(第5号)固定資産税土地の住宅用地(小規模住宅用地・一般住宅用地)とは何か

 
(投稿・平成25年ー見直し・令和6年6月)

 固定資産税では、土地が住宅用地であれば、面積によって評価額が6分の1、あるいは3分の1に減額されます。そして、その住宅用地の減額特例の適用には、市町村の条例により申告が求められています。

 それでは、まず住宅用地の減額特例とは何かということです。

住宅用地の減額特例とは

住宅用地とはどのようなものか

 そもそも住宅用地とは、居住のための建物が存在し、居住の目的を果たすために使用されている一画地の土地をいいます。

 したがって、賦課期日(1月1日)において新たに住宅の建築が予定されている土地、又は住宅が建築中の土地は住宅用地とはなりません。

 ただし、従来の所有者が同一の敷地に住宅の建替えを行うときに、一定の要件を満たすと認められる土地は、住宅用地として取り扱われます。

200㎡までが1/6、200㎡を越える部分が1/3

 住宅用地のうち200㎡以下は、固定資産税の本則課税標準額が1/6になります。これを小規模住宅用地の特例と言います。
 また、面積が200㎡を超える部分は一般住宅用地と言い、本則課税標準額は1/3になります。

 例えば、300㎡の土地に居住用の家屋(専用住宅)が建っている場合は、200㎡までが小規模住宅用地の1/6、残りの100㎡が一般住宅用地の1/3となります。
(なお、一般住宅用地1/3の上限は家屋床面積の10倍までとされています。この図の例では床面積150㎡×10=1500で上限が1500㎡となります。)

<住宅用地の減額特例>

 土地の固定資産税の仕組みは複雑で、本則課税標準額(A)のほかに前年度課税標準額(B)と(今年度)課税標準額という用語が出てきます。(今年度)課税標準額は、今年度の税額を計算するための基礎となる額ですが、住宅用地の負担調整措置によりBがAのどこまで到達しているかの負担水準により決まってきます。
 小規模住宅用地の負担調整措置の仕組みは、次号(6号)で説明します。

アパートは部屋ごとに適用

 住宅用地の特例は、アパートの場合は部屋ごとに特例率が適用されます。

 それは、1棟の家屋内に世帯が独立して生活を営む部分が2以上の場合は、区画された部分がそれぞれ住居となるからです。

 例えば、500㎡の土地に8戸(60㎡/戸)の2階建てアパートがあるとします。この場合は、1戸ごとに200㎡相当が1/6になりますので、8戸×200㎡=1,600㎡までが1/6になり、500㎡すべてが1/6になります。

<アパートの住宅用地の減額特例>

 この仕組みによれば、仮に自宅以外の土地を所有している場合、そこをアパート敷地にすることにより土地の減価額が大きくなる訳です。

住宅・非住宅混合のビルの特例

 それでは、住宅と店舗・事務所等が混在している複合ビルの敷地では小規模住宅用地はどうなるのでしょうか。

 その場合の小規模住宅用地特例は次のようになります。

<住宅・非住宅混合の建物敷地>

 ここで注目すべき点ですが、例えば2階建て家屋で店舗を経営していて、1階部分を店舗に、2階部分を居住用にしている場合です。
 この表の「上記以外の住宅用地」からしますと、建物の2分の1を居住用にしていれば、その土地は100%住宅用地となるのです。

住宅用地は申告が義務づけ

 ところで、(小規模)住宅用地は、役所が把握しきれないことから、土地所有者に住宅用地かどうかを申告させることができるとされています。(地方税法384条1項)

<住宅用地の申告>
※地方税法384条1項
「市町村長は、住宅用地の所有者に、当該市町村の条例の定めるところによつて、当該年度に係る賦課期日現在における当該住宅用地について、その所在及び面積、その上に存する家屋の床面積及び用途、その上に存する住居の数その他固定資産税の賦課徴収に関し必要な事項を申告させることができる。」

 この地方税法の規定では「申告させることができる」ですが、ほとんどの市町村では条例により申告が義務づけられているのです。

※ 参考—Y市市税条例
「住宅用地の所有者は、毎年1月1日現在におけるその住宅用地について、次に掲げる事項を、1月31日までに市長に申告しなければならない。…
(1)住宅用地の所有者の住所及び氏名または名称
(2)住宅用地の所在及び地積
(3)住宅用地の上に存する家屋の所在、所有者、種類、構造、床面積、居住の用に供する部分の床面積及び居住の用に供した年月日並びにその上に存する住居の数
(4)その他市長が必要と認める事項

 それでは「条例により申告が義務づけられているにも拘わらず、申告がされていない住宅用地」はどうなるのでしょうか。

 実は、この問題が住宅用地における最大の問題でして、詳しくは今後の号で解説していきますが、結論としては、「住宅用地は申告が無くても減額特例は適用される」のです。
 
2922/4/17/16:45
 

 

(第4号)固定資産税土地の負担調整措置の仕組み(非住宅用地の場合)

 
(投稿・平成25年-見直し・令和6年6月)

 今回から5号、6号と続けて固定資産税土地の負担調整措置の仕組みについてお知らせします。

 実は「固定資産税は複雑で分かりづらい」原因は、第2号でお知らせした「賦課課税方式」とともに、土地の場合は負担調整措置の仕組みにあります。

 では、土地の負担調整措置とはどのようなものなのでしょうか。

固定資産税の負担調整措置とは

 土地の固定資産税は、本来は、価格に税率(一般的には固定資産税1.4%、都市計画税0.3%)を乗じて求めるのですが、現状はそのようにはなってはいません。

 そこで何故、負担調整措置という仕組みが出来たのかということですが。

 平成元年に「土地基本法」が制定され、公的土地評価(時価、地価公示価格、相続税価格、固定資産税価格)の一元化が図られました。この詳細は今後改めて説明しますが、この公的土地評価一元化により、平成6年度に「固定資産税価格は地価公示価格の7割とする」ことが決められました。

 しかし、平成6年度に地価公示価格の7割を固定資産税の価格とすることにしたものの、それまでは実質的に固定資産税価格は地価公示価格の10%〜20%程度であったものを一気に上げることが出来ないことから、少しずつ上げていくという経過的措置が採用されました。

 このいわゆる経過的措置が負担調整措置の誕生であった訳です。経過的措置といっても現在(令和6年)まで一貫してこの仕組みは続いています。

 ところで、この負担調整措置の仕組みには、宅地の場合は2種類あります。

 宅地の負担調整措置の仕組みとして、住宅用地と非住宅用地(商業地、更地等)の2種類ありますが、今回は非住宅用地(商業地、更地等)の負担調整措置の仕組みから説明していきます。

非住宅用地(商業地、更地)の負担調整

 前記のとおり、平成6年度に土地の固定資産税価格を地価公示価格の70%としましたが、それ以前は地価公示価格の10~20%であったものをいきなり70%にする訳にはいかず、徐々に引き上げる方式にしました。その具体的な仕組みは平成9年度に導入されました。

<負担調整措置の仕組み(非住宅用地)>

 この図のとおり、固定資産税の税額の元になる課税標準額は少しずつ上がっています。

 本来は、固定資産税の価格と課税標準額は一致すべきものですが、緩衝措置ともいうべき仕組みを設けたため、この価格と課税標準額が乖離する状況となり複雑な仕組みとなっているのです。

 非住宅用地(商業地、更地)の固定資産税(土地)の価格(本則課税標準額)は、地価公示価格の70%となり、これが負担水準では100%となります。

 しかし、これでは以前との乖離が大きいため、更にその70%を非住宅用地の上限とされており、負担水準がこの70%を上回った場合は70%まで引下げることになり、この負担水準70%~100%が「引下げゾーン」となります。つまり、非住宅用地では、地価公示価格のレベルからすると70%×70%で49%が上限となります。

 また、負担水準の60%~70%までを「据置きゾーン」とされています。

 そして、負担水準が60%に達しない場合は、今年度課税標準額を「前年度課税標準額+本則課税標準額×5%(引上げゾーン)」とします。

負担水準と負担調整措置の計算例

 つまり、非住宅用地の仕組みでは、前年度の課税標準額の到達点に応じて「引下げ」「据置き」「引上げ」の3つのゾーンに振り分けられることになります。

 ここに、非住宅用地の負担水準と負担調整措置の下図の例で、今年度課税標準額を計算します。

<負担水準と負担調整措置(非住宅用地)>

 この図で、例えば地価公示価格を200,000円/㎡とすると、その7割が価格(本則課税標準額)(A)で140,000円/㎡となります。

 そして、前年度課税標準額(B)を仮に60,000円/㎡とします。

 負担調整措置では、今年度の課税標準額を決める場合には、前年度の課税標準額(B)が本則課税標準額(A)のどこまで到達しているのか、という負担水準(B/A)を求めます。

 この場合の負担水準(B/A)は、60,000/140,000=42.8%となり「60%未満」に入ることになります。そうなりますと「B+(A×5%)」となり、60,000円+(140,000×5%)7,000円=67,000(今年度課税標準額)となります。

 如何でしょうか、固定資産税土地の評価額は、このように複雑になっているのです。

※ 住宅用地の負担調整措置の仕組みは第5号及び6号で説明します。

2022/04/16/18:00
 

 

(第3号)固定資産税の価格は「固定資産評価基準」により「適正な時価」とされる

 
(投稿・平成25年-見直し・令和6年6月)

 今回は、固定資産税の評価額はどのように決定され、その評価額はどのように位置づけられるのかです。

評価は「固定資産評価基準」による

 地方税法には、固定資産税の評価は「固定資産評価基準」によるとあります。

<固定資産税評価の標準>ー地方税法349条
「1項 基準年度に係る賦課期日に所在する土地又は家屋に対して課する基準年度の固定資産税の課税標準は、当該土地又は家屋の基準年度に係る賦課期日における価格で土地課税台帳若しくは土地補充課税台帳又は家屋課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に登録されたものとする。」

<固定資産税に係る総務大臣の任務>ー地方税法388条
「1項 総務大臣は固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続き(「以下「固定資産評価基準」)を定め、これを告示しなければならない。」

<市町村の職員の任務>ー地方税法403条
「1項 市町村長は(中略)固定資産評価基準によって、固定資産税の価格を決定しなければならない。」

 つまり、市町村長は総務大臣により告示された「固定資産評価基準」により、固定資産税の評価額(価格)を決定しなければならないのです。

 この地方税法第403条1項は、かつて(昭和37年以前)は「固定資産評価基準に準じて」決定すべきとなっていましたが、現行は「基準によって、決定しなければならない」とされています。

 したがって、固定資産税の評価額決定に対する「固定資産評価基準」の「法的拘束力」がより強まったと言えます。

 ここに、昭和57年3月30日福岡地裁判決を掲げます(要旨)。

<昭和57年3月30日福岡地裁判決>
「告示とは、公示を必要とする行政措置の公示の形式である。固定資産評価基準は、法388条1項に基づき、その明示的具体的委任を受けて、自治大臣が固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続きについて市町村間の評価の統一的均衡化を図るために発したものであって、昭和37年改正法による改正前の法403条が「準じて」としていたものを、「よって」固定資産の価格を決定しなければならないと」定めて、…市町村長は、固定資産評価基準に従った評価をなすべく義務づけられているものと解するのが相当である。その意味で、固定資産評価基準は、法的拘束力を有しているものといわなければならない。」

 では、固定資産税と同じ資産評価の相続税ではどうでしょうか。

 相続税の財産(土地)評価においては、国税庁により財産の評価に関する取扱方法の全国的統一を図るための「財産評価基本通達」が発せられていますが、相続税法の規定により委任されている訳ではありません。

 つまり、相続税評価においては「財産評価基本通達」は「法的拘束力」は有していないのです。

 例えば、相続税評価において、仮に減価要素の強い土地などの場合に、不動産鑑定評価によって時価証明が認められる(可能性がある)のも、このような仕組みからと考えられます。

 固定資産税は、全国一律の大量一括評価ですので、この「固定資産評価基準」により「固定資産税の課税標準となるべき価格」が決定されます。

評価基準による価格が「適正な時価」

 ところで、地方税法には、固定資産税の「価格の定義」が規定されています。

<固定資産税の価格とは>ー地方税法341条
「固定資産税について、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
5号 価格 適正な時価をいう。」

 固定資産税の土地評価割合は、バブル期には実質的に地価公示価格の1〜2割程度であったものが、平成6年度から地価公示価格の7割を目途とされました。

<公的評価の適正化>

 
 もっとも、昭和50年代の地価安定期における固定資産税の評価割合が7割程度であったことを前提にすれば、むしろ昭和60年代の地価高騰(バブル)期以降の方が不正常な評価割合であったと考えるべきなのかもしれません。

 この平成6年度の制度改正により、固定資産税の不服申立は、それまで全国で6千件弱であったものが、一挙に3倍を超える件数になり、裁判で争われる件数も増えました。

「適正な時価」に関する判例

平成6年度までの「適正な時価」

 では、平成6年度までの固定資産税の「適正な時価」とはどのような解釈であったのでしょうか。

 ここに代表的なものとして、昭和34年6月16日の静岡地裁の判決を紹介します。

※<昭和34年6月16日静岡地裁判決>
「固定資産の価格、すなわち、その適正な時価とは本来その通常な取引価格を指すものと解すべきであるが、評価は常に公平になされなければならないから、決定された価格が通常の取引価格を著しく超える場合はもちろん、これを超えない場合でも、課税政策上その他の正当な理由なしに、他とはなはだしく均衡を欠く場合には、その価格は適正でなく、その決定は違法となるものである。」

 このように、「はなはだしく均衡を」を欠かない限りは違法とはならなかった訳です。

土地に関する「適正な時価」の判例

 これが、平成6年度以降、地価公示の7割評価となったことにより、「適正な時価」の解釈に関する裁判上の判決は色々とありましたが、次の最高裁判決に代表されるようになりました。

<平成15年6月26日最高裁判決>
「適正な時価とは、正常な条件の下に成立する当該土地の取引価格、すなわち、客観的な交換価値をいうと解される。したがって、土地課税台帳に登録された価格が賦課期日における当該土地の客観的な交換価値を上回れば、当該価格の決定は違法となる。」

 この最高裁判決の最大のポイントは「客観的な交換価値」を上回ればその価格は違法となるというものです。

 この「客観的な交換価値」が良いのかどうかは疑問のあるところですが(「使用価値」ではないのか?)

 ただし、この判決の背景としては、やや特殊状況もあったと考えられます。
 当時はそれまでのバブルが弾けて、東京都内の一部では、平成5年1月の価格調査基準日から1年後の賦課期日(平成6年1月)までの1年間に30%を超える地価の下落があった訳です。

 そのため、賦課期日における地価公示価格より30%低い固定資産税の評価割合であっても、それを超える30%以上の下落率には追いつかなかった訳です。そこで固定遺産評価基準に基づく価格であっても、「客観的な交換価値」を上回る部分は違法とされました。

 ところで、この判決の流れから、地価が下がっている場合には、据置年度においても地価下落修正が適用されることになりました。(地方税法附則17条の2第1項)

家屋評価に関する「適正な時価」判例

 上記は土地の評価ですが、家屋評価においても最高裁において、「評価は、固定資産評価基準に基づくべき」とされています。

<平成15年7月18日最高裁判決>
「固定資産評価基準に定める方法によっては再建築費を適切に算定することができない特別の事情または評価基準が定める減点補正を超える減価を要する特別の事情が存しない限り、その適正な時価であると推認するのが相当である。」
 
2022/04/15/12:00
 

 

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2023/04/08/10:00