(第118号)宅地内の「赤道」が公道に認定されている問題点

 
(投稿・令和6年9月)

 今回は、宅地内の「赤道」(あかみち)問題ですが、必ずしも固定資産税がメインではありませんが、是非このような事実を知っていただきたいと思います。

※なお、この「赤道」問題は必ずしも全国全ての市町村で行われているものではなく、以下の事例は筆者が居住しているY市での内容です。市町村によっては、「宅地内の道路を公道として認定していない」場合もあるようです。

「赤道」(あかみち)とは何か

 
 「赤道」とは、古くから道路として利用された土地のうち、道路法の適用のない法定外公共物である道路(国有地)であったため、公図上で地番が記載されず赤色で着色されていたことから「赤道」と呼ばれています(里道とも言われています)。
(水路は青色で着色されていたことから「青道」と呼ばれています。)

 明治9年(1876年)太政官達第60号「道路ノ等級を廃し国道県道里道を定む」により、道路はその重要度によって国道・県道・里道の3種類に分けられました。

 大正8年(1919年)に(旧)道路法が施行され、いったん全ての道路は国の営造物(国有地)とされ、府県道は府県道知事が、市町村道は市町村長が管理するようになりました。その際、重要な里道のみを市町村道に指定したため、それ以外の里道については道路法の適用外で国有のまま取り残されました。
 里道のままとされた道路は、小さな路地や農道、山道(林道、けもの道)です。

 そこで、市町村道に指定された道路は市町村の道路台帳に登録され、実質的な道路状態の管理や維持が行われましたが、未登録の里道はその多くが公図に「赤線」で記載があるのみで、実質的な維持管理は周辺の住民任せで放置されていたのが実情でした。

 そして、平成12年4月1日に地方分権一括法が施行され、国土交通省(旧建設省)所管の「赤道(里道)・青道」などのいわゆる法定外公共物を無償で市町村へ譲与(所有権移転)されることになりました。
 この制度の譲与期間は、国有財産特別措置法の一部改正に伴う経過措置により平成17年3月31日までとなっており、各市町村は申請に基づいて譲与を受けることになりました。

 つまり、「赤道(里道)・青道」は国から市町村が無償で譲り受けているのです。

道路とは一般交通の用に供する道

 
 「赤道」でも普通に道路として使用されていれば問題は無いのです(そのケースは現に存在しています)が、多くの「赤道」は建物が存在する宅地内を通っているのです。

 例えば50年以上前から住み続けている宅地において、敷地内に「赤道」が通っているのですが、それが公道と指定されている場合があります。 

 「そもそも道路とは何か」ということですが、道路法第2条に道路の定義が規定されていますが、「道路とは、一般交通の用に供する道」ですので、宅地内に公道がある筈が無いのです。

 建物の敷地内に公道が通っていること、この状況は全国的にも多いのではないかと思いますが、これは問題ではないでしょうか。

<道路法—用語の定義>
「第2条1項
この法律において「道路」とは、一般交通の用に供する道で次条各号に掲げるものをいい……。」
<道路の種類>
「第3条
道路の種類は、左に掲げるものとする。
① 高速自動車国道
② 一般国道
③ 都道府県道
④ 市町村道」

 筆者は、Y市のある方から「敷地内に『赤道』があるのですが、どうすれば良いでしょうか」との相談を受けています。

 下記の左図は登記所の公図ですが、道路部分は地番が入っていません。昔はこの部分が赤色で着色されていたため「赤道」と呼ばれています。(現在の公図では、道路は赤色にはなっていません。)

 また、右図はY市の道路の認定路線図ですが、ここには「●●466」と認定路線番号が入っていますので、公道として指定されていることになります。


 
※ 認定道路とは
 道路法が適用される都道府県道、市町村道等を通称「認定道路」と呼んでいます。この認定道路とは、道路法に規定する路線の認定(道路法第7条、8条)、区域の決定(道路法第18条1項)供用の開始(道路法第18条2項)の行政行為を経た道路のことです。

 宅地内を通っている「赤道」は既に道路(公道)としての機能は果たしておらず、実質的な維持管理も土地所有者任せとされているのが実態なのです。

 本来、50年も建物の敷地として使用していれば時効取得になる筈なのですが。

 市町村では、この「取得時効」を防ぐために公道指定(路線認定)をしているのか、と疑わざるを得ません。

 しかし訴訟も大変なので、現実的には「赤道」の土地所有者は市町村から払下げを受ける(買い取る)方法に従っているのです。

「赤道」払下げの手続

 
 ところで、「赤道」を市町村から払下げを受ける場合、次の複雑な手続きや費用が発生します。

(1)土地測量と「赤道」部分の特定

 「赤道」の払下げを受ける際には、土地所有者の責任で土地測量を行い、宅地部分の面積と「赤道」部分の面積を確定する必要があります。当然、測量事務所に費用を支払うことにもなります。(市町村によっては補助金制度があります。)

(2)「赤道」沿いの所有者の承諾書

 払下げを受ける所有者の責任で「赤道」沿いの他の所有者の「承諾書」を取得する必要があります。
 何故、払下げを受ける所有者が「赤道」沿いの他の所有者から「承諾書」を取得する必要があるのか、根拠の法律も無いし理解できません。

(3)市町村議会での「公道廃止決議」

 宅地内の「赤道」が公道になっている場合は、議会での「公道廃止決議」が必要になります。この「公道廃止決議」により、道路から市町村の普通財産へと変更になります。
 つまり、土地所有者は市町村から普通財産を購入することになるのです。

(4)払下げ費用の支払い

 「赤道」が公道とされている市町村では、宅地所有者は市町村から普通財産の払下げを受ける(買い取る)ことになりますのが、市町村で決められている土地代金を支払うことになります。計算方法は市町村毎に異なると思われます。

※Y市の払下げ土地代金(計算方法の例)
<地価公示価格(又は払下げ対象地の固定資産税路線価÷0.7)×1/2×実測面積>
(商業地の場合は1/2の箇所が0.8。)

※固定資産税路線価は地価公示価格の7割ですので(固定資産税路線価÷0.7=地価公示価格)です。

固定資産税の非課税を確認

 
 そもそも、建物の敷地(宅地)内に公道(「赤道」)があることが正しいのか疑わしいものですが、仮に、敷地内に「赤道」が通っていることが分かった場合は、市町村で「赤道」への対策を確認してください。

 ただし、多くの市町村では、「赤道」という表現ではなく「法定外公共物」の用語が多いようです。

 なお、宅地内であっても「赤道」(公道)の固定資産税(土地)は非課税であるべきなのです。上記Y市の場合は、固定資産税が非課税となっています。
 
2024/09/17/15:00
 

 

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