(第99号)固定資産税の納税義務者ー所有者課税の例外(みなす所有者=使用者課税)

 
(投稿・令和6年5月-見直し・令和6年8月)

 固定資産税の「所有者課税の原則」については、第9号「固定資産税の納税義務者ー所有者課税の原則(登記・登録されている者)」で説明していますが、今回は「所有者課税の例外(みなす所有者=使用者課税)」についてです。

 地方税法第343条(固定資産税の納税義務者等)では、1項~3項が「所有者課税の原則」が規定され、4項~10項では「所有者課税の例外」が規定されています。

 まず、「所有者課税の原則(登記・登録されている者)」の主な点を再掲しますが、詳細につきましては、第9号をご覧ください。

 

所有者課税の原則

所有者課税の原則と台帳課税主義

 固定資産税の納税義務者は、原則として毎年1月1日(賦課期日)の固定資産の所有者です。

<地方税法第343条1項>
「1 固定資産税は、固定資産の所有者に課する。」

 つまり、固定資産税には、所有者課税主義がとられています。

土地及び家屋の台帳上の所有者

 土地又は家屋についての所有者とは、登記簿又は土地補充課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に所有者として登記又は登録されている者になります(台帳課税主義)。

<地方税法第343条1項>
「2 前項の所有者とは、土地又は家屋については、登記簿又は土地補充課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に所有者として登記又は登録されている者をいう。この場合において、所有者として登記又は登録されている個人が賦課期日前に死亡しているときは、同日において当該土地又は家屋を現に所有している者をいうものとする。」

 仮に売買等によって賦課期日現在すでに所有権が移転している場合においても、登記簿上所有権の移転登記がなされていない限り、固定資産税は登記簿上所有者として登記されている旧所有者に課税されることになります。

償却資産の台帳上の所有者

 償却資産については、土地や家屋の場合における登記簿はなく、申告により償却資産課税台帳に登録されますので、その登録された者が所有者とされます。

<地方税法第343条3項>
「3 第1項の所有者とは、償却資産については、償却資産課税台帳に所有者として登録されている者をいう。」

所有者課税の例外(使用者課税)

 地方税法343条には、みなす所有者(使用者)課税の規定が7項目ありますが、ここでは、そのうち「災害等によって所有者の所在が不明の場合」「調査を尽くしても所有者の所在が不明の場合」「テナントが取り付けた家屋の附帯設備」について紹介します。

災害等によって所有者の所在が不明の場合-使用者に課税

<地方税法第343条4項>
「 市町村は、固定資産の所有者の所在が震災、風水害、火災その他の事由により不明である場合には、その使用者を所有者とみなして、固定資産課税台帳に登録し、その者に固定資産税を課することができる。この場合において、当該市町村は、当該登録をしようとするときは、あらかじめ、その旨を当該使用者に通知しなければならない。」

 所有者の所在が不明である場合とは、所有者が誰であるか分からない場合、生死が分からない場合、住所ないし居所がわからない場合等です。

 また、その不明である原因は、震災、風水害、火災、戦災、海難等であることを要し、引っ越しによって転出先の住所が不明でるというような日常の一般的な事由により不明である場合は含まれません。

 この場合、使用者を所有者とみなして、固定資産税(土地及び家屋)が課税されます。

調査を尽くしても所有者の所在が不明の場合-使用者に課税

<地方税法第343条5項>
「 市町村は、相当な努力が払われたと認められるものとして政令で定める方法により探索を行つてもなお固定資産の所有者の存在が不明である場合(前項に規定する場合を除く。)には、その使用者を所有者とみなして、固定資産課税台帳に登録し、その者に固定資産税を課することができる。この場合において、当該市町村は、当該登録をしようとするときは、あらかじめ、その旨を当該使用者に通知しなければならない。」

 固定資産の所有者が不明で、市町村が探索をしても明らかにならない場合は、その使用者を所有者とみなして固定資産税を課税することができます。この制度は、令和2年度の地方税法改正により、令和3年度から適用になりました。

 この5項には「市町村は、相当な努力…」とありますが、市町村の探索例としては、住民基本台帳及び戸籍簿等の調査並びに使用者と思われる者その他の関係者への質問その他必要な調査です。

 ここで調査を尽くしても所有者を検索できない場合は、使用者を所有者とみなして固定資産税(土地及び家屋)が課税されます。

テナントが取り付けた家屋の附帯設備-テナントの償却資産

<地方税法第343条10項>
「 家屋の附帯設備であつて、当該家屋の所有者以外の者がその事業の用に供するため取り付けたものであり、かつ、当該家屋に付合したことにより当該家屋の所有者が所有することとなつたもの(以下この項において「特定附帯設備」という。)については、当該取り付けた者の事業の用に供することができる資産である場合に限り、当該取り付けた者をもつて第一項の所有者とみなし、当該特定附帯設備のうち家屋に属する部分は家屋以外の資産とみなして固定資産税を課することができる。」

 テナントが、建築設備、間仕切等の附帯設備を家屋に取り付けて、これらの附帯設備が家屋に付合する場合は、当該附帯設備は家屋の所有者が所有するものとされます(民法242条)。

 しかし、実際に当該附帯設備を使用収益しているのは、家屋の所有者ではなくテナントであることから、附帯設備を取り付けた者(テナント)を所有者とみなして固定資産税(償却資産)を課税することができるものとされています。

上記以外の「みなす課税」

 なお、地方税法第343条における「みなす課税」としては、「国が買収・収納した農地等(6項)」、「土地区画整理事業又は土地改良事業に係る土地(7項)」、「公有水面埋立地等(8項)」、「信託に係る償却資産(9項)」があります。

(※この6項~9項の条文は、引用規定が多く複雑となっていますので、条文の掲載は割愛します。)
 
2023/09/04/11:00
 

 

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