(第18号)固定資産税の歴史はシャウプ勧告(昭和24年)から始まる

 
(投稿・令和3年-見直し・令和7年1月)

 固定資産税は、土地、家屋、償却資産の三つの固定資産が課税客体となっていますが、いつからこのようになったのでしょうか。

 固定資産税は、第二次世界大戦後の昭和24年のシャウプ勧告に基づいて創設されました。
 このシャウプ勧告の中では、それまでの土地を課税客体としていた「地租」から土地へ、家屋を課税客体としていた「家屋税」から家屋へ引き継ぎ・統合した上で、新たに償却資産を課税客体に加えて固定資産税を創設することが勧告されました。

<固定資産税の歴史>

土地は「年貢制度」まで遡る

 土地に関する租税は、古代から現代に至るまで主要な税目の地位を保っています。

 近世の日本は、領主制の下で、領主ごとに土地に対する税が課されていました。農村の土地には年貢が課されていたのに対し、都市は年貢が免除されることも多く無税地が大きな割合を占めていました。

 明治政府は、このような制度を廃して、全国の土地について統一的な基準で全ての土地地籍を把握し、その土地に税を課すことを目指し、明治6年に地租改正を始めました。

 地租改正における地籍調査と地価調査は、その土地の所有者自身による申請から出発することが原則になっていました。府県は、提出された地籍と地価の検査を行い、必要に応じて再調査や書類の補訂を指示し、地券台帳を作成し、地券台帳から土地所有者に地券を発行し土地の証書としました。

 この明治6年の地租改正によって、近世の石高(こくだか)制による貢租(年貢)制度は廃止され、私的土地所有を前提にした「地租」が国税として誕生しました。

 そして、明治11年には、府県が「地租付加税」として課税できるようになり、明治21年には市町村でも「地租付加税」を課税できるようになりました。

 「地租」は第二次大戦後の昭和22年に地方に移譲されて府県税の独立税になり、昭和24年のシャウプ勧告により、昭和25年に市町村税の固定資産税となりました。

家屋は「家屋税」(府県税)から

 家屋は、明治15年に創設された「家屋税」から始まります。「家屋税」は府県税でしたが、当初は東京、大阪、京都、神奈川の大都府県に限定されていました。
 また、大正15年の税制改革で、市町村でも「家屋税」に「家屋税付加税」として課税できるよになり、昭和22年には「家屋税」も「地租」と同様に府県の独立税となりました。

 そして、土地と同じく、昭和24年のシャウプ勧告により、昭和25年に市町村税の固定資産税となりました。

償却資産はシャウプ勧告により新設

 償却資産は昭和24年のシャウプ勧告による税制改革で昭和25年に固定資産税の一つとして新設されました。

 しかし、この償却資産に似ている税が実は既に存在していました。昭和15年に旧地方税法により、法定外独立税が市町村に対して認められました。

 この法定外独立税は、内務、大蔵両大臣の許可に基づき、市町村の条例により設定するものでしたが、この税の中には原動機や冷凍機、織機、製材機、印刷機など各種事業用償却資産がありました。

シャウプ勧告により固定資産税は財産税

 シャウプ勧告とは、アメリカの財政学者カール・シャウプを団長とする使節団によって昭和24年に、連合国最高司令官マッカーサーに提出された日本の税制改革に関する報告書のことです。

 シャウプ勧告では、当時の日本の地方財政について、次の5つの点が指摘されています。
① 市町村、都道府県及び中央政府間の事務の配分及び責任の分担が不必要に複雑であり、また重複している。
② この3つの段階の統治機関の間における財源の配分が若干の点において不適当であり、また中央政府による地方財源の統制が課題である。
③ 地方自治体の財源は、地方の緊要経費を賄うには不足である。
④ 国庫補助金及び交付金は独断的に決定されることが多い。
⑤ 地方団体の起債の制限は極めて厳重に制限されている。

 冒頭のとおり、シャウプ勧告では、府県の独立税となっていた「地租」と「家屋税」を統合するだけでなく、償却資産も課税客体に加えて、固定資産税とすることが勧告され、昭和25年に創設されました。

 このシャウプ勧告の意図は、固定資産税を固定資産と市町村の提供する公共サービスとの関連性を明確にして、市町村税の独立税とすることを勧告したと解されています。

 シャウプ勧告がされるまでの我が国の「地租」や「家屋税」は、賃貸価格を課税標準とする「収益税」であった訳ですが、シャウプ勧告では固定資産税の課税標準を賃貸価格から資本価格(「財産税」)にすることを勧告しています。

 これまで、固定資産税は「収益税」なのか「財産税」なのかとの議論もありましたが、シャウプ勧告の資本価格論とともに、現在の地方税法における「価格=適正な時価をいう」の解釈からも、固定資産税は「財産税」とされています。
 
2022/05/07/18:00
 

 

(第17号)固定資産税の土地面積は原則として「登記簿主義」、例外的に現況地積も

 
(投稿・平成25年-見直し・令和7年1月)

 今号は、第16号の地目の認定に続いて、今回は土地の地積(面積)認定についてです。

 

地積の認定は原則として登記簿地積

 土地の地目の認定は実地調査で判断できるため「現況主義」を採用します。
 これに対して、土地の面積は見ただけでは分からないことから、実測しなければ判断できません。

 しかし、全国のしかも分合筆も頻繁に行われる土地すべてを役所で実測することは、時間的にも技術的にも難しいと言わざるをえません。また、一部のみを測量することは不公平にもなりかねません。

 そのようなことから、固定資産税の土地の地積認定においては、原則として、「登記簿主義」を採用しています。

 地目は「現況主義」、地積は「登記簿主義」です。

登記簿主義の例外

 土地面積の認定は「登記簿主義」が原則ですが、例外として現況地積を認めています。

<地積認定の原則と例外>
 
 例えば、登記簿地積が500㎡で長年課税されていたものの、実際に測量してみたら400㎡しかなかった。測量図面もあるので、400㎡で課税できないか、というような場合です。

 結論としては、測量図が正しいものであれば、400㎡を課税すべき土地の面積として、例外的に認定することになります。

 土地の面積を例外的に現況で認める場合、二つの場合が考えられます。

<固定資産評価基準の地積認定>
※固定資産評価基準第1章第1節二
「各筆の土地の評価額を求める場合に用いる地積は、次に掲げる場合を除き、原則として、登記簿に登記されている土地については登記簿に登記されている地積によるものとし、登記簿に登記されていない土地については現況の地積によるものとする。
1 登記簿に登記されている土地の登記簿に登記されている地積が現況の地積よりも大きいと認められる場合における当該土地の地積は、現況の地積によるものとする。
2 登記簿に登記されている土地の現況の地積が登記簿に登記されている地積よりも大きいと認められ、かつ、登記簿に登記されている地積によることが著しく不適当であると認められる場合においては、当該土地の地積は、現況の地積によることができるものとする。」

登記簿地積>現況地積の場合(いわゆる「縄縮み」)
 この場合は「登記簿主義」の例外で「現況地積」も可能となります。ただし、申告が必要です。

登記簿地積<現況地積の場合(いわゆる「縄延び」)
 この場合は「地積差が著しい場合」に例外で現況認定になります。

 ①の場合は「現況地積による」で、②は「現況地積によることができる」(ただし、登記地積によることが著しく不適当な場合に限る)と表現が異なっています。

 この規定は固定資産評価基準にありますが、②を分かりやすく言えば「登記簿より実際の土地の面積が大きくても、ある程度の面積差であれば登記簿面積のままでいいです」ということです。

 土地を売るときならいざしらず、所有者自らが固定資産税当局に「自分の土地は登記簿面積より大きいです」と申し出る人はいないと思いますが、仮にそうであっても、②の場合は「現況地積によることができる」のです。

 これは、土地の所有者(納税者)にとって有利な取扱いで、このような考えを「納税者有利の原則」と呼ばれています。

 地方税法や税制度には、このような「納税者有利の原則」による考え方が貫かれています。

「縄伸び」「縄縮み」とは

「縄延び」という用語は、中世から近世にかけて行われた検地の際に、年貢の負担を軽くするため、実際よりも長めに目盛りを記した縄を使って、地積を小さめに測量したことに由来します。

 長めに目盛りを記せば、実際には1mあるものも、例えば80cmになる訳で、地積が小さめに登録されました。

 明治政府の土地台帳作成の際も、税金の負担を軽くするため、実測面積よりも少なく申告することが多く行われました。

 現在の登記制度も、旧土地台帳制度の地積が表題部に移記された経緯があり、当時の測量の成果が引き継がれている部分があります。

 一方「縄縮み」の方は、地主が小作人に小作料を多く納めさせるため、あるいは市街地で売買代金を高くするために故意に公簿面積を大きくした等の説があります。

2022/5/7/17:00
 

 

(第16号)固定資産税(土地)の地目認定は現況主義による

 
(投稿・平成25年-見直し・令和7年1月)<100号達成時の閲覧数5位>

 今号は、固定資産税の土地の地目認定はいかに行うか、についてです。

地目とは(地目の定義)

地方税法での地目

 まず地方税法で、固定資産税の土地とは何かということです。

<用語の意義(土地)>
※地方税法341条1項2号
「土地とは、田、畑、宅地、塩田、鉱泉地、山林、牧場、原野その他の土地をいう」

 ここでお分かりのように、地方税法では「土地とはどういうものか」という定義がされているのではなく、土地の利用面からの分類、すなわち土地の地目を掲げた条文となっています。

 固定資産税の土地の評価は地目ごとに行います。
 また、固定資産評価基準にも土地の地目が定められています。

<固定資産評価基準の地目>
※固定資産評価基準第1章第1節
「土地の評価は、次に掲げる土地の地目の別に、それぞれ、以下に定める評価の方法によって行うものとする。この場合における土地の地目の認定に当たっては、当該土地の現況及び利用目的に重点を置き、部分的に僅少の差異の存するときであっても、土地全体としての状況を観察して認定するものとする。
(1)田、(2)畑、(3)宅地、(4)鉱泉地、(5)池沼、(6)山林、(7)牧場、(8)原野、(9)雑種地」

 地方税法の定義と固定資産評価基準を比べると、若干の違い(塩田が無くなって池沼が入り、その他の土地=雑種地が入っている)がありますが、ほぼ同じ地目となっています。

 この中で中心となる地目は、宅地、田、畑、山林あたりですが、もう一つ雑種地、実はこの雑種地が固定資産税評価の中ではかなり重要な地位を占めています(雑種地については、後日解説します。)

不動産登記法での地目

 ところで、地方税法と固定資産評価基準では地目の意義の定義がされていませんが、定義は不動産登記法の地目と同じで、具体的には不動産登記事務取扱手続準則の定める通りとされています。

 そこで、不動産登記事務取扱手続準則の定める地目を掲げます。

<不動産登記法の地目>
※不動産登記事務取扱手続準則第68条
「 次の各号に掲げる地目は、当該各号に定める土地について定めるものとする。この場合には、土地の現況及び利用目的に重点を置き、部分的にわずかな差異の存するときでも、土地全体としての状況を観察して定めるものとする。
(1) 田 農耕地で用水を利用して耕作する土地
(2) 畑 農耕地で用水を利用しないで耕作する土地
(3) 宅地 建物の敷地及びその維持若しくは効用を果すために必要な土地
(4) 学校用地 校舎、附属施設の敷地及び運動場
(5) 鉄道用地 鉄道の駅舎、附属施設及び路線の敷地
(6) 塩田 海水を引き入れて塩を採取する土地
(7) 鉱泉地 鉱泉(温泉を含む。)の湧出口及びその維持に必要な土地
(8) 池沼 かんがい用水でない水の貯留池
(9) 山林 耕作の方法によらないで竹木の生育する土地
(10) 牧場 家畜を放牧する土地
(11) 原野 耕作の方法によらないで雑草、かん木類の生育する土地
(12) 墓地 人の遺体又は遺骨を埋葬する土地
(13) 境内地 境内に属する土地であって、宗教法人法(昭和26年法律第126号)第3条第2号及び第3号に掲げる土地(宗教法人の所有に属しないものを含む。)
(14) 運河用地 運河法(大正2年法律第16号)第12条第1項第1号又は第2号に掲げる土地
(15) 水道用地 専ら給水の目的で敷設する水道の水源地、貯水池、ろ水場又は水道線路に要する土地
(16) 用悪水路 かんがい用又は悪水はいせつ用の水路
(17) ため池 耕地かんがい用の用水貯留池
(18) 堤 防水のために築造した堤防
(19) 井溝 田畝又は村落の間にある通水路
(20) 保安林 森林法(昭和26年法律第249号)に基づき農林水産大臣が保安林として指定した土地
(21) 公衆用道路 一般交通の用に供する道路(道路法(昭和27年法律第180号)
による道路であるかどうかを問わない。)
(22) 公園 公衆の遊楽のために供する土地
(23) 雑種地 以上のいずれにも該当しない土地」

 固定資産税の地目は9種類ですが、不動産登記法ではそれよりはるかに多い23種類です。

地目の認定は「現況主義」

地目認定の時期と取扱い

 まず、地目認定の時期ですが、固定資産税の賦課期日が1月1日とされており、地目の認定も1月1日現在の土地の現況や利用目的を重視することから1月1日現在の認定となります。

<固定資産税の賦課期日>
※地方税法第359条
「固定資産税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の1月1日とする。」

 次に認定の取扱いですが、固定資産税の土地評価上の地目の認定は現況の地目「現況主義」によります。

 では、土地の地目が登記簿と現況が異なる場合は、どうなるのでしょう。

 例えば、登記簿上の地目が「山林」となっているのに、実際には家屋が建っている土地の場合ですが、この土地の固定資産税の地目は、「現況主義」によって「宅地」と認定されます。

地目認定の単位

 地目認定の単位は、原則として1筆ごとに行います。

 ただし、地目は土地の現況や利用目的に重点を置いて認定しなければならないものであり、部分的に僅少の差異があるときでも土地全体としての状況を観察して行います。

 また、1筆の土地が相当の規模で、2以上の全く別の用途に利用されている場合(例えば、1,000㎡の土地の700㎡が畑、300㎡が宅地として利用されているような場合)には、これらの利用状況に応じて区分して、それぞれの地目を定めることになります。

地目認定の実地調査

 ところで、このように「現況主義」とされているのは、土地の面積の場合は現地調査で見ただけでは判断できませんが、地目は現地調査で認定することが比較的容易であるからです。 

 では、固定資産税を担当する市町村の職員は、どの程度の実地調査を行っているのでしょうか。地方税法で「毎年少なくとも一回実施」との規定があります。

<固定資産税の実地調査>
※地方税法408条
「市町村長は、固定資産評価員又は固定資産評価補助員に当該市町村所在の固定資産の状況を毎年少なくとも一回実地にさせなければならない。」

 「固定資産評価員」及び「固定資産評価補助員」とは、いずれも市町村の固定資産税を担当する職員のことですが、「評価補助員」は担当者全員がなります。また、「評価員」はそのセクションの長があたるのが普通ですが、その市町村の議会での同意が必要とされています。(「評価員」が置かれていない市町村もあります。)

 一般的に、固定資産の実地調査は、申請や問題がある都度行う「随時調査」と、所管地域を一斉に行う「定期調査」が考えられますが、408条は「定期調査」に係る規定です。

 土地の評価替えは3年に1度であるため、実務上は3年単位で評価替えスケジュールが組まれるため、多くの市町村では「定期調査」もこの中で組み込んで行われるのが一般的ではないかと思います。

不動産鑑定評価での地目認定

 不動産鑑定評価では、土地の種別(地目とは言いません)は、その属する地域の種別に応じて分類される土地の区分となります。

 土地の種別は宅地、農地、林地、見込地、移行地に分けられます。

 これらは、さらに地域の種別の細分化に応じて、例えば宅地でしたら、住宅地、商業地、工業地等に細分されます。

 例えば、市街化区域で駐車場に利用されている土地は、固定資産税評価では雑種地評価ですが、不動産鑑定評価では宅地評価を行う場合もあります。

 不動産鑑定評価では、一般的要因を始めとして、地域要因及び個別的要因を分析した上で、その土地の最有効使用が住宅用の土地と判断されるか、という手順を経る必要があります。

2022/5/7/14:00
 

 

(第15号)固定資産税「減免」の要件と市町村条例

 
(投稿・平成25年-見直し・令和7年1月)<100号達成時の閲覧数4位>

 今回は、前号(第14号)で説明した「減免」について、少し詳しく解説します。

 

固定資産税の「減免」要件

 固定資産税の「減免」の根拠は地方税法第367条になります(再掲)。

※地方税法第367条(固定資産税の「減免」)
「市町村長は、天災その他特別の事情がある場合において固定資産税の減免を必要とすると認める者、貧困に因り生活のため公私の扶助を受ける者その他特別の事情がある者に限り、当該市町村の条例の定めるところにより、固定資産税を減免することができる。」

 地方税法での規定は抽象的な要件を大枠示したもので、具体的要件は市町村の条例で定めることが予定されています。

 そこで市町村では、概ね次の4つの形態により定めているのが一般的です。(④は総務省の例示で追加されています。)

天災その他特別の事情がある場合において減免を必要と認める者
貧困に因り生活のため公私の扶助を受ける者
その他特別の事情がある者(公益上の事由も含む)
公益のために直接専用する固定資産(有料で使用するものを除く)

「減免」の3つの形態

 上記①〜③の具体的解釈は次のとおりとされています。 

① 天災その他特別の事情がある場合において減免を必要と認める者

 震災、風水害、火災その他これらの災害があり、納税義務者がその財産について甚大な被害を被った場合など。

② 貧困に因り生活のため公私の扶助を受ける者

 生活保護の規定による保護等の公的扶助を受けている者、又は公的扶助に準じて考えられるような扶助を受けている者など。

③ その他特別の事情がある者(公益上の事由も含む)

 ①②の事由以外の事由で、客観的にみて担税力を喪失した者、公益上の必要があると認められる者など。

 このように見ますと、他の法的手続きで自ずと明確になる要件と、「特別の事情」のようなその基準が必ずしも明かでない要件が混在しているように思われます。

 では、市町村の条例では、どのように規定されているのでしょうか。

市町村の税条例における「減免」規定

市町村(東京都13区)条例の例

 ここで、参考として、東京都都税条例、横浜市市税条例及び川崎市市税条例における固定資産税の「減免」規定を紹介します。

※東京都都税条例第134条(固定資産税の「減免」)
1 次の各号のいずれかに該当する固定資産であって、知事において必要があると認めるものに対する固定資産税の納税者に対しては、当該固定資産税を減免する。
一 生活保護法により生活扶助を受ける者の納付すべき固定資産税に係る固定資産
二 公益のために直接専用する固定資産(固定資産の所有者に課する固定資産税にあっては、当該所有者が有料で使用させるものを除く)
三 災害等により、滅失し、又は甚大な損害を受けた固定資産で規則で定めるもの
四 前各号に掲げるものの外、規則で定める固定資産

<東京都都税条例施行規則(一部)> 

※横浜市市税条例第62条(固定資産税の「減免」)
1 市長は、次の各号の一に該当する固定資産に対し、特に必要があると認めた場合は、その固定資産税を減免することができる。
(1)災害若しくは天候不順のため、収穫が著しく減じた田畑
(2)生活保護法の規定により、生活扶助を受ける者の納付すべき固定資産税にかかる土地又は家屋
(3)公益上その他の事由により特に減免を必要とする固定資産

<横浜市市税条例施行規則(一部)>

※川崎市市税条例第49条(固定資産税の「減免」)
1 固定資産税は、次の各号の一に該当する固定資産であって、市長において必要があると認める場合において、納税義務者の申請によってこれを減免する。
(1)災害により甚大な損害を受けた固定資産で、特にその必要があると認められるもの
(2)生活保護法の規定により生活扶助を受ける者の所有する固定資産で、特にその必要があると認められたもの
(3)公益のために直接専用する固定資産(有料で使用するものを除く)
(4)前各号のほか、特別の事由があるもの

<川崎市市税条例施行規則(一部)>

減免の適用は申請による

 このように、市町村(東京都は都)の条例でも、地方税法同様の抽象的要件が定められている場合がほとんどで、具体的な基準は、市税条例施行規則や要綱に委任しているのが実態です。それと、このように並べて見ますと、抽象的要件ではありますが、各市町村で微妙に異なっているのが分かります。

 また、各条例においても「市町村長(知事)が必要があると認めた場合」とありますが、これは市町村長(知事)が自主的に見つけて判断するものではなく、納税義務者からの申請により行われるのです。つまい、減免の前提として、納税義務者からの申請が必要とされています。

 固定資産税の「減免」は申請に基づき、個々の納税義務者について十分に実情を調査したうえで、真に納税者の担税力が無いと認められる場合に限って行われるものです。

2022/5/6/14:10
 

 

(第14号)固定資産税の「減免」と「課税免除及び不均一課税」

 
(投稿・平成25年-見直し・令和7年1月)

 前号(第13号)で固定資産税の「非課税」について解説しましたが、今回は「減免」と「課税免除及び不均一課税」についてです。

 
 非課税は市町村がそもそも「課税することが法律で禁止されている」制度でしたが、では、減免はどのような制度なのでしょうか。

「減免」の要件は何か

 「減免」は、市町村で課税権が行使された後に、納税者の申請に基づき、担税力が薄弱なこと(納税資力が充分でない)等の理由により、税額の全部又は一部が免除される制度です。

 そして、この減免規定の趣旨は、徴収猶予や納期限の延長等によっても納税が困難であると認められるような担税力が薄弱な者等に対する救済措置として設けられています。

<固定資産税の減免>
※地方税法第367条
「市町村長は、天災その他特別の事情がある場合において固定資産税の減免を必要とすると認める者、貧困に因り生活のため公私の扶助を受ける者その他特別の事情がある者に限り、当該市町村の条例の定めるところにより、固定資産税を減免することができる。」

 固定資産税の「減免」は、具体的には各市町村の条例により定められていますが、概ね次の4つの形態に基づき定められているのが一般的です。

天災その他特別の事情がある場合において減免を必要と認める者
貧困に因り生活のため公私の扶助を受ける者
その他特別の事情がある者(公益上の事由も含む)
公益のために直接専用する固定資産(有料で使用するものを除く)

 「減免」内容は各市町村の条例で規定されていますので、若干条例内容が異なりますが、上記①~④の基本的事項は適用されています。

「課税免除及び不均一課税」とは

 ところで、地方税法には、「非課税」「減免」のほかに「課税免除及び不均一課税」という制度があります。

<公益等に因る課税免除及び不均一課税>
※地方税法第6条
「1項.地方団体は、公益上その他の事由に因り課税を不適当とする場合においては、課税をしないことができる。
2項.地方団体は、公益上その他の事由に因り必要がある場合においては、不均一の課税をすることができる。」

 この第1項の「課税免除」は「減免」と似ていますが、「減免」は一旦賦課決定されたものに対してですが、「課税免除」は市町村の条例・議会の議決により単独で判断・決定されます。

 また、第2項の「課税免除及び不均一課税」は、政策目的や税負担の均衡等の「公益性」に着目したものです。

 では「課税免除」が適用されている例ですが、「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法」や「地域未来投資促進法」に基づき適用している市町村があります。

 また「不均一課税」では、「国際観光ホテル整備法」や(県税による)「半島振興法における固定資産税の不均一課税」などがあります。
 
2022/5/5/14:00