(第83号)石川県N市のビルオ-ナーが「楽待」動画で「自治体のミスを疑う」

 
(投稿・令和4年8月-見直し・令和7年3月)

 第57号「家屋の新築時データを廃棄すると、在来家屋の検証も出来ない」で紹介しました『石川県N市にビルを所有しているKさん』が大手不動産投資会社の株式会社ファーストロジックが運営するYouTube「楽待」動画に登場しました。
(動画ではKさんの本名と顔は伏せられています。)

 
 また、なぜ在来家屋であるのに新築時の評価検証が必要かについては、前回(第82号)「在来家屋の評価検証には新築時の見直しが必要(『評価計算書』)」で説明してあります。

 

N市課税当局対応の問題点

 ところで第57号では、「課税当局対応の問題点」として、①評価データを廃棄したこと、②建築当初の評価額が審査されないこと、の2点を指摘しています。

 当然ですが、①があってこその②ということになりますが、これは「所有者の申告によらずに役所が一方的に評価・課税する『賦課課税方式』」としての固定資産税を取り扱う部署としては、あってはならないことなのです。

 しかも、石川県N市からは「もしこの家屋の評価が高いと思うならば、その計算根拠を示してください」とも言われているのです。

 Kさんが審査申出において、「新築時の再建築費評点数(評価)がおかしいのではないか、この点を明らかにして欲しい」と申出たのに対して、審査委員会の結果は「在来家屋の評価の妥当性」に終始していました。

 もっとも、本件では家屋の新築時のデータが廃棄されていることから検証することも出来ない訳です。

行政不服審査請求の結果

 Kさんは、審査申出で棄却された後に、文書公開請求を行ったものの「文書保存年限満了により不存在」との決定がされました。またその後、行政不服審査法による行政不服審査請求を行いましたが、請求した7ヵ月後に「処分実施機関が、本件対象行政文書について、不存在を理由として非公開とした本件処分は妥当であると認められる」との裁決が下されています。

 この審査請求には弁護士が代理人として関与していましたので、筆者は裁決書を読ませていただきましたが、これは「7ヵ月掛けて何をしていたのか?」と思わざるを得ない内容の裁決書でした。

 その後Kさんが、この裁決書の内容と根拠規定を課税当局に問い合わせても、まともな回答は得られなかったそうです。

在来家屋で新築評価が可能か

 ところで、Kさんから「現在の家屋を新築評価して、それを補正することはできないのですか」との相談を受けました。

 これは、固定資産評価基準による評価方法からは難しいと思います。

<在来分の家屋に係る再建築費評点数の算出方法>
「固定資産評価基準(非木造・四)」
「在来分の家屋に係る再建築費評点数は、次の算式によつて求めるものとする。ただし、当該市町村に所在する在来分の家屋の実態等からみてこの方法によることが適当でないと認められる場合又は個々の在来分の家屋に地方税法第349条第2項各号に掲げる事情があることによりこの方法によることが適当でないと認められる場合においては、二(部分別による再建築費評点数の算出方法)又は三(比準による再建築費評点数の算出方法)によつて再建築費評点数を求めることができるものとする。」

 この評価基準の中で、「ただし書き」として次の2項目が規定されています。
当該市町村に所在する在来分の家屋の実態等からみてこの方法によることが適当でないと認められる場
在来分の家屋に地方税法第349条第2項各号に掲げる事情があることによりこの方法によることが適当でないと認められる場合

 まず、①については「新築時の評価データを廃棄した」との場合は該当しないでしょう。また②についての家屋の場合は「増築又は改築」が該当します。

 つまり、現在の再建築価格方式では、在来家屋の評価は、基本的に新築当時の評価が継続されることになっているのです。

 また、平成25年4月16日の東京高等裁判所の判決において、在来家屋の評価においても新築時の評価が正しいかどうかの審査を求めることができるとされています。さらに、この判決が、平成26年7月24日の最高裁において決定されています。

 
 ところで、不動産鑑定評価で家屋評価は出来るかということについては、第75号「固定資産評価基準による個別評価に不動産鑑定が通じるか(家屋編)」でも紹介していますが、訴訟で「特別な事情」があると認められない限りは難しいです。

 

今後の改善のための提案

 ということで、この件では、まさに事実上の「お手上げ状態」になっているのです。

 これまでの号でも提案してきましたが、このようなことが無いように「新築時家屋の評価データは『永年保存』か『課税中保存』にすべき」であります。

 なお、筆者が関わっている案件の中には、「家屋の新規データを廃棄した」という市町村がいくつかありますが、多くの市町村では、家屋の新築時データを保管していることも事実です。
 
2022/09/05/12:00
 

 

(第118号)宅地内の「赤道」が公道に認定されている問題点

 
(投稿・令和6年9月)

 今回は、宅地内の「赤道」(あかみち)問題ですが、必ずしも固定資産税がメインではありませんが、是非このような事実を知っていただきたいと思います。

※なお、この「赤道」問題は必ずしも全国全ての市町村で行われているものではなく、以下の事例は筆者が居住しているY市での内容です。市町村によっては、「宅地内の道路を公道として認定していない」場合もあるようです。

「赤道」(あかみち)とは何か

 
 「赤道」とは、古くから道路として利用された土地のうち、道路法の適用のない法定外公共物である道路(国有地)であったため、公図上で地番が記載されず赤色で着色されていたことから「赤道」と呼ばれています(里道とも言われています)。
(水路は青色で着色されていたことから「青道」と呼ばれています。)

 明治9年(1876年)太政官達第60号「道路ノ等級を廃し国道県道里道を定む」により、道路はその重要度によって国道・県道・里道の3種類に分けられました。

 大正8年(1919年)に(旧)道路法が施行され、いったん全ての道路は国の営造物(国有地)とされ、府県道は府県道知事が、市町村道は市町村長が管理するようになりました。その際、重要な里道のみを市町村道に指定したため、それ以外の里道については道路法の適用外で国有のまま取り残されました。
 里道のままとされた道路は、小さな路地や農道、山道(林道、けもの道)です。

 そこで、市町村道に指定された道路は市町村の道路台帳に登録され、実質的な道路状態の管理や維持が行われましたが、未登録の里道はその多くが公図に「赤線」で記載があるのみで、実質的な維持管理は周辺の住民任せで放置されていたのが実情でした。

 そして、平成12年4月1日に地方分権一括法が施行され、国土交通省(旧建設省)所管の「赤道(里道)・青道」などのいわゆる法定外公共物を無償で市町村へ譲与(所有権移転)されることになりました。
 この制度の譲与期間は、国有財産特別措置法の一部改正に伴う経過措置により平成17年3月31日までとなっており、各市町村は申請に基づいて譲与を受けることになりました。

 つまり、「赤道(里道)・青道」は国から市町村が無償で譲り受けているのです。

道路とは一般交通の用に供する道

 
 「赤道」でも普通に道路として使用されていれば問題は無いのです(そのケースは現に存在しています)が、多くの「赤道」は建物が存在する宅地内を通っているのです。

 例えば50年以上前から住み続けている宅地において、敷地内に「赤道」が通っているのですが、それが公道と指定されている場合があります。 

 「そもそも道路とは何か」ということですが、道路法第2条に道路の定義が規定されていますが、「道路とは、一般交通の用に供する道」ですので、宅地内に公道がある筈が無いのです。

 建物の敷地内に公道が通っていること、この状況は全国的にも多いのではないかと思いますが、これは問題ではないでしょうか。

<道路法—用語の定義>
「第2条1項
この法律において「道路」とは、一般交通の用に供する道で次条各号に掲げるものをいい……。」
<道路の種類>
「第3条
道路の種類は、左に掲げるものとする。
① 高速自動車国道
② 一般国道
③ 都道府県道
④ 市町村道」

 筆者は、Y市のある方から「敷地内に『赤道』があるのですが、どうすれば良いでしょうか」との相談を受けています。

 下記の左図は登記所の公図ですが、道路部分は地番が入っていません。昔はこの部分が赤色で着色されていたため「赤道」と呼ばれています。(現在の公図では、道路は赤色にはなっていません。)

 また、右図はY市の道路の認定路線図ですが、ここには「●●466」と認定路線番号が入っていますので、公道として指定されていることになります。


 
※ 認定道路とは
 道路法が適用される都道府県道、市町村道等を通称「認定道路」と呼んでいます。この認定道路とは、道路法に規定する路線の認定(道路法第7条、8条)、区域の決定(道路法第18条1項)供用の開始(道路法第18条2項)の行政行為を経た道路のことです。

 宅地内を通っている「赤道」は既に道路(公道)としての機能は果たしておらず、実質的な維持管理も土地所有者任せとされているのが実態なのです。

 本来、50年も建物の敷地として使用していれば時効取得になる筈なのですが。

 市町村では、この「取得時効」を防ぐために公道指定(路線認定)をしているのか、と疑わざるを得ません。

 しかし訴訟も大変なので、現実的には「赤道」の土地所有者は市町村から払下げを受ける(買い取る)方法に従っているのです。

「赤道」払下げの手続

 
 ところで、「赤道」を市町村から払下げを受ける場合、次の複雑な手続きや費用が発生します。

(1)土地測量と「赤道」部分の特定

 「赤道」の払下げを受ける際には、土地所有者の責任で土地測量を行い、宅地部分の面積と「赤道」部分の面積を確定する必要があります。当然、測量事務所に費用を支払うことにもなります。(市町村によっては補助金制度があります。)

(2)「赤道」沿いの所有者の承諾書

 払下げを受ける所有者の責任で「赤道」沿いの他の所有者の「承諾書」を取得する必要があります。
 何故、払下げを受ける所有者が「赤道」沿いの他の所有者から「承諾書」を取得する必要があるのか、根拠の法律も無いし理解できません。

(3)市町村議会での「公道廃止決議」

 宅地内の「赤道」が公道になっている場合は、議会での「公道廃止決議」が必要になります。この「公道廃止決議」により、道路から市町村の普通財産へと変更になります。
 つまり、土地所有者は市町村から普通財産を購入することになるのです。

(4)払下げ費用の支払い

 「赤道」が公道とされている市町村では、宅地所有者は市町村から普通財産の払下げを受ける(買い取る)ことになりますのが、市町村で決められている土地代金を支払うことになります。計算方法は市町村毎に異なると思われます。

※Y市の払下げ土地代金(計算方法の例)
<地価公示価格(又は払下げ対象地の固定資産税路線価÷0.7)×1/2×実測面積>
(商業地の場合は1/2の箇所が0.8。)

※固定資産税路線価は地価公示価格の7割ですので(固定資産税路線価÷0.7=地価公示価格)です。

固定資産税の非課税を確認

 
 そもそも、建物の敷地(宅地)内に公道(「赤道」)があることが正しいのか疑わしいものですが、仮に、敷地内に「赤道」が通っていることが分かった場合は、市町村で「赤道」への対策を確認してください。

 ただし、多くの市町村では、「赤道」という表現ではなく「法定外公共物」の用語が多いようです。

 なお、宅地内であっても「赤道」(公道)の固定資産税(土地)は非課税であるべきなのです。上記Y市の場合は、固定資産税が非課税となっています。
 
2024/09/17/15:00
 

 

(第117号)「固定資産税の仕組み」が十分に理解されない原因及びコンサルタントとしての「意見」

 
(投稿・令和4年12月-見直し・令和6年8月)

 今回は、「固定資産税の仕組み」が十分に理解されない原因と、筆者の行政での経験やコンサルタントとしての実践から、率直な疑問と意見をさせていただきます。

固定資産税はなぜ理解し難いのか

 
 ところで、「固定資産税の仕組み」は何故十分に理解されていないのでしょうか。

 この「固定資産税の仕組み」が十分に理解されない原因は様々ありますが、大きな原因は
(1)土地と家屋は「賦課課税方式」であること
(2)土地と家屋の「評価方法が複雑」なこと
が考えられます。
 これに対して償却資産は「申告課税方式」ですが、こちらの問題点としては
(3)家屋と償却資産の二重課税、があります。

土地と家屋は「賦課課税方式」

 
 固定資産税の土地と家屋の評価方法は、固定資産評価基準に基づき行われることとされています。そして、毎年、納税通知書とともに課税明細書が送られてきますが、これを見てもよく分かりません。

 これは、土地と家屋は基本的に全国全ての資産を対象とするため、納税者の申告によらず役所が一方的に評価・課税する「賦課課税方式」によることが大きな原因で、納税者からすると、評価の内容(計算方法)までは分からないのです。

 ここで大事なことは、市町村の課税当局としては、毎年の課税明細書の発送や縦覧・閲覧制度が行われていますが、納税者から説明を求められた場合には、地方税法417条の「重大な錯誤」があるかどうかを確認した上で、内容を納税者に十分説明するべきなのです。

 ところが、納税者からの説明では、市町村の窓口で「価格に不服があるのなら、審査申出でお願いします」と言われて、事実上「門前払い」にされてしまう場合もあるそうなのです。

土地と家屋の「評価方法が複雑」

土地は「負担調整措置」が原因

 土地の評価方法については、平成9年度から行われている土地の「負担調整措置」の仕組みにより分かりにくくなっているのが現状です。

 本来であれば、課税(基準)年度の課税標準額に税率を乗じて税額を求める訳ですが、負担水準(前年度課税標準額/本則課税標準額)の値により、課税年度の課税標準額が決められるという複雑な内容になっています。

 
 「負担調整措置」制度がスタートしてから四半世紀が経っていますが、非住宅用地(商業地等)の据置ゾーンによる不公平や、住宅用地での負担水準が100に近づいている土地も多くなっている(これは統計が無いため推測です)など、そろそろ見直す時期ではないでしょうか。

家屋は「再建築価格方式が」が複雑

 また家屋については、「再建築価格方式」という極めて複雑な評価方法が採用されていることです。

 「再建築価格方式」とは、評価の対象となる家屋と同一のものを、評価する時点において、その場所に新築するとした場合に必要とされる建築費(再建築価格)を求める方法です。

 この家屋の「再建築価格方式」は、固定資産評価基準による評価方式が始まって以来継続されています。

 「再建築価格方式」が決定される経過は、昭和34年4月から昭和36年3月の間に固定資産評価制度調査会において、家屋の評価方法として
再建築価格を基準として評価する方法
取得価格を基準として評価する方法
賃貸料の収益を基準として評価する方法
売買実例価格を基準として評価する方法
の4つの方法について検討されましたが、その結果、の「再建築価格方式」が採用され今日に至っています。

 その理由として、再建築価格は、家屋の構成要素として基本的なものであり、その評価の方式化も比較的容易であるので、「再建築価格方式」が適当であるとして決定された訳です。

 これまでも、家屋評価の簡素化については、総務省及び一般財団法人資産評価システム研究センターを中心に検討されてきていますが、あくまでも「再建築価格方式」枠内の簡素化検討に終始しているのではないかと思わざるを得ません。

 さらに最近では、家屋評価のAI化が図られたり(これ自体は良いことですが)、民間業者へ委託するなどがされ始めています。これは、職員の作業の簡素化(合理化)であって、家屋評価方式の簡素化とは異なります。

家屋と償却資産の二重課税に注意

 
 償却資産は「申告課税方式」なのですが、「家屋=賦課課税、償却資産=申告課税」のため、家屋の一部がダブって課税される二重課税(課税誤り)もある、ということですので注意が必要です。

 この内容は第66号「家屋と償却資産の二重課税(課税誤り)に注意(「建築設備」の場合)」で紹介してあります。

 

固定資産税評価に関する疑問点と意見

 
 固定資産税評価に関する疑問等はいくつかありますが、今回は(1)土地の「適正な時価=交換価値」で良いのか、(2)在来(中古)家屋評価が何故下がらないのか、(3)家屋の評価は「再建築価格方式」で良いのか、の3点について説明します。

(1)土地の「適正な時価=交換価値」で良いのか

 まず地方税法では「固定資産税の価格とは」との説明があり、「価格=適正な時価」と定義されています(地方税法第341条5号)。

<固定資産税の価格とは>ー地方税法第341条5号
「固定資産税について、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
 5号 価格 適正な時価をいう。」
 
 そして、平成15年6月26日の最高裁判決で、「適正な時価とは……客観的な交換価値をいう」との見解が出され、土地の「適正な時価=客観的交換価値」とされています。

<平成15年6月26日最高裁判決>
「適正な時価とは、正常な条件の下に成立する当該土地の取引価格、すなわち、客観的な交換価値をいうと解される。したがって、土地課税台帳に登録された価格が賦課期日における当該土地の客観的な交換価値を上回れば、当該価格の決定は違法となる。」
 
 ところで、「交換価値」となると、土地評価においては「市場流通性(※)」の要素が含まれるのが一般的である訳ですが、固定資産評価基準では、例えば大規模画地評価は「奥行価格補正で足りる」として「市場流通性」が考慮はされていません。これでは「適正な時価=客観的な交換価値」に疑問を呈さざるを得ません。

※「市場流通性」とは……土地の売買においては、面積が大きくなるに従って総額が嵩むためその分単価が小さくなるという「不動産取引の世界」では一般的な考え方です。

 
 固定資産税の評価は、「保有価値」に着目した「資産税」である訳ですから、「交換価値」ではなく「使用価値」とすべきではないでしょうか。「適正な時価=使用価値」です。

(2)在来(中古)家屋評価が何故下がらないのか

 相談者の方から「何故、中古家屋の評価額(税額)が下がらないのですか」とよく聞かれますが、その原因は次の2つ考えられます。

建設物価の上昇期には「評価額の据置」が行われること

 現在の「再建築価格方式」では、在来(中古)家屋の評価において、築後の経過年数(「経年減点補正率」)だけでなく、建設物価の状況(「再建築費評点補正率」)により物価上昇期には「評価額据置」が行われています。

<建設物価による家屋評価の上下> 

 この図のとおり、単に築年数の減価だけではなく、「前年度における再建築費評点数」に「再建築費評点補正率」(工事原価の物価水準)も関連づけて評価されているため、築年数を経るに従って単に評価額が下がる仕組みにはなっていません。

 右側の<物価上昇期>には、経年による減価は下がるものの、建設物価の上昇が大きく、計算上では前基準年度の評価額を上回る場合もあります。

 しかし、固定資産税の評価額を上げる訳にはいかないために「評価額据置」(前基準年度と同じ評価額)となりますが、これが「在来家屋の評価が下がっていない」仕組みである訳です。

 ところで、「再建築費評点補正率」とは、東京都特別区の工事原価の物価水準で3年前の水準と比較してどの程度上下しているのかその割合ということになります。

 令和6年度では、木造1.11、非木造1.07とされており上昇していることになります。実は、この再建築費評点補正率は、ここ4基準年度(12年間)上がり続けているのです。

<再建築費評点補正率の推移>

 一般的には、家屋は築年数が経過するにつれて評価が下がっていくと考えられていますが、「評価額据置」はこの感覚には合わないものでもあります。

 つまり、在来(中古)家屋の評価において、「再建築費評点補正率(建設物価)」は「必要無い」のではと思います

固定資産税家屋の評価では「残価率(20%)」があること

 固定資産税の家屋評価では、もう一つ「残価率」という特徴があります。
 それは、家屋が存在している限りは、築年数が何年経っても「20%の評価額が続く」ということです。

<家屋評価の残価率>

 この図で固定資産税の取得価格(出発点)が60%としていますが、これは家屋の新築評価を行ったときの「実績」として、取得価格の60~70%程度に収まっているケースが多いことからです。

 このように、固定資産税家屋評価では、家屋を使用し続けている限りは何年経っても「残価率20%」が課税されています。

 なお、家屋が「空き家」として放置されるのは良く無いことですが、固定資産税は「行政サービスの対価」との性格がありますので、「20%が良いかどうかは別」として、一定の「残価率」は必要ではないかと思います。

(3)家屋の評価は「再建築価格方式」で良いのか

 そこで、家屋評価の簡素化としては、この際「再建築価格方式」の枠を超えて検討すべきであり、筆者の「意見」としては「『取得価格方式』を採用すべき」ではないかと考えます。

 
 固定資産税はその名のとおり「資産税」ですので、事業用、非事業用にかかわらず実際に費やした費用を根拠にした「取得価格方式」が納税者にとっても理解しやすい評価方法になります。

 現在の「再建築価格方式」では、計算した価格が結果として概ね取得価格の6~7割程度となっていますので、「取得価格方式」では、取得価格に6~7割の調整率を加え、経年減価補正率を乗じて評価額を求める方法です。

<「取得価格方式」の内容>
 評価額 = 取得価格 × 調整率(※)× 経年減価補正率
 ※木造:6割、非木造:7割を想定

 もちろん家屋評価方式の変更は、これまでの評価方法との整合性等課題が多く問題が多いことは承知しています。

 しかし、ここは長期的視点に立って評価の簡素化を図るべきで、「取得価格方式」によれば市町村での評価実務も簡素化され、「課税誤り」も少なくなるものと考えられます。

※ なお、取得価格とは「新築時の購入価格」又は「建築費用」ですが、取得価格を申告することになりますので、それが正しいものであることが立証できる仕組みを構築する必要があります。
 
2024/08/15/08:00
 

 

(第116号)固定資産税家屋の再建築費基準表の改正(用途別・部分別の整理統合)ー令和6基準年度

 
(投稿・令和6年4月-見直し・令和6年8月)

 今回は、令和6基準年度に改正された家屋の再建築費基準表、その中でも用途別区分と部分別区分の整理・統合を紹介します。

家屋評価はなぜ難しいのか

 固定資産税の家屋評価は「再建築価格方式」が採用されており、これは実際にその家屋をいくらで建築したのか、あるいはいくらで取得したのか(取得費)とは異なるものです。

 あくまでも、固定資産評価基準により決められた再建築費基準表により再建築評点数を算出し評価計算をします。

 とにかく固定資産税家屋の評価で一番難しいのは、固定資産評価基準の再建築費基準表により新築時の再建築費評点数を算出することなのです。

 なお、第39号「家屋評価「再建築価格方式」の複雑な評価方法について(1)」及び第40号「家屋評価「再建築価格方式」の複雑な評価方法について(2)」で、令和3基準年度における「再建築価格方式」を説明しています。

 
 ところで、なぜ新築時の家屋評価が難しいのか、第111号「固定資産税の家屋がなぜ分かりにくく「課税誤り」が多いのか」から一部を再掲します。

 
 「再建築費評点数」を求めるためには「当該新築家屋の内容を把握する」ことが必要になるため次の作業を行います。

  家屋所有者に調査協力を依頼し、新築家屋の見積書や竣工図等を借用し情報を取得します。
  実際に当該家屋に赴き、用途別区分とともに家屋の外観や内部の使用資材等を確認します。
  借用・保存した見積書等から評価基準の部分別区分に照らして、必要な資材を拾い出し部分別分類を行います。.
  その上で、市町村が有する評価システムに評価基準の評点項目と使用資材量の数値を入力して評点数を算出します。

 いかがでしょうか、大変ですが評価基準による再建築価格方式は、このような手順が必要とされているのです。

令和6基準年度の用途別区分 

 家屋は、固定資産評価基準で木造家屋と非木造家屋とに区分され、その木造、非木造家屋それぞれに、再建築費評点基準表による用途別区分と部分別区分が規定されています。

 まず用途別区分ですが、令和3基準年度では木造家屋が13種類、非木造家屋が9種類に分類されていましたが、令和6基準年度では木造家屋が7種類、非木造家屋が9種類に整理統合されています。 

木造家屋の用途別区分

 木造家屋の用途別区分では、「併用住宅用建物」が廃止されましたが、全国ベースでの適用件数が少ないことからです。

 また、「専用住宅用建物」と「附属家用建物」が統合されて「戸建形式住宅用建物」とされましたが、附属家であっても建築基準法に基づき母屋である「戸建形式住宅用建物」と同等の施工量が必要となることを踏まえたものからです。

<木造家屋の用途別区分の整理統合>

 

非木造家屋の用途別区分

 非木造家屋の用途別区分では、「住宅、アパート用建物」を「戸建形式住宅用建物」と「集合形式住宅用建物」に分類することで、木造家屋と共通化されています。

<非木造家屋の用途別区分の整理統合>

 

令和6基準年度の部分別区分 

 部分別区分では、令和3基準年度の木造家屋が11種類、非木造家屋が14種類とされていましたが、令和6基準年度では、木造家屋が10種類、非木造家屋が11種類に整理統合されました。

<木造家屋の部分別区分(10種類)>
(1) 構造部
(ア)主体構造部、(イ)基礎
(2)外壁仕上、(3)内壁仕上、(4)床仕上、(5)天井仕上、(6)屋根仕上、(7)建具、(8)建築設備、(9)仮設工事、(10)その他工事

<非木造家屋の部分別区分(11種類)>
(1) 構造部
(ア)主体構造部、(イ)基礎工事、(ウ)外周壁骨組、(エ)間仕切骨組み
(2)外壁仕上、(3)内壁仕上、(4)床仕上、(5)天井仕上、(6)屋根仕上、(7)建具、(8)特殊設備、(9)建築設備、(10)仮設工事、(11)その他工事

家屋再建築費評点基準表(例) 

 今回は、固定資産税家屋の「再建築価格方式」が如何に複雑で、新築時の評価作業が大変なのかを分かっていただくために、敢えて再建築費評点基準表の一部を掲載することにしました。

 ここに掲載するのは木造家屋の「戸建形式住宅用建物」の再建築費評点基準表です。

 「戸建形式住宅用建物」だけでも、次のとおりA4版の7ページになりますが、用途別区分では木造7種類、非木造9種類になりますので、如何に大変かがお分かりになると思います。

<木造家屋再建築費評点基準表>
 (戸建形式住宅用建物)







 
2024/4/29/14:00
 

 

(第115号)固定資産税の価格に不服がある場合の留意点-その2(「訴訟対応」)

 
(投稿・令和6年4月-見直し・令和6年8月)

 前号は、「価格に不服がある場合の留意点-その1(審査の申出)」でしたが、今号は、この「審査の申出」の審査決定に対しても納得がいかない場合の法的措置(訴訟対応)についてです。

 なお、「審査の申出」から訴訟への手続については、第33号でも解説していますが、固定資産税の価格に不服があり「審査の申出」が出来るのは3年に1度の基準年度(評価替え年度)に限られているからです(令和6年度、9年度、12年度…)。

 

訴訟には「審査請求前置主義」が

 まず固定資産税の価格に不服がある場合は、納税通知書の交付を受けた日の翌日から起算して3ヵ月以内に固定資産評価審査委員会へ「審査の申出」を行うことができます。

取消訴訟は「審査の申出」裁決から6ヵ月以内

 そして、固定資産評価審査委員会の決定に不服がある場合に取消訴訟を提起できることになります。

 出訴期間は、「審査の申出」の裁決があったことを知った日から6ヵ月以内とされています。

<出訴期間>
※行政事件訴訟法14条1項
「取消訴訟は、処分又は裁決があつたことを知つた日から6ヵ月を経過したときは、提起することができない。」

 このように、地方税法による原則的な手続は、裁判所に訴える前に、まず固定資産評価審査委員会に「審査の申出」を行う必要があります。これを「審査請求前置主義」と言います。

<審査請求前置主義>
※地方税法434条1項
「固定資産税の納税者は、固定資産評価審査委員会の決定に不服があるときは、その取消しの訴えを提起することができる。」

国家賠償法での訴訟対応も

 地方税法では、このように取消訴訟を提起する前には「審査の申出」が必要とされています。

最高裁の判決-国家賠償請求が可能

 ところが、平成22年6月3日の最高裁判決において、「行政に過失があった場合には、取消訴訟の手続を経るまでもなく、国家賠償請求を行い得る」(要約)との判断がなされています。

<最高裁判決>
※平成22年6月3日(第一小法廷)
「公務員が納税者に対する職務上の法的義務に違背して当該固定資産の価格ないし固定資産税等の税額を過大に決定したときは、これによって損害を被った当該納税者は、地方税法432条1項本文に基づく審査の申出及び同法434条1項に基づく取消訴訟等の手続を経るまでもなく、国家賠償請求を行い得るものと解すべきである。」

 これは「通常尽くすべき注意義務が尽くされていない」=過失があった場合には、審査の申出を経ないで国家賠償請求をすることができるということです。

 この法的根拠は国家賠償法第1条になります。

<国家賠償法>
「第1条 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」

「過失」は最高20年間の返還請求

 そこで、「過失とは何か」ということですが、これは「手抜きがあった場合」と解されています。

 そして、過徴収金返還の時効は20年になりますが、これは民法第724条によります。

<不法行為による損害賠償請求権の消滅時効>
※民法第724条
「不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
二 不法行為の時から20年間行使しないとき。」

 つまり、国家賠償請求が認められた場合には、民法により最高20年の返還請求が可能となる訳です。

 最高20年間の返還期間になりますと、地方税法上の5年間の「還付金」と残りの15年間の「返還金(補填金))となります。

 この最高裁の判断は、地方税法を超えた最高20年間の返還期間ということですが、実は全国の市町村では、訴訟が無くても「過失」があったと認めた場合には20年間の返還も実施されているのです。

地方税法417条による価格の修正

「重大な錯誤」があれば直ちに修正が必要

 これは、そもそも固定資産課税台帳に登録された価格に「重大な錯誤」があることを発見した場合には、直ちにこの価格を修正しなければならないとされているからです。

<価格等の決定又は修正等>
※地方税法417条1項
「市町村長は、…登録された価格等に重大な錯誤があることを発見した場合においては、直ちに…決定された価格等を修正しなければならない。」

 この「重大な錯誤」とは、
① 固定資産課税台帳に登録する際の誤記
価格を決定する際の計算間違い
明瞭な誤記又は認定の誤り等、客観的に見て価格の決定に重大な誤りがあると認められるような場合
 とされています。

 つまり、市町村の課税当局は、「審査の申出」や訴訟の決定を待つのではなく、「重大な誤り」があれば、自ら是正する必要があるのです。

 納税者の皆さんは、固定資産税の価格に不服がある場合は、安易に訴訟を提起するのではなく、この地方税法417条の制度を価格是正の手続きとして考えるべきなのです。
 
2024/4/19/16:00