(投稿・令和5年10月-見直し・令和6年8月)
先月(令和5年9月)中旬に、マスコミ等で盛んに「昨年と比べて商業地、住宅地ともに土地の価格は上昇した」と報道されていました。
これは、土地の公的価格調査のうち『地価調査』の結果に基づくもので、最新の調査によるものであり正しい内容ですが、「土地の公的調査は年1回なのか」と勘違いされている方もおられると思います。
※ 『地価調査』は『(県)基準地』とも言われています。
実は、土地の公的価格調査は年1回ではなく2回行われています。
毎年1月1日現在の『地価公示』(公表は3月下旬頃)と、7月1日現在の『地価調査』(公表は9月中旬頃)の年2回です。
土地の価格は時の経過によって異なってきますので、当然新しい調査(今回は『地価調査』)が最近の地価動向となります。
公的土地評価の均衡化・適正化
ところで、公的土地評価について「一物四価」と言われています。
「一物四価」とは、土地を評価・価値を指標化する際の4つの価格(評価価値)のことで、時価(実勢価格)、地価公示価格、相続税評価額(路線価)、固定資産税評価額(路線価)を指します。
この内容は、第41号「『一物四価』とは何か-公的土地評価の均衡化・適正化」で説明してありますのでご覧ください。
「一物四価」とは何か
ここで、簡単に「一物四価」を説明しておきます。
① 時価(実勢価格)とは
時価(実勢価格)は、実際に売買する場合の土地の価格です。
過去に売買が成立した際の価格や、近隣の土地の取引価格を参考にして決められてくるのが一般的です。
② 地価公示価格とは
地価公示価格は、毎年1月1日の価格を3月下旬頃に国土交通省により公表される土地の価格で、一般の土地取引価格の指標ともなっています。
この価格は、地域における標準地の更地1㎡当りの正常な価格を不動産鑑定士による鑑定評価で評価されます。
地価公示価格の鑑定評価においては、実際の取引事例を元に標準化して評価額を求めていることから、時価(実勢価格)とほぼ等しい価格と思われます。
③相続税評価額(路線価)とは
相続税評価額は、土地の相続税や贈与税を計算する際の基準となる価格で、その年の1月1日時点での価格が毎年7月中旬頃に国税庁により公表されています。
相続税の路線価は、道路に面する宅地1㎡あたりの価格を基準に算出され、地価公示価格の80%の割合を目安に設定されています。
④固定資産税評価額(路線価)とは
固定資産税評価額は、固定資産税のみならず都市計画税、不動産取得税、登録免許税などを計算する際に基準となっており、地価公示価格の70%の割合を目安に設定されています。
固定資産税路線価は、各市町村が3年に一度、3月末までに前年の1月1日を基準にした価格の見直しの結果公表されています。
『地価公示』と『地価調査』の相違
ところで、この「一物四価」には『地価調査』が入っていません。
『地価調査』は、事実上『地価公示』と同じ種類の公的価格制度ですが、『地価公示』がメインで『地価調査』が補完的役割と考えられています。
『地価公示の主な役割
『地価公示』の令和5年のポイントは、全国で26,000地点(標準地)で実施されました。
『地価公示』の主な役割は、次のとおりです。
① 一般の土地の取引に対して指標を与えること
② 不動産鑑定の基準となること
③ 公共事業用地の取得価格算定の規準となること
④ 土地の相続評価および固定資産税評価についての基準となること
⑤ 国土利用計画法による土地の価格審査の規準となること
『地価調査』とは何か
『地価調査』は、国土利用計画法施行令第9条に基づき、都道府県知事が、地価を抑えるために土地利用の計画を立てて、土地の取引を監視したり、制限したりするための目的で、昭和49年に制定されました。
令和5年の「地価調査(基準地価)」は、全国で21,381地点(基準地)で実施されました。
「地価調査(基準地価)」の主な役割は、次のとおりです。
① 都道府県の発表に合わせて、国土交通省が全国の状況をとりまとめて公表すること
② 国土交通省(土地鑑定委員会)が実施する地価公示(毎年1月1日時点の調査)と調査時期、調査地点において相互に補完的な関係にあること
③ 地価が下落傾向にあるとき、平年度の土地固定資産税の引下げの指標となること
ここに『地価公示』と『地価調査』)の相違の一覧表を掲げます。
<『地価公示』と『地価調査』)の相違>
『地価公示』と『地価調査』のポイントの場所は基本的には異なりますが、中には同一ポイントとされている場合があります。
この場合は同一ポイントですので、同じ場所が半年単位で公的評価されることになります。
<『地価公示』と『地価調査』)の同一ポイント>
2023/10/20/13:00