(第104号)固定資産税の「宅地の評価」は2通りの方法-「路線価方式」と「標準宅地比準方式」

 
(投稿・令和5年10月-見直し・令和6年8月) <閲覧1位(第36号)再生版>
※(第36号は過去の閲覧記録で第1位)

 
 宅地の評価は、各筆の宅地を評価して評点数を求め、その評点数に評点1点当りの価額を乗じて求める方法です。

 その場合、宅地の評価方法としては、「市街地宅地評価法(路線価方式)」及び「その他の宅地評価法(標準宅地比準方式)」の2通りあります。

<宅地の評価-固定資産評価基準>
※第3節宅地・二評点数の付設
「各筆の宅地の評点数は、市町村の宅地の状況に応じ、主として市街地的形態を形成する地域における宅地については「市街地宅地評価法(路線価方式)」によつて、主として市街地的形態を形成するに至らない地域における宅地については「その他の宅地評価法(標準宅地比準方式)」によつて付設するものとする。ただし、市町村の宅地の状況に応じ必要があるときは、主として市街地的形態を形成するに至らない地域における宅地についても、「市街地宅地評価法(路線価方式)」によつて各筆の宅地の評点数を付設することができるものとする。」

<宅地の評価方法>

※市街地宅地評価法「路線価方式」は第10号「固定資産税の宅地の評価方法(『市街地宅地評価法-路線価方式』」で説明してあります。

 
※過去の閲覧数では、意外にも市街地宅地評価法(以下「路線価方式」とする)より、その他の宅地評価法(以下「標準宅地比準方式」とする)の方が上位(1位)でありましたが、これは全国の8割程度で「標準宅地比準方式」が適用されているからと推測します。しかし、最近では「路線価方式」に変更されている市町村も多いようです。

「標準宅地比準方式」とは何か

 「標準宅地比準方式」は、主として市街地的形態を形成するに至らない地域における宅地の評価に適用されます。

 具体的には、家屋の連たん度が低く「路線価方式」を適用する必要が認められない地域について適用される評価方法です。

<「標準宅地比準方式」の概要>

 

「標準宅地比準方式」の流れ

 「標準宅地比準方式」では、道路ごとに路線価を付設せずに、状況類似地区の区分とその中で標準宅地を選定し、土地の宅地比準を行い求めます。

 宅地の価格事情がほぼ同等で広域に亘るため、路線価を付設する必要性が無い等から路線価方式を採用しない訳です。

<「標準宅地比準方式」の流れ>

 「標準宅地比準方式」は、次の(1)~(3)の流れとなります。

(1)状況類似地区の区分

 「標準宅地比準方式」では、まず状況類似地区に地区区分します。

 「路線価方式」では、用途地区がありますので状況類似「地域」と表現しますが、「標準宅地比準方式」では状況類似「地区」となります。

(2)標準宅地の選定と評価

 次に、その状況類似地区の中で標準的な宅地として標準宅地を選定し、標準宅地の評価額を設定します。

 これは、地価公示と地価調査がある場合はその価格の7割を、無い場合には標準宅地を不動産鑑定士が鑑定評価をして、その7割を標準宅地の適正な時価とします。

 そして、標準宅地の評点数を計算し、原則として、全ての筆(画地)の評点数を計算します。

<状況類似地区→標準宅地>

 
 この図のように、「標準宅地比準方式」では路線価が無く、標準宅地のみが選定されています。

(3)各筆の評点数の付設

 評点数の計算方法としては、標準宅地の比準計算により行われます。

 固定資産評価基準では、比準割合の項目として、「奥行による比準割合」、「形状等による比準割合」、「その他の比準割合」の3つの類型の相乗積により求めることとされています。

<「標準宅地比準方式」の比準割合>

「路線価方式」とは何か

 「路線価方式」は、主に都市部の住宅が密集した地域における、土地の固定資産評価に用いられるものです。

 「路線価方式」は、道路1本ごとに価格(路線価)をつけ、1つの同じ道路に接する土地について、すべて同一路線価から計算する方法です。

 この方式は、短時間に大量の土地評価ができること、評価後の価格に大きなばらつきが出ずに公平な課税が可能であること、地域ごとの評価バランスがとりやすいこと、などの利点があります。

<「路線価方式」の概要>

「路線価方式」の方法

 「路線価方式」は、次の(1)~(8)の流れとなります。

<「路線価方式」の流れ>

(1)用途地区の区分

 路線価の付設にあたっては、まず、大きな用途地区(商業地区、住宅地区、工業地区、観光地区)に区分され、さらに必要に応じて細区分されます。
①商業地区
 商業地区は、主として商業店舗が連続する地区で、繁華街、高度商業地区Ⅰ、高度商業地区Ⅱ、普通商業地区に区分されます。
②住宅地区
 住宅地区は、主として住宅用の宅地が連続する地区で、高級住宅地区、普通住宅地区、併用住宅地区に区分されます。
③工業地区
 工業地区は、主として工業用宅地が連続する地区で、大工場地区、中小工場地区、家内工業地区に区分されます。
④観光地区
 観光地区は、温泉街地区、門前仲見世地区、名勝地区、海水浴場地区など、一般の商業地区とは若干性格を異にする地区をいいます。

(2)状況類似地域の区分

 状況類似地域区分は、街路の状況、公共施設等の接近の状況、家屋の疎密度その他の宅地の利用上の便による条件が「相当に相違する地域」ごとに区分します。

<用途地区→状況類似地域>

(3)主要な街路の選定

 状況類似地域内において、最も代表的で評価の拠点としてふさわしいものを「主要な街路」として1カ所選定します。地価公示地及び都道府県地価調査地の所在する街路は「主要な街路」となります。

(4)標準宅地の選定

 主要な街路に沿接する宅地のうちから、奥行、間口、形状等が標準的なものを標準宅地として設定します。

(5)標準宅地の適正な時価の評定

 設定された標準宅地について、地価公示価格、都道府県地価調査価格及び不動産鑑定士による鑑定評価から求められた価格の7割を目途に標準宅地の「適正な時価」を評定します。

(6)主要な街路の路線価の付設

 標準宅地の「適正な時価」に基づき1㎡当たりの価格を算出し、その価格を主要な街路の路線価として付設します。

(7)その他の街路の路線価の付設

 主要な路線価を基準として、その他の街路の路線価を付設します。その他の街路の路線価の付設に当たっては、状況類似地域区分の基準(街路の状況、公共施設等の接近の状況、家屋の疎密度その他の宅地の利用上の便)を総合的に考慮します。

<状況類似地域→標準宅地→路線価>

<「路線価地域図」>

(8)画地計算法による各筆の評点数の付設

 「路線価方式」における各宅地の評点数は、路線価に基づき画地計算法を適用してそれぞれの画地の単位当たりの評点数を算出し、これに各筆の地積を乗じて算出します。

<画地計算法>

 
2023/10/25/14:00
 

 

(第103号)土地の公的価格調査は年2回ー『地価公示』と『地価調査』ー行われている

 
(投稿・令和5年10月-見直し・令和6年8月)

 先月(令和5年9月)中旬に、マスコミ等で盛んに「昨年と比べて商業地、住宅地ともに土地の価格は上昇した」と報道されていました。

 これは、土地の公的価格調査のうち『地価調査』の結果に基づくもので、最新の調査によるものであり正しい内容ですが、「土地の公的調査は年1回なのか」と勘違いされている方もおられると思います。
※ 『地価調査』は『(県)基準地』とも言われています。

 実は、土地の公的価格調査は年1回ではなく2回行われています。
 毎年1月1日現在の『地価公示』(公表は3月下旬頃)と、7月1日現在の『地価調査』(公表は9月中旬頃)の年2回です。

 土地の価格は時の経過によって異なってきますので、当然新しい調査(今回は『地価調査』)が最近の地価動向となります。

公的土地評価の均衡化・適正化

 ところで、公的土地評価について「一物四価」と言われています。

 「一物四価」とは、土地を評価・価値を指標化する際の4つの価格(評価価値)のことで、時価(実勢価格)、地価公示価格、相続税評価額(路線価)、固定資産税評価額(路線価)を指します。

 この内容は、第41号「『一物四価』とは何か-公的土地評価の均衡化・適正化」で説明してありますのでご覧ください。

 

「一物四価」とは何か

 ここで、簡単に「一物四価」を説明しておきます。

① 時価(実勢価格)とは
 時価(実勢価格)は、実際に売買する場合の土地の価格です。
過去に売買が成立した際の価格や、近隣の土地の取引価格を参考にして決められてくるのが一般的です。

② 地価公示価格とは
 地価公示価格は、毎年1月1日の価格を3月下旬頃に国土交通省により公表される土地の価格で、一般の土地取引価格の指標ともなっています。
 この価格は、地域における標準地の更地1㎡当りの正常な価格を不動産鑑定士による鑑定評価で評価されます。
 地価公示価格の鑑定評価においては、実際の取引事例を元に標準化して評価額を求めていることから、時価(実勢価格)とほぼ等しい価格と思われます。

③相続税評価額(路線価)とは
 相続税評価額は、土地の相続税や贈与税を計算する際の基準となる価格で、その年の1月1日時点での価格が毎年7月中旬頃に国税庁により公表されています。
 相続税の路線価は、道路に面する宅地1㎡あたりの価格を基準に算出され、地価公示価格の80%の割合を目安に設定されています。

④固定資産税評価額(路線価)とは
 固定資産税評価額は、固定資産税のみならず都市計画税、不動産取得税、登録免許税などを計算する際に基準となっており、地価公示価格の70%の割合を目安に設定されています。
 固定資産税路線価は、各市町村が3年に一度、3月末までに前年の1月1日を基準にした価格の見直しの結果公表されています。

『地価公示』と『地価調査』の相違

 ところで、この「一物四価」には『地価調査』が入っていません。

 『地価調査』は、事実上『地価公示』と同じ種類の公的価格制度ですが、『地価公示』がメインで『地価調査』が補完的役割と考えられています。

『地価公示の主な役割

 『地価公示』の令和5年のポイントは、全国で26,000地点(標準地)で実施されました。

『地価公示』の主な役割は、次のとおりです。

  一般の土地の取引に対して指標を与えること
  不動産鑑定の基準となること
  公共事業用地の取得価格算定の規準となること
  土地の相続評価および固定資産税評価についての基準となること
⑤  国土利用計画法による土地の価格審査の規準となること

 『地価調査』とは何か

 『地価調査』は、国土利用計画法施行令第9条に基づき、都道府県知事が、地価を抑えるために土地利用の計画を立てて、土地の取引を監視したり、制限したりするための目的で、昭和49年に制定されました。

 令和5年の「地価調査(基準地価)」は、全国で21,381地点(基準地)で実施されました。

 「地価調査(基準地価)」の主な役割は、次のとおりです。

①  都道府県の発表に合わせて、国土交通省が全国の状況をとりまとめて公表すること
  国土交通省(土地鑑定委員会)が実施する地価公示(毎年1月1日時点の調査)と調査時期、調査地点において相互に補完的な関係にあること
  地価が下落傾向にあるとき、平年度の土地固定資産税の引下げの指標となること

 ここに『地価公示』と『地価調査』)の相違の一覧表を掲げます。

<『地価公示』と『地価調査』)の相違>

 
 『地価公示』と『地価調査』のポイントの場所は基本的には異なりますが、中には同一ポイントとされている場合があります。

 この場合は同一ポイントですので、同じ場所が半年単位で公的評価されることになります。

<『地価公示』と『地価調査』)の同一ポイント>

 
2023/10/20/13:00
 

 

(第96号)固定資産税に不服がある場合の手続きは、「審査の申出」(価格)と「審査請求」(価格以外)の2通り

 
(投稿・令和5年8月-見直し・令和7年4月)

 これまで、固定資産税に不服がある場合の手続きとして「審査の申出」について紹介してきました。

 
 しかし、固定資産税に対する不服は、価格(評価額)に限ったものではありません。

 では、価格以外の固定資産税に対して不服がある場合はどうしたら良いのでしょうか。
 これは「審査請求」という手続きになります。

 つまり、固定資産税に対する不服対応(審査)としては「審査の申出」と「審査請求」の2通りある訳です。

 今回は、この後者の「審査請求」についての解説になりますが、まず両者の相違を紹介します。

「審査請求」とは

 そもそも、行政庁の処分に対して不服がある場合の救済手続きの一般法としては行政不服審査法が制定されています。
 そして、固定資産税に関する不服申立についても、原則として、この行政不服審査法に定めるところによるとされていますが、地方税法第19条で特例がまとめられています。

<行政不服審査法との関係>
「地方税法第19条」
「地方団体の徴収金に関する次の各号に掲げる処分についての審査請求については、この款その他この法律に特別の定めがあるものを除くほか、行政不服審査法の定めるところによる。(以下省略)」

「審査請求」の手続き

「審査請求」を出来る者及び対象

 固定資産税の賦課等について「審査請求」をすることができる者は、その固定資産税の賦課等を受けた者であり、その賦課等について不服がある場合です。
 ただし、固定資産税の価格については「審査の申出」が出来ることから、「審査請求」としての不服の理由とすることはできません。

<固定資産課税台帳に登録された価格に関する審査の申出>
「地方税法第432条3項」
「固定資産税の賦課についての審査請求においては、第1項の規定により審査を申し出ることができる事項についての不服を当該固定資産税の賦課についての不服の理由とすることができない。」

「審査請求」の相手(被告)

 行政不服審査法における「審査請求」は、行政庁の処分又は不作為について行うもので、固定資産税については市町村長に対して行います。
 なお、地方税に関しては、再審査請求は認められないこととなっています。(行政不服審査法6条1項)

「審査請求」が出来る期間

 「審査請求」をすることができる期間は、納税通知書の交付受けた日の翌日から起算して3ヵ月以内です。

「審査請求」の主な例

 「審査請求」の事例及び問題となるケースとしては、主に次のようなものがあります。
 ただし、棄却か容認かは個別具体的な判断が必要となります。

納税義務者の認定

①賦課期日現在の所有者
 固定資産税の納税義務者は賦課期日(1月1日)の登記簿に記載されている所有名義人ですが、相続による登記が行われていない場合は納税義務者にはなりません。

②解散手続中の法人
 法人は法律上消滅し権利能力を失うまで納税義務を負うこととなるため、解散手続中でも法人として納税義務を負います。

課税客体の認定

①土地の存否
 固定資産税の対象となっている土地が登記簿上は存在するが、実際に存在していない場合、固定資産税の課税客体は現況主義のため実際に存在しないなら課税されません。

②償却資産と家屋(設備)の区分
 家屋を借り受けて事業をする者が自己の費用により事業の用に供する附加加工した内装、造作、建築設備は、その者を所有者とみなして償却資産が課税されます。

公共の用に供する道路

 土地の一部が公共の用に供する道路として非課税にされるためには、不特定多数の用に供されていて、車両が置かれていないこと等が必要となります。

課税標準の特例

①新築家屋の特例
 新築住宅の軽減される税額の幅は、新築一戸建ての場合で3年間は2分の1に減額、新築マンションでは5年間が2分の1に減額となります。

②住宅用地の特例
 賦課期日(1月1日)現在で住宅が存在している場合には住宅用地の特例措置が適用されます。

③負担調整措置・住宅用地の特例
 土地の負担調整措置は、負担水準(その土地の前年度課税標準額が今年度の評価額に対してどの程度の水準まで達しているか)により決められるため、仮に土地の評価額が下がっていても固定資産税の課税標準額が上がる場合もあります。
 
2023/08/05/10:00

 

(第95号)私道が「公共の用に供する道路」として非課税になる場合(具体的要件)

 
(投稿・令和5年3月-見直し・令和7年4月)

 私道が「公共の用に供する道路」であれば非課税となることについては、第21号でお知らせしましたが、今回はその続編として、どのような場合に私道が非課税となるのか、具体的な要件についてみていきます。

 
 なお、固定資産税の地目の認定は現況主義で、これは固定資産評価基準の第1章(土地)第1節(通則)一(土地の評価の基本)に定められています。
 また地目の意義の定義については、不動産登記事務取扱手続準則の定めているとおりとされています。

 なお、この内容については、第16号「固定資産税(土地)の地目は現況主義による」で説明してあります。

 

固定資産税における私道の非課税

 固定資産税における私道の非課税は「公共の用に供する場合ですが、この根拠規定は地方税法348条(固定資産税の非課税の範囲)2項(物的非課税)5号になります。

<固定資産税の「私道」非課税>
「地方税法348条2項5号」
「2項 固定資産税は、次に掲げる固定資産に対しては課することができない。ただし、固定資産を有料で借り受けた者がこれを次に掲げる固定資産として使用する場合には、当該固定資産の所有者に課することができる。
 5号 公共の用に供する道路、運河用地及び水道用地」

「公共の用に供する道路」に関する通達・行政実例

 この「公共の用に供する道路」については、これまで、自治省(現在の総務省)からの通達(現在は「通知」です)や行政実例が出されています。

<昭和26年7月13日地財委税1140号(地方財政委員会通達)> 
「『公共の用に供する道路』の解釈につき,所有者において何等の制約を設けず,広く不特定多数人の利用に供するものをいう。」 

<昭和26年9月14日地財委税1456号(行政実例)>
「『公共の用に供する道路』の解釈につき,原則として,道路法の適用を受ける道路をいうものであるが,林道,農道,作業道等であっても,所有者において何等の制約を設けず,広く不特定多数人の利用に供し,道路法にいう道路に準ずるものと認められるものについては,『公共の用に供する道路』に包含され,また,特定人が特定の用に供する目的で設けた道路であっても,当該道路の現況が,一般的な利用について何等の制約を設けず広く不特定多数人の利用に供するものと認められるものについては『公共の用に供する道路』に該当する。」 

<昭和42年4月5日自治固34号(行政実例)>
「一般的に,特定人が特定の用に供する目的で設置した道路が『公共の用に供する道路』に該当するためには,当該道路の現況が一般的利用について何等の制約を設けず開放されている状態にあり,かつ,当該私道の他の道路への連絡状況,周囲の宅地の状況等からみて客観的に広く不特定多数人の利用に供される性格を有するものであることを要する。」

市町村の取扱要領・指針

 また、この地方税法の非課税規定は歴史も長いことから、多くの市町村で「公共の用に供する道路」の取扱要領や指針が定められています。

 ここに、東京都(23区)の「道路に対する非課税のご案内」と大阪市の「『公共の用に供する道路』に係る事務処理要領(一部)」を紹介します。
(いずれもホームページに掲載されています。)

 
 この東京都(区)・大阪市の内容はほぼ同じで、また他の全国の市町村の要領、指針も同様の内容となっています。

私道の固定資産税課税の取扱い

私道とは何か

(1)私道の定義
 私道とは、道路の設置と管理主体の観点から、個人や企業などの私人により設置及び維持管理等されている、通行の用に供されている道路です。

 これに対して公道は、国や公共団体等により設置及び維持管理されている、公衆の通行の用に供されている道路で、地方税法348条1項で「人的非課税」とされています。

(2)不動産登記の観点から
 不動産登記法による土地の地目は不動産登記事務取扱手続準則68条で23種類規定されていますが、そのうちの公衆用道路(21号)は「一般交通の用に供する道路(道路法による道路であるかどうかを問わない。)」とされています。
 つまり、公衆用道路は必ずしも公道とは限らないのです。

(3)建築基準法の観点から
 建築基準法では42条1項と2項に道路の種類が定義されていますが、建築基準法の道路は必ずしも公道とは限らず私道も含まれています。

<建築基準法上の道路>

 

裁判例にみる「公共の用に供する道路」

 「公共の用に供する道路」の適用をめぐって、これまでいくつか訴訟が行われてきていますが、定義自体は上記の通達や行政実例を踏まえて一貫しているようです。
 したがって訴訟の内容は、案件の私道が具体的に「公共の用に供する道路」に該当するか否かの内容となっています。

 これまでの裁判例にみる「公共の用に供する道路」の定義は、「開放性」「公共性」「準道路性」の3要件から成りますが、ここに判決文から引用します。

<福岡高等裁判所判決/平成26年(行コ)第18号>
「『公共の用に供する道路』とは,原則として道路法が適用される道路を意味し,所有者において何らの制約も設けず(開放性),広く不特定多数人の利用に供されている(公共性)ものをいうが,道路法による道路でなくても,それに準ずる土地であって,何らの制約なく一般公衆の利用に供されているものを別異に解する理由はないから,『道路法にいう道路に準ずるもの』と認められるもの(準道路性)を含むと解すべきである。」

(1)開放性
・所有者において何らの制約も設けられていないこと。
・例えば「夜間通行禁止」等の時間制約や道路上に植木鉢を置いたりしている場合は開放性が認められません。

(2)公共性
・広く不特定多数人の利用に供されていること。
・例えばショッピングモールで「利用者以外通行禁止」等の制約は公共性が認められません。

(3)準道路性
・道路法にいう道路に準ずるものと認められるもの。
・準道路性では、私道所有者の私権の行使(用途変更・廃止)が制限されます。

条例による申告義務

 この非課税等特別措置(非課税、課税標準の特例等)の適用に当たっては、取扱通知(「地方税法の施行に関する取扱いについて」平成22年)により、「条例により申告義務を課することが適当である」とされています。

<取扱通知-地方税法の施行に関する取扱いについて(第3章第1節19)> 
「非課税等特別措置の適用に当たっては、定期的に実地調査を行うこと等により利用状況を的確に把握し、適正な認定を行うこと。また、実地調査時点の現況等を記載した対象資産に関する諸資料の保管、整理等に努め、その的確な把握を行うとともに、利用状況の把握のため必要があると認められる場合には、条例により申告義務を課することが適当であること。」 

 「公共の用に供する私道」の判例紹介

 ここに「公共の用に供する私道」の判例の一部を紹介します。

 上記の「公共の用に供する道路」の定義で引用した福岡高等裁判所判決/平成26年(行コ)第18号です。

 この訴訟は、第1審(福岡地方裁判所/平成24年)で、福岡市にある商店街として使用されている土地を所有する原告らが「非課税とすべき土地が課税対象とされた」として訴え原告勝訴でした。

 しかし、第2審の福岡高等裁判所では「本件土地の一部である商店街の各通路は、「公共の用に供する道路」に該当するとはいえず、固定資産税等を非課税とすべき理由はないと」して原判決を取消し請求を棄却しました。

 詳細につきましては、次の判決要旨をご覧ください。

 
2023/03/25/10:00
 

 

(第94号)「空き家対策」の強化へ-「空家対策特別措置法」の改正⇒『管理不全空き家』を創設

 
(投稿・令和5年3月-見直し・令和7年4月)

 政府は増え続ける空き家の問題で、管理が不十分な物件については固定資産税を減額する措置を解除することなどを盛り込んだ「空家対策特別措置法」(以下「空き家法」)を改正することになりました。

 令和5年6月7日の参議院本会議において、「空き家法」の改正法が可決・成立し、施行されています。

 また京都市では、法定外普通税(固定資産税ではない)としての「空き家税」(「非居住住宅利活用促進税」)が検討されていますので、参考までにお知らせします。

これまでの「空き家法」による対応

平成26年に「空き家法」が成立

 空き家対策をめぐっては、平成26年に成立した「空き家法」で、空き家を放置して倒壊の恐れがあるなど特に危険性が高い物件を「特定空家」に指定し、空き家を撤去できるようにしました。

 この「特定空家」に指定されると、固定資産税の住宅用地減額特例(200㎡以下が1/6、200㎡を超える部分が1/3に減額)が解除されることになります。

『管理不全空き家』を新設

 しかし、「空き家法」による「特定空家」指定によっても、これまで空き家が増え続けていることから、今回、対策強化を盛り込んだ「空き家法」の改正が行なわれた訳です。

 この改正法では、放置すれば「特定空家」になるおそれがある物件を新たに『管理不全空き家』に指定し、固定資産税の減額措置を解除できるとしています。

 これまでの制度では、空き家でも住宅用地として土地の固定資産税が1/6に減額される続けていることが空き家放置につながっていると指摘されていて、今回の「空き家法」の改正は、所有者に空き家の撤去などの適切な管理を促す狙いとのことです。

 このほか改正法では、「特定空家」を撤去する際の行政の権限を強化することも盛り込まれています。

京都市で「空き家税」を検討

 京都市で、全国で初めての「空き家税」(「非居住住宅利活用促進税」)の創設が検討されています。

 この税は固定資産税とは別に、法定外普通税(市税)として創設されますので、具体的には「京都市非居住住宅利活用促進税条例」によります。
 なお、同条例により、令和11年度から実施されるとのことです。

 注目すべきことは、今後、他市町村も同様の法定外税を設立するのかどうかです。

 具体的には京都市のホームページ「非居住住宅利活用促進税の導入に向けた取組について」(「京都市情報館」)をご覧ください。

 
2023/03/03/20:00