(第109号)「空き家法」の改正により『管理不全空き家』が指導、勧告される

 
(投稿・令和5年12月-見直し・令和6年8月)

 この度、「空家等対策の推進に関する特別措置法」(以下「空き家法」)が改正されました。

 総務省が5年毎に実施している「住宅・土地統計調査」の平成30年調査では、総住宅数6240万7千戸に対して「空き家」は約849万戸となっており、空き家率は13.6%となっています。また、長期にわたって不在の住宅などの「居住目的のない空き家」は349万戸で、この20年で約1.9倍に増加しています。

 このように「空き家」の増加が見込まれる中、周囲に著しい影響を及ぼす『特定空家』になることを待つことなく、事前に管理の確保を図ることが必要とされ「空き家法」が改正されました。 

「空き家法」の『特定空家』とは

『特定空家』とは何か

 空き家対策をめぐっては、平成26年に成立した「空き家法」で、「空き家」を放置して倒壊の恐れがあるなど特に危険性が高い物件を『特定空家』に指定し、「空き家」を撤去できるようにしました。

 この「空き家法」については、第91号で紹介しています。

 
 まず、「空き家」と『特定空家』とはどういうものかです。

<「空き家」及び『特定空家』の定義>
※「空き家法」第2条
「1. この法律において「空家等」とは、建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地をいう。ただし、国又は地方公共団体が所有し、又は管理するものを除く。
2. この法律において「特定空家等」とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう。」

 つまり、『特定空家』とは「空き家」のうち次のいずれかに該当するものをいいます。
そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

住宅用地の減額特例が解除

 そして、『特定空家』に指定されると、固定資産税の住宅用地の減額特例が解除されることになります。

 この住宅用地の減額特例が解除されると、小規模住宅用地(200㎡以下)の特例(6分の1)及び一般住宅用地(200㎡を越える部分)の特例(3分の1)が適用されないこととなります。

 ところで、令和3年度までに「空き家法」により『特定空家』として措置(助言・指導、勧告、命令、代執行)された件数は約3万4千戸となります。

 <『特定空家』の措置状況>

「空き家法」の改正(概要) 

『管理不全空き家』が新設

 しかし、これまでの「空き家法」による『特定空家』の指定によっても、「空き家」が増え続けていることから、今回、対策強化を盛り込んだ「空き家法」の改正が行なわれた訳です。

 今回の「空き家法」の改正では、改正前が第16条までであったものが、改正後は第30条までと大幅な改正が行われました。

 この改正法では、「空き家」を放置すれば『特定空家』になる可能性がある物件を新たに『管理不全空き家』に指定され、管理指針に則した措置が「指導」されます。

 そして、「指導」してもなお状態が改善しない場合には「勧告」が可能となります。

<適切な管理が行われていない空家等の所有者等に対する措置>
※改正「空き家法」第13条
「1. 市町村長は、空家等が適切な管理が行われていないことによりそのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある状態にあると認めるときは、当該状態にあると認められる空家等(以下「管理不全空家等」という。)の所有者等に対し、基本指針に即し、当該管理不全空家等が特定空家等に該当することとなることを防止するために必要な措置をとるよう指導をすることができる。
2. 市町村長は、前項の規定による指導をした場合において、なお当該管理不全空家等の状態が改善されず、そのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれが大きいと認めるときは、当該指導をした者に対し、修繕、立木竹の伐採その他の当該管理不全空家等が特定空家等に該当することとなることを防止するために必要な具体的な措置について勧告することができる。」

 また、この「勧告」を受けたときは、『特定空家』の指定と同様に、当該敷地の固定資産税の住宅用地の減額特例を解除できるとされています。

<『特定空家』を未然に防止>)

 
 なお、この『管理不全空き家』等の設置に伴い、地方税法の「住宅用地の減額特例の解除」に関する条項も一部改正されました(下線部分)。

<住宅用地の減額特例の解除>
※地方税法349条の3の2
「1 (前略)空家等対策の推進に関する特別措置法第13条第2項の規定により所有者等に対し勧告がされた同法第13条第1項に規定する管理不全空家等及び同法第22条第2項の規定により所有者等に対し勧告がされた同法第2条第2項に規定する特定空家等の敷地の用に供されている土地を除く。(後略)」

財産管理人による空家の管理・処分

 民法(第25条~第29条)では、土地・建物等の所有者が不在・不明である場合等には、利害関係人又は検察官の請求により裁判所が選任した財産管理人が管理や処分を行うことができる、とされています。

<不在者の財産の管理>
※民法第25条
「1. 従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人(以下この節において単に「管理人」という。)を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。本人の不在中に管理人の権限が消滅したときも、同様とする。」

 今回の「空き家法」改正では、財産管理人の選任請求権を、空家等の適切な管理のために特に必要があると認めるときには、市区町村長も選任請求可能になりました。

<空家等の管理に関する民法の特例>/span>
改正「空き家法」第14条
「1. 市町村長は、空家等につき、その適切な管理のため特に必要があると認めるときは、家庭裁判所に対し、民法第25条第1項の規定による命令又は同法第952条第1項の規定による相続財産の清算人の選任の請求をすることができる。」

 
2024/02/28/08:00
 

 

(第108号)雑種地の固定資産税評価について(「狭小な雑種地」)

 
(投稿・令和5年12月-見直し・令和6年8月) <閲覧上位5位(第16号)の関連版>

※第16号は過去の閲覧記録で第5位です。

 
 また、雑種地の固定資産税評価については、第68号及び第69号で解説しています。

 
 そこで今回は、「地目認定は現況主義」のみでは簡単過ぎますので、地目のうち分かりづらい雑種地について、とくに「その他の雑種地」の中で「狭小な雑種地」の評価について解説します。

雑種地の基本

 その前に、雑種地の基本について簡単にまとめていきます。

地目の認定は現況主義

 まず、地目認定の時期ですが、固定資産税の賦課期日が1月1日とされており、地目の認定も1月1日現在の土地の現況や利用目的を重視することから1月1日現在の認定となります。

<固定資産税の賦課期日>
※地方税法第359条
「固定資産税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の1月1日とする。」

 次に認定の取扱いですが、固定資産税の土地評価上の地目の認定は現況の地目(「現況主義」)によります。

 では、土地の地目が登記簿と現況が異なる場合は、どうなるのでしょうか。

 例えば、登記簿上の地目が「山林」となっているのに、実際には建物が建っている土地の場合ですが、この土地の固定資産税の地目は、「現況主義」によって「宅地」と認定されます。

地目の種類は9種類

 それでは、固定資産税評価における土地の地目は何かですが、固定資産評価基準では次のとおり9種類とされています。

<固定資産評価基準の地目>
※固定資産評価基準第1章第1節
「土地の評価は、次に掲げる土地の地目の別に、それぞれ、以下に定める評価の方法によって行うものとする。この場合における土地の地目の認定に当たっては、当該土地の現況及び利用目的に重点を置き、部分的に僅少の差異の存するときであっても、土地全体としての状況を観察して認定するものとする。
①)田、②畑、③宅地、④鉱泉地、⑤沼、⑥山林、⑦牧場、⑧原野、⑨雑種地」

 以上の9種類ですが、⑨雑種地は他の8種類以外の全てを含むことになります。

雑種地の固定資産税評価

 雑種地の評価については、固定資産評価基準において(ア)「ゴルフ場等用地の評価」、(イ)「鉄軌道用地の評価」及び(ウ)「その他の雑種地」の3種類とされています。

「雑種地の固定資産税評価」
 雑種地の評価方法は、(ア)と(イ)の評価方法は固定資産評価基準で定められていますが、(ウ)「その他の雑種地」の評価は。売買実例価額から評価額を求める方法と、売買実例価額が無い場合は付近の土地に比準して評価額を求める方法(近傍地比準方式)とされています。

 この(ウ)「その他の雑種地」の例としては、駐車場、資材・廃材置場、太陽光パネル設置用地、干場、鉄塔用地、私道、農業用施設用地、高圧線下地等があげられますが、これ以外にも、その他の全ての土地が「その他の雑種地」となります。

 (ウ)「その他の雑種地」の評価方法は、売買実例地比準方式が原則ですが、売買実例が少ないことから、多くの市長村では近傍地比準方式により評価されているのが実際です。

「狭小な雑種地」の評価

「狭小な雑種地」とは

 「狭小な雑種地」とは、ゴミ置き場、防火水槽、残地・潰れ地等の雑種地です。

 一般的に、狭小な土地は画地規模が小さくなるにつれて利用可能な用途が限定され、用途の多様性が損なわれることから利用価値が減少します。

 「狭小な雑種地」は、主に次の区分がされています。

建物の敷地として利用が困難な狭小な雑種地(通常の狭小地)
 建物の敷地としては利用困難であるものの、駐車場等として利用が可能な程度の画地規模が小さい(概ね15㎡から30㎡程度)土地です。

単独では利用が困難な程度に狭小な雑種地(極狭小地)
 駐車場としての利用も困難な、画地規模が極めて小さな(概ね20㎡未満)土地です。

「狭小な雑種地」の評価方法

 「その他の雑種地」としては、売買実例地比準方式が原則ですが、「狭小な雑種地」の売買実例を収集することが困難なため、近傍地比準方式により評価される場合が多いと考えられます。

 「狭小な雑種地」の評価では、実務上、次の方法が考えられます。

  付近の土地の価額に、狭小地減価を含む比準割合を乗じる方法
 付近の標準的な規模の土地の価格(路線価等)に、狭小地であることの減価を含んだ比準割合を直接乗じる評価方法です。

画地計算法等の適用により考慮する方法
 規模が狭小なことによる減価を、所要な補正を含めた画地計算法(奥行価格補正、間口狭小補正)を補正した上で適用することと市町村長が設定した狭小地補正を適用する方法等です。

 なお、「狭小な雑種地」については固定資産評価基準には規定が無いため、市町村の「所要の補正」(『固定資産評価事務取扱要領』)により行われています。
 
2023/12/08/16:00
 

 

(第107号)固定資産税の「非課税」「減免」「課税免除及び不均一課税」について

 
(投稿・令和5年11月-見直し・令和6年8月)
※今回は過去閲覧歴10位までの第3位(22号)、第9位(13号)の「非課税」と第4位(15号)の「減免」をまとめ「非課税、減免、課税免除及び不均一課税」を一覧表にしました。

 なお、それぞれの詳細については、次の各号をご覧ください。

 
<「非課税、減免、課税特例及び不均一課税」一覧表>

 
2023/12/07/14:00
 

 

(第106号)固定資産税が課税されない非課税制度とは—社会福祉法人等による「老人福祉施設」の場合

 
(投稿・令和5年11月-見直し・令和6年8月) <閲覧上位再生版(第22号&第13号)>

 今回は過去の閲覧数で第3位の第22号と第9位の第13号の再生版です。

 
 固定資産税は、毎年1月1日の固定資産の所有者が納税義務者となり、課税されます。
 しかし、地方税法では、固定資産税が課税されない非課税制度というものが規定されています。

 この非課税とは固定資産税を『課税しない』ということではなく、市町村の意思いかんにかかわらず納税義務を負わせることができない、固定資産税を『課税してはいけない』という法的な課税禁止の制度なのです。

 この固定資産税の非課税制度には、2つの種類があります。

「人的非課税」…固定資産の所有者の性格によるもの。
「物的(用途)非課税」…固定資産それ自体の性格、用途によるもの。

「人的非課税」とは

  地方税法第348条1項では、国、都道府県、市町村、特別区、これらの組合、財産区及び合併特例区に対しては、固定資産税を課することができないとされています。

<固定資産税の「人的非課税>
※地方税法第348条1項
「市町村は、国並びに都道府県、市町村、特別区、これらの組合、財産区及び合併特例区に対しては、固定資産税を課することができない。」

 これらが所有する固定資産の典型的なものとしては、国道、県道、市町村道あるいは役所の庁舎、公立学校などが該当します。

 この国、都道府県、市町村が有する固定資産については、それが、どのような性格を有するものであろうと、また、どのような用途に供されているものであるかを問わず、すべて固定資産を課することができないということを意味します。

 しかし、「人的非課税」といえども、国や地方公共団体が所有している固定資産が一般の固定資産と異ならないような状態で使用収益されているもの、例えば、公務員の宿舎や民間への貸付土地等は、「人的非課税」扱いはされません。

 この場合は、「国有資産等所在市町村交付金法」により、固定資産税に準ずるものとして、その固定資産の所有者は、所在の市町村等に対して固定資産税相当額(国有資産等所在市町村交付金)を納付しなければなりません。

「物的(用途)非課税」とは

固定資産税の「物的(用途)非課税」の内容

 固定資産税の非課税で注目すべきは、「物的(用途)非課税」の方です。

 「物的(用途)非課税」は、例えば、宗教法人、墓地、公共の用に供する道路(私道)、社会福祉法人、学校法人、国宝、重要文化財等が所有している固定資産の場合です。

 地方税法第348条2項各号に列挙する固定資産及び同条第4項、第5項、第6項、第7項、第8項、第9項に規定する固定資産は69項目が規定されています。

 この規定は、これ以外は認めることが出来ない「限定列挙」となります。

<固定資産税の「物的(用途)非課税」>
※地方税法第348条2項
「2項.固定資産税は、次に掲げる固定資産に対しては課することができない。ただし、固定資産を有料で借り受けた者がこれを次に掲げる固定資産として使用する場合には、当該固定資産の所有者に課することができる。」(本項のみ掲載—以下略)

「物的(用途)非課税」が適用されない場合

 次の場合には、固定資産税の物的(用途)非課税は適用されません。

① 有料使用の場合の課税
 地方税法第348条2項各号に列挙する資産に該当するものであっても、その固定資産を有料で借り受けた者がこれを使用する場合においては、その固定資産の所有者に固定資産税を課税することができます(地方税法第348条2項ただし書)。

 例えば、国や地方公共団体が私人に地代及び家賃を支払って建物を借りている場合には、官公庁用が使用していても、貸している所有者に課税されます。

② 目的外使用の場合の課税
 法第348条2項各号の固定資産がそれぞれ各号に定められている目的外の目的に使用される場合には、その固定資産税は課税されます。

<目的外使用の場合の課税>
※地方税法第348条第3項
「3項. 市町村は、前項各号に掲げる固定資産を当該各号に掲げる目的以外の目的に使 用する場合においては、前項の規定にかかわらず、これらの固定資産に対し、固定資産税を課する。」

「物的(用途)非課税」には申告が必要

 なお、「物的(用途)非課税」を適用するにあたっては申告が必要とされています。

 この申告制度は、地方税法には規定されておらず、総務省の通知に基づいて、市町村毎の条例により定められています。

<地方税法の施行に関する取扱いについて(市町村税関係)第3章第1節19>
「非課税等特別措置の適用に当たっては、定期的に実地調査を行うこと等により利用状況を的確に把握し、適正な認定を行うこと。また、実地調査時点の現況等を記載した対象資産に関する諸資料の保管、整理等に努め、その的確な把握を行うとともに、利用状況の把握のため必要があると認められる場合には、条例により申告義務を課することが適当であること。」

 この場合の問題は、固定資産税は本来申告が必要無い「賦課課税方式」である訳ですので、仮に申告が無かった場合は過去に納付した分が還付されるのかということです。

「老人福祉施設」に対する物的非課税

 ここでは、物的(用途)非課税のうち閲覧数の多い「老人福祉施設」(第36号—第3位)について説明します。

「老人福祉施設」の非課税内容

 「老人福祉施設」の非課税については、地方税法第348条2項10の5に規定されています。

<固定資産税の「老人福祉施設」非課税>
※地方税法348条2項10の5
「2.固定資産税は、次に掲げる固定資産に対しては課することができない。ただし、固定資産を有料で借り受けた者がこれを次に掲げる固定資産として使用する場合には、当該固定資産の所有者に課することができる。
…………
10の5 社会福祉法人その他政令で定める者が老人福祉法第5条の3に規定する老人福祉施設の用に供する固定資産で政令で定めるもの」

 ここでは、所有者が「社会福祉法人その他政令で定める者」で、固定資産が「固定資産で政令で定めるもの」とされ、「者」と「もの」それぞれの政令を確認する必要があります。

 まず、「老人福祉施設」で非課税が認められる「者」は、必ずしも運営主体が社会福祉法人に限りません。

 地方税法施行令第49条の13では、1項で(1)の運営する「者」が、2項で(2)の固定資産が非課税となる「もの」とされています。

(1) 運営主体(「者」)
①社会福祉法人
②社会福祉法人とみなされる農業協同組合連合会
③公益社団法人、公益財団法人、農業協同組合、消費生活協同組合、健康保険組合、国民年金基金、商工組合、医療法人等
④老人介護支援センターの届出をした者

(2) 非課税となる固定資産(「もの」)
a.①が経営する養護老人ホーム
b.①②が経営する特別養護老人ホーム
c.①②③が経営する老人デイサービスセンター、老人短期入所施設軽費老人ホーム、老人福祉センター
d.①②③④が経営する老人介護支援センター

 なお、社会福祉法人はそもそも地方税法348条2項10の5で規定されていますので、地方税法施行令では「社会福祉法人以外の者」が規定されています。

<老人福祉施設等を運営する者-運営主体>
※地方税法施行令第49条の13第1項
「法第348条第2項第10の5に規定する政令で定める者は、次に掲げる者とする。
1.老人福祉法附則第6条の2の規定により社会福祉法人とみなされる農業協同組合連合会
2.公益社団法人、公益財団法人、農業協同組合、農業協同組合連合会(前号に掲げるものを除く。)、消費生活協同組合、消費生活協同組合連合会、健康保険組合、健康保険組合連合会、企業年金基金、確定給付企業年金法に規定する企業年金連合会、国家公務員共済組合、国家公務員共済組合連合会、国民健康保険組合、国民健康保険団体連合会、国民年金基金、国民年金基金連合会、商工組合(組合員に出資をさせないものに限る。)、商工組合連合会(会員に出資をさせないものに限る。)、石炭鉱業年金基金、全国市町村職員共済組合連合会、地方公務員共済組合、地方公務員共済組合連合会、日本私立学校振興・共済事業団及び医療法人
3.前2号に掲げる者以外の者で老人福祉法第20条の7の2に規定する老人介護支援センターの設置について同法第15条第2項の規定による届出をしたもの」

<老人福祉施設等で非課税となる固定資産-施設>
※地方税法施行令第49条の13第2項
「法第348条第2項第10の5に規定する政令で定める固定資産は、次に掲げる固定資産とする。
1.社会福祉法人が経営する老人福祉法第20条の4に規定する養護老人ホームの用に供する固定資産
2.社会福祉法人及び前項第1号に掲げる者が経営する老人福祉法第20条の5に規定する特別養護老人ホームの用に供する固定資産
3.社会福祉法人並びに前項第1号及び第2号に掲げる者が経営する老人福祉法第20条の2の2に規定する老人デイサービスセンター、同法第20条の3に規定する老人短期入所施設、同法第20条の6に規定する軽費老人ホーム及び同法第20条の7に規定する老人福祉センターの用に供する固定資産
4.社会福祉法人及び前項各号に掲げる者が経営する老人福祉法第20条の7の2に規定する老人介護支援センターの用に供する固定資産」

 特に「医療法人」(地方税法施行令第49条の13第1項2号の最後尾)が運営する「老人福祉施設等の用に供する固定資産」の非課税については、数年前ですが、かなりの市町村で課税誤り(非課税にもかかわらず課税していた)があった、とそれぞれの市町村のホームページで明らかにされています。

 某市町村の発表によりますと、「平成11年度地方税法改正により非課税範囲が拡大した(「医療法人」が追加された)ものの、市町村職員の理解が不十分であったため、非課税にもかかわらず課税を行った」とのことです。

 なお、株式会社が経営する「老人福祉施設」は非課税にはなりません。

「老人福祉施設」に土地を貸している場合

 ところで、固定資産税が非課税になるのは、運営法人等が固定資産を所有している場合に限りません。土地所有者が、運営法人等の利用の用に供するために土地を無償で貸している場合、その土地も非課税になります。

 ただし、有償で土地を貸している場合は、その土地は固定資産税が課税されます。
 例えば、次の図のように、社会福祉法人(A)が「老人福祉施設」を建設して運営し、その土地を(B)所有者から借りている場合、無償か有償かで異なります。

 
 社会福祉法人が土地と家屋を所有し、目的の用途に沿っていれば、当然、土地、家屋ともに固定資産税は非課税となります。

 しかし、固定資産がその目的以外に使用される場合は、固定資産税は非課税となりません。地方税法348条3項にその「課税規定」があります。

<課税規定-地方税法348条3項>
「3.市町村は、前項各号に掲げる固定資産を当該各号に掲げる目的以外の目的に使用する場合においては、前項の規定にかかわらず、これらの固定資産に対し、固定資産税を課する。」
 
2023/11/5/14:00
 

 

(第105号)固定資産税の課税誤りによる還付金(返還金)の返還期間は何年間か

 
(投稿・令和5年10月-見直し・令和6年8月) <閲覧上位再生版(第27号&第28号)>
※(第27号は過去の閲覧記録で第2位、第28号は第6位)

 
 今回は、固定資産税の評価・課税誤りによって納め過ぎた場合、その還付金又は返還金は何年間遡って還してもらえるかについて解説します。

地方税法による原則的手続<5年>

 地方税法では、徴収し過ぎた税金(還付金)の請求権は5年で消滅時効になる、つまり5年間遡って還してもらえると定められています。

還付金の消滅時効(5年まで)

<還付金の消滅時効>
※地方税法第18条の3
「地方団体の徴収金の過誤納により生ずる地方団体に対する請求権及びこの法律の規定による還付金に係る地方団体に対する請求権は、その請求をすることができる日から5年を経過したときは、時効により消滅する。」

 ところで、固定資産税の納め過ぎの原因のほとんどは、課税当局の誤り(課税ミス)によるものと考えられますが、課税誤りが発見されるケースは、納税者等からの指摘によることがほとんどです。 

「審査申出前置主義」とは

 課税処分に不服がある場合は、(課税当局が認めない場合には)裁判所にその処分を取り消してもらうための取消訴訟を提起しなければなりませんが、いきなり裁判所に取消訴訟を提起することはできません。

 まず価格の不服について固定資産評価審査委員会へ「審査の申出」を行い、その決定に不服がある場合に取消訴訟を提起できることになります。

 これが地方税法上の原則的な手続で、「審査申出前置主義」と言われています。

<①審査の申出>
※地方税法第432条1項
「固定資産税の納税者は、価格に不服がある場合には、納税通知書の交付を受けた日後3ヵ月までの間に文書をもって、固定資産評価審査委員会に審査の申出をすることができる。」
<②争訟の方式>
※地方税法第434条1項
「固定資産税の納税者は、①の決定に不服があるときは、その取消しの訴えを提起することができる。」
<③出訴期間>
※行政事件訴訟法第14条1項
「取消訴訟は、処分又は裁決があつたことを知つた日から6ヵ月を経過したときは、提起することができない。」

「重大な錯誤」による修正<10~20年>

 地方税法の原則的手続は上記のとおりですが、地方税法では特例規定とも言うべき規定として、「重大な錯誤」がある場合の「固定資産の価格等のすべてを登録した旨の公示の日以後における価格等の決定又は修正」が認められています。

「重大な錯誤」とは

 そこで、設けられている規定が地方税法第417条1項です。

<重大な錯誤>
※地方税法第417条1項
「市町村長は、…登録された価格等に重大な錯誤があることを発見した場合においては、直ちに…決定された価格等を修正しなければならない。」

 ここで「重大な錯誤」とは、虚偽の申告又は申請による誤算、固定資産課税台帳に登録する際の誤記、価格等を決定する際の計算単位のとり違い、評価調書における課税客体の明瞭な誤記又はその認定の誤り等、客観的にみて価格等自体の決定に重大な誤りがあると認められるような錯誤を言い、軽微な誤り程度のものは含まれません。

 つまり、このような「重大な錯誤」があれば、原則的な手続(審査の申出等)を経ることなく、市町村長は直ちに修正しなくてはならないのです。

 ここで価格等が修正され、過徴収金がある場合、「重大な錯誤」であれば、その返還期間が10年や20年もあり得ることになります。
※この場合の5年間が地方税法上の「還付金」で、残りの期間の還付不能額を「過誤納補填金」(又は「返還金」)と称します。

「過誤納金返還要綱」による返還

 そして、この「重大な錯誤」があった場合の10年か20年の返還を市町村毎に定めているのが、次の「過誤納金返還要綱」になります。
 この「要綱」とは法律や条例とは異なり、市町村の行政内部(議会に諮らず)のみで定めることができるもので、全国の7割程度の市町村で保有していると言われています。

 ところで、この 「過誤納金返還要綱」による還付不能額とは、「固定資産税の課税客体に係る過誤納金のうち、地方税法第18条の3の規定により還付することができない税相当額」と定義されています。

 仮に10年間の過誤納金である場合は、還付金5年+返還金5年の合計10年間という計算になります。

 また「過誤納金返還要綱」では、一般的には10年間の返還ですが、固定資産税納付の領収書等が確認できれば20年間の返還を認めるともなっています。

 しかし、そもそも固定資産税は、所有者の申告を必要とせず(償却資産は申告が必要)、行政が一方的に評価・課税をする「賦課課税」となっていますので、仮に誤りを認めるのであれば、その責任を納税者に転嫁するのはおかしいと言わざるを得ません。

国家賠償法の適用<最高20年>

  以上のとおり、固定資産税の課税誤りがあった場合の還付又は返還は、原則として地方税法による原則的手続による5年、また「過誤納金返還要綱」による場合は10年間から最高20年間も有り得るということです。

浦和地裁判決(平成4年2月)による効果

 第97号の「住宅用地の減額特例に関する浦和地裁判決(H4年2月)とその効果—住宅用地の認定と国家賠償法の適用等」でも紹介しましたが、平成4年2月24日の浦和(現さいたま)地方裁判所の判決では「固定資産税の賦課決定に重大かつ明白な瑕疵(過失)があった場合は、国家賠償法の適用(20年間の返還)が可能である」とされました。

 実は、この判決を受けて、市町村による「過誤納金返還要綱」が策定されるに至った訳です。

 
 そして、この方向を一歩進めたのが、次の最高裁判決でした。

最高裁判決の内容

 この最高裁判決(平成22年6月3日)において、「固定資産税の評価・課税に過失による誤りがある場合は国家賠償の請求を認める」との判断がなされたのです。

<平成22年6月3日最高裁(第一小法廷)判決>
「公務員が納税者に対する職務上の法的義務に違背して当該固定資産の価格ないし固定資産税等の税額を過大に決定したときは、これによって損害を被った当該納税者は、地方税法432条1項本文に基づく審査の申出及び同法434条1項に基づく取消訴訟等の手続を経るまでもなく、国家賠償請求を行い得るものと解すべきである。」
「記録によれば、本件倉庫の設計図に『冷蔵室(-30℃)』との記載があることや本件倉庫の外観からもクーリングタワー等の特徴的な設備の存在が容易に確認し得ることがうかがわれ、これらの事情に照らすと、原判決が説示するような理由だけでは、本件倉庫を一般用の倉庫等として評価してその価格を決定したことについて名古屋市長に過失が認められないということもできない。」

 この最高裁判決によると、一定の要件の下では、地方税法上の審査請求や取消訴訟を経ることなく、国家賠償請求を行うことができ、固定資産税の過徴収金の返還期間は最高20年となります。

 では、いかなる場合に国家賠償の請求が認められるのかですが、これは国家賠償法第1条によります。

※国家賠償法第1条
「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」

 そして、過徴収金返還の時効は20年になりますが、これは民法第724条によります。

<不法行為による損害賠償請求権の消滅時効>
※民法第724条
「不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
1  被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき。
2  不法行為の時から20年間行使しないとき。」

「過失」とは「手抜きがあったとき」

 上記の最高裁判決では「過失とな何か」が明確に定義されていませんが、他の下級審判決等によると「職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことの無いような場合には、国家賠償が認められるような違法になる」と判断されています。

 この場合の過失とは「手抜きがあったとき」とされています。

 つまり、「手抜き」のような過失(職務上通常尽くすべき注意義務を尽くされていない)では、国家賠償法の対象で20年間の返還になり得るということです。
 
2023/10/28/15:00