(第37号)固定資産税の評価・課税における都道府県の役割について

 
(投稿・令和4年5月-見直し・令和6年7月)

 今回は、固定資産税の評価、課税において都道府県はどのような位置づけになっているのか、ということの説明になります。

 固定資産税の課税主体(課税権者)は、基本的にその固定資産の所在する市町村長となります。

<市町村が課することができる税目>
※地方税法第5条第2項-固定資産税
「市町村は、普通税として、次に掲げるものを課するものとする。(後略)
一 市町村民税
二 固定資産税
三 軽自動車税
四 市町村たばこ税
五 鉱産税
六 特別土地保有税」

※地方税法第5条第6項-都市計画税
「市町村は、(中略)目的税として、次に掲げるものを課することができる。
一 都市計画税
二 水利地益税
三 共同施設税
四 宅地開発税
五 国民健康保険税」

 このように、市町村長が固定資産税及び都市計画税(以下「固定資産税」とする)の課税権者となっています。

東京都23区は固定資税産の課税権者

 ところが、東京都23区だけは、上記の例外として、固定資産税の課税権者となっているのです。

<都における普通税の特例>
※地方税法第734条第1項
「都は、その特別区の存する区域において、普通税として、第四条第二項に掲げるものを課するほか、第一条第二項の規定にかかわらず、第五条第二項第二号及び第六号に掲げるものを課するものとする。この場合においては、都を市とみなして第三章第二節及び第八節の規定を準用する。」
<都における目的税の特例>
※地方税法第735条第1項
「都は、その特別区の存する区域において、目的税として、道府県が課することができる目的税を課することができるほか、第一条第二項の規定にかかわらず、第五条第五項及び第六項第一号に掲げる目的税を課することができる。(後略)」

 このように東京都23区域内の固定資産税の課税権者は東京都とされ、都税として課税されています。具体的な課税及び徴収事務は、23区内都税事務所が行っています。

固定資産税評価における道府県の役割

 以上のとおり、基本的には市町村が、東京23区は東京都が固定資産税の評価・課税の担当となっていますが、東京都以外の道府県はどのような役割があるのでしょうか。

 地方税法では、道府県知事は市町村長に対して「固定資産税評価について援助(助言)や勧告をすること」と規定されています。

 その中で固定資産評価事務として大きな役割を担っているのが「一定規模以上の新築非木造家屋の評価」であります。

 これは、大都市以外の市町村における非木造家屋の新築評価を道府県(道府県税事務所)が担っているということです。

 道府県によって詳細は異なりますが、おおよそ次の仕組みとなっています。

新築の大規模(300㎡~500㎡以上)非木造家屋の評価を道府県が担当します。
(旧政令指定都市のような大都市では、自ら家屋の評価を行っています。)

評価が出来上がると、道府県知事から市町村長に対して決定通知書と電子データが渡され、課税権者による市町村長により課税されます。

 以上の法的根拠は、地方税法第73条の21の2項(不動産の価格の決定等)になります。

<不動産の価格の決定等>
※地方税法第73条の21
「1項 道府県知事は、固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産については、当該価格により当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとする。但し、当該不動産について増築、改築、損かヽいヽ、地目の変換その他特別の事情がある場合において当該固定資産の価格により難いときは、この限りでない。
2項 道府県知事は、固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されていない不動産又は前項但書の規定に該当する不動産については、第三百八十八条第一項の固定資産評価基準によつて、当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとする。
3項 道府県知事は、前項の規定によつて不動産の価格を決定した場合においては、直ちに、当該価格その他必要な事項を当該不動産の所在地の市町村長に通知しなければならない。」

今後改善(検討)すべき内容

 道府県知事が大規模非木造家屋の新築評価を担っている仕組みは昔からですが、筆者のコンサルタントとしての経験から、率直な感想を述べさせていただきます。

市町村の固定資産税担当に対して、非木造家屋の新築評価の説明を求めたところ、十分に説明をしていただけない場面が何度かあります。

 これは「自ら評価していない」ことから、非木造家屋のような複雑な評価内容の説明は難しいのだろうと推測しています。
 「自ら評価していない」とは、道府県が評価を行っていることと、新築当時の担当者が既に異動してしまっている、との二重の意味があります。

それだけではなく、ある市では、県から送られてきた資料(「評価計算書」)は「保存期間の10年を過ぎているため廃棄してありません」と言われてしまうことです。

 在来家屋の評価が正しいのかどうか、「評価誤り」があるのかを確認するためには、あくまでも新築当時の資料が必要であるのに、その資料が存在していないのです。
 つまり、課税権者の担当者も、その家屋の新築評価について説明が出来ないのです。

 「賦課課税方式」である固定資産税で、そのようなことで良いのでしょうか。

 是非とも、固定資産税家屋の資料保存期間は10年ではなく「家屋課税中保存、又は永年保存」にしていただきたいものです。

実は、上記の①②の根底をなしている問題は、固定資産税家屋の評価方法が「再建築価格方式」という非常に複雑な仕組みとなっていることにも原因があります。
 この件については、これまでも「評価の簡素化」が検討されてきていますが、是非とも実現を急いでいただきたいものです。
 
2022/05/28/15:00
 

 

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