(投稿・平成25年-見直し・令和6年7月)
今回のテーマは、固定資産税の土地評価に対して、不動産鑑定評価がどこまで関与しているか(できるか)ということについてです。
筆者は不動産鑑定士とともに固定資産税見直コンサルタントをしていますが、固定資産税に関する苦情や相談をいただく機会が少なからずあります。
「自分の固定資産税が安くならないか」、「この土地の評価額は高いのでは」、「評価が間違っているのではないのか」等々です。
このような場合、不動産鑑定士ではなく固定資産税見直コンサルタントとして対応することにしています。
固定資産税評価での鑑定士の役割
不動産鑑定士は、毎年、地価公示価格と地価調査価格の鑑定評価に携わっているとともに、3年毎(基準年度)の固定資産税評価の基礎となる標準宅地の鑑定評価にも携わっています。
固定資産税土地(宅地)の評価方法は、①市街地宅地評価法(路線価方式)と②その他の宅地評価法(標準宅地方式)の2通りありますが、どちらの手法においても一定の地域(状況類似地域・地区)内に標準宅地を選定します。
そして、3年毎(基準年度)の評価替えにおいて、その標準宅地の評価が行われ、地価公示価格、地価調査価格とともに、その7割を主要な路線価として設定され、それに基づき各筆(画地)の評価が行われています。
不動産鑑定士は、それぞれの市町村において、その標準宅地の鑑定評価と主要な路線価の設定の業務を担っています。しかし、各筆の評価は固定資産評価基準に基づいて、各市町村で行われます。
また、固定資産税の評価は3年単位で評価替えが行われていますが、平成11年度から、評価替え年度以外(据置年度)でも地価が下がっている場合には下落修正が行われていますが、その業務にも関わっています。
個別の画地は固定資産評価基準による
上記のとおり、固定資産税の土地(宅地)評価の均衡化及び適正化は、不動産鑑定士による地価公示、地価調査に加えて標準宅地の鑑定評価により行われています。
その面では、固定資産税評価における土地評価の基礎は不動産鑑定士が担っていると言ってもよいと思います。
しかし、固定資産税(土地)の評価は、標準宅地や路線価だけでなく、原則として、すべての土地、全国で約1億6千万筆が評価され課税されています。
固定資産税では、この個別の土地(画地)評価は、地方税法による固定資産評価基準に基づき、各市町村の担当者により評価されているもので、ここまでは不動産鑑定士は関与していないのが一般的です(市町村により異なりますが)。
同じ資産税でも相続税評価の場合は、不動産鑑定書による時価証明(税務署に鑑定書の提出)も認められる場合もあります。
ところが、固定資産税宅地の各筆(画地)の評価は、固定資産評価基準に従って評価されていますので、不動産鑑定評価(意見書)でそれを覆す(適正な時価を証明する)のは難しいと考えられています。
この固定資産税の個別の土地評価において、不動産鑑定評価で時価証明することが難しい理由は、地方税法において「固定資産評価基準」の法的拘束力(拘束性)があるからです。
※相続税の評価は「財産評価基本通達」により行われますが、この通達は相続税法には規定されていません。
<固定資産税に係る総務大臣の任務>
※地方税法第388条第1項
「総務大臣は、固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続(以下「固定資産評価基準」という。)を定め、これを告示しなければならない。」
※地方税法第403条1項(固定資産の評価に関する事務に従事する市町村の職員の任務)
「市町村長は、(中略)第388条第1項の固定資産評価基準によって、固定資産の価格を決定しなければならない。」
「その他の雑種地」での鑑定士の役割
「雑種地」及び「その他の雑種地」の評価は別途説明しますが、「その他の雑種地」の評価は大きく分けて「売買実例地比準方式」と「近傍地比準方式」があります。ただし、売買実例が少ないことから「近傍地比準方式」を採用しているのが一般的です。
この「近傍地比準方式」は「土地の位置、利用状況等を考慮し、附近の土地の価額に比準してその価額を求める」(固定資産評価基準)とされていますが、土地の種類毎に比準割合を定めている市町村が大多数になります。
比準割合も市町村によって異なっていますが、この比準割合を決定するに当たって「専門家の意見」として、不動産鑑定士が役割を果たしています。
2022/5/27/10:00