(第35号)固定資産税土地評価における不動産鑑定士の役割について

 
(投稿・平成25年-見直し・令和6年7月)

 今回のテーマは、固定資産税の土地評価に対して、不動産鑑定評価がどこまで関与しているか(できるか)ということについてです。

 筆者は不動産鑑定士とともに固定資産税見直コンサルタントをしていますが、固定資産税に関する苦情や相談をいただく機会が少なからずあります。
「自分の固定資産税が安くならないか」、「この土地の評価額は高いのでは」、「評価が間違っているのではないのか」等々です。

 このような場合、不動産鑑定士ではなく固定資産税見直コンサルタントとして対応することにしています。

固定資産税評価での鑑定士の役割

 不動産鑑定士は、毎年、地価公示価格と地価調査価格の鑑定評価に携わっているとともに、3年毎(基準年度)の固定資産税評価の基礎となる標準宅地の鑑定評価にも携わっています。

 固定資産税土地(宅地)の評価方法は、①市街地宅地評価法(路線価方式)と②その他の宅地評価法(標準宅地方式)の2通りありますが、どちらの手法においても一定の地域(状況類似地域・地区)内に標準宅地を選定します。

 そして、3年毎(基準年度)の評価替えにおいて、その標準宅地の評価が行われ、地価公示価格、地価調査価格とともに、その7割を主要な路線価として設定され、それに基づき各筆(画地)の評価が行われています。

 不動産鑑定士は、それぞれの市町村において、その標準宅地の鑑定評価と主要な路線価の設定の業務を担っています。しかし、各筆の評価は固定資産評価基準に基づいて、各市町村で行われます。

 また、固定資産税の評価は3年単位で評価替えが行われていますが、平成11年度から、評価替え年度以外(据置年度)でも地価が下がっている場合には下落修正が行われていますが、その業務にも関わっています。

個別の画地は固定資産評価基準による

 上記のとおり、固定資産税の土地(宅地)評価の均衡化及び適正化は、不動産鑑定士による地価公示、地価調査に加えて標準宅地の鑑定評価により行われています。

 その面では、固定資産税評価における土地評価の基礎は不動産鑑定士が担っていると言ってもよいと思います。

 しかし、固定資産税(土地)の評価は、標準宅地や路線価だけでなく、原則として、すべての土地、全国で約1億6千万筆が評価され課税されています。

 固定資産税では、この個別の土地(画地)評価は、地方税法による固定資産評価基準に基づき、各市町村の担当者により評価されているもので、ここまでは不動産鑑定士は関与していないのが一般的です(市町村により異なりますが)。

 同じ資産税でも相続税評価の場合は、不動産鑑定書による時価証明(税務署に鑑定書の提出)も認められる場合もあります。

 ところが、固定資産税宅地の各筆(画地)の評価は、固定資産評価基準に従って評価されていますので、不動産鑑定評価(意見書)でそれを覆す(適正な時価を証明する)のは難しいと考えられています。

 この固定資産税の個別の土地評価において、不動産鑑定評価で時価証明することが難しい理由は、地方税法において「固定資産評価基準」の法的拘束力(拘束性)があるからです。
※相続税の評価は「財産評価基本通達」により行われますが、この通達は相続税法には規定されていません。

<固定資産税に係る総務大臣の任務>
※地方税法第388条第1項
「総務大臣は、固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続(以下「固定資産評価基準」という。)を定め、これを告示しなければならない。」
※地方税法第403条1項(固定資産の評価に関する事務に従事する市町村の職員の任務)
「市町村長は、(中略)第388条第1項の固定資産評価基準によって、固定資産の価格を決定しなければならない。」

「その他の雑種地」での鑑定士の役割

 「雑種地」及び「その他の雑種地」の評価は別途説明しますが、「その他の雑種地」の評価は大きく分けて「売買実例地比準方式」と「近傍地比準方式」があります。ただし、売買実例が少ないことから「近傍地比準方式」を採用しているのが一般的です。

 この「近傍地比準方式」は「土地の位置、利用状況等を考慮し、附近の土地の価額に比準してその価額を求める」(固定資産評価基準)とされていますが、土地の種類毎に比準割合を定めている市町村が大多数になります。

 比準割合も市町村によって異なっていますが、この比準割合を決定するに当たって「専門家の意見」として、不動産鑑定士が役割を果たしています。

2022/5/27/10:00
 

 

(第34号)見落とされ易い住宅用地の減額特例(店舗廃業後の居住地等)

 
(投稿・平成27年-見直し・令和6年7月)

 住宅用地の減額特例については、これまで第5号「固定資産税土地の住宅用地(小規模住宅用地・一般住宅用地)とは何か」と第32号「住宅用地減額特例の課税誤りと「分かりにくい住宅用地」の例」で解説してきました。

 

住宅用地の減額特例とは

 まず、住宅用地の減額特例についての復習をしておきます。

 住宅用地とは「専ら人の居住の用に供する家屋(専用住宅)又は居住部分の床面積の割合が全床面積の4分の1以上の家屋(併用住宅)の敷地の用に供されている土地」を言います。

 これまでの号では、主に前者の専用住宅の敷地の用に供されている土地についての解説でありました。
 住宅用地の減額特例とは、土地の面積が200㎡以下の部分が小規模住宅用地として、固定資産税の本則課税標準額が6分の1に、200㎡を超える部分が3分の1に減額されます。

<住宅用地の減額特例(表)> 

<住宅用地の減額特例(イメージ図)>

併用住宅の場合

 住宅用地の減額特例で見落とされ易いのは、併用住宅の場合です。

 併用住宅とは、居住用部分と居住用でない部分が併用されている家屋ですが、居住用部分以外については、店舗、事務所、工場等その種類は問題とはなりません。

 ただし、併用住宅の場合は、居住部分の面積が一定の割合以上なければ特例は認められません。
 その家屋が「5階以上の耐火建築物」であるか「それ以外の併用住宅」かによって異なります。(次の表をご覧ください。)

<併用住宅の居住割合(居住部分の割合による)> 

見落とされ易い住宅用地の事例

アパートと駐車場の場合

 これまでも解説してきましたが、住宅用地の減額特例で注意すべきは、アパートの事例です。

 まず、アパートの場合は戸単位で小規模住宅用地(200㎡以下)がカウントされます。つまり8部屋あれば、土地が1600㎡までは小規模住宅用地として6分の1に減額されることになります。

 また、アパート居住者が使用する連続した駐車場も住宅用地として減額特例の対象になります。

店舗廃業後の居住の場合

 住宅用地かどうかは外見からは分からない場合があります。そのため、市町村では条例により、住宅用地の申告を義務づけています。

 ここで、見落とされがちの例として、商店街でときに見られる、店舗を閉じた後もそこで居住している場合です。店舗のみであれば、その土地は非住宅用地ですので減額特例はありませんが、居住用の家屋に変更されていれば特例の対象になります。

店舗の2階で居住している場合

 上記の表にあるように、例えば2階建ての家屋で2階部分に居住している場合、その部分の床面積が2分の1以上であれば、土地の全部が住宅用地の減額特例を受けることができます。仮に3階建て家屋で2~3階部分に居住していれば、恐らく問題なく2分の1以上ではないでしょうか。

「特定空家」は適用除外

 平成27年5月に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」により「特定空家」として勧告を受けると住宅用地の減額特例の適用除外となりました。
 ここで「特定空家」とは、次のように周辺への影響が大きい状態にある空家を指します。
そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

 これに併せて、地方税法349条の3の2が改正され、「市町村長が特定空家等の所有者等に対して周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置をとることを勧告した場合は、当該特定空家等に係る敷地について固定資産税等の住宅用地特例の対象から除外する。」となりました。
 
2022/5/26/09:00
 

 

(第33号)固定資産税の価格(評価額)に不服(評価誤り)がある場合の手続き(「審査の申出」)

 
(投稿・平成36年-見直し・令和6年7月)

 今回は、固定資産税の価格(評価額)に不服(課税誤り)がある場合の手続き(「審査の申出」)についてです。

「審査の申出」の手続き

 固定資産税の納税者で、固定資産課税台帳に登録された価格について不服がある場合は、納税通知書の交付を受けた日の翌日から起算して3ヵ月以内に、文書をもって固定資産評価審査委員会に「審査の申出」をすることができます。(地方税法432条1項)

<価格に関する「審査の申出」>
※「地方税法」第432条1項
「固定資産税の納税者は、その納付すべき当該年度の固定資産税に係る固定資産について、納税通知書の交付を受けた日後三月を経過する日まで間において、文書をもつて、固定資産評価審査委員会に審査の申出をすることができる。(中略)」

 なお、「審査の申出」では、次の点に注意する必要があります。

「審査の申出」をすることができる者は「固定資産税の納税者で価格に不服のある者」となります。

 したがって、借地人や借家人等の利害関係者であっても申出をすることができません。固定資産の共有者(マンションの区分所有者も含む)は、単独で申出をすることができます。また、審査の申出は、代理人によってもすることができますが、この代理人は弁護士や税理士等特定の職業に限定されていないことになっています。

「審査の申出」をすることができる内容は「固定資産税課税台帳に登録された価格」に限られます。

 例えば、価格ではない「固定資産税の課税内容(納税通知書の記載事項」等に対する不服は審査請求によります。(別途解説)

「審査の申出」期間は、納税通知書の交付を受けた日の翌日から起算して3ヵ月以内です。仮に、審査申出書を郵便で提出する場合は、発信主義(消印日有効)とされています。

「審査の申出」先は、市町村の固定資産評価審査委員会です。

 固定資産評価審査委員会とは、価格に対する納税者からの不服を審査・決定するために市町村に設置される中立的な(第三者)機関です。通常、弁護士、税理士、学識経験者等から議会の同意を得て選出されます。

 固定資産評価審査委員会の規定は、地方税法第423条にあります。

<固定資産評価審査委員会の設置,選任等>
※「地方税法」第423条
「1項 固定資産課税台帳に登録された価格に関する不服を審査決定するために,市町村に,固定資産評価審査委員会を設置する。
2項 固定資産評価審査委員会の委員の定数は3人以上とし,当該市町村の条例で定める。
3項 固定資産評価審査委員会の委員は,当該市町村の住民,市町村税の納税義務がある者又は固定資産の評価について学識経験を有する者のうちから,当該市町村の議会の同意を得て,市町村長が選任する。」

「審査の申出」は、原則として基準年度(3年毎)の価格に限定されています。

 固定資産税は毎年課税されていますが、土地と家屋は3年毎に評価替えが行われています。
※ 第8号「土地と家屋は3年毎に評価替え(基準年度と据置年度)」参照

 そこで、「審査の申出」は原則として、この基準年度の価格に対して行うことができる、とされています。

「審査の申出」から取消訴訟へ

 固定資産評価審査委員会へ「審査の申出」を行い、その決定に不服がある場合に取消訴訟を提起できることになります。

 これが地方税法上の原則的な手続で、その流れは次のとおりです。

<争訟の方式>
※地方税法434条1項
「固定資産税の納税者は、固定資産評価審査委員会の決定に不服があるときは、その取消しの訴えを提起することができる。」

<出訴期間>
※行政事件訴訟法14条1項
「取消訴訟は、処分又は裁決があつたことを知つた日から6ヵ月を経過したときは、提起することができない。」

 このように、地方税法による原則的な手続は、裁判所に訴える前に、まず固定資産評価審査委員会に「審査の申出」を行う必要があります。これを「審査請求前置主義」と言います。

地方税法417条による価格の修正

 固定資産税の価格の決定は、固定資産課税台帳に登録され公示されることにより行われます。

 しかし、その登録された価格に「重大な錯誤」があることを発見した場合には、直ちにこの価格を修正しなければならないとされています。(地方税法417条1項)

<価格等の決定又は修正等>
※地方税法417条1項
「市町村長は、…登録された価格等に重大な錯誤があることを発見した場合においては、直ちに…決定された価格等を修正しなければならない。」

 この「重大な錯誤」とは、①固定資産課税台帳に登録する際の誤記②価格を決定する際の計算間違い③明瞭な誤記又は認定の誤り等、客観的に見て価格の決定に重大な誤りがあると認められるような場合とされています。

 そこで、納税者側から見た場合、この制度を価格是正の手続きとして考えることもできるということです。
 納税者がどうしてもこの価格には納得がいかないので、市町村の担当課に相談したところ、実は「重大な錯誤」と判明したというケースも実際にあります。

国家賠償法の「過失」での訴訟対応

 第28号で紹介しましたように、平成22年6月3日の最高裁判決において、次の判断がなされています。

 
※最高裁(第一小法廷)平成22年6月3日判決
「公務員が納税者に対する職務上の法的義務に違背して当該固定資産の価格ないし固定資産税等の税額を過大に決定したときは、これによって損害を被った当該納税者は、地方税法432条1項本文に基づく審査の申出及び同法434条1項に基づく取消訴訟等の手続を経るまでもなく、国家賠償請求を行い得るものと解すべきである。」

 これは「通常尽くすべき注意義務が尽くされていない」(過失)場合は「手抜き」があったとされ、審査の申出を経ないで国家賠償請求をすることができます。

 仮に国家賠償請求が認められた場合は、20年の返還(正式には5年間の「還付金」と15年間の「返還金(補填金)」)となります。

 この詳細につきましては、後日改めて説明します。
 
2022/5/26/08:00
 

 

(第32号)住宅用地減額特例の課税誤りと「分かりにくい住宅用地」の例

 
(投稿・平成27年5月-見直し・令和6年7月)

 TVニュースで「固定資産税の住宅用地特例の課税誤り」が度々報道されています。(平成27年8月10日)

 第5号「固定資産税土地の住宅用地(小規模住宅用地・一般住宅用地)とは何か」と第26号「固定資産税の課税誤りは全市町村の97%-潜在的には更に多い」で固定資産税の住宅用地特例と課税誤りについて紹介してきましたが、今回は住宅用地の課税誤りと「分かりにくい住宅用地」例についてお知らせします。

 

住宅用地の特例とは(再掲)

 改めてですが、住宅用地の特例とは、居住用の家屋の敷地とされている土地の200㎡以下の部分(小規模住宅用地)の固定資産税評価額が6分の1に,200㎡を超える部分(一般住宅用地)が3分の1に減額される(上限は家屋面積の10倍)ことです。

 つまり、この特例措置の課税誤りとは、本来は住宅用地であるにもかかわらず、減額がされずに課税され続けてきたということです。

 一体、なぜ住宅用地の特例措置の適用誤りが、このように続出するのでしょうか。

住宅用地特例の課税誤りの原因

市町村の手続きミス

 ここで、土地の所有者が、その土地上に居住用の家屋を新築し、登記所へ不動産登記を申請します。
 そして、登記所でその家屋の表示保存登記を行うとともに、所在地の市町村へ新築登記がされた旨の連絡をします。
 その場合、市町村では実地調査を経て家屋の評価を行い、翌年度から家屋の固定資産税を新規に課税することになります。

 そのとき本来であれば、土地の評価額を6分の1にしなければなりませんので、家屋の担当者から土地の担当者に連絡し、土地担当者が住宅用地として手続き(電算入力等)をすることになります。

 ところが、土地への住宅用地の適用(電算入力)を怠り、その後も点検されないまま課税誤りが続いてきたということです。

 この「誤りの原因」として、平成27年1月27日付“つくばみらい市”の「固定資産税・都市計画税の課税誤りについて」では、
a. 家屋担当と土地担当の連携不足(情報伝達漏れ)
b. 電算入力の漏れ、電算入力の誤り
c. 電算入力後の確認体制不備

の3点があげられています。
まさに、この発表のとおりです。

住宅用地かどうか分かりにくい

 ところで、上記の「誤りの原因」は、明らかに市町村の手続きミスということになりますが、実は、住宅用地の減額特例はこのようなパターンに限られません。

 ここでは、一見して住宅用地かどうか分かりにくい、次の事例①及び事例②の2つのパターンをご紹介します。

<事例①(アパートの駐車場)>
 このパターンは、住宅用地を見逃し易い典型例として説明されますが、アパートの敷地の隣に駐車場があり、その駐車場はアパート住民が利用している駐車場である場合です。

 アパート敷地と駐車場とは地番が異なっている(筆が分かれている)場合もありますが、その場合でも駐車場敷地はアパートと一体の画地と認定され、住宅用地の軽減特例(6分の1)の対象になります(敷地が離れている場合は該当しません)。

 特にアパートの場合は1戸(部屋)につき200㎡が小規模住宅用地とされますので、かなり敷地が広くても敷地全体が6分の1に適用される可能性があります。例えば、そのアパートが8戸であれば、1600㎡までが小規模住宅用地となります。

<事例②(店舗廃業の居住用家屋)>
 近年では、シャッター通りと称されるように、店舗を閉店(廃業)した商店街も多く見受けられますが、店主は店舗を閉じた後もそこで居住し続ける場合が多く見られます。

 このような場合、店舗経営時の家屋の用途は「店舗」であり、土地は商業地(非住宅用地)で6分の1の減額特例はありません。しかし、店舗廃業後は居住用に変更したことから、住宅用地となり減額特例の対象となります。

 実は、この事例①及び事例②では、外観からは一見住宅用地かどうか判断つきにくい場合があります。

 そのため、市町村では住宅用地の認定のために「住宅用地異動申告書」の提出を義務づけています。

 しかし、固定資産税(土地と家屋)については、行政が一方的に評価し課税する方法(「賦課課税方式」)ですので、例え申告がされなくても、住宅用地と認定すべきところをそうしていなかったときは、「行政の課税誤り」ということになります。
 
2022/5/25/21:00
 

 

(第31号)固定資産税の償却資産とは(基本編)

 
(投稿・令和3年6月-見直し・令和6年7月)

 これまで、市町村が一方的に評価・課税する「賦課課税方式」としての土地及び家屋を中心に解説していますが、固定資産税には、もうひとつ「申告課税方式」の償却資産があります。

 今回は、その償却資産の基本的な部分(基本編)についての説明になります。

 ところで、償却資産と言いますと、よく国税(法人税等)の「減価償却」と間違われる場合がありますが、固定資産税の償却資産は、地方税の固定資産税の一種となります。

 また、償却資産を『償却資産税』と説明しているサイトをときに見受けますが、償却資産はあくまでも「地方税」としての固定資産税の一種であります。

地方税法上の償却資産とは

 地方税法において、償却資産の用語が次のとおり定義されています。

<償却資産の用語の意義>
※地方税法第341条第4項
「土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産(鉱業権、漁業権、特許権その他の無形減価償却資産を除く。)でその減価償却額又は減価償却費が法人税法又は所得税法の規定による所得の計算上損金又は必要な経費に算入されるもののうちその取得価額が少額である資産その他の政令で定める資産以外のもの(これに類する資産で法人税又は所得税を課されない者が所有するものを含む。)をいう。ただし、自動車税の種別割の課税客体である自動車並びに軽自動車税の種別割の課税客体である原動機付自転車、軽自動車、小型特殊自動車及び二輪の小型自動車を除くものとする。」

 固定資産税の償却資産は、固定資産税全体(土地・家屋・償却資産)の税収の中でどの程度の割合を占めているかについて、令和2年度決算ベースで公表されています。
 それによると、償却資産は19.1%となっています。

<固定資産税収(償却資産)の内訳>

 

償却資産の課税客体

 固定資産税の課税客体である償却資産とは、次の要件を備えるものとされています。
  土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産(事業用資産)であること。
  その減価償却額又は減価償却費が法人税法又は所得税法の規定による所得の計算上損金又は必要な経費に算入されるものであること。
  鉱業権、漁業権、特許権その他の無形減価償却資産でないこと。
  取得金額が少額である資産その他の政令で定める資産(少額償却資産※)でないこと。
 ※「少額償却資産」とは
 耐用年数1年未満又は取得額が10万円未満のもので一時に損金又は必要な経費に算入されるもの、及び取得額が20万円未満のもので3年間で一括して損金又は必要な経費に算入されるもの。
 ⑤自動車税の課税客体である自動車及び軽自動車税の課税客体である軽自動車等でないこと。

償却資産の申告制度

 償却資産は、土地や家屋と同じように固定資産税の課税対象となります。償却資産を所有する者は、毎年1月1日(賦課期日)現在の内容について、1月31日までに資産の所在する市町村に申告をする必要があります。

償却資産の納税義務者

 固定資産税は、原則としてその年の1月1日(賦課期日)現在における固定資産の所有者に課税されます。

償却資産の免税点

 同一の市町村に所在する償却資産の課税標準の合計額が150万円(免税点)を下回る場合は課税されません。

課税客体から除かれる資産

 次の資産は償却資産の課税客体から除かれます。
自動車税、軽自動車税の課税対象となる資産
無形固定資産(ソフトウェア、特許権、電話加入権、営業権など)
繰延資産(創立費、開業費、開発費など)
商品・貯蔵品(販売目的として保有されている棚卸資産)
馬、果樹、その他の生物(ただし鑑賞用、興行用は除く)
書画、骨董品など(複製品又は単に装飾目的にのみ使用されているものは除く)

償却資産の種類

償却資産の種類と具体例

 固定資産税の課税客体となる償却資産の種類は、「構築物」,「機械及び装置」,「船舶」,「航空機」,「車両及び運搬具」,「工具、器具及び備品」に分類されます(地方税法施行規則第26号様式)。
 企業会計及び税務会計では、第1種の「構築物」が「建物又は建物附属設備」とされていますが、固定資産税では、原則として「家屋」で評価・課税されるため「構築物」として申告することになります。

<償却資産の種類と具体例>

業種別の主な償却資産の例示

 ここで、業種別の主な償却資産の例示を掲げます。
※()内の数字は、各資産の耐用年数です。

<業種別主な償却資産の例>

 
2022/5/24/9:45