(販売目的として保有されている棚卸資産)
馬、果樹、その他の生物(ただし鑑賞用、興行用は除く)
書画、骨董品など(複製品又は単に装飾目的にのみ使用されているものは除く)

償却資産の種類

償却資産の種類と具体例

 固定資産税の課税客体となる償却資産の種類は、「構築物」,「機械及び装置」,「船舶」,「航空機」,「車両及び運搬具」,「工具、器具及び備品」に分類されます(地方税法施行規則第26号様式)。
 企業会計及び税務会計では、第1種の「構築物」が「建物又は建物附属設備」とされていますが、固定資産税では、原則として「家屋」で評価・課税されるため「構築物」として申告することになります。

<償却資産の種類と具体例>

業種別の主な償却資産の例示

 ここで、業種別の主な償却資産の例示を掲げます。
※()内の数字は、各資産の耐用年数です。

<業種別主な償却資産の例>

 
2022/5/24/10:00
 

 

(第30号)農地(田・畑)の固定資産評価及び課税

 
(投稿・令和2年5月-見直し・令和7年2月)

 固定資産税の農地(田・畑)は、一般的に、一般農地、市街化区域農地に区分され、評価及び課税されます。

<農地の固定資産税(農林水産省HPより)> 
※固定資産税評価基準では、このほか「宅地等介在農地」と「勧告遊休農地」が規定されていますが、本ブログでは、一般農地と市街化区域農地について解説します。
(参考)
・宅地等介在農地…農地法4条1項又は5条1項の規定により、転用許可を受けた農地
・勧告遊休農地…農地のうち農地法36条1項の規定により、農業委員会から農地中間管理機構による農地中間管理権の取得に関し協議すべき勧告があった農地(「農業振興地域」内に存する遊休農地に限らる)
・また、市街化区域農地のうち、生産緑地地区内の農地は一般農地と同様に扱われます。
 なお、農地とは土壌の養分を利用して作物を栽培する土地であり、用水を利用して耕作する田と、用水を利用しないで耕作する畑とに分けられます。

一般農地の評価及び課税

(1)一般農地の評価

 一般農地の評価の流れは、次のとおりとなります。
① 状況類似地区の区分
 状況類似地区は、地勢、土性、水利等の状況を総合的に考慮し、おおむねその状況が類似していると認められる田又は畑の所在する地区ごとに区分します。
② 標準田・畑の選定
 標準田又は標準畑は、状況類似地区ごとに、日照、かんがい、排水、面積、形状等の状況からみて比較的多数所在する田又は畑のうちから一つの(その地区における標準的な)田又は畑を選定します。
③ 標準田・畑の評点数の付設
 標準田畑の評点数は、売買田畑の売買実例価額から適正な時価に基づいて、ア~ウにより付設します。
ア.売買田畑の正常売買価額の算定
 売買田畑の売買実例価額 − 不正常要素に基づく価額 = 売買田畑の正常売買価額
イ.標準田畑の正常売買価額の算定
 売買田畑の正常売買価額 × 売買田畑と標準田畑との地形等の相違による修正 = 標準田畑の正常売買価額
ウ.標準田畑の評点数の付設
 標準田畑の正常売買価額 × 0.55(農地の限界収益修正率) = 標準田畑の適正な時価(標準田畑の評点数)
※「農地の限界収益修正率」を適用する理由…農地の売買は、一般的に小規模な面積を単位として行われます。この場合、買受側は、買足しに伴う耕作面積の拡大ににより農業経営の効率が増進されます。このため、農地の売買実例価額は農地の平均収益額を超える限界収益額を前提として成立していると考えられていることから、その割高分を修正する必要があるためです。
④ 各筆田畑の比準表の適用
 各筆田畑の評点数を付設する際には、標準田畑との状況の差を比較考慮し、評価基準に定められている「田の比準表」又は「畑の比準表」を適用して評点数を補正します。

⑤ 各筆田畑の評点数の付設
 各筆田畑の評点数は、まず、標準田畑の単位地積当りの評点数に、「田の比準表」又は「畑の比準表」によって求めた各筆の比準割合を乗じて、各筆の単位地積当りの評点数を求め、この評点数に地積を乗じて求めます。
 標準田畑の単位地積当りの評点数 × 各筆の比準割合 = 各筆の田畑の単位地積当りの評点数
 各筆の田畑の単位地積当りの評点数 − 当該筆の地積 = 各筆の田畑の評点数

(2)一般農地の課税

 一般農地及び生産緑地地区内農地には、農地の負担調整措置が適用されます。
負担調整措置は、土地の評価額の急激な上昇に伴う税負担を軽減するための措置で、これにより算定した調整税額(B)が、負担調整措置を行わずに計算した本則税額(A)を下回る場合には、調整税額(B)が納税額になります。
A(本則税額) : 評価額 × 税率
B(調整税額) : 前年度の課税標準額 × 負担調整率×税率

<一般農地の負担調整率>

市街化区域農地の評価及び課税

 市街化区域農地とは、都市計画法7条1項に規定する市街化区域内の農地をいいます。市街化区域農地は、宅地としての潜在的価値を有し、売買価値も宅地と同水準にあると認められています。
 市街化区域は、都市計画法7条2項の規定により「すでに市街地を形成している地域及びおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき地域」です。また農地として利用されていても、農地法4条1項7号及び5条1項6号の規定により届出をするだけで宅地に転用することができる農地となります。

(1)市街化区域農地の評価

 市街化区域農地は、宅地としての潜在的な価値を有しており、売買価額も宅地の価値に準じた水準にあると考えられますので、これらの農地を評価するに当たっては、付近の宅地との均衡を図る必要があります。しかし、市街化区域農地はあくまでも田・畑であり、宅地とするには、土盛り整地をしなければならないため、評価する場合には、宅地としての価額から土盛り整地等の造成費相当分を控除する方法により行います。

 市街化区域農地の評価 = ①基本価額 — ②造成費相当額

① 基本価額
 基本価額は、類似宅地の価額を基準として求めますが、宅地の評価方法(市街地宅地評価法)とはやや異なり、直接類似宅地の価額を基準にして価額を求めます(市街地宅地評価法に準じて求めます)。

② 造成費相当額
 市街化区域農地を宅地に転用する場合において通常必要と認められる造成費相当額ですが、その範囲は、一般的には土砂購入費、土盛整地費、擁壁費及び法止・土止費をいいます。
 これは、あくまで一般的な造成費相当額で、全国的には総務省から通知(平成29年)が出されていますが、各市町村で独自に決めている場合もあります。

(2)市街化区域農地の課税

 市街化区域農地には、一般市街化区域農地と三大都市圏の特定市に適用される特定市街化区域農地の2種類があり、それぞれ負担調整措置が適用されます。

① 一般市街化区域農地の負担調整措置
 一般市街化区域農地は、「一般農地の負担調整措置」が適用されます。
A(本則税額) : 評価額×1/3×税率
B(調整税額) : 前年度の課税標準額×負担調整率×税率

<一般市街化区域農地の負担調整率>

② 特定市街化区域農地の負担調整措置
 三大都市圏の特定市の市街化区域農地は、「宅地の負担調整措置」が適用されます。

<特定市街化区域農地の負担調整措置>

 なお、農地の詳細な基準は、各自治体による「固定資産評価事務取扱要領」(自治体により名称が異なります)を確認してください。
 
2022/05/23/12:00
 

 

(第29号)一般家屋・固定資産税の床面積の算定について

 
(投稿・令和4年5月-見直し・令和7年2月)

 今回は、家屋評価の基本である「一般家屋(※)の床面積」の算定方法について解説します。

※「一般家屋」とは、戸建住宅のような、区分所有(分譲)マンションの「専有部分」が無い家屋の意味で用いています。

一般家屋は壁芯面積で算定

 固定資産評価基準では、床面積の算定について次の規定があります。

<床面積の算定>
「各個の家屋の再建築費評点数を付設する場合の計算単位として用いる家屋の床面積は、各階ごとに壁その他区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積により、平方メートルを単位として算定した床部分(階段室又はこれに準ずるものは、各階の床面積に算入するものとし、吹抜の部分は、上階の床部分に算入しないものとする。)の面積によるものとする。」

 ここから、戸建住宅のような一般家屋の床面積は、「壁芯面積」で算定するものとされています。(区分所有(分譲)マンションの専有部分は「内法面積」で算定します。)

<壁芯面積と内法面積>

床面積の具体的な判定

 固定資産税家屋の床面積の具体的な判定は、一般的に不動産登記取扱手続準則(以下「準則」という)第82条によることとされています。

 しかし、固定資産評価基準の床面積は、あくまでも再建築費評価の適正な評価額を求めるものであり、不動産登記法上の床面積又は建築基準法上の建築面積と異なっても差し支えないとされています(平成2年11月6日、福岡地裁判決)

※平成2年11月6日・福岡地裁判決
「評価基準上の床面積は、再建築費評価の計算単位たる床面積、すなわち、適正な評価額を反映させるための床面積であり、不動産登記法上の床面積とは性格を異にしている。この性格の違いから、便宜上不動産登記法における床面積とは異なる取扱をすることができるものと解する。」

 ここでは、主な床面積について解説します。

(1)地階、屋階(特殊階)の床面積

 「天井の高さ1.5m未満の地階及び屋階(特殊階)は、床面積に算入しない。ただし、一室の一部が天井の高さ1.5 m未満であっても、その部分は当該ー室の面積に算入する(準則第82条第1号)」

天井の高さとは、床面上から天井面までの高さをいいます。天井面がない場合は梁の下端までの高さをいうものとし、梁もない場合は母屋の下端、母屋もないときは垂木の下端等、梁に代わるべきものまでの高さをいいます。

<梁のある場合と無い場合>

地階は天井の高さが1.5m未満である場合は床面積に算入しません。ただし、家屋の一部であるので家屋としては評価します。

<地階1.5m未満—不算入>

斜面に建物を建築するためにつくられた大規模な基礎又は人工地盤により形成された空間については、その天井高が1.5m以上である場合であっても、床面積に算入しません。

<人工地盤による空間—1.5m以上は不算入>

(2)上屋の有る停車場、荷物積卸場

「停車場の上屋を有する乗降場及び荷物積卸場の床面積は、その上屋の占める部分の面積と乗降場及び荷物積卸場の面積のうち、重なる部分の面積をもって算定する(準則第82条第2号)」

<停車場の床面積—算入a×b>

(3)地下停車場、地下駐車場及び地下街

「地下停車場、地下駐車場及び地下街の家屋の床面積は、壁又は柱により区画された部 分の面積により定める。ただし、常時一般に解放されている通路及び階段の部分を除く(準則第82条第4号)」

<シャッターを有する通路—算入>

(4)階段室、エレベーター室

「階段室、エレベーター室又はこれに準ずるものは、床を有するものとみなして各階の床面積に算入する。(準則第82条6号)」

<階段室、エレベーター室—算入>

(5)屋外の階段

「建物に附属する屋外の階段は、床面積に算入しない(準則第82条第7号)」
一般的に簡易な屋外階段は床面積に算入せず、階段部分は屋外階段とし、建築設備又は特殊設備として評価します。

<屋外階段—不算入>

(6)建物内部の煙突、ダストシュート

「建物の内部に煙突、ダストシュートがある場合(その一部が外部に及んでいるものを含む。)には、その部分は各階の床面積に算入し、外側にあるときは算入しない(準則第82条第1a号)」

<建物内部のダストシュート—算入>

(7)出窓

「出窓は、その高さが1.5m以上のものでその下部が床面と同一の高さにあるものに限り床面積に算入する(準則第82条11号)」
 出窓に物入、敷居、かまち等があり、これらが多少部屋の床面よりもあがっていても床面と同ーとみなし床面積に算入します。

<出窓の床面積—算入の場合>

<出窓の床面積—不算入の場合>

(8)バルコニー(ベランダ)、外廊下

「バルコニー(ベランダ)、外廊下のように周壁の不完全な部分は、原則として、床面積に算入しない。」

<バルコニー(ベランダ)—不算入>

<外廊下—不算入>

(9)ピロティ、玄関、車寄せ

「ピロティ、玄関、車寄せ等は、床面積に算入しない。」

<ピロティー—不算入>

<車寄せ—不算入>

 
2022/05/22/11:00