(投稿・令和3年6月-見直し・令和6年7月)
これまで、市町村が一方的に評価・課税する「賦課課税方式」としての土地及び家屋を中心に解説していますが、固定資産税には、もうひとつ「申告課税方式」の償却資産があります。
今回は、その償却資産の基本的な部分(基本編)についての説明になります。
ところで、償却資産と言いますと、よく国税(法人税等)の「減価償却」と間違われる場合がありますが、固定資産税の償却資産は、地方税の固定資産税の一種となります。
また、償却資産を『償却資産税』と説明しているサイトをときに見受けますが、償却資産はあくまでも「地方税」としての固定資産税の一種であります。
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地方税法上の償却資産とは
地方税法において、償却資産の用語が次のとおり定義されています。
<償却資産の用語の意義>
※地方税法第341条第4項
「土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産(鉱業権、漁業権、特許権その他の無形減価償却資産を除く。)でその減価償却額又は減価償却費が法人税法又は所得税法の規定による所得の計算上損金又は必要な経費に算入されるもののうちその取得価額が少額である資産その他の政令で定める資産以外のもの(これに類する資産で法人税又は所得税を課されない者が所有するものを含む。)をいう。ただし、自動車税の種別割の課税客体である自動車並びに軽自動車税の種別割の課税客体である原動機付自転車、軽自動車、小型特殊自動車及び二輪の小型自動車を除くものとする。」
固定資産税の償却資産は、固定資産税全体(土地・家屋・償却資産)の税収の中でどの程度の割合を占めているかについて、令和2年度決算ベースで公表されています。
それによると、償却資産は19.1%となっています。
<固定資産税収(償却資産)の内訳>
償却資産の課税客体
固定資産税の課税客体である償却資産とは、次の要件を備えるものとされています。
① 土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産(事業用資産)であること。
② その減価償却額又は減価償却費が法人税法又は所得税法の規定による所得の計算上損金又は必要な経費に算入されるものであること。
③ 鉱業権、漁業権、特許権その他の無形減価償却資産でないこと。
④ 取得金額が少額である資産その他の政令で定める資産(少額償却資産※)でないこと。
※「少額償却資産」とは
耐用年数1年未満又は取得額が10万円未満のもので一時に損金又は必要な経費に算入されるもの、及び取得額が20万円未満のもので3年間で一括して損金又は必要な経費に算入されるもの。
⑤自動車税の課税客体である自動車及び軽自動車税の課税客体である軽自動車等でないこと。
償却資産の申告制度
償却資産は、土地や家屋と同じように固定資産税の課税対象となります。償却資産を所有する者は、毎年1月1日(賦課期日)現在の内容について、1月31日までに資産の所在する市町村に申告をする必要があります。
償却資産の納税義務者
固定資産税は、原則としてその年の1月1日(賦課期日)現在における固定資産の所有者に課税されます。
償却資産の免税点
同一の市町村に所在する償却資産の課税標準の合計額が150万円(免税点)を下回る場合は課税されません。
課税客体から除かれる資産
次の資産は償却資産の課税客体から除かれます。
① 自動車税、軽自動車税の課税対象となる資産
② 無形固定資産(ソフトウェア、特許権、電話加入権、営業権など)
③ 繰延資産(創立費、開業費、開発費など)
④ 商品・貯蔵品(販売目的として保有されている棚卸資産)
⑤ 馬、果樹、その他の生物(ただし鑑賞用、興行用は除く)
⑥ 書画、骨董品など(複製品又は単に装飾目的にのみ使用されているものは除く)
償却資産の種類
償却資産の種類と具体例
固定資産税の課税客体となる償却資産の種類は、「構築物」,「機械及び装置」,「船舶」,「航空機」,「車両及び運搬具」,「工具、器具及び備品」に分類されます(地方税法施行規則第26号様式)。
企業会計及び税務会計では、第1種の「構築物」が「建物又は建物附属設備」とされていますが、固定資産税では、原則として「家屋」で評価・課税されるため「構築物」として申告することになります。
<償却資産の種類と具体例>
業種別の主な償却資産の例示
ここで、業種別の主な償却資産の例示を掲げます。
※()内の数字は、各資産の耐用年数です。
<業種別主な償却資産の例>
2022/5/24/9:45